ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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深月「更新です」
布団「まぁ、皆予想通りの展開でございます」
深月「アースドラゴン?の肉質はどの様な感じなのでしょう?」
布団(ターゲットロックオン・・・メイドを発射)
深月「それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」







アースドラゴン?トカゲはメイドには素材に見える

~深月side~

 

山を崩して現れたアースドラゴン?を見た皆が思った事はただ一つ―――、あれ何?という一言だけだ。もっとも、深月と執事長だけはあんなのまで培養したの?という疑問。深月は嫌な予感がした。アースドラゴン?は咆哮して深月達が居る場所に向けてゆっくりと歩き始めた。遠目からでも分る重量感、歩く度に地面が抉れて大きなクレーターが出来ている。そして、深月に遅れる様にハジメ達は気付いた

 

「おい、あのアースドラゴンこっちに来てねぇか?」

 

「奇遇ね。私もそう思うわ」

 

「・・・やる?」

 

「いやいやユエさん、あれはやらなきゃいけないですよぉ~」

 

「同族の気配ではないのう。この地に住む固有種かもしれぬの」

 

トータス組の戦闘出来るユエとシアとティオは迎撃するき満々だ。その様子は、何処かストレスを発散したい様子だ。だが、薫がこれに待ったをかける

 

「待ってくれ。流石に日本ではない所で暴れてしまうと色々と事後処理が・・・」

 

「それをどうにかするのが貴方の仕事でしょう?」

 

「そうだけど・・・とにかく女王陛下に連絡の一つでも入れないと」

 

「薫さん、こういう時に便利なアーティファクトを作っています。M〇Bのニューラ〇イザーを作りました」

 

ハジメが懐から取り出したのはMI〇でエージェントが使っているピカッと記憶消去の便利道具と酷似したアーティファクトだった

 

「個人的に欲しいが、今回はそれすら意味がないだろう。あの街に居る住民達が既に情報共有で録画したり配信したりしている筈だ。そして、だからこそ女王陛下にも既に情報が上がっている筈だよ」

 

薫が懐から携帯を取り出して連絡を取る。勿論、この国のトップである女王陛下直通の個人電話だ。相手と繋がったのか薫は現状を報告して深月に視線を向け、深月は首を縦に振り反応を送る

 

『確実性に欠ける重兵器による広範囲の環境破壊と確実に殺せる事が出来る帰還者―――高坂家使用人の神楽深月の二択。どちらが宜しいですか?あぁ、勿論巨大生物はこちらで全部回収してそちらに加工品を送るという形でお願いします。今回の巨大生物の事件が今回潰した組織の副産物であれば研究するのは危険です』

 

薫が女王陛下に無茶を言っているのは分かるが、確実性に欠ける作戦と必ず大丈夫な作戦なら後者を選択するのは国の長の判断としては普通だ。逃げ道を用意し、相手にもメリットを提示しつつデメリットが大きい事をワザと伝える。腹黒とまではいかないが、かなりマシな落としどころだ

 

『はい、・・・はい。ではその様に対処します。メディアに高坂家の名前を出して頂いて構いません。彼等に情報を与える前に軍の派遣による予測被害とその損失を説明した後でお願いします。では、その様に』

 

薫は電話を切り、ハジメ達に分かり易く説明する

 

「さて、時間も惜しいので簡潔に説明するよ?先に言っておくけど、皐月は危ないのでお留守番だよ?」

 

「えぇ~、私はあのアースドラゴンを調べたい!お父さん、私も現場に行っても良いでしょ!?」

 

「駄目よ。皐月はここでお留守番ね」

 

皐月はあのアースドラゴン?にとても興味を示しており、直で調べるつもりだったのだが両親に止められて渋々ながら諦める形となった

 

「大丈夫ですお嬢様、私が手早く処理して全て持ち帰るのでゆったりとお待ちください!というわけで、今回活躍した精神担当はお休みですよ?」

 

「はぁ?ポチの時に蹂躙したでしょう?今日は全て私の仕事です。これは絶対に譲りません!」

 

互いが睨み合いどちらも譲らない状況に周囲が苦笑していたが、皐月が手を叩いて間を取り持ち命令を出す事にした

 

「いがみ合いもその程度にして協力して倒しなさい。そして、死体は大容量宝物庫に収納してきなさい」

 

皐月が深月に手渡した腕輪―――指輪型の宝物庫よりも数百倍の量を収納する事が出来る優れ物だ。大型タンカー船であろうと余裕で入る程大きい。とはいえ、アースドラゴン?を丸々一体は厳しいので解体してとなるだろう

 

「血は大樽五個分で良いわ。それ以外は清潔で全て掃除しなさい」

 

素材は一切残すなという普通では厳しい条件だが、深月ならば清潔で全て事が済むという事だ。爆発でもしてしまえば血が吹き散るのでそれはあまりよくない

 

「・・・どうすればいいのか少し悩みますね」

 

「では、こうしましょう。打撃で肉叩きです」

 

「確かに、それならば下処理の時短が出来ますね」

 

これを聞いた皆は、「えっ、あれ食べるつもり?」と内心で思いつつハジメは味について興味津々だ。とはいえ、全ては倒してからの判断となるので少しばかり先の話だ

 

「計画は決まりました」

 

「それでは、お嬢様達は少しばかりお待ちください」

 

二人はアースドラゴン?に向けて駆けて行った

山の木々を隙間を縫う様に疾走する深月。森を抜けると、広い草原に出て遠くの方でアースドラゴンの巨体がどれ程の物かが分かる。小山一つ分の大きさで、竜化したティオよりも遥かに大きいだろう。だが、如何せん翼が生えていない事もあってドラゴンだと思えない

だが、周囲の被害は甚大だ。現れた事により野生動物が逃げ惑い都市部に入り住民を混乱させた挙句外には巨大なアースドラゴンとなれば大混乱だ。それでも、こちらには来ないと思っている住民の中には避難せずに動画を撮っている。戦いの余波が及ぶ可能性を全く考慮していない愚者だ

 

「住民の避難が遅いですね。危機感が足りないのでしょうか」

 

「少しばかりの演出が必要ですね。しかし、あのトカゲにその様な力があると思いますか?」

 

「物理で物を飛ばす程度でしょうね」

 

深月は、本当にどうしようかと悩んでいるとアースドラゴンが動いた。口を大きく開き、口内に気の流れが集中していた。このままでは少し不味いと感じた学生深月は、取り敢えず後ろに余波が行ったとしても問題ない空中へと駆け上がる。アースドラゴンの口は深月を追う様に移動したので、狙いは深月である事が確実だ

 

『ゴガァァァーーーーーーーーー!』

 

光の本流が口から吐き出され深月を襲うが、深月は黒刀を縦一閃に振るい身を置く場所だけを切り伏せる。光の本流は縦半分に切り裂かれ、一筋の斬撃がアースドラゴンの顎を浅く切る。深月が全力を出していないとはいえ、光の本流を切り裂く程の斬撃の威力ですら浅く切るだけとなるとかなり頑丈である事が分かる

 

あれを覆っている甲殻は中々良い素材ですね。加工が出来ればお嬢様が行きたいと仰られていたコミケのコスプレの材料にしましょう。有害物質が常時生成されていなければ、私の清潔でイチコロです!

 

もう既にアースドラゴンは深月にとって動く素材と認識されてしまった。大人深月が力強く大地を蹴ってアースドラゴンの胸部に飛び込んで鉄山靠を放ち、体勢を大きくのけ反らせた隙をついて学生深月が宙を掛けてアースドラゴンの首に回し蹴りを叩き込む

よろけて地面に倒れたアースドラゴンは、怒って暴れようとした。だが、遅すぎた

 

「素材!素材全部置いてけ!」

 

「肉叩きですよ!余すことなく食べますので安らかに逝かせて差し上げます!」

 

アースドラゴンは泣いてもいいだろう。これから行われるのはただの蹂躙という名のリンチである。内部浸透系の打撃技を中心に甲殻に覆われていない場所が打ち込まれ、重要器官を麻痺させていく。その時間を徐々に長くなっていく事で行動時間を奪う

 

「斬艦刀っ!」

 

大人深月が宝物庫から取り出した巨大な剣―――対艦刀だ。それを地面に叩き付けて投擲する様に上に振り上げる事で遠心力で空を飛びながら魔力放出で更に加速、流星の様な軌跡で昇り、その勢いを殺さずにアースドラゴンの首目掛けて急降下

 

「チェェェェストォォォォーーーーーッ!」

 

全ての力を削ぎ落さずに放たれた一刀がアースドラゴンの首を容易く両断した。遅れて噴き出る血は樽に入れたり瓶に入れたりして十分な量を確保した後、清潔でいつも通り血抜きしてテキパキと動く。宝物庫にアースドラゴンを入れ終えて全てが完了

 

「さて、次はこれが起きた原因を調べる必要がありますね」

 

「取り敢えず先に冷凍保存しましょう。新鮮な素材が駄目になってします」

 

深月は皐月達の元に帰り、町に居た住民達は何かに攻撃されていたアースドラゴンが姿を消した事に困惑したりと翌日のニュースで大騒ぎとなったのは言うまでもない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

欧州から帰国したハジメ達は、高坂家の地下に増設された倉庫に来ていた。そこは空間を拡張された広大な資材置き場や遊び場ともなっているのだが、今回の出番はアースドラゴンの解体場所となっている。如何せん巨大過ぎるので、国土の狭い日本では出来ない。しかし、空間魔法を使った特殊な地下室ならアースドラゴンが余裕で入るのだ

 

「あ"ぁ"~、この解体は大変だなぁっ!」

 

「ヒュドラよりも大きいこれは中々に疲れるわね」

 

「まぁ、深月さんが血抜きしてくれているからそこまで酷くないのが幸いですよねぇ~」

 

「・・・あの血は結晶のストック代わりにする」

 

「ユエよ、地球ではあまり魔力は使わない筈じゃぞ?」

 

「・・・念の為。前みたいに皐月達が飛ばされる可能性があるからいざという時の回復薬」

 

事故で並行世界へと繋がってしまった事による警戒は当然だ。一応全員に宝物庫を持たせ、その中には人工神結晶の魔力タンクとアンテナが入っているので座標を発信する事が可能となっている

 

「ねぇねぇユエ、このアースドラゴン?の血でも魔力が回復するの?ここは地球だからトータスと違って魔力が無いよ?」

 

「香織の疑問は正しいわ。でも、このアースドラゴンの血には何故か魔力が感じられるのよ。どういう事なのかしら?」

 

雫は、採取した血に魔力が宿っている事に気付いていたからこそ不思議なのだ

 

「香織や雫の懸念も分かるが、これも深月に探らせるしかねぇな。千里眼で縁を辿るのは出来るか?」

 

「縁って・・・それって千里眼の範疇に入っているの?」

 

「深月ならいけると思ったからだ!」

 

薫に便利道具扱いしてはいけないよと忠告をされているにも拘らず、この様に信頼して「出来る!お前なら出来る!」と言っているハジメはある意味駄目だろう

 

「ハジメは深月に頼り過ぎよ。その位の概念魔法なら私達で創って今あるアンテナの改良に役立てた方が効率いいでしょ」

 

「私が創るのは構いませんが?」

 

深月からすれば切り札が増える事に越した事はないと考えているので、創れと言われたのなら早速創ろうとするのだがそれは一時中止する

 

「ちょっと嫌な予感がするからね?」

 

皐月の直感が、この件は危険があるかもしれないと警邏を鳴らしていたのだ。生死に関する程大きなものではないが、要らぬ厄介事が舞い込む可能性が高いと予感している

 

「皐月の直感が働いているのか。それならいざという時の深月は温存しておくべきだな」

 

「・・・皐月の直感は未来予知レベル」

 

「わ、私だって未来視出来ますよ!?」

 

「シアの未来視と皐月の直感は別物じゃぞ?」

 

皐月の直感に関しては自身の嫌悪に反応するだけなのでシア程万能なものでもないが、今まで百発百中の発動率なのでどちらも優れていると言える

それはさておき、皐月は縁を辿る概念魔法を創る。効果は単純故に、皐月一人だけの魔力量で事足りた。概念魔法を創り終えた皐月は人工神結晶で魔力を回復してからアーティファクトの製作に取り掛かる。それは現代機器のモニターで、付与する概念魔法は先程作った縁を辿る+千里眼の二つだ。効果は縁を辿った先の景色を映すというシンプルでありながら最強の情報収集兵器だ

 

「ハジメは枠組みをお願い。深月は千里眼を付与した魔力糸を束ねたケーブルを作って」

 

「一応映像を映すモニターカバーとケーブルカバーも作っておくぜ」

 

「取り敢えず束ねまます。百本束の二メートルが良いでしょう」

 

それから十分も掛からずにモニターが完成し、高坂家に設置しているアンテナに増設した。これでクリスタルキーを使った際に、行先の映像を映す事が出来るという事だ

 

「作っててなんだが・・・最強の情報収集装置が出来たな」

 

「・・・衛星カメラが玩具になるわね」

 

「まぁまぁまぁ、備えあれば患いなしと言うではありませんか。悪用をしないのであれば、防衛や捜索の為の設備と言う事で話が付きます」

 

悪用しなければ最強の情報収集設備が完成し、今回の騒動の本当の黒幕が誰なのかを探る。映像に一瞬ノイズが走り少しして景色が見え始めたのだが、其処は地獄の様な暗い景色に赤色の世界だった

 

「何だこりゃ?」

 

「夕暮れの赤色じゃないわね。地下施設か何かなの?」

 

ハジメ達が「これは一体どういう事か」と疑問に思っていると、突然シアの隣の景色が歪んで、其処から黒色の肌と頭に角と羽―――ゲームでお馴染みの悪魔が現れた

 

「ヒャハハハハハ!久々の現実世界だなぁおい!と言うわけでその体を寄越せやぁ!」

 

悪魔がシアの頭を掴みかかった。恐らく、掴まれたら憑依なりされるであろう。だが、トータスの最終決戦が終わっても尚深月によるブートキャンプが続いていたので、この程度の不意打ち等は容易に予測出来るのだった

 

「何ですか貴方?」

 

悪魔の掴みは失敗に終わり、逆にシアのアイアンクローが悪魔を締め上げる。深月に次ぐ怪力のシアの絞めは、油圧プレス機を遥かに越えている。結果はというと

 

「ぎぃゃぁぁぁぁーーーーーー!?」

 

なす術もなく拘束されるだけだった

 

「およ?結構力を入れて絞めているのに潰れねぇです」

 

取り敢えずシアだけの拘束だと取り逃がす可能性もあるので、大人深月が悪魔を探知して拘束に有効な純粋な魔力の糸で雁字搦めにした

 

「アストラルボディですか。魔力を伴う攻撃なら有効打になります」

 

「クソッ!だが、お前等は俺を殺すことはできねぇぜ。何せ暗黒界がある限り何度でも甦るからなぁ!」

 

恐らくと言うよりも確実に悪魔はこの個体だけではないだろう。この現実世界が割り出せたのなら、其処に雪崩れ込んで来るのが目に見えている。だが、忘れてはいけない。此方には相応の武器が開発されている

 

「皐月、縮退炉を使うぞ」

 

「オッケー。深月、魔力の注入お願い♪」

 

「まっくろくろすけお玉に注入します」

 

学生深月が魔力を注入している様子を見た悪魔は、顔を青褪めて震えていた

 

「ば、馬鹿な!?何故人間が魔力を持っている!?」

 

「それを馬鹿正直に答える奴なんて居ねぇよ」

 

縮退炉に魔力が完了。後はこの縮退炉を爆破させたら、超お手軽ブラックホール爆弾と化すのだ。例え悪魔達が住む世界が広大であれ、何でもかんでも潰しながら吸い込むこれには手も足も出ない

 

「縮退炉の暴走まで三十秒にセット!」

 

「転移門を暗黒界へ繋げました!」

 

「ピッチャー、第一球投げますっ!」

 

深月が手に持つ縮退炉はどんどん熱を帯び、魔力糸で作った専用グローブが徐々に溶け始める。カウントを三十秒にセットしてあるとはいえ、丁度で閉じるなんて馬鹿な事はせずに放り込んだ時点で閉じた。モニターで向こう側の様子を観察していると、カウント丁度で黒一色となり観測不可能となりモニター本体が爆発した

 

「・・・ブラックホールって怖いわね」

 

「・・・だな。観測していたモニターがぶっ壊れるとは予想していなかったぜ」

 

さて、暗黒界も滅ぼした事で後々現れる悪魔は存在しなくなった。そして、雫がハジメ達の目の前で拘束されている悪魔の首筋に黒刀を沿えた

 

「それじゃあ、さようなら」

 

「待って待ってk―――」

 

悪魔が命乞いをするが雫は黒刀を振り下ろして首を刎ね、悪魔の身体は透き通る様に消えた。しばらく様子を見ても悪魔が蘇生する様子がない事から警戒を緩め、大元の目的であるアースドラゴンの解体を再開した。甲殻や鱗を丁寧に剥ぎ取りつつ、手早く解体していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解体作業を一日で全てをする事が出来なかったハジメ達はかなり疲労困憊していた。ある程度の部位で切り分けていたからこそ、各々分担して無駄のない作業がスムーズに出来ているのも大きいだろう。尚、深月は一番の大物である胴体を二人で作業していたりする

 

「まさか解体でここまで時間が掛かるとは・・・」

 

「使用人のサポートがあってもここまで大変だなんてねぇ・・・」

 

「だが・・・俺達はまだマシなんだよなぁ」

 

「・・・深月のあれを見るとね」

 

解体が終わったハジメ達が見つめる先は、未だに解体が終わっていない胴体部分を担当している深月だ。大きな甲殻が沢山+鱗沢山+内臓沢山のてんこ盛り作業はかなり苦労する。いや、こればかりは深月だけしか出来ない点も遅い理由の一つだ

アザンチウムを錬成した背の高い柱を複数本設置して、魔力糸のロープで体を浮かす様に吊るして解体している。最初はユエが重力魔法で浮かそうかと提案したが、超重量の前にはせいぜい数分持ち上げる事しか出来なかった。そして、消去法として鎖状のアザンチウムよりも、ロープの様に張りがあり柔軟かつアザンチウム並みの硬度を持つ魔力糸で作業をするという事だ。ハジメ達も最初は手伝おうとしたのだが、もしもの可能性がある為待機しているのだ

 

「シアさん、心臓を渡しますよ」

 

「バッチこいですぅ!」

 

そして、唯一深月の手伝いが出来るのはシアだけだった。シアの身体強化は、最大まで引き上げると身体強化をしている深月よりも馬力が少しばかり上になるというゴリラの如く進化しているのだ。このお陰でシアは解体した四肢の一本を持ち運べる程強くなっており、内臓程度ならば運ぶ事が容易という事だ。そして、保険としての未来視を持っているので事故に遭う確率はかなり低い

深月がアースドラゴンの中に入って解体しながら各部位を引き摺り出すが、先に血抜きをしているので血濡れる事はないのが救いだろう。アースドラゴンの中から次々と内臓を出し終えた深月は、背骨の一関節ずつに分けて輪切りにして切り分ける

 

「おぉ~、さっすが深月さん。あの大きい体を一刀両断ですぅ!あ、斬艦刀?を使わないのはなんでですか?」

 

「斬艦刀は引き斬るというよりも叩き切りますので、肉質を損なわない様にするには引き切るのが一番です」

 

「なるほどなるほど、料理と一緒ですねぇ~」

 

「では、切った輪切り胴体を転がして別々に広げ置いて下さい」

 

「了解ですぅ~。ハジメさ~ん、テーブルか何かを作ってください」

 

シアは輪切りされた胴体を転がし運び、ハジメは輪切り胴体が乗る様なテーブルを錬成したりと馬車馬の如く働かせる。現在、輪切りにしているのは学生深月で、大人深月は内臓諸々をキレイキレイして必要分以外を切り分けて冷凍して巨大冷凍庫に放り込んでいる。

この巨大冷凍庫についてだが、これはシュネー雪原の大迷宮からヒントを得て急速冷凍が出来る様に超強力な性能でポチの食糧庫として活用する事にしているのだ

 

「ふむ・・・なるほど。・・・後は毒見を誰にしていただくか」

 

大人深月は、輪切りで整えられた肉の塊を受け取って小さく切って焼いて食べた。しかし、清潔で毒素を抜いたとはいえ常人に与えても大丈夫かどうかが分からない為に皆で食べる事を躊躇っており、何処かに実験体が居ないか探していると薫や元帥等の今回の作戦に携わった関係者が入って来た

 

「あれが深月ちゃんが仕留めたドラゴンだよ」

 

「えっ?あの巨体を倒したの?現代兵器使わずに?」

 

「俺達も見てたぜ。山みたいな大きさのドラゴンが吹っ飛ばされる光景なんて見られねぇよ」

 

「そ、そうか・・・。はぁ、胃が痛くなる」

 

因みにこの元帥さんについてだが、米国の大統領等を中心としたトップから帰還者を拉致しろと命令を受けていたがそれは全て却下したり説得して止めさせたりと大忙しな状態だったのだ。そして、ようやく落ち着いたと言う所でアースドラゴンを撃退した帰還者―――となれば、再び説得したりと動き回る羽目となったのだ

 

「もうヤダ。仕事辞めたい」

 

「もう辞めちまいましょうよ。俺達にもクソ命令来始めてるんですよ?」

 

「一斉退職・・・責任・・・うっ、頭が」

 

「退職したらこちらに来てね?」

 

元帥は更に項垂れて疲れが浮き彫りになっている。普通ならここで相談する事ではないのだが、事が事なので尋ねるのは仕方がない。深月は薫にアースドラゴンの肉について分かった部分を簡潔に書面に記して判断を窺う

 

「大旦那様、こちらが知り得たお肉の情報です。一応食用可なのですが、それはあくまで私達・・・ハジメさんとお嬢様と雫さんと私の四名ならばとなります。マウスの毒見も済みましたが、人限定に副反応がある可能性も否めません」

 

「・・・ふむ、修冶に食べさせよう」

 

「!?」

 

「安心して下さい。いざとなれば香織さんに治療をしていただきます」

 

「深月さん、呼んだ?」

 

香織を呼んだ深月は執事長を捕縛して椅子に縛り付けた。スピーディーな捕縛に感嘆しつつ、深月が持つ皿に乗せられた一片のブロック肉

 

「ささ、お食べ下さい。例え死んだとしても、数分以内なら蘇生出来ますのでご安心ください」

 

「ヤメローシニタクナーイ!」

 

執事長の抵抗は空しく、深月によって口をこじ開けられて肉を放り込まれて飲み込んだ。待つ事数分―――、執事長の体調の変化はなく、深月と香織の鑑定結果から無問題であるという事が分かった

 

「食用可ですね。しかし、私が清潔を行使した場合ですので食べる際にはここだけ注意ですね」

 

「ふむ、先に全ての肉に出来るかい?」

 

「冷凍保存なので解凍時に菌が繁殖する可能性もあるので念には念を入れてが一番かと」

 

「なるほど。では、使用する場合は決められた曜日にしよう。予めに決めていたら解凍する時間も計算する事が出来る」

 

「かしこまりました。本日は解体日という事もありますので新鮮な内に皆でそれなりに食べましょう」

 

深月が解体中の肉を切り分ける仕事に移るが、その前に薫から今まで誰も言わなかった重要な事が告げられる

 

「ところで・・・このドラゴンと悪魔の関係はどういったものだったんだい?」

 

いや、忘れていたと言った方が正しい。しかし、これはアースドラゴンを討伐した深月はおおよその検討はついていた

 

「悪魔なのですが、恐らくこちらに顕現する為のエネルギーを回収する為だと思われます。そして、あのアースドラゴンは通常のトカゲが進化したものです」

 

『・・・え?』

 

誰も予想出来ていなかったのだろう。皆が固まっても解体を続ける深月に、ハジメがツッコミを入れる

 

「いやいやいやいや!?あのアースドラゴンが元トカゲ!?嘘だっ!地球でもファンタジーな生き物は居るんだっ!!」

 

どうやら、ハジメは夢を諦めきれないのだろう。地球にアースドラゴンが居たのなら、何処かにファンタジー生物が存在する可能性が高いと予想していたので探検する予定を立てていたのだろう

 

「悪魔による魔力の影響で幻想回帰の進化―――、応用すれば他の生物も進化するかもしれませんよ?」

 

「天然物が見たいんだ!俺は諦めねぇ!諦めねぇぞ!!」

 

深月は溜息を吐きながら現実を突きつける

 

「UMAのイエティや猿人は居ますが、天然物でファンタジーな生物は存在しませんよ。千里眼で全て確認したので間違いありません」

 

「居ないの?」

 

これがハジメの夢だけならば傷は浅かったのだが、ここには一番夢見る子供が居るのだ。深月が声が聞こえた方に振り返ると、涙を流しているミュウの姿があった。しかも、深月以外の女性陣に慰められているという特大のおまけ付きでだ

 

「深月、ちょっと来なさい」

 

「・・・はい」

 

皐月はそのまま深月をドナドナして別室へと連れて行き説教をしに行き、残った学生深月は気まずい空気をスルーして解体を続けた。だが、他の皆からの冷たい視線がグサグサと突き刺さる

 

「これ絶対どっちも知ってるよな?」

 

「・・・空気読めない」

 

「ミュウちゃんが可哀相です」

 

「幼子のミュウにあの仕打ちは酷いのう」

 

「深月さんって何時もは空気読めるのに、肝心な時って空気読めないよね」

 

「香織、あれは無自覚よ。皐月以外には思った事を口に出す厄介な性格なのよ」

 

正に言いたい放題だ。地球に帰って来てからも時々行われるブートキャンプにストレスが溜まり、それを発散したいが為にネチネチと言っている。しかし、これは悪循環である事をハジメ達は気付いていない。深月のストレスが溜まったらより一層厳しいものに変わるというのに・・・

そんなこんなしていると、皐月達が戻り解体作業の再開となった。尚、深月への罰は後々決めるという事で話が決定している。断じてハジメ相手にシロとは言わない。皐月がそれでは罰にならないと判断しているので、恐らく皐月関連で一時供給を断つという地獄に変更するという可能性が濃厚となった。後に、深月は「・・・解せぬ」と不満そうにしていたが、ミュウの夢の一つを潰した責任は大きい

こうして高坂家の力が世界中に発信され、家に突撃して来たマスゴミはポチにドナドナされて追い出されて行き、世界中のセレブ達は深月を一時的に貸してくれないかと打診が来たりと様々だ。後者に関しては、皐月が計画するメイド専門学校の設立の為に資金提供を呼びかけ、快く賛成されてスポンサーになったりと優先権が与えられたりと今回の件で色々と楽になった事が多かった。まぁ、一番凄いのは欧州の女王陛下が育成した最優秀のメイドを数人欲しいと言った事だろう。これは深月達による教育も捗る事は必須=教え子達はある意味で地獄を体験するのであった

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「いや~、呆気ない最期だった」
深月「納得がいきません!」
布団「子供の夢をぶち壊した責任は大きいのですじゃ」
深月「叶わない夢を追い続けるよりも、叶う夢を追い続ける事が良いではありませんか」
布団「だから空気が読めないって言われるんですよ~」
深月「解せぬ」

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