ありふれていない世界最強メイド【本編完結済み】   作:ぬくぬく布団

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布団「メイドさんの攻撃、それは飯テロ!」
深月「夜食は如何ですか?」
布団「ヤメローシニタクナーイ!」
深月「読者の皆様方、作者に美味しい麻婆を食べさせますのでごゆるりとどうぞ」
布団「ヴェアアアアアアアアアアアア!」







メイドのフラグクラッシャー!~Fate編~

~深月side~

 

聖杯戦争の監督役の言峰綺礼が色々と情報をゲロった今、戦う意味が殆どなくなった。聖杯はアンリ・マユにより汚染されて大量破壊兵器の願望器と成り果て、厄災以外何も生まないという事が分かった為皆が処分について話し合う事となった

 

「取り敢えず、聖杯は破壊って方針でいいんだな?」

 

「そうね・・・十年前の大災害を知っているからこそ、完成された呪いを振り撒くなんて事は絶対に防ぐわ」

 

「って事は、残りのマスター達にも状況を知らせた方が楽だな」

 

計画は後日、日を改めて全マスター達に伝え、それまでは一時停戦という流れだ。だが、従わないマスターが居る可能性もあるのでその場合はフルボッコで戦う事になるので数の有利が取れる

 

「なぁ、金ぴかアーチャーは飯を食ったんだろ?俺にも食わせてくれよ」

 

「ランサー、あんた図々しいわね」

 

「戦わねぇんだろ?だったら、何かしらで発散する他ねぇ。嬢ちゃん達とイチャコラするにしても、もうちっと歳を取ってもらわねぇと俺の好みには合わねぇな」

 

遠坂は、額に青筋を浮かべてランサーを叩き出そうとしたが、この場で臨戦態勢を取った瞬間に深月のハリセンが飛んで来る事を理解していたので留まる

 

「まぁ・・・食事を望まれるのであればご用意しますが、食べたい物はありますか?」

 

「ん?嬢ちゃんのお任せで頼むわ。食えれば何でも御座れだぜ!」

 

「なら、私達もランサーと同じ物を所望します」

 

「そうね、悪いけど私達全員分を用意してくれるかしら?」

 

これには全員がランサーに相乗りする形で晩御飯を要求し、深月としては何も問題がないので了承する

 

「・・・あ、深月。俺には釣った魚を使った日本食で頼む」

 

少しだけこの流れを不安に思ったハジメは、深月が釣りに行った事を踏まえて日本食を注文した。深月は台所に移動して調理を開始、取り出すは"冷凍されて固められた"物だ。中華鍋に入れて十分に温まったら、ギルガメッシュが食べた野菜を少々と"香辛料等"を追加投入する。その作業と並行して行っていた、ラーメン作り。一から作るそれは縮れ麵と、釣り場で三枚下ろしにした魚の骨をベースにしたスープが完成。だが、これで終わりではなく、中華鍋に入ったそれと、魚介スープを混ぜて麺を投入してネギとゆで卵を投入して完成した。尚、ハジメの分は刺身と味噌汁と漬物と白ご飯というシンプルな一品だ

そして、各々の前に運ぶ料理を見たハジメは、達観した目で明後日の方向に向く。深月が用意するご飯は美味しい―――が、"麻婆等の刺激物"に関してはそれに含まれない。事前に察知しなければ後日の排泄に多大なる影響を及ぼすのだ

 

「ハジメさん以外は、麻婆ラーメンです。辛くて美味しいですよ♪」

 

「何で麻婆豆腐とラーメンを混ぜてんの!?」

 

遠坂のツッコミは最もだ。しかし、このラーメンに違和感を持つ事なく、逆に興味を惹かれているのは言峰だった

 

「ほう、私は麻婆にはうるさいぞ?」

 

「私自身が作って美味しいと感じるので大丈夫です!」

 

あまりにも深月が自信満々に宣言するものだからか、ハジメは少しだけ席を外してギルガメッシュに告げ口して絶対に食べない様に注意する。流石のギルガメッシュも普通の色をしている筈の麻婆が劇物に見えているのだろうか、つまみ食いをしようともしないし興味すら湧いていない様子だ

 

「ふむ、確かに美味いな。魚介出汁とは合わないと思ったが、案外相性が良い」

 

「麻婆は美味しいです。ラーメンに合う様に配合を変えたのもいい塩梅ですね」

 

二人が美味しいと言いながら食べている姿を見た皆は、それに何も思わずに啜って口に入れた瞬間、顔面から麻婆の海にダイブして沈む。その光景を見たハジメは、彼等の冥福を祈るかの様に南無と言った。尚、ギルガメッシュは爆笑していた

 

『辛っら!?痛い!!水、水、水ぅぅぅぅーーーーー!げはぁっ!?しみるぅ!?』

 

超激辛料理を食べた芸人の様な反応をする彼等を見る深月は、不満気な反応だ。こんなに美味しいのにと口漏らす程・・・

 

「こればっかりは食えねぇ!ゲッシュで縛られてるが、そんなもん破ってでも食わねえ!」

 

ハジメは天を見仰ぎ、これ以上ない残念な子を見る様な憐れみの視線を向ける。例えサーヴァントがアストラル体で構築されていようとも、サーヴァント並の力を有する魔術師と同等かそれ以上の深月に捕らえられない者は殆どない

 

「聞き捨てなりませんね。この美味しい麻婆を食べれないと?私にお任せと言いながら食べないという事は料理人への冒涜・・・いえ、食材への冒頭です。手足を縛ってでも、皆様に食べさせていただきます」

 

ランサーの肩に乗せられた深月の手の圧力が凄まじく、嫌な予感がしたランサーがブリキの人形の様に顔を後ろに向ける。笑顔なのに目が全くと言っていい程笑っていない深月は、手始めにランサーの手足を縛った。蓑虫の様にグルグル巻きにされたランサーは、表情を引き攣らせ必死に逃れようと体を動かすが必殺仕事人の如くの秘孔刺しが決まり体の自由を完全に奪われた

 

「さぁさぁ、食べましょうね~♪」

 

「そう嫌がるな。麻婆は美味だぞ?初めて食べたから辛いと感じているだけで、慣れれば病み付きになる美味さだ。香辛料もそうだが、野菜の旨味も感じられる逸品は中々に無いぞ?」

 

「止めろー!笑顔でそれが入った物を突き出s「今です♪」ゴァァァァァァァァァーーーーーーー!?」

 

ランサーが叫ぶと同時に、目にも止まらぬスムーズな動きでレンゲを口の中へ突っ込む。痙攣しているかの様にビックンビックンしているが、ゆっくりと一口ずつ口の中へと居れるその姿はまるで拷問管だ。ランサーが自身の麻婆を食べ終える頃には、真っ白に燃え尽きたかの様だ。遠坂達もランサーに気を取られている間に逃げようと試みたが、既に魔力糸によって絡め捕られていた

 

「イヤァァァーーーーーーー!?」

 

「なんでさぁぁぁーーーーーーー!?」

 

「やめろぉぉぉぉーーーーーーー!?」

 

「ぐはぁぁぁぁぁーーーーーーー!?」

 

全員に麻婆を完食させた深月と言峰は、やり切った汗を拭って次の標的に移行する。それは、ハジメとギルガメッシュの二人だ。ハジメが一目散に逃亡するが、事前に逃れようとするのを防ぐ為に逃げれば束縛するトラップにより足首を掴まれて終了。尚、ギルガメッシュも逃亡しようと迎撃を試みたが宝物庫から顔を覗かせた武器達は魔力糸の雁字搦めにより射出すら不可能となった

 

「令呪を持って命ずる。ギルガメッシュよ、私達と共に心行くまで麻婆を食べろ」

 

「おのれおのれおのれおのれぇぇぇぇぇーーーーーーーーーー!」

 

結果―――麻婆に撃沈されなかったのは麻婆大好きな深月と言峰を除いてハジメだけだった。何かと深月の麻婆を食べていたせいなのか、耐性が上がっていた事が幸いした。とはいえ、おかわりは絶対にしない

 

『麻婆・・・まーぼ・・・マーボ・・・・・』

 

壊れたレコーダーの様に無意識で麻婆を呟く彼等の姿は哀れで、言峰はそんな皆を見てこれ以上ない笑みを浮かべる。少しして目をカッと見開いて何かを思い付いたようだ

 

「なるほど、これはギルガメッシュの言う通りだな。聖杯の完成は食の前には無価値・・・ふむ、麻婆を広めて愉悦を見出す事の方が私の幸だな」

 

「麻婆は悪を淘汰し、全を救う最高で最強の料理です!麻婆の沼に浸からせましょう!」

 

「この世を麻婆で染め上げるという事か。麻婆の沼に引きずり込んだ者を媒介として世界中に広がり、支配する。ふっ、これ程までに愉快な事はない!」

 

「では、こちらの香辛料全てをお渡しします。香辛料を一から育てる事によって、より深い愛情を込めて作れます。それを食す事で麻婆信者を増やすのです。最初はそこそこ辛い程度にして、徐々に徐々に辛みを増して病み付きになるように侵食させるのです」

 

「ほう、君は私の愉悦の何たるかを理解しているか。少し前までは他者の苦痛に愉悦を見出していたが、それを破壊という方向に舵を取ればいつか無に帰する。しかし、己が手で三大欲求である食に手を加え永遠の愉悦を見出す。これぞ本物の愉悦!あぁ、そうだ!私は聖職者でありながら他者の不幸を望む異端者だ!だが!だが!!表では相手に手を差し伸べ、裏では愉悦を味わう最高の連鎖ではないか!!少女よ、感謝する」

 

「いえいえ、麻婆を愛する人には手を差し伸べるのは当然の事です。そして、こちらのノートが効率と味を両立させた香辛料の栽培方法を記しています。世界を麻婆に染め上げる先駆者である貴方を応援しています」

 

深月と言峰は、ガッシリと力強い握手をする

 

「対価としては些か不釣り合いだが、この黒鍵と元ランサーのマスターから強奪した現代に残る宝具を授けよう」

 

「ありがとうございます♪」

 

ハジメは表情を引き攣らせた。黒鍵だけでも深月にとって最強の暗器となり、それを複製する事が出来たら・・・大量に持つだろう。黒鍵の無限に近い投擲を思うとゾッとするし、何よりヤバイのは宝具だ

斬り抉る戦神の剣(フラガラック)―――、迎撃礼装と呼ばれる宝具だ。物凄く簡単に説明すると、相手の攻撃を無かった事にしてこちらの攻撃を通すという事・・・とはいえ、これでも分かりにくい。後出しジャンケンに例えた方が分かり易いだろうか・・・。要するに、防御側にとって無敵カウンター攻撃だ

深月の手にフラガラックが手に渡った事で、先程まで麻婆の海に沈んでいたランサーが目覚めた

 

「おい、嬢ちゃん。そいつは俺の元マスターの所有物だ。タダで貰えると思うなよ?」

 

「令呪を持っt「何をどうすればいいのですか?」・・・・・良いのかね?」

 

「しぶとい事で有名な光の御子であるクーフーリン様と手合わせする事で手に入れれるのなら安い物です」

 

急遽決定した深月対ランサーの戦い。これには先程まで倒れていた遠坂達も必死に起き上がり観戦する事にした。場を移動し、衛宮宅の広い庭での戦い。お互いある程度の距離を取って自身の得物を手に持つ

 

「んじゃあ、いっちょ殺るか!」

 

「聖杯が汚物にまみれていますので程々にして下さいね?」

 

ランサーが槍を構えたと同時に目つきが変わった。獰猛な獣の様なそれは、ハジメの背筋を寒くさせるには充分だった。これが本当の英雄との対峙―――。しかも、相手はケルトで大有名な英雄だ

 

「おらあっ!あんな物を喰わせられた恨みだ!」

 

皆が、「あぁそうだよね」と心の中で同じ思いを抱く。如何な英雄であろうと、何でも分解するトータスのクリオネですら暴れてしまう程の代物の前に胃の耐久力が持たない

 

「あんな物ですって!?こうなれば、私が勝てば麻婆丼を食べさせます!」

 

「ふざけんなっ!」

 

ランサーの目にも止まらない連続の突きを、黒刀で槍の切っ先を逸らす事でかすり傷付かず対処する

 

「ひゅう!現代の使用人はここまで強いのか?」

 

「それは深月だけだ!」

 

「そりゃあ惜しいな。後十歳ぐらい歳取ってたら口説いてたのに――――よぉ!」

 

「幸運Eクラスの人に口説かれても断りますよ!」

 

深月とランサーの攻撃の応酬は更に過激さを増すが、どちらも傷付かない。いや、深月が攻撃を流しているだけなのでランサーに傷は付かない

 

「そらそらそらあっ!そっちは攻撃しねえのか!」

 

「もう少し・・・もう少し・・・」

 

ランサーはノリに乗っているのか、攻撃の早さと重さが増していく。遠坂達はランサーの強さに険しい表情をするが、ギルガメッシュだけが笑みを浮かべている

 

「・・・そろそろか」

 

ギルガメッシュの言葉と同時に、深月が持っていた黒刀は弾き飛ばされる。そして、ランサーの突きが深月の心臓目掛けて襲い掛かる。ハジメでさえもヤバイと思い割って入ろうとしたが、槍が胸に当たる寸前で止まる

 

「っ!?テメエ、わざとか!?」

 

「えぇ、単純な突きでしたので掴ませていただきました」

 

ランサーの槍は、刃のない上部を掴まれる事で止まったのだ。ランサーは剛腕であるが、山程の大きさがあるドラゴンを拳一つで浮き上がらせる力をすぐには出せない。一方、先程まで受けだけをして事前準備をしていた深月ならば造作もない事だ

 

「鉄山靠!」

 

「ぐっ!」

 

槍を手放した深月のノーモーション鉄山靠がランサーに襲い掛かるが、流石と言うべきかすぐに槍で防御する。だが、姿勢が悪い為に踏み止まれず数メートル地面を削りながら下がりそこから深月の強襲が始まる。片足のムーンサルトキックでランサーの顎を狙うが、これは槍の持ち手部分でしっかりと抑えられる。視線は深月の攻撃した足だけに集中している事で、支えている足を支点としてスケート選手の様に回転して脇下から黒刀を滑らす

 

「どわぁっ!?なんつー曲芸っ、っ、つうっ、の!?」

 

「まだまだ!」

 

黒刀を上体逸らしでギリギリ躱したランサーは無防備。支点にした足に力を入れて縮地で黒刀を持つ腕を曲げて肘打ちを狙うがランサーの野生的な反射で足で防御される。しかし、防御した事で浸透系打撃による足の筋肉の動きを一時の間鈍らせる事が出来るのだ

 

「槍兵にとって命綱の足を一時的に封じましたよ!」

 

「おいおいおい!どんな観察眼してやがんだ!!」

 

今は黒刀を上に放り投げて視線を逸らさせ、気配を透過と同時に掌底を鳩尾に入れる。横隔膜を麻痺させた事で、ランサーの呼吸まで一時的に封じた。そうすると、ランサーの思考は深月を至近距離から放そうとする

 

「武器使えやぁ!」

 

「私は体術が一番ですから」

 

ランサーは、槍を横に大振りしながらバックステップで距離を取ろうとするが深月の震脚が地面を砕きバックステップを封じる。つんのめったランサーの顔は深月の膝上に丁度よく、膝蹴りで持ち上げて再び鳩尾に正拳突きを叩き込まれた。その速さは音速を超えた拳―――、周囲に波紋の衝撃波を生み出してランサーを吹き飛ばしたのだ。これには流石のランサーも腹に手を当てて痛みを露にしている

 

「何つー拳だよそりゃあ・・・。岩ででも出来てんのか?」

 

「いやですねぇ。私人間ですよ?」

 

皆が、「いやいやいや!?」とツッコミを入れる中、ギルガメッシュは遂に堪え切れられなくなったのか大爆笑してある真実を突き付ける事にした

 

「クハハハハハハハハ!犬は未だ気づかぬか!」

 

「あ"ぁ"?」

 

「クックック、そ奴は神を殺しているのだ。神殺しの武器は見た事はあるが、素手で神を殺す者が居るとは予想出来んか!流石の我も最初に見た時は驚いたがな」

 

「神殺しの拳だと!?」

 

「えっ?私の手は神殺しかの恩恵があるのですか?」

 

「ブッ、クハハハハハハハ!ハーッハハハハハハハハ!己で神を殺しておいてそんな事にも気付いておらんとは愉快よな!まぁ、所詮は下級の神だ。信仰心により神格を得ただけだが、それでも神は神―――。我等神性を持つ者には特段に効くだろうよ」

 

ハジメ以外は、特に驚いていた。しかし、トータスで信仰されていたエヒトは仮とはいえ神の枠組みに入っていた事により、深月が素手で圧倒したりしていた事から概念が付与されたのだ。普通であれば概念に肉体が耐えきれずに自壊するのだが、神代の英雄に匹敵する身体能力を有しているからこそ得る事が出来た力だ

 

「そうか・・・・・嬢ちゃん、名前は何だ」

 

「神楽深月です」

 

「神楽深月、現代に生まれし神殺しの英雄よ。今この時を持ってお前にこの呪槍を放つ」

 

ランサーは槍を構えると同時に槍に魔力を込める。赤い槍から炎の様に迸る魔力は濃密で、何物が邪魔しようと貫くという意思すら感じられる圧を放っている

 

「さぁ、現代に生まれし英雄よ。ランサーの攻撃が試練の一つだ。お前はどこまで乗り越えられる?」

 

先程よりも興が乗っているのか、ギルガメッシュはニヤニヤと笑みを浮かべる。ハジメ達は苦虫を潰した様な表情をしており、試合を止めるタイミングを誤ってしまった事に後悔する。今からでも遅くはないだろうが、それをしたらギルガメッシュからの攻撃が放たれる可能性が大いにあるので見守る他ない

 

光の御子、ランサーの正体はクーフーリン、獲物はゲイ・ボルク。お嬢様が爆死したキャラがこの方の御師匠様でしたね。因果逆転の呪いの槍―――防御しようともそれを避けて心臓を必ず穿つ攻撃・・・厄介どころか死地ですね。ふむ、どうしましょう?・・・方法はあるのですが、これは大丈夫なのでしょうかねぇ?

 

深月はこの攻撃を防ぐ案はある。しかし、それをすれば戦いの名に傷を付ける行為の可能性もあるので容易に決断する事も出来ないでいた。だが、時は待ってくれない

 

「ふぅーーーーー、覚悟完了致しました」

 

「行くぞ」

 

両者共に真正面から踏み込んだ。ランサーは槍を構え、深月は無手のまま

 

「その心臓貰い受ける―――刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

赤い呪槍が深月の心臓目掛けて襲い掛かる。この槍の神髄は心臓を必ず穿つ事もそうだが、一番厄介な点は刃で付けられた傷口が治癒出来ない所だ。心臓を貫かれてもしばらく息をする程度なら生きている人間も居るだろうが、治す事が出来なければ死ぬ。一応の補足としてだが、宝具を展開していなければ傷の治りがかなり遅い程度で済む

 

「それを待っていました!」

 

深月は右手で自分の胸を貫き、心臓を抉り出す。あまりにも常軌を逸したこの行為だが、これでも理に適った対処法でもある。抉り取られた心臓を上に投げる事で、呪槍の軌道は大きくそれて心臓に刺さる。ランサー自身であろうと、一度開放した宝具の効果を捻じ曲げてでも止める事は出来ない。周りは驚愕し、ハジメは「やりやがった!?」と頭を抱え、ギルガメッシュは笑っていた

 

「无二打!」

 

この一撃に全てを注ぎ込んでいたランサーに深月の攻撃を避ける事は叶わず、右肩の骨を粉砕した。深月は心臓が貫かれている事を確認し終えた後、再生魔法で全快して勝負の決着がついた

 

「クーフーリン様はお気付きになられましたか?」

 

「・・・・・あぁ、俺の負けだ。言い訳なんてしねぇよ」

 

ケルト神話で有名なクーフーリンが敗北を認めた。この事実に驚きと喜びを露にする遠坂達と、ますます気に入ったのか笑みを零しながら品定めの様な目をするギルガメッシュ。ハジメは、勝てるだろうとは思っていたが強引過ぎる勝ち方に難色を示されないかが心配だったがそれは杞憂だとちょっと安心した

 

「令呪を持って命じる。ランサー、神楽深月が提供する麻婆丼を完食せよ」

 

「ッ!?」

 

皆がこの戦いに感服する中、言峰による令呪の強制命令が下された。もちろん、逃げる事は出来ないし約束を必ず守らせるという目的もあるが、言峰自身の愉悦を得る為の命令でもある

 

「では、早速作りますね!」

 

速足で台所へと消えた深月を見ながら、言峰以外の全員がランサーに同情する。数分後―――、戦闘の後という事もあってお腹が空いているだろうという深月の心遣いにより、巨大丼に山盛りになっている麻婆丼を見たランサーは、膝を着いて絶望した

 

「さぁさぁ!今回は、"ある程度普通の麻婆丼"ですよ!」

 

「・・・いっそ殺せ」

 

皆が同意見する中、ハジメはある事に気付いた。深月は極端に辛い料理を作るが、常人に合わせた辛さに調整する事も可能。そして、ある程度普通の麻婆丼となれば、地獄の様な辛い麻婆丼ではないだろうとも捉えられる

ランサーは、令呪の縛りもあるせいで逃げられない事に歯ぎしりする。だが、少しして意を決した様に巨大な丼とレンゲを持ち震える手を抑えながら一口―――

 

「何だこりゃ?美味えじゃねぇか!?」

 

皆が驚き言峰は少し残念そうにしていたが深月からすればドッキリ大成功である。夕食で頼む際に、深月のお任せを選んでしまえば最後―――、地獄の様な麻婆が出てくるのは決定している。そして、ランサーにとって幸運だったのは戦闘後すぐだったという事もある。浸透系打撃を腹部に当てた事で、胃にダメージが入っている事は確実だったのでランサーを気遣っての普通の辛さだったのだ

 

「あれ物凄く赤いわよ?辛くないの?」

 

麻婆丼の色は灼熱の様な真っ赤、遠坂が疑問をぶつけるのは必然とも言える

 

「ん?辛いっちゃ辛いが、食べられねぇ辛さじゃねぇよ。寧ろ、もっと食べたいって思う辛さだぜ!」

 

ランサーはガツガツと食べ進め、味が気になったセイバーが横からスプーンを突っ込んで一口食べようとする

 

「おいセイバー、俺の飯だぞ!」

 

「一人だけ美味しい物を食べるのは卑怯です。つまみ食いなら良いでしょう!」

 

セイバーは、強引に掻っ攫った一口を食べた

 

「   」

 

口に入れた瞬間、セイバーは倒れ体を痙攣させて動かなくなった事でランサーの食べる手も止まった

 

「なぁ、普通の辛さって言ってなかったか?」

 

ランサー以外も深月を見て訴えるので、正直にありのままを告げる事にした

 

「"ある程度普通の麻婆丼"と言いましたよ?」

 

「外は普通の辛さでありながら、食べ進めていく事で辛さに慣れた所で、ガツンと響く一品という事か。なるほど、甘い蜜には毒がある。正にその通りだ。ランサー、"手を止めず食べろ"」

 

「ちょ待っ!?ぐぇぁぁぁぁーーーーーーーーー!?」

 

ランサーの手は令呪の命令に逆らえず、止まる事なくランサーの口に麻婆を運ぶ。そして、ランサーも徐々に辛さに慣れてきたという事もあってか、気絶する事が出来ずに悲鳴を上げながら食べ進めるしかなかった

 

「あ、悪魔だ・・・」

 

「ランサーはともかく、セイバーは自業自得よね」

 

こうして怒涛の一日が過ぎ、ランサーが味方になった!

 

「・・・・・どうしてこうなった」

 

ハジメは、アニメ通りの展開にはならなくなった事に頭を抱える。転移した当初はアニメ通りの流れだったが、明らかにおかしくなったのは深月が出かけてからだ。今、この世界の特異点は深月を中心としている事に気付くも、手遅れな状態が胃に痛みを与える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麻婆事件の翌日、早朝から賑やかな衛宮宅に訪れる人が二人居た

 

「おっはよ~士郎!今日もお姉さんのご飯を準備するんだぞ!」

 

「先輩、おはようございます。・・・・・えっ、どうして遠坂先輩がここに

 

「藤姉、桜おはよう」

 

訪れた二人の名は、藤村大河、間桐桜と呼ばれる二人だった。どちらも衛宮と関係者である為、この家に訪れるのは必然とも言える

 

「それよりも士郎~、どうして美少女が三人も家に居るのかな~?お姉さんに素直に教えなさい!」

 

「えっと・・・「初めまして、私の名は神楽深月と申します」」

 

「礼儀正しいわね~。貴女が神楽深月ちゃんね!それt「俺の名前は南雲ハジメ。深月の仮の主だ。まぁ、少しすれば正式な主にもなるがな」はいはい、なるほど!それと、そちらは遠坂さんよね?でも、もう一人の金髪の人は」

 

「私の本名は伏せます。仮名としてセイバーとお呼び下さい」

 

「ふむふむ、訳ありなのね!よし!お姉さんは許す!」

 

「別に藤姉の許可は要らないだろ?」

 

「士郎、甘い!今は詐欺をする人達だって居るのよ?安易に家に滞在を許すのはお勧めできないわ!」

 

藤村の言う事は正しい。この世の中、人の優しさを無慈悲に踏み躙る危ない者も居るのだ。衛宮にはそこら辺の危機感が少ない事にかなり心配する。深月とハジメの自己紹介は自然に終わった為、あまり不自然には思われていないが警戒心は持たれている

 

「衛宮様、こちらは本日の宿泊料金です。食費や生活維持費としてお使い下さい」

 

「えっ!?一人頭一万て・・・一週間って事か?」

 

「いいえ、一日です」

 

「流石に貰い過ぎだろ」

 

「士郎!貰っておきなさい!そして、そのお金で美味しい物を作って!」

 

なんとも食欲に傾いている女性だ。将来が心配になるが、こちらには関係ないので冷ややかな顔でスルーしてもう一人に視線を向けて直ぐに逸らす

 

何か嫌な感じがすると思えばそういう事ですか。心臓付近に異物が住み着き、心臓には汚物の一部がありしたね。これはササっと解決する方が良さそうですね。どうにも、あの女性は衛宮様に好意を抱いているのでwinーwinです

 

深月は台所に戻り、全員分の朝食を用意する。勿論、深月専用のスープも用意し配膳が完了。この時、遠坂は未だ寝ているので起こす事はない

 

「お~!メイドさんが作る料理は洋食ばかりかと思ったけど、立派な和食も作れるのね~!これは味わって食べるしかないわね!!」

 

「いや、藤姉は教師だからあまり時間がないだろ」

 

「はっ!?時間がギリギリ!?くぅ~!急いで食べたくないのに急がないといけないなんてっ!いっただきま~うっま!」

 

「せめてちゃんと言い終わってから食べなよ」

 

藤村は朝食を凄い勢いで食べ終えるとあっという間に出て行った。正に嵐の様に早いそれを見送りつつ、皆も食事を摂る。深月が作る美味しい朝食を食べ進めていると、いきなり間桐が倒れ皆が驚愕する

 

「桜っ!?」

 

「ていっ!」

 

「痛あっ!?」

 

衛宮が慌てて駆け寄ろうとする前に深月が頭上にチョップして動きを封じ、テーブル上の朝食を全て処分してブルーシートを敷いて間桐をその上に移動させる

 

「何するんだ!桜が気絶したんだぞ!」

 

「そうなる様に仕向けたのですよ」

 

「なっ!?」

 

深月は当たり前の様に間桐が着ている制服を脱がしていき、衛宮が視線を逸らそうとしたがハジメが肘打ちして様子を見守らせる事に留める。そんなこんなしていると、遠坂が起きて来たのか、パジャマ姿で登場したが間桐が下着一枚で横になっている事態に一気に目が覚める

 

「な、何で桜が裸になってるの!?」

 

「あら、遠坂様おはようございます」

 

「え、えぇおはよう・・・・・って、そうじゃなくて!どうして桜が下着一枚なの!?それとそこ男子二人見るな!!」

 

衛宮が目を逸らそうとしたが、その前に深月がツッコミを入れる

 

「もしや気付いておられませんか?」

 

「「え?」」

 

衛宮と遠坂の声が被る。何を気付く?間桐に何かが起きているのか?そんな疑問が頭の中でグルグルと回る中、深月がありのままの事実を突きつける

 

「誰かは存じませんが、彼女の神経の一部と心臓は最早人の物ではありません」

 

「どういう事なんだ!?」

 

「先程の言葉の通りです」

 

深月は作業を続ける。間桐の腹部を触診し、針を数か所刺して一息つく

 

「麻酔完了」

 

どこぞの格闘漫画の天才ドクターと同じ事をしている深月にツッコミを入れたいが、今はそれどころではなかった。これから間桐に何をするか分からない二人は深月に注視する

 

「さて、これで汚物の廃棄が出来ますね」

 

「・・・一つ聞くけど、何をするつもりなの」

 

「簡単ですよ?異常のある神経と心臓を抉り出すだけです」

 

深月の言葉を聞いた遠坂は、手を銃口に見立てて深月に狙いを定める

 

「させないわ。桜は魔術師でも、聖杯戦争参加者じゃないわ。それに、人を殺すなんてさせると思う?」

 

「おやおや?まさかとは思いますが彼女が普通の状態とでもお思いなのでしたらとんだお花畑な頭ですね」

 

「なんですって?」

 

一触即発―――火を近付けただけで大爆発しそうなこの雰囲気の中でも構わずツッコミを入れるのがハジメクオリティ

 

「おい、雇い主さんよ。お前はこいつの身体を本当の意味で見た事あんのか?もし、この状況で見ているのにも拘らずその発言をする様なら同盟は破棄したいぜ」

 

まさかの追撃に、遠坂は苦虫を噛み潰したような表情になる。今の状況で安易な考えは身の危険なこの状況を冷静に理解し、溜息を一つ吐いて手を下ろして間桐の身体に目を向ける

 

「分かったわ。少しだけ話を聞いてあげるわ」

 

「話を聞く前提かよ・・・。ちっとは自分で見て判断しろってんだよ」

 

「うぐっ!」

 

ハジメの率直な愚痴は図星であり、遠坂は間桐の身体を見てもあまり違和感を感じていない様子だ

 

「さて、もう芝居はここら辺りでいいでしょう?―――害虫」

 

『ほう、儂に勘付くか。只の人ではないな?』

 

深月がゴミを見る目で間桐を見た時、間桐の口が動いていないのにも拘らず渋く低い声が響いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




フラグ―――、建設しても壊す。それが麻婆!
この世全ての悪の泥?麻婆の海に勝てると何時から錯覚していた?
言峰の心臓?麻婆で侵食した後に再生魔法で治療すれば一発よ!
麻婆の海に沈めるって最高の愉悦だよね!
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