ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「もういっちょ~!」
深月「飯テロ飯テロ!」
布団「飯テロ飯テロ!」
深月「はい。読者の皆様方、ごゆるりとどうぞ」







メイドでも緊張します~Fate編~

~深月side~

 

ふぅ・・・次から次へと運が悪いですね。えっ?何故運が悪いのかですか?いやぁ~、これには私もビックリです。まるで狙い澄ましたかの様に出会ったのは故意ですよね・・・・・

 

これは同盟が成り立った翌日の出来事――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてさて、商店街でお買い物お買い物~♪あの冷蔵庫の中身を見て気付きましたが、タイムセールの値引きはこちら以上ですね!家計にも優しく大量に作れるとは最高です。おや、お野菜も新鮮でお値打ち価格・・・即買いですね。えっ、そのお魚を捨てるのですか?駄目です駄目です!私が買います!普通は売ってはいけないお魚なのは理解しています。で・す・が・!美味しく食べられるのであれば食べてこその食材です。この世に食べれない物等、少しだけなのです!

 

こうして、深月は商店街を散策して捨てちゃう素材を大量に引き取り、ウッキウキで足取り軽く帰宅して差しあたって必要のない物を冷蔵庫へ入れ、自転車に乗って港へ移動。魔力糸を海に垂らして魚介を釣り上げて瞬きの内に三枚下ろしにして身と骨を分別する

かなり長々と同じ事をしている為か、近所の子供達が興味本位で集まって覗きに来ている。子供達は、「メイドスゲー!」やら「食べていい?」等々自由気ままで、注意するよりも興味を持たせる方が一番良い事を理解しているので即席釣り竿を作成。スカートの中から手品の様に長い釣竿を出しているので物凄く驚いていたりした。尚、これは全て魔力糸を編んだ物なので軽くて丈夫な一品である

 

「それでは、お魚が釣れましたらこちらのトレーの上に置きましょうね?そうすれば、私が目にも止まらない速さで捌いちゃいますよ!」

 

『釣るぞーーーー!』

 

釣り餌は傷んだ魚の切り身で、捨てちゃう素材だったものだ。そして、この場所は穴場だったのかかなりいいサイズの魚が釣れる釣れる。子供の力だけでは引き上げる事の出来ない魚に関しては、即席タモで確保したりする

 

「あっ!エビが釣れた!」

 

「お~、スッゲェ!」

 

「エビ食べたい!」

 

あぁ~っと、ここで釣っては駄目な生き物が釣れてしまった。完全な事故です

 

「はいはい子供達、このエビさんは逃がしましょうね?」

 

『えぇ~、何でぇ!』

 

かなりご機嫌斜めな様子だ。だが、法律上決まっている事なので諦めて頂く他ない。エビを釣った子供は周囲の子供達に自慢しているのか、皆がいいないいなと羨ましがっている。その隣には丁度魚を釣った子供が一人おり、エビを自慢している子供が鼻を伸ばして見下している。これはよくない

 

「は~い、そこでお魚を釣ったお嬢さん。こちらに来てくださ~い」

 

少女はエビ自慢の子供を無視して深月の元に行き、魚を渡す

 

ほう、まさかまさかのキスですか!ふぅ、こんな高級魚がこの様な場所に生息しているとは・・・侮れませんね!

 

大きさ的に高級料亭で出る様な丁度いいサイズだったので、ババっと下処理を施して簡易キッチンを設置している場所へ移動。丁度、天ぷらをしようと油を温めていた為丁度良い温度―――。ならばここで清潔進化で鮮度を底上げしてうま味を凝縮させて小麦粉にダイブ!そして油へ投下!

・・・・・こうして美味しく揚げられたキスの油を落とす為に網の上に置き、天つゆを作っていると―――

 

「あぁぁーーーーーー!私の魚ぁぁぁーーーーーー!!」

 

「ふむ、良いぞ。庶民の味にしては中々の美味。褒めつかわ「何やってるんですか!」ぶべらっ!?」

 

深月の迷いない拳が金髪の男の頬に直撃。流石に手加減はしてあるので大丈夫だが、とても痛そうにしてらっしゃる。顔を上げた金髪の男の表情は怒りに満ちていた

 

「使用人の分際で俺を殴るとは・・・ばんs「うぇぇぇぇぇーーーーーん」・・・・・」

 

初めて自分の力だけで釣ったお魚が見知らずの男に取って食われたのだ・・・それはもう泣くだろう。周りの子供達も不快感を露にしており、ジト目で金髪の男を睨む

 

「にいちゃんサイテーだ!」

 

「そうだそうだ!」

 

「わだじがはじめでづっだざがななのにぃぃぃーーーーーー!」

 

「うわ~・・・大人として最低です。どなたかご存じありませんが人としてのモラルが欠如しています。まるで暴君・・・・・いえ、暴君よりも酷いです。あらあら、泣き止んでください。あんなDQN男は海に落として皆で美味しいバーベキューをしましょうね?」

 

「・・・う"ん"」

 

「ということですので、落ちて下さい」

 

「ふざけるなっ!この我を海に落ちろだt「サイクロンドライバー!」ぉぉぉぉぉーーーー!?」

 

縮地を超えた無間で背後に瞬時に移動した深月は、男の腰を持って自分ごとドリルの様に回転しながら海に落とす。その衝撃は凄まじく、水柱が立った。男は犬神家となっていたが、深月が回収して近くの浜辺へと放り投げて子供達とバーベキューをする。尚、男が勝手に行動しない様に魔力糸でグルグル巻きにしている

 

「ねーちゃんが用意した肉うっめぇぇぇぇーーーーー!」

 

「え~?私達が釣った魚も美味しいよ?」

 

「刺身うっま!」

 

「こらー男子達、野菜も食べなさいよ!」

 

「野菜は嫌だ!男は肉だ!!」

 

「こらこら、好き嫌いせずに食べませんと背が伸びませんよ?ちなみに、夜更かしも成長を阻害しますよ」

 

とはいえ、子供達は素直に野菜を食べないので挽肉に混ぜてハンバーグを作ったり餃子を作ったりと色々を手間を掛けて食べやすい様に工夫して食べさせる。そうこうしていると男も目が覚めた様だ

 

「この紐を解け雑種!」

 

「子供達の成長を妨げる人を解放するとでもお思いですか?」

 

「・・・チッ、いいだろう。しばらくの間は黙るとしよう」

 

流石に男も子供達の事を思うと後味が悪そうにしていたので鬼畜や外道ではないのだろう。深月は男を縛っている紐を解き回収していると―――

 

「子が居るこの場では何もせんが、後で覚悟しろよ・・・混ざり者」

 

深月はほんの少し硬直したが、子供達が居る手前では何もしない確約がされているので気にしない事にした。だが、油断はしない。子供達が居なくなった後に殺しに来るかもしれないし、何より男が纏うオーラが尋常ではない事には気付いている

 

「あー!泥棒の兄ちゃんが起きて来た!」

 

「俺達の肉も奪うつもりか!絶対にやらねぇぞ!!」

 

「お魚の弁償もしなさいよね!」

 

「・・・私の天ぷら」

 

「ええい、黙れ!貴様達にはこの我の力の一端を見せてやろう!」

 

男が言うと、空間が光り黄金の釣り竿が出てくる。深月は、頭が痛くなった。こんな子供達が居る前で異能を使う事がどれだけ危険であり、異端者に狙われる可能性がある。この世界にずっと留まる事の出来ない深月にとってかなり拙い事だが、男は何一つ気にしない様子で竿を次々と出している

 

「今宵は大盤振る舞いだ!お前達は今日だけ特別にそれに触り使う事を許す!」

 

「マジで!」

 

「最初はズルい兄ちゃんだと思ってたけど良い兄ちゃんだな!」

 

「・・・まぁ、赦してあげるわ」

 

「うわぁ、きれいな竿・・・」

 

黄金で出来た竿かと思いきや、通常の竿よりも軽いのか子供達でも軽々と持ち上げ投げる事が出来ている。しかも、大人並みに遠くに飛ばす事が出来ている。一体何がどうなっているのかツッコミたいが、何かしらの補助効果があるのだろうと無視する事にした。そして、爆釣だった。色んな大きな魚が釣れ、1m近くのヒラメ、巨大タコ、巨大イカ、ブリ、エイ等々が釣れた。小型の高級魚もそれなりに釣れており、深月は釣れたもの全てを神経絞めをして内臓を取り出して下処理の後氷がたくさん入った巨大なクーラーボックスを荷車に積み、子供を各家庭に送り届けて釣った魚を渡していると日が暮れていた

 

「子供は活発ですね。あの子供達は良い思い出が出来たでしょう」

 

「ふっ、当然だな。この我が貸した釣り竿を使ってこその釣果だ」

 

「それよりも、何時まで着いて来るつもりですか?」

 

「貴様は我に不敬を働いた。本来は直ぐ殺すのだが、気が変わった。庶民の食べ物とはいえ、味はそこそこ良かった。ならば、不敬を帳消しにする為にはどうするべきか分かるな?」

 

「かしこまりました。調理場所は私達の仮住まいとなりますが、宜しいでしょうか?」

 

「・・・ふむ、いいだろう。だが、我を満足させろよ?出来なければその首を我の手で直接刎ねてやろう。光栄に思えよ?」

 

深月は溜息を吐きながらどうするべきか悩む。正直言うと、めんどくさい。だが、下手に手を出すと何が出てくるか分からないので要求を呑むしかない。食べ物を要求するだけならどうとでも出来るし、衛宮宅には戦力がたんまり居るので多対一となり自身にヘイトが集中し過ぎるという事にはならないと踏んでの事だ。深月は男を連れて帰宅する

 

「ただいま戻りました」

 

「神楽さんお帰り。えっと・・・後ろの人はお客さん?」

 

「外出先で色々とやらかしたお詫びという形で夕食をご馳走する形になりました」

 

「そうなのか。えっと・・・名前は?」

 

「不敬であろう。我に頭を垂れ謝罪して疾くしn「あぁ、この方は自己顕示欲の高いお兄さん程度の扱いでお願いします」なにぃっ!?」

 

「これから夕食を作るのです。時間が掛かりますので揉め事を起こさず、静かにお待ちください。衛宮様、貴方も未だ本調子ではないご様子ですので今日も私が夕食をお作りさせていただきます」

 

「え・・・あぁ、分かった」

 

衛宮は深月の言葉遣いに少しだけ違和感を感じたが、何処かしらのお偉いさんを招いての言葉遣いだと思った。この予想は正しくもあり、衛宮を庇った形でもある。男が不機嫌になれば本当に首を刎ねられていたが、言葉を遮ってまで急かす事で多少は大目に見させるのだ。だが、それをした事による不都合―――夕食のランクを大幅に跳ね上げねばならなくなった

深月は男をリビングへと案内し、そこに居たハジメを含む全員がいきなりの来客に驚く

 

「おう、深月おかえ・・・・・マジか・・・・・」

 

「ミヅキ帰りましたか!早く夕食―――」

 

「さぁて、今日も美味しい物を食べさせて・・・あんた誰?」

 

「・・・凛、来客なのだから失礼のないようにしたまえ」

 

深月が作る夕食という癒しのオアシスに知らない誰かの参入という事に遠坂が不機嫌そうにするが、アーチャーに窘められて深月からハリセンで頭を叩かれるという連係プレー。物凄く残念な子である

 

「何故だ!何故貴様がここに居るアーチャー!!」

 

「セイバー、アーチャーってどういう事!?」

 

「彼は前回の聖杯戦争でアーチャーとして召喚されていました!」

 

「はぁ!?そんなの初耳よ!」

 

流石にこの事態を重く見たセイバー達は戦闘態勢を取ろうとしたが、もれなく全員にハリセンが叩かれる

 

「彼は夕食を食べに来ただけです。聖杯戦争が夜は活発化するとはいえ、ここは食事を摂る場―――。武器は己の歯とお箸やナイフやフォークだけです。それ以上を持ち出すのであれば何もお出ししません」

 

一人一人を射抜く深月の殺気は尋常ではなく、サーヴァントですら冷や汗を流す程に強烈だ。しかし、男はその殺気をそよ風の様に口角を僅かに上げて笑っている

 

「我は不敬を働いたこの召使に対価として食事を所望しただけに過ぎん」

 

「おい深月、不敬って何をどうやったんだよ・・・」

 

そこには皆も気になっており、深月は基本的には手を出す事は少ない。そして、目上の者に対してもそれ相応の対応をするので問題となる様な行動は慎む筈なのだ

 

「子供達が初めて自分で釣った魚を調理したのですが・・・この方に食べられましたのでグーで殴りました。そして、子供達の目の前で武器を取り出そうとしたので追加で海に叩き落としただけです。まぁ、食べられた事に悲しんで泣いてしまった子が居まして・・・」

 

もし、自分が子供の立場だとすれば物凄く怒るだろう。それに、気が弱い子ならば泣いてしまうのは当然だ。正直言うと、大人が子供にしていい行いではない

 

「それは・・・流石に擁護出来ねぇ」

 

「えぇ、少年少女が初めて己の手で釣った魚を勝手に食べるのは例え王であろうとしてはいけない」

 

「あ奴等にはこの我の道具を特別に貸し与えて大物を釣らせた事で帳消しだ。ならば、後は言葉よりも手を出したその召使を裁かねばなるまいよ。セイバーよ、お前も王なら分かるであろう?王に手を出す事は死罪も同然である。だが、我はその法を特別に軽くしただけだ。これの何処に問題がある?」

 

男の言う事は正に特別である事が分かる。暴君でなくとも、王に手を出せば死罪は免れない

 

「マジかよ。深月の料理は王様の舌を唸らせたって事か?」

 

「雑種、貴様はこの召使の仮の主であろう?王の言葉を遮る事がこやつの足を引っ張ると理解しているか?」

 

ハジメは目を見開いて深月の方に視線を向けると、頭が痛そうにしていた。ハジメは、「どこに問題があった・・・」と思っているのだろう。必死になって何処の足を引っ張ているのかを理解しようとしたが心当たりが何一つない

 

「その様子から何も理解しておらぬようだな」

 

男はハジメに興味を失くしたのか、指を鳴らす。何もない空間から金色の玉座が現れると同時に、深月が指を動かして下敷きにされそうになった家具を退避させる。これだけでも男の口角は上がりニヤける。深月はハジメの肩を掴み、睨みながら小声でありながらどすの利いた声で告げる

 

「これ以上不用意に発言はしないで下さい。衛宮様達にもこの事をしっかりと念押しして下さい」

 

深月はそのまま玉座の前に魔力糸で編んだテーブルを出す。シンプルながらもテーブルの脚や側面には美しい花の絵を彫りこんでいる。白いテーブルだが、掘り込み部分だけほんの少しだけ色を付ける事で華やかさを備える

 

「ほう、魔力を質量に変えたか。贋作者の真似事も出来るがお前の場合は模倣者・・・いや、昇華させているな。これだけでも殺すには惜しい」

 

「それはとても嬉しゅうございます。ですが、今はその様な考察を止めて下さいませ」

 

「その発言を赦す。確かに、貴様の言う通りこの場は食事をする場であるが故にな」

 

深月は宝物庫から包丁を入れているケースを取り出し開けると、使い込まれていようと美しさを持っている。男はその包丁に興味を持ったのか、少しだけ身を乗り出して観察していると深月は魔力糸の布を作り包丁の持ち手部分に乗せて男の前へと寄せる。それを察したのか、持ち手に布を巻いて包丁を手に取り刃を見る。時折角度を変えて光を反射させたりとして戻し、全種類の包丁を見終えたら深月に視線を向ける

 

「それでは、只今から調理を始めさせていただきます」

 

「我を愉しませろよ?」

 

「では、王様自ら食材を選ばれて頂きましょう」

 

「ほう、よいのか?今更後戻りは出来ぬぞ?」

 

深月は、宝物庫に入れていた"トータス産の魔物の肉"を含めた各種材料をテーブルの上に乗せていく。そして、明らかに普通とは違う反応が返って来た。そう、これは好奇心―――。この王様は表情や仕草には出していないが、心拍や眼の輝きが少しだけ変わったのだ。深月はそれを絶対に見逃さない

 

「色々とあるが・・・そうだな。そこの"肉"と牛の肉を使え。後は貴様の判断で"主役"を損なわずとも存在を大きく出す"従来の野"と"肉よりも力強く舌に残るスープ"だ。これらを実現する時間は本来であれば一月程掛かるが、貴様なら出来るであろう」

 

「かしこまりました。"それぞれ調和と強調"を兼ね備えた料理をご用意致します」

 

王様が指定した二種類の肉を残して他の肉類は収納し、手早く下処理を開始する。"魔物肉"をサイコロ状にカットし、牛肉は薄くスライス。手の温度でも肉は焼けてしまうので手に魔力糸のグローブをして冷たい状態を維持しつつカットしているので味の低下はありえない。

野菜は家庭菜園で採れた野菜達だ。空間魔法による施設の拡張のお陰で自家栽培で自給自足並みの生産力を手に入れており、深月の手で大地の栄養をたっぷり吸収した無農薬の野菜達がある。地球産の香辛料とトータス産の香辛料を配合して世界でただ一つのオリジナルの味付けを完成させている。その香辛料を使い、シンプルな野菜サラダを作る

そして最後はスープだが、実はこれが一番厄介で時間が掛かる。これは完全に技能頼りの調理となるが、王様は大まかではあるが深月の事を理解しているので全てを任せているのが救いだ。そして、スープはというと実は完成していたりもする。だが、このスープは全力の遊びによる奇跡とも呼べる逸品なのだ。最初は皐月にと思っていたのだが、このお題をクリアするのはこれしかなかった。首からチェーンの紐を通した指輪型の特別製の宝物庫から大鍋を取り出した

その瞬間、深月と王様以外の皆の口から涎が垂れる。香りの暴力―――、嗅いだ事のある匂いなのに脳が理解する事が出来ないという判断を狂わせるようなそれが部屋に充満する。大鍋からお玉一杯分のスープを小さな鍋に移し、沸騰しない程度で温め終わったら薄くスライスした牛肉をそのスープにさっと潜らせて冷水で一気に冷やす事でうま味を閉じ込める。これを見た皆は、「何て贅沢な!」とツッコミを入れたかったが口から垂れる涎で声に出なかった

 

「な、何て匂いだ・・・。これは麻薬にも等しい。いや、このスープの為だけに戦争が始まってもおかしくない」

 

牛肉をサイコロ状に切った魔物肉を包む様に巻き、その上に先程のスープを煮立たせて濃厚にしたソースとして全体を覆う。そして、ここからが全員に衝撃を与える物が出た。それは、テープによって隙間を閉じているのにも拘らず鎖をグルグル巻きにしていたのだ。あまりに異様―――まるで封印しているかの様なそれを出した深月が鎖を解き終わると、珍しく表情を強張らせながら注意点を告げる

 

「ここで皆様には注意点が御座います」

 

「よい、許す」

 

王様の許可も得た事で、深月はブルーシートを広げて全員をその上へと移動させる。これには皆も戸惑う

 

「王であるこの我もだと?」

 

「私は貴方の正体を存じません。ですが、高潔な王である事は理解しております」

 

「では、その理由を聞こう」

 

深月は少しだけ後ろめたさを感じさせつつも正直な感想を口に出す

 

「王様、先程取り出したスープについて何か感想は御座いますか?」

 

「そうだな。あのスープは、我が今まで食べた中でも最上位に匹敵するだろう」

 

「それはとても光栄で御座います。ですが――――あれは未完成です」

 

これを聞いた瞬間、ハジメ達は今までにない驚愕の表情で反応した。一方、王様も深月の言葉に驚いたのか眼を見開いた後に獰猛な笑みを浮かべる

 

「く、ふ、フハハハハハハハ!ハーッハハハハハハハハハハ!あれは未完成で、それを用いた肉料理を出そうとしていたのか?本来は不敬として許されぬ行為だが、それは違っていたか!あれを超える完成系となれば、肉を超えるのは必然というものだ」

 

王様はクツクツと笑みを浮かべている様子は、まるで純粋な子供みたいだ。本来であれば、王という体裁を持つが故に毅然としたカリスマ溢れる状態でなければならない。だが、己の知らぬ未知の体験を個人でするのであればそれは必要ではない。寧ろ心躍り自然に笑みが零れるものだ。全員をブルーシートの上に移動させた後、いよいよ開封される

密閉するテープにカッターの先端が入った瞬間、先程のスープと比較する事すら烏滸がましいレベルの匂いが噴出。深月と王様以外の皆は足に力が抜ける様な形で膝を着いて口から洪水の如く涎な流れ落ちる。かろうじて大丈夫だった王様もこの威力の前には涎を零してしまった。深月自身も涎を零しているが、構わずに作業を続ける。開封した箱の中には更に箱が入っており、それも開封する事でようやく本命の大鍋が姿を現した。しかし、不思議な事に本命の大鍋を出した瞬間に嵐の様な匂いが収束した

 

「な、何だ・・・?匂いが消えた?」

 

「一体どういう事だ・・・。今までのは錯覚だったのか?」

 

深月は黙ったままハジメ達にタオルを投げ、王様には畳んでいる最高品質のタオルを手渡した。各々タオルで汚れた場所を拭いて清潔さを取り戻させる

 

「では、メインディッシュのスープ以外の物をお出しいたします」

 

食材達は未だ皿の上にすら乗っていないのだ。各々の種類に合う色の皿を取り出し、見目麗しく盛り付けていく。王様は目の前で形作られる料理の様子を真剣な表情をして黙って見ている事に気付いたハジメ達は、少なからず驚愕の表情が浮かび上がっていた

ソースで覆われた肉の皿の端には色の違う三つのソースが彩を豊かにする形で乗せられており、肉に掛かっているソースと混ざり合っていない

 

「料理に名前はありませんが―――『ヒュドラ肉の牛肉包み、変幻多彩のテーマパーク』で御座います」

 

「現代にヒュドラは居ないが・・・そういう事か」

 

王様は深月の手を注視しており、何かを感じ取っていたのか何やら嬉しそうにしている。そんな静かな場をぶち壊したのは遠坂とセイバーの二人だった

 

「ちょっと待ちなさい!ヒュドラ!?今ヒュドラって言ったわよね!?」

 

「ミヅキ、ヒュドラは猛毒を持つ伝説の魔獣です!そんな危険な物は食べられません!」

 

「いやいや、お前等ちょっと黙ってろって。王様はヒュドラを知っている様子だから落ち着いて続きを聞こうな?」

 

二人は、押し黙る様に静かになった事でようやく説明する事が出来る

 

「毒は無効化していますので食べても大丈夫です。お出しする前に動物に食べさせているので確認済みです」

 

「だ、そうだ。セイバーよ、自らを王と謳うならこの程度の事で動揺するなど王にあるまじき反応だ」

 

「なっ!?ぐっ・・・!」

 

何も言い返せない様子のセイバーを見た深月は驚愕していた

 

「えっ?あの・・・彼女が王だったのですか?何かの間違いでは?」

 

「こ奴は騎士王だ」

 

「・・・まともな料理人が居なかったのですね。では、お話を戻させていただきます。王様、何か必要なご質問は御座いませんか?」

 

「いや、何もない。次を何時でも出せる様にしておけ」

 

深月は黙って次のサラダの準備に取り掛かり、王様は金色のナイフとフォークを取り出して肉を切る。スッと抵抗なく切り分けられた肉の断面は、表面はじっくとと程よい加減で焼かれ中はレア状態。これだけでも腕がいい事が分かる。先ずは何も付けず気品ある静かな動きで肉を口の中へ入れ一噛み―――ヒュドラ肉を包む牛肉がスープの風味を溢れさせヒュドラ肉に薄く広がる。多すぎない旨味とヒュドラ肉の旨味の対比が丁度良く、噛む度に肉の味を変化させていくこれは正にテーマパークだ。たった一口でこの飽きの来ない味わいなのに、皿の端には三種類のソースが乗っているのだ

数があった肉は一つ一つのソースを付けて食べても全くの別物で、ソースは混ぜて付けても味わいが違うこの技術は熟練者が使う手の一つだ。手を止める事なく噛み締める様に食べた後、少しだけ顔を上に向けて口から鼻にかけて出て行く匂いも堪能する。正に至福の一時であるが、すぐに顔を下ろして次のサラダへと移る

 

「サラダに関しましては・・・申し訳御座いません。何分と手を加えるよりも生で食べる方が素材そのものの味を楽しめるかと思い切っただけとなります。ですが、味付けは自分好みの調味料を探して頂ければ幸いです」

 

王様は何も言わずサラダに手を付ける。少しだけ落胆した様子だったが、最初は何も付けずに一口入れるとうんうんと一人で頷いていた

 

「この世界に受肉してから早十年と少し・・・神代からどれ程の進化を遂げたのか気になった今の時代、そのどれもが劣る物だった。しかし、よくぞここまで近づけたものよ。明らかに現代の野菜でありながら、神代の物よりは少しだけ劣るが十分な味わいだ。そして、この調味料もいい味を出しておる」

 

王様はただそれだけを言い残して用意したサラダを全て食べ切った。そして、遂にメインディッシュのスープが登場する。白い皿を出した深月だが、ここで王様以外が違和感を持った。あの皿には何も入っていない事に気付き深月に注意を発そうとするが、王様の声がそれを遮った

 

「くっ、クハハハハハハ!フハハハハハハハハ!!」

 

ハジメ達は何を笑っているのか疑問に思っていると、王様が空っぽの筈の皿にスプーンをゆっくりと一掬いしてようやく気付いた。水が滴る音―――、それはスープに他ならない

 

「これ程までに透明なスープは今までに見た事もない。しかし、スプーンを更に近づけた事でようやくその姿が見え隠れする。ここまでの情報量ならばそのまま手を止めなかったが、掬った瞬間に手に圧し掛かるこの重みは・・・そうさな、食材の意思の重みと言った所か。凝縮された食材達が調和しつつも、各々を主張するかの様な激しい争い。これは料理世界の革命と言えるな。このスープ一杯だけで我の最上級の宝物を幾つか手放しても惜しくない代物だ」

 

王様はスプーンをゆらゆらと揺らし、あらゆる情報を体感してから最初の一口を口に含み一噛みして硬直した。まるで自分の動作が信じられないかの様に驚きつつ、飲み込み王様の動きが完全に止まった。まるで息をするのも忘れるかの様に静かで、しばらくその状態が続き不審に思った深月が顔色を窺うと慌てて王様の頬をビンタする

 

「ちょ、深月止めろ!それ絶対不敬なやつだって!?」

 

ハジメが止めようとするも深月がビンタを続けるが王様が一向に目を覚まさず、深月は最終手段として掌底を鳩尾に容赦なく叩き付ける

 

「グハアッ!?」

 

そこまでするとようやく目覚めたのか、王様は咽る。ハジメは、痛そうだなぁ~と思いつつとても心配していた。もし、アニメ通りの設定ならば処刑される可能性もある

 

「王様、此処が何処か分かりますか?」

 

「ぬ?此処は・・・いや、そうか。スープを飲んだだけで気絶するとは迂闊だったな」

 

「あの・・・気絶ではなく心肺停止されていたので気功を打ち込みました。体に変調等はありませんか?」

 

「心肺停止だと?・・・・・くっ、フハハハハハハハハ!そうかそうか!我はスープにやられたのか!だが、二度はない」

 

王様は再びスープを飲む。今度は気絶する事なくじっくりと味わいを楽しみつつ一口、また一口と手が進み全てを飲み終えた

 

「よし、此度の不敬は無しとしよう。そして、そのスープを鍋ごと献上しろ」

 

「封は如何されますか?」

 

「施せ。そのスープを一滴たりとも零すな」

 

「かしこまりました。少々お待ちください」

 

「貴様には後程我の宝物から褒賞を与えよう。何が良いかは考えておけ」

 

この場に居る全員が、「えっ!?」と驚愕の声を上げる。深月は片付けながらセイバーの方に視線を向けると、まるで絶望した様な表情をしていた。恐らく、このスープを飲めるとでも思っていたのだろう。しかし、出会ってからのセイバーの食欲等を観察していたからこそ、このスープを飲ませるわけにはいかない

 

「処理も完了いたしました。後は王様のご判断にお任せ致します」

 

「褒めて遣わそう。そして、貴様は何を欲する?」

 

「今よりも繊細な料理をする為に包丁を望みます」

 

「・・・無欲だな。今は無き鉱石を所望し、そこの仮初の主に作らせても良いのだぞ?あの包丁もそ奴が作り、特殊な鉱石を使用している一点物だろう?」

 

王様の言う事は最もであり、ハジメや皐月に頼めば深月にピッタリな包丁を作ってくれる事間違いなし。だが、それだけは頑なに否定する

 

「報奨を加工したくはありません。ならば、特別な日に使用する実用性のある記念品を望みます」

 

「流石だな。そこなうっかり小娘の俗物的な欲とは違う」

 

「にゃっ!?」

 

遠坂が怒って立ち上がろうとしたが、ハジメが頭を押さえて立ち上がらない様に防ぐ。流石にこの状況で横やりを入れる事は危険だという事を理解している。王様が指を鳴らすと、深月の目の前の空間が揺らいで金色の大きなケースがゆっくりと姿を現し、両手で繊細に支える事でその全体の重みが伝わる

 

「有難き幸せで御座います」

 

深月はケースを開ける事なく魔力糸の布を被せて覆う

 

「確認はせぬのか?」

 

「王様が報奨を騙す事は国の品性を欠如させる愚行―――、高潔な王であらせられる貴方がそれをする事は天地がひっくり返ってもありえません」

 

「そうか。・・・・・貴様とそ奴は世界の異物として認識されている事は知っているな?」

 

王様の言葉にハジメと深月は頷く。何処かしらで世界の修正力が働き、消される可能性もあり得る。しかし、その場合は全力で抵抗する

 

「ならばよい。派手に動く事がなければ抑止が動く事はないだろう。この聖杯戦争が終わる時には帰還の目途も立つ。それに、最早此度の聖杯戦争なぞどうでもよい。我は召使が作る料理を食べながら雑種共の戯れを眺めるだけだ」

 

「王様はこの地に存在する聖杯についてご存じでありながら、もう手を出さないという事でしょうか?」

 

「然り。―――だが、我の食事を邪魔する輩はこの手で屠るというのも一興か」

 

まさかまさか、深月の料理で王様がある意味味方になってしまった。正直言うと、防衛では勝ったも同然である。すると、ピンポーンと呼び鈴が鳴り来客がある事を知らせる

 

「チッ、駄犬か。言峰の命令か?」

 

「てめぇ、殺されてぇのか?」

 

衛宮が玄関先に行くよりも先に、室内にいきなり現れる青い男

 

「ランサー!」

 

「一体何時の間に!?」

 

「令呪による転移か!」

 

今回は流石に襲撃だと判断したセイバー達は、武器を構える。しかし、彼等の首筋ピッタリに武器の刃が押し当てられる事で動きを止めた。王様の武器だと理解したハジメと深月は拍手した

 

「あんたらどっちの味方よ!?」

 

「あん?深月が言ってただろ?此処は料理を食べる場所ってな。きっと王様はその思いを汲んでお前達を止めたんだよ。ってか、室内で武器を振り回そうとすんなよ。何かが割れて食材に混じったら危ねえだろうが!」

 

「そうです。ガラスの破片が野菜に付着したらどうするおつもりですか!知らずに食べたら口の中を切ってしまいます」

 

実際、ハジメ達は遠坂達を裏切ってはいない。今は武器を収めろというだけだ

不満気にしつつも武器を下ろした順から王様の武器が姿を消し、全員が無手になった事でようやく話し合いが出来る。そして、玄関先から戸を引く音が聞こえそちらに目をやると神父が立っていた

 

「これはどういうつもりだ?ギルガメッシュ」

 

「ギルガメッシュって事はバビロニアの英雄王!?」

 

「ようやく気付いたのか、このうっかり娘は。まぁいい、所で何用だ言峰」

 

「貴様は聖杯を完成させるつもりだったのではないか?」

 

「泥を観察するよりも美を食す事の方が有益なのでな」

 

「そうか―――令呪を持っt「无二打」ぐ、ガハァッ!」

 

深月の拳が神父の胸部に突き刺さり、衝撃が背を伝う。一応殺しはしていないが、骨を粉砕する威力は秘められているので神父は地面に倒れる。床に血だまりが出来るが、せっせとビニールシートの上に運んで畳を清潔でキレイキレイする

 

「これで一安心ですね」

 

『いやいやいやいや、何をあっさりと!?』

 

「フハハハハハハハ!言峰綺礼をキレイキレイとは我を笑い殺す気か!」

 

「取り敢えず治療はしますのでお待ちください」

 

再生魔法で神父の身体を再生し、元通りにする。これで神父も深月の戦闘能力が自身よりも遥かに上である事が理解出来たであろう。少しだけ睨むが、諦めたのか溜息を吐いて力を抜いた

 

「それで?今は聖杯戦争の最中だが、お前達はどうするつもりだ?」

 

それは遠坂達に向けての言葉だった。この場には三騎士が集い、前回の聖杯戦争の勝利者のギルガメッシュも居るとなれば、何かしらのアクションを起こすのが普通だ

 

「私達は同盟を結んだのよ。そして、そこに居る中二病とメイドの二人は傭兵という形で雇ったわ」

 

「ほう・・・無関係な者まで巻き込むとは」

 

「と言いながら、ギルガメッシュ王に私達の事を告げ口したのは貴方でしょう?」

 

「・・・・・バレていたか」

 

「バレバレですね」

 

「あんたが黒幕だって言われても不思議じゃねぇ面だな」

 

「ならば、お前達二人は聖杯に何を望む?もし、凛が勝者となったとしてもお前達にも願望を望む権利がある」

 

ハジメはアニメやゲームの知識で色々知っているが、深月は皐月がこのゲームをしているという位しか知らない。だが、そんな深月でもこの地に眠る聖杯が危険物である事を降り立った時点で感じていた

 

「いやいやいや、俺等は日雇いのバイトみたいなもんだから願望なんて何もないな」

 

「まるで汚物の塊と称しても不思議ではないのが聖杯なのですね。願えば破壊一択の願望器を誰が欲しがるのですか?」

 

「深月の清潔で綺麗にはならないのか?」

 

「ハジメさんは誰とも知らぬ汚物の塊に手を突っ込んでまで清潔にしたいとお思いですか?」

 

「・・・・・そりゃあ嫌だな」

 

「結果、誰も欲しがりません。以上で御座います」

 

この聖杯戦争に参加した者達は、深月の言う事を聞いて呆然としたのは言うまでもない。それでも未だ夜は続く―――

 

 

 

 

 

 

 




飯テロ回は筆が乗りますねぇ!
それはそれとして、王様がメイドさんが作る食事を摂る事が決定しました!ドンドンパフパフー
そして、これは"同盟の翌日の出来事"です。あまりにも急展開な出来事は正にイレギュラー!FGOで言うなら特異点発生と捉えられてもおかしくないだろうなぁ






英雄王の舌を唸らせ虜にしたメイドさんの料理。誰もがそこで終わると思っていたが、余計な茶々を入れる黒幕こと言峰綺麗と幸運Eランクのランサーが現れた。しかし、メイドさんの華麗なる無駄のない攻撃により言峰は倒れ伏し降伏した!
メイドさん動きを見た戦闘狂のランサーは心躍るぅーーーー!だが、悪魔が出現し次々と犠牲者が出始めてしまった!唯一倒れなかったのは言峰と主人公だけだった!
次回、悪魔の襲来―――メイドと槍兵の激突!!
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