ウィルブレイク   作:公私混同侍

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~ルール⑦~
『インパーフェクト』

相手の山札が0になりカードが引けなくなった場合、自分の山札が1枚以上あれば持ち点に関係なく勝利となる。
このような勝ち方を『インパーフェクト(不完全勝利)』と呼ぶ。


ファースト・レグ・キル

~おもちゃ屋『木人』~

 

是政(俺の貴重な休みがカードゲームごときに使われるなんて最悪だ……)

 

かりん「グリンが遊ぼうって誘ったのになんでおもちゃ屋に来る必要があるの?」

 

グリン「いやぁ『ウィルブレイク』ってさ、ルールが複雑だから少し勉強したいなぁって思ってさ~」

 

是政「学校で勉強しろ。かりんにも言われただろ」

 

かりん「それで詳しい人に聞こうと考えたの?」

 

グリン「違う違う。本を買いにきたんだよ。ルールブックってやつ?」

 

是政「それなら普通本屋に行くもんだろ?こんな認知度の低そうなゲームの攻略本がおもちゃ屋に売ってるとは思えないぞ」

 

かりん「でもこのおもちゃ屋さんて結構マニアックなモノが売ってたりするって噂だよね」

 

グリン「そうなんだよ!ここの木人(ぼくと)おじさんっていう人がスゲェコレクターなんだぜ!」

 

是政「俺とは無縁な気がするが……」

 

かりん「今さら引き返しても空き地ぐらいしか遊ぶ場所ないし」

 

グリン「そうだぜ、一回中に入って見るべきだって。『一見さんお断り』っていう言葉もあるしね」

 

是政「それを言うなら百聞は一見にしかずだろ。お断りしてどうする」

 

かりん「商売にならないよね」

 

 

 

木人「――やあ、いらっしゃい」

 

グリン「おじさん、こんにちは!」

 

木人「おおっ!また見ないうちに大きくなって」

 

グリン「なに言ってんだよ!この前空き地で会ったばかりじゃん!」

 

木人「ぐわっはっはぁーっ!そうだったそうだった!」

 

是政「豪快なおっさんだな」

 

かりん「私、声おっきい人苦手」

 

木人「おや?そこのお二人はグリンのお友達?」

 

グリン「へへっ!そうだぜ!」

 

木人「そうかそうか!遂にグリンにもグッドフレンドができたのか!くぅーッ!」

 

是政「うるさい、帰るか」

 

かりん「うん」

 

グリン「まだ来たばっかだろ!オレたちが来た目的は本を探すため。『ウィルブレイク』の必勝法を知るまでは帰れないぜ」

 

木人「むむむ!『ウィルブレイク』の攻略本を求めて足を運んだと?それは聞き捨てならない。君たちはこの東雲(しののめ)木人に用があるんだね?」

 

是政(しののめ?)

 

かりん「そうだけど、別に私が知りたいワケじゃないから」

 

グリン「是政兄ちゃんの後ろに隠れちゃったよ。おじさんのこと恐がってるみたいだぜ」

 

木人「むむむ!アイムソーリー……」

 

是政「それで本当に攻略本なんてあるのか?」

 

木人「なんだね君!こんなへんぴな場所でおもちゃ屋をやるなんてクレイジーとでも言いたいのか!そんな顔してるぞ!」

 

かりん「うん」

 

木人「もう許さんぞ!君、私と勝負しろ!」

 

是政(なんで俺に対してこんなに怒ってんだよ……)

 

グリン「ヤバイよ、兄ちゃん。おじさん怒らせるとメチャクチャ大変なんだ」

 

かりん「私のせい?どうしたらいいの?」

 

木人「勝てばいいんだ。『ウィルブレイク』を知り尽くした、この私にね」

 

是政「ゲームを知り尽くした人間なんかに勝てるかよ!」

 

木人「なに、勝てば君プレゼントしよう。攻略本は君のモノだ」

 

かりん「ごめんね、お兄さん」

 

是政「やっぱりこうなるのか……」

 

グリン「なあなあ、おじさんの相手オレに任せてくれよ」

 

かりん「ルールを完璧に覚えたおじさんにグリンが勝てるの?」

 

是政「何か勝算でもあるのか?」

 

木人「グリンが相手でも手は抜くのは私のプライドが許さない。いざ尋常に――」

 

グリン「えっへっへ、行くぜぇーっ」

 

 

 

『ファースト・レグ』

 

木人「まずは小手調べだ。私の胸を借りるつもりでかかってきなさーい!」

 

グリン「カードを引くぜ……へっ」

 

是政「今日がグリンの日になればいいが」

 

かりん「もしかしたらグリンは『あれ』を狙っているのかも」

 

是政「『あれ』?」

 

かりん「でも相手のプレイングに影響されやすいから私は好きじゃない」

 

是政「さて、どうなるか見てみるとするか」

 

木人「いいか?真のゲーマーはまず相手の出方を見ているのだ。いきなり手の内をさらすなんて弱点を突いてくれと言ってるようなものだろう?」

 

グリン「うんうん、それで?」

 

木人「オッホン、私は初手で強力なカードは出さない主義なのだよ」

 

グリン「引き直さなくていいのか?」

 

木人「君こそ引き直し方がいいんじゃないのか?ディアーグリン」

 

グリン「恨みっこはなしだからな。後悔させてやる」

 

木人「ふっふっふ、私の初弾は『シューティングスター』。さあ、君の手の内をさらけ出してみるがいい」

 

グリン「えっへっへ」

 

かりん「グリン、ふざけすぎ(また最初に『シューティングスター』出す人いた。でもこの人、私の好きなカードを適当に扱ったから嫌い)」

 

是政「あながちハッタリじゃないかもしれないぞ」

 

グリン「オレはお気に入りで勝負――『レーザーフォース』」

 

木人「はっはっは、パワーで負けてしまったよ。だが、真の勝負はこれから」

 

グリン「『シューティングスター』のスキルはこのタイミングじゃ使えないから、オレは『レーザーフォース』のスキルを使わせてもらうぜ」

 

木人「ス、スキル~?一体、何が起こっているのかな~?」

 

是政「いや、カード読めよ。ちゃんと記されているだろ?」

 

かりん「おじさん、ふざけすぎ。パワーで負けて持ち点を『1点』減らされてるんだよ。それに『レーザーフォース』のスキルで更にもう『1点』。言ってる意味わかるでしょ?」

 

木人「そんなデタラメを言うんもんじゃない!カードはカードだろう!」

 

是政「おっさん、まさかカードの中身を把握しないんじゃ……」

 

グリン「まだまだオレの『レグ』は終わっちゃいない!山札から『エリア』にカードを置く!」

 

かりん「話にならないからさっさと終わらせちゃおうよ」

 

是政「グリンが引いたカードは――」

 

グリン「やったぁーっ!『ギガクラッシュ』だーっ!」

 

かりん「『ギガクラッシュ』の『エリアスキル』は山札から『エリア』に置かれると、相手の持ち点を『1点』減らすんだよ」

 

是政「ということは全部で『3点』減らされてるから持ち点は……」

 

木人「ゼ、ゼ、ゼロォォォッ!?!?」

 

グリン「これが『ファースト・レグ・キル』だぜ!」

 

是政「瞬殺か、『レーザーフォース』の強みを最大限生かした荒業だな。グリンらしい」

 

かりん「でも教えたのは私なんだから感謝してよね」

 

木人「ぐぬぅぅぅ……そんなぁ~大人をからかったりして君たちには罪悪感ってものはないのか~?」

 

是政「そんなこと言われてもな?」

 

かりん「カードを使いこなせなきゃルールを知ってたって意味ないし」

 

木人「だって今まで対人でプレイしたことなかったからね……カードの特徴までは掴み切れなかったんだよ……」

 

是政(何のためのルールブックなんだよ)

 

グリン「おじさん……」

 

木人「私の崇高な志はいとも容易く砕かれてしまった、まさに『ウィルブレイク』」

 

かりん「全然懲りてない。どうする、お兄さん?」

 

是政「約束は守ってもらう。出してもらおうか、『ウィルブレイク』のルールブックを」

 

木人「うー……うわぁぁぁーん!ジュリちゃーん!不良少年たちがパパをいじめるよぉ~!」

 

是政(ジュリ?ジュリってあの――)




~ルール⑧~
『ファースト・レグ・キル』

『レーザーフォース』のスキルを最大限に活用したコンボ。
相手の持ち点を減らせる『エリアスキル』である『ギガクラッシュ』または『ウィルブレイク』を引けば持ち点を『3点』減らせるため勝利が確定する。
但し、相手が『ヘイルマリア』か『シューティングスター』を出さなければまずコンボとして成り立たない上、相手のプレイングに大きく左右されるので実戦向きとは言い難い。

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