ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「さぁさぁ、始まりますよ~。皆大好き型月作品への進出だ~!」
深月「後々隠さない伏線はこの為だったのです」
布団「いやぁ~、メイドさんのぶっ壊れを魅せるならこれが一番かな?と思いまして」
深月「・・・それでは読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」











メイドは並行世界?へ転移しました~Fate編~

~深月side~

 

・・・何故この様な不運に見舞われるのでしょう。私トラブルに引っ掛かり過ぎでは?とツッコミたいです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目撃者は消す―――これは聖杯戦争では当たり前なの。だから、殺っちゃえバーサーカー!」

 

「■■■■ッーーーーーー!」

 

深月の目の前に居る巨大な男が咆哮を上げて襲い掛かった。これは深月が大男に襲われる数分前の出来事に遡る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日も元気にお仕事頑張る深月は、ある実験を行っていた。今まで誰もツッコミを入れなかった深月が二人いる問題についてだ。二人の状態でもチートなのだが、体一つの方が一対一の戦いが強い。何故なら、マルチタスクの管理をもう一人が行う事により行動選択肢が沢山取れる+未来予知レベルの予想する事が出来るという利点がある

そんなこんなで実験していた深月は、遂に行動に支障が出ない完璧な状態で体一つに戻る事が出来た。久しぶりの一つの身体に最初はぎこちない動きをすると思っていたが、その問題はなく自然に動く事が出来た。いや、予想以上に滑らかに動く体に不思議に思っていた。だが、問題ないどころか利点しかない為に深く追求する事を止めた。今するべき事は、この朗報を皐月に一早く伝える事だ。ここしばらくは問題という問題が起きていない為、ハジメと一緒に便利なアーティファクト作りをしているので作業部屋へと直行した

 

「失礼します。お嬢様、ハジメさん、一度ご休憩を挟まれてはどうですか?」

 

「ッ!?・・・・・深月か」

 

「今の間はどういう事ですか」

 

作業部屋には皐月が居らず、ハジメだけだった。しかも、便利なアーティファクト作りとは関係なさそうな形をした起動系の物・・・。明らかに好奇心だけで作ったアーティファクトであると感づいた深月は、速攻で回収しようとしたがハジメが背に隠す

 

「・・・回収出来ないのでどいて下さい」

 

「断る。これは・・・これはオタク達の希望だ!これだけは死んでも護るぞ!」

 

この言葉を聞いた深月は、可能性の模索をした。色々考えたが、つい最近の出来事を考えるとある一つだけしか思いつかなかった

 

「ガチャの排出確率を上げる装置ですか?」

 

「お、おう・・・。別にいいだろ?皐月がガチャで絶望しかけたからそれをどうにかするのがサプライズプレゼントってやつだ」

 

「ふむ、それなら確かに必要ですね」

 

深月は、以前にソシャゲのガチャで爆死していた皐月を傍で見ていたから確率を上げるアーティファクトは必要であると結論付けた。それが後の後悔となる。ハジメがテーブルの上のアーティファクトについて語っていると、誰も触れていないのにも拘わらず起動し始めた

 

「はぁ・・・ハジメさん、今はお嬢様が居ないのでアーティファクトを起動されても関係ありませんよ?」

 

「は?何言って―――」

 

ハジメがアーティファクトの方を見ると、地球儀の様な形をしたパーツが高速回転していた

 

「なっ、何で起動してんだよ!?」

 

「自動で起動するのではないのですか?」

 

「これはクリスタルキーが無いと起動しないんだよ!?」

 

「・・・・・は?」

 

「あっ・・・」

 

ハジメは口が滑った。クリスタルキーによる起動=転移系のアーティファクトという事だ。先程言っていた確率を上げるアーティファクトとは無関係=嘘を吐いていたという事が確定した

 

「ちょ、ちょっと待て深月!そ、その右拳を下ろせ!な?ちょっとした嘘だ!」

 

「なら、さっさと止めて下さい」

 

ハジメが深月の言葉に従ってアーティファクトを止めようとしたが、動きは止まらない処か早く激しくなった

 

「ふぉぉおおっ!?」

 

「ちょっ!?」

 

そして、アーティファクトは暴走する形で起動して部屋中に光が溢れ、光が収まったらハジメと深月の姿はなく、問題のアーティファクトは粉々に砂状に壊れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハジメと深月を包む光が晴れ、二人の目の前には夜の墓地が広がっていた

 

「ハ・ジ・メ・さ・ん・?」

 

「正直、すまんかった」

 

「はぁ~・・・早く帰りましょう。転移前は朝で今は夜となれば、時間経過があるという事です。とはいえ、厄介事は現在進行形でこちらに到着しましたが」

 

「ん?」

 

ハジメは深月が視線を向けている方を見ると、人影が森から後退する様に現れた。外見は西洋騎士かつ女性というオタクに火を着ける属性が満載だが、ハジメはその女性の顔や服装を見て頬を引き攣らせた

 

(おいおい・・・一体どういう事だよ!?)

 

「なっ!一般人!?」

 

西洋騎士の女性もハジメ達に気付いたのか、驚愕を表情を浮かべて避難を促した

 

「そこのお二方、今すぐ此処から離れて下さい!早く!!」

 

女性の忠告を聞きハジメ達は避難しようとしたが一足遅く、森の木々を跳躍で飛び超えて現れた大男が目の前に現れた。ハジメは、「やっべっ!」と本音が出て、深月は、「あぁ・・・ゲームの世界なのですね」と何処か達観しつつ呆れた表情を浮かべていた

 

「遅かったか・・・。お二人共、その場から動かないで下さい!」

 

「いや・・・流石に動かなきゃあぶねぇだろ。っていうか前、前!!」

 

「ちぃっ!」

 

「■■■■ーーーーーーーーー!!」

 

大男はハジメ達を無視して女性に突撃する。まるでラッセル車の如く地面を抉りながらすっ飛んで来る光景は普通では見る事すら出来ないだろう。そして、普通なら女性は無残にも引き飛ばされるが、大男の持つ大剣を不可視の何かで受け止めた

 

(ひゃ~、生のFa〇eのバトルシーンってこんななのか。・・・アーティファクトをフルに使って倒せるぐらいか?)

 

ハジメは、もし戦闘に巻き込まれた際の対処方法を考えていると遠くから二つの人の気配を感知した。一人はその場に留まっているのか隠れているのか分からないが動かず、もう一人はゆっくりとこちらに近付いて来ていた

 

「へぇ~、一般人が居たんだ。セイバーはそんなお荷物を護っていながら私のバーサーカーを相手に出来るとでも思っているの?だったら、本気になれる様にそのお荷物から殺ってあげる。そして、目撃者は消す―――これは聖杯戦争では当たり前なの。だから、殺っちゃえバーサーカー!」

 

「■■■■ッーーーーーー!」

 

大男がハジメと深月から殺そうと女性を無視して突撃する。女性はこちらを護ろうと大男に向かって行ったが、少し傷を与える程度で終わり深月へと襲い掛かる。だが、それは大男にとって大きなミスだ

 

「ちょ!?何で一般人がこんな所に居るのよ!?」

 

隠れていたであろうもう一人の人間と、傍に立つ白髪の男が居た。その二人もこちらを見て驚いており、本当に想定外な事が起きている事が分かる

そんな二人を置いておき、深月は行動する。振り下ろされる大剣の腹に発勁を叩き込んで少しだけ軌道をずらし、そのまま体を回転させて肘打ちを鳩尾に入れようとしたが飛び退きで回避された

 

「高い身体能力+野生の鋭い勘・・・いざ対面すると中々に難しいですね」

 

「何で?ねぇ、どうして避けたのバーサーカー?バーサーカーなら当たっても平気だよね?」

 

「・・・・・・」

 

大男は片手を前に付き出す様にしてに警戒をしている。最も、その警戒をしている事に気付いているのはこの場に三人だけだ。西洋騎士の女性と、白髪の男と、ハジメの三人だ

 

「何故バーサーカーは警戒している。肘打ち程度ならば驚異ではない筈だ」

 

「アーチャー、バーサーカーがどうしてすぐに攻撃しないか分かる?」

 

「種は分からないが、触れた瞬間に何かが起動する魔術が仕込まれているのだろう。しかし、私の矢を防御する姿勢すら見せなかったあのバーサーカーが警戒となれば、それ以上の破壊力を秘めているのは確実だろう」

 

(やっぱり深月の攻撃は神話の世界でも有効なのか。・・・どの程度の威力だったんだ?)

 

肘打ちの構えを解いた深月は、陸上選手のクラウチングスタートよりも低い姿勢を取り、大男に向かって疾走した。地面は大男の時以上に爆発して大地を揺らし一瞬で大男の懐に入り、宝物庫から取り出した黒刀ですれ違い様に抜刀して腰から上を切り飛ばした

 

『は?』

 

(やっぱりそうだよなぁ・・・)

 

皆が驚愕する中、ハジメは何処となくこうなる運命を感じ取っていたのだ。どの強さかは分からないが、分類上神?であるエヒトを打ち倒す事が出来た時点で、大男を超える力を持っている可能性もあった

 

「へぇ、ただの人間がサーヴァントを倒すなんて余程の規格外ね。でも、所詮は人間。私のバーサーカーには勝てないんだから!」

 

「■■■■■ーーーーー!」

 

なんと、切り飛ばされた大男の上半身は時間が巻き戻る形で再生したのだ。死からの蘇生―――ハジメ達も死亡直後の蘇生は出来るが、それはユエ達が居てこそ出来るのだ。一人で蘇生する事は不可能という点では大男に分がある

 

「死からの蘇生。お守りか何かの効果でしょうか?」

 

(ん?もしかして深月はこの世界についてはかじりで知っている程度か?)

 

ハジメの予想は当たっており、深月は"もう一度"黒刀で大男に切り掛かった。先程とは違った歩法による急加速後の急反転による幻術めいた飛び込みは、見事に大男の迎撃を回避して上段の振り下ろす。深月の予想では、そのまま唐竹割による両断のイメージがあった

 

「深月、後ろに跳べ!」

 

「なっ!?」

 

ハジメの忠告は遅く、既に振り下ろされた後だった。大男を両断する筈の黒刀は、甲高い音を鳴らして弾かれ深月の腕に鈍い感触を伝えると同時に驚愕も与えた。弾かれた隙は大きく、大男のボディブローが鳩尾に直撃して深月は大きく吹き飛ばされた。障害物の墓石を砕きながら地面に数回バウンドして木々の手前で止まった

 

「ゲホゴホッ!・・・・・私でなければ死んでいますね」

 

深月は再生魔法で潰された臓器を一瞬で回復させ、完全回復。とはいえ、完全な直撃なのでかなり痛く動きが多少鈍くなっている。それでも対処の方法は幾らでもあるのは深月ならではという事だ

 

「ねぇ、アーチャー。バーサーカーの攻撃は直撃したわよね?」

 

「そうだな。あの弾かれた仰け反りの状態からでは跳び下がる事も不可能となれば、確実に直撃している」

 

「・・・どうして立てるか分かる?」

 

「分かるわけないだろう。それこそ、バーサーカーの様な蘇生魔術を行使出来ると言われた方がまだ納得がいく。もし、私があの状態で攻撃を受けたら再起不能となるだろう」

 

遠くで二人の正直な感想が述べられている。そして、深月と大男・・・いや、バーサーカーと呼ぼう。深月とバーサーカーの戦闘を見ていた女性騎士は本当に呆然として、膝を着いている深月に対しバーサーカーは突撃してこない状況に周りは不思議に思っていた

 

(何故だ・・・彼女は隙だらけなのに何故襲わない。あの状態で何か罠があるというのか?)

 

バーサーカーはゆっくり歩いて深月に近付いていく最中に急に立ち止まり、何かを拾う動作をした。それと同時にわずかに光る線は、深月の魔力糸だった。周囲の墓石や木々に張り巡らされたそれら全てを見た者達全員が更に驚愕していた

 

「糸のトラップ!?一体何時の間に仕込んだのだ!?」

 

「あれほど張り巡らされたとなれば、バーサーカーであろうと直ぐに動く事は出来なかっただろう」

 

糸は空気に溶ける様に霧散し、罠が解除された。しかし、バーサーカーは深月が完全回復している事を理解しているから突撃しない。互いが睨み合う中、森の奥からガサガサという音が聞こえ一人の少年が姿を現した

 

「セイバー!」

 

「士郎、駄目だっ!」

 

「え」

 

セイバーと呼ばれた女性の声も空しく、バーサーカーは標的を少年に変えて強襲。左肩から右腹部をなぞる様に切り裂かれ青年は地面に倒れると同時にセイバーがバーサーカーに攻撃して退ける

 

「・・・つまんない。せっかくのショーが一気に白けちゃった。お兄ちゃんもあっけなかったし・・・バーサーカー、もう帰りましょう」

 

バーサーカーは少女の傍に戻り、肩に乗せて森の奥へと消えて行った。場の緊張が解け、少女が少年に駆け寄り色々と手を施している。白髪の青年はハジメと深月を警戒しており、双剣を手に持っている

 

「おいおい、どうするよ?」

 

「この場から離れましょう」

 

「あんた達待ちなさい!」

 

面倒事が去った今、二人はこの場から離れようとしたが、少女が呼び止める。なにやら怒っている様子だ

 

「一体何者なの?サーヴァントを圧倒しうる力を持っている人間なんて聞いた事ないわ。一から説明してもらうわよ!」

 

「こんな場所でか?」

 

「落ち着けマスター、形勢的にはこちらが不利だ。話し合いをするにしても高圧的では印象が最悪と思われるぞ」

 

「うっ!・・・分かってるわよ。でもね、普通は動揺するでしょ!?」

 

「確かに動揺するのは仕方がない。だが、だからと言ってこちらよりも戦闘能力が高い者達に対して使うなど言語道断だ」

 

「私が悪いって言うの!?」

 

白髪の男・・・アーチャーがマスター?である少女に忠告を入れるが、少女はかなりご立腹の様子だ。取り敢えず二人は、彼等が落ち着くのを待つ間に少年の方の様子を見る。少女の救護が良かったのか、少年の身体の傷が治りつつあった

しかし、少年が目覚めるまでには時間が掛かるという事なので少女に案内される形で少年の自宅へと付いていく事となった。少年の自宅に到着したら西洋騎士の女性が担いでいた少年を布団の上に降ろし、居間のテーブル席へと付く

 

「さて、何処から話したらいいのやら・・・」

 

「何よ、そんなに複雑な事情だとでも言いたいのかしら?でも、ご生憎様。私は遠坂凛、この土地のセカンドオーナーだから事細かく聞くわよ」

 

「・・・まぁ、良いだろう」

 

そして、ハジメの口から語られる出来事―――。トータスうんぬんかんぬんは説明せず、簡単に並行世界へと飛ばされたという事にした。これを聞かされた遠坂やサーヴァント達は頭を抱えた

 

「よりにもよって並行世界からの転移ですって?もっとマシな嘘を吐きなさいよ!」

 

「それが本当なんだなぁ~。取り敢えず証拠となりそうな鉱石を出すわ」

 

ハジメは宝物庫からトータス産の緑光石をテーブルの上に出す。電気程ではないにしろ光を発するその鉱石を見た少女は、食い入る様に手に取って観察する

 

「・・・こんな鉱石見た事ないわ。一体どういう理屈で発光しているのか分からない。これ貰ってもいいかしら?」

 

「やるわけねぇだろ」

 

「あぁ・・・お金になると思ったのに」

 

ハジメは緑光石を回収して宝物庫戻し、これからの計画を深月と相談する。この緊急時とはいえハジメ達は野宿する事も可能なのだが、この戦いに巻き込まれた事から野宿は危険だ。遠坂から説明されたサーヴァントは、クラスが七つあり、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、アサシン、バーサーカーとそれぞれのスペシャリストという事だ

 

「そして、俺達の目の前に居る二人がセイバーとアーチャーという事か」

 

「私が戦った大男がバーサーカーという事ですね」

 

「ホント、あのバーサーカーって何なの?理性が無くなっていないんじゃないのって言う位の身の熟しだったわよ!」

 

それはハジメも思った。バーサーカーの身の熟しは逸話通りの物であると予測出来るものの、狂化された状態でとなると些か疑問が残る

 

「あの・・・先程からバーサーカーには理性が無いと仰られていますがそれは恐らくないと思います」

 

「あん?どういう事だ?」

 

「皆が言うバーサーカーとは狂化により正常な判断がしにくいと分かりましたが・・・彼は最適解の迎撃と無駄が一切ない動きをしていたので狂化はしていないのではないのでしょうか?」

 

『・・・・・』

 

これを聞いた皆が、あの墓地での戦闘を振り返る。特に、直接戦っていたセイバーは何処かしか納得出来た表情をしていた

 

「確かに・・・言われてみればそう思います。如何に体に染み付いた動きであろうと、本能だけではあそこまで繊細な動きは不可能な筈だ」

 

「セイバーもこれって事は、狂化を掛けていない状態であのスペックという事なのね。殆どAランク越えのステータスなのに更に上乗せで蘇生もするとかインチキにも程があるでしょ!」

 

「まぁまぁ、お茶でも飲んで落ち着けよ」

 

「落ち着けるかっ!!」

 

ハジメが手渡したコップが叩き落とされテーブルにお茶がこぼれ落ちる。そんな彼女の姿を皆が残念な子を見る目をしていた

 

「なっ、何よ皆して・・・」

 

「マスター、あまり感情的になり過ぎるな。あの話をするのであれば、もっと冷静になれ」

 

「っ!・・・そうね。みっともない姿を見せたわね」

 

遠坂は息を吐いて精神を落ち着かせ、ハジメ達にある提案を持ちかける

 

「貴方達はこれから聖杯戦争の目撃者として確実に巻き込まれるわ。この冬木から出ても記憶があるだけで魔術師から狙われるの。でも、ここに居てもあのバーサーカーのマスターが放置する事はあり得ないわ。だから、同盟を組まない?セイバーも私達との同盟について考えてちょうだい」

 

「ほ~ん、良いんじゃね?」

 

「対価としてお金を要求しましょう。衣・食・住の全てを支えますので・・・一日平均二万で如何ですか?」

 

「ちょっと待ちなさいよ!一ヶ月三十日と考えたら六十万よ!?一人頭でそれと計算したら百二十万じゃない!!高すぎるでしょ!?」

 

「流石に日当二万はやり過ぎじゃねえか?」

 

ハジメは遠坂に同情する様に深月にツッコミを入れるが、これは計算あっての事

 

「ハジメさんが所持する武器はどれも消耗品です。こちらでは補給手段がない事から、ここで何かしらの素材を手に入れなければなりません。火薬は中々手に入る物ではありませんよ?」

 

「あぁ、確かにそうだな。俺達が持っている素材は有限だから補給ルートを確保するのが先決だ」

 

「うぅ・・・お金が・・・お金が足りないわ・・・・・」

 

結局のところはお金が重要という事実に打ちのめされる彼女の姿は哀れだ。だが、同情はしない

 

「絞り出しなさい。そもそも、サーヴァントと同格程の戦力がたったの二万で雇える事を幸運に思うべきではありませんか?」

 

「はっ!そ、そうだったわね。よくよく考えたら宝石買うよりも断然お得じゃない!」

 

「それでは、契約を結びますか?」

 

「あったり前よ!こうなったらこの聖杯戦争が終わるまではこき使ってやるから覚悟しなさいよね!」

 

遠坂は深月がスッと差し出した契約書に迷わずサインした。内容は深月が言った様に、マスターが危なくなれば助けると言ったものだ。だが、お忘れだろうか?深月がそんな甘い言葉で契約を結ばせようとしている事がどれ程悪質かというのか・・・。遠坂のサインも終わったので写しを確認して複写の書類を渡して本契約書は宝物庫に保管する。これで準備万端―――

 

「それでは、これより同盟開始です。遠坂様は、こちらに生活費として一人頭二万円を毎日手渡しでお願い致します。戦力補充の為に資金が必要になりましたらこちらからお声を掛けさせていただきますね♪」

 

「「「「         」」」」

 

これには皆が呆然としており、遠坂は顔を青褪めながら書類の複写を確認。書かれている内容は変わりなく、一体何処にそんな事を書いているの!?と言いたげな表情で深月を睨む

 

「おや・・・私は言いましたし、その契約書にも書いてありますよ?"一人頭平均二万"――――と」

 

これで内容を理解したハジメとアーチャーは、遠坂を残念な子を見る様な目をしていた。いや、実際問題残念な子だ。深月が甘~い言葉を垂れ流して契約を迫るのは、それ相応の対価が陰に隠れて潜まされているという事だ。平均二万と言えど、多少の上乗せ等は勿論許容するという事・・・とんだ狸である

 

「ですが、安心して下さい。平均二万という事は、請求額が二万よりも下回る可能性があるという事です」

 

「っ!」

 

「無駄な出費を抑えるなら、オーナーとして多少の横流しは仕方がありませんよね?それが叶わない場合はどんどんと資金が膨れ上がりますね♪」

 

下げて、上げて、突き落とすとは正にこの事だ。まるで一日の利息十割並みのとんでもない契約をしたという事に、遠坂は項垂れる他なかった

 

「・・・君は策士と思っていたが訂正しよう。腹黒なんて生温い・・・最早外道悪魔だ」

 

「あらあら、"この程度"の内容にお気付きになられなかった主に対して矢を射抜くとは正に弓兵。正確無比ですね」

 

「そうか。・・・・・地獄に堕ちろ」

 

「私が死んだ際には地獄行きは確定していますので大丈夫です」

 

アーチャーの本音に対し肯定する深月だが、正直言うと深月に寿命という概念は存在しない。そもそも、腕を切り落として体全てを再生させてストックを作っている時点で狂気とも言える行いにプラスして、死んだ際に魂の置換の魔法も施しているので深月が自分で判断するまでは死なないという事だ。バーサーカーよりもチートである事は確実だが、これを相手に伝える事はしない。この方法は最後の切り札として懐に残しておく為で、使う必要性が無いのであれば絶対に使わない様にする為だ

 

「んじゃあまぁ、俺達はこの家に住むわ。何事もビギナーには優しく―――ってな」

 

「狙われた場合は即脱落するでしょうね」

 

「~~~~っ!分かったわよ!それなら私もここに住むわ!その方がもっと安全でしょ!」

 

一体何を張り合っているのか不明だが、まぁ言い分は理解出来るし危険度を下げるにももってこいだろう。少しすると、家主が登場

 

「えっと・・・どうしてみんなが家に居るんだ?」

 

おいおい、こいつ何も分かっていないのか?と疑問に思いつつ溜息を一つ。取り敢えず時間も遅く、夕食を食べるというよりも夜食を食べる位の時間帯である。お腹が減っているのは皆同じだった

 

「それを話しながら飯にしねぇか?いきなりドタバタした事ばかりだから飯でも食べながらゆっくりと説明したんで構わないだろ」

 

「あっ、あぁそれでいいか。待っててくれ今人数分作るから」

 

「病人は大人しく座って下さいませ」

 

衛宮の肩を掴み、強制的に椅子に座らせる。本当は居間の畳上に座らせた方がいいのだが、台所が見える場所に居た方が何かと心配事も少ないだろうという配慮を込めている

 

「冷蔵庫の中身は・・・流石に使うのも躊躇いますので手持ちの食材を使います。調理器具は一通り揃っているので使用させて頂きます。あぁ、包丁は手持ちの分がありますのでお気になさらなくて結構です」

 

宝物庫から包丁と食材を取り出した深月は、ごく自然に調理を開始する。丁度食べ盛りの年代と言う事もあるので、シンプルなステーキにする。先程冷蔵庫の中身を覗いた時、安いお肉やタイムセールの食材があったのを確認していたのでプチご褒美だ。これから苦難と言う名の地獄が待っているのであれば、多少高価な食材を使おうとも痛くもない

手間暇掛けて作る方がとても美味しいのは確実だが、短縮出来るならすっ飛ばす。かなり使用頻度が少ない技能の清潔進化がここで輝く。安いお肉だろうと1~2ランク上昇するぶっ壊れのこの清潔なら、美味しいお肉を更に美味しくする事も造作ない。肉だけの味でも濃厚となれば、ソースはさっぱりとした和風が最適だ。優しい味をお届けし、一噛みするだけで肉の存在感を強調しつつ調和の取れた一品となる。スープはシンプルなコンソメスープだが、侮るなかれ―――。最初の一口はホッとする様な柔らかな安心感を与える味わいから、二口目からもう一口もう一口と飽きが来ない味わいをお送りする。そして、最後はデザートのゼリー。どこぞのグルメ漫画の如く味のデパートなそれを作る。とはいえ、食材からして違うので擬きとなるのは仕方のない事だ

完成した品をテーブルの上に置き、ドリンクの烏龍茶を注いで完成。ステーキの熱によって蒸発するソースの香りが食欲を増進させるスパイスとなり、空腹を誘う。それは、本来は食事すら必要としないサーヴァントである彼等も同様にゴクリと喉を鳴らす

 

「シンプルな内容ですが、牛肉の和風ソースとコンソメスープ―――食後にデザートのゼリーが御座います。食べ過ぎには注意して下さい」

 

しかも、ごく自然にサーヴァント二人の分も用意されているので食べないという選択肢は料理人に失礼なのでありがたく頂く事にする

 

「えっと・・・それじゃあ、いただきます」

 

「「「「いただきます」」」」

 

ステーキをナイフで切るのだが、筋を切る様に力を籠めずとも切れるステーキ肉はまるで角煮の様だ。この時、衛宮の頭の中では肉の価値について一杯だった。それは遠坂も同じ様で、食べるのを少しだけ躊躇っている。だが、そんな事を気にしないのは深月に胃袋を掴まれている我らがハジメ只一人

 

「うんめぇええええーー!いやぁ~、何時食べても深月の料理は最っ高だな!」

 

深月以外の皆が、「もうちょっと躊躇いながら食えよ」と心の中でツッコミを入れながら一口―――。口の中でうまみの暴力が広がり至福の一時が訪れる。まるで自身と野菜と肉が手を取り合ってスキップしている様な錯覚を引き起こす

 

「なっ、何これぇ・・・。こんなの美味しすぎるでしょ~!こっちのスープも美味しい!あぁ、手も口も止まらない!?自然とご飯が進んじゃう!!」

 

「この肉一体何十万するんだ・・・もし請求されたら払えないぞ・・・・・」

 

「っ!っ!っ!?」

 

「この優しい味わい・・・ふっ、そうか。俺は間違っていたという事か」

 

何やらサーヴァント組は色々と反応が面白く、つい苦笑してしまう。特に、セイバーは表情をコロコロと変えながらもっきゅもっきゅと食べ進め、明らかに周りよりも食べるスピードが速い

 

「あの・・・セイバー様。私の分のステーキをお譲りしましょうか?」

 

「宜しいのですか!?」

 

目をキラキラと輝かせながら期待の表情を見ていると、動物に餌を与えているような感じがする。一枚丸ごと渡すと、もっとキラキラと輝かせて一口一口を笑顔で食べていく

 

「セイバー貴女ねぇ・・・。美味しいのは分かるけど、食い意地張り過ぎでしょ。そんなに当時のご飯は美味しくなかったの?」

 

「・・・・・あれは豚の餌です」

 

遠坂の率直な疑問にセイバーは食べる手を止め、思い出す様に不満気な答えを告げる

 

「芋を潰しただけの食べ物ばかりで、稀に食べれる肉は固いし臭いし不味いの三拍子です。瘦せ細った地に出来る麦もパサパサで腹を満たせない有様でしたね」

 

「・・・ごめんなさい」

 

流石の遠坂もこればかりは謝罪した。もし、セイバーの様な食文化の時代を思うと気落ちするのは当然だろう。と言うか、よくそんな食事で士気が落ちなかったと褒めてやりたい気分だ

 

「しかし、現代の食事は良いですね。もっともっと食べたいです!」

 

「・・・あのなぁ、深月が作るからこんなに美味いんだぞ?それこそ、高級料亭でもこの味を超えろって言うのは無理難題だ。だから、今回の料理はこの聖杯戦争を戦う為のご褒美みたいなもんだ。毎日は無理だぞ?」

 

その瞬間、セイバーの表情は能面の様に暗くなった。恐らくこの様な美味な食事が日本の基準だろうと思っていたのだろうが、残念な事に深月だからこそ作れるのだ。過度な期待は注意しろというだけだ

 

「し、シロウ!お願いです!この様な美味しい食事を作って下さい!」

 

「い、いや無理ぃ!?こんなに美味しい料理を作る技術は俺には無いんだ・・・ごめんなセイバー」

 

「そんな・・・馬鹿な・・・」

 

流石に救いがなさすぎるという事なので、救済措置を提案する事にした

 

「流石に食材を毎日出すという事は出来ません。ですので、食材をそちらでご用意されるのであれば一緒に作る事は構いません」

 

「本当ですか!」

 

「でも良いのか?メイドさんは主人を優先するものだろ?流石に無理してまでは頼めないけど・・・」

 

「御心配には及びません。こちらに住まわせて頂く対価として料理を教えると言う名目なら問題ありません。・・・何せハジメさんはよく食べますから」

 

「・・・あぁ、うん。納得した」

 

衛宮がスッと目を逸らす様にハジメの方に向けると、深月の分のゼリーを食べようとしていたセイバーの頭をハリセンで叩き、強奪して食べるという暴君の如き絵面を見た。・・・うん、食は人を変えるとはこの事だ

こうして、ゲームの中の世界へと迷い込んだハジメ達は聖杯戦争に巻き込まれる事になった。取り敢えず、色々な事をぶち壊している時点で原作を壊している。正直言うと、何かしらの修正力が働くのでは?と不安に思う深月であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




布団「最近のメイドさんは飯テロ回が出て来ていなかったので、これはもうぶち込むしかないと思いました。いいよね、飯テロって。想像するだけなら無料!という訳で、次回も食事シーンが入ります」
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