本気制限決闘島   作:阿音

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0話の注意書きを必ず読んでからお読みください。
読まずに気分などを害されても自己責任でお願いします。

はい、遅かった言い訳はいつも通りなのでしません。
週一で更新したいのに、気持ちだけで実行できていないので信用無いですね。
10日に1回更新までボーダーを下げるべきか、若干悩み中です。
まぁ、既に10日を超えてしまっているのですけど……

皆さんはキャラクターなんとか機というフリーソフトを知っていますか?
知っているのなら話は早いのですが、簡単に言えばキャラクターの立ち絵を作るソフトですね。
RPGツクールなどで使われたりしていると思います。
それを使って咲良結美、堅守玲、堅守瑞貴を作ってみました。
あくまでもイメージなので、作者の中でのキャラクターとは若干違います。
主に瑞貴が……男性用は殆ど無いですからね、自分の想像とはそこそこ違います。
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=32114669
興味の無い方、自分のイメージを崩したくない方は未開覧を推薦します。
ちなみに……結美はこんなにスタイル良くないよ!


8話【チーム分け】

あー……眠い、昨夜の決闘(デュエル)で遅かったから寝不足だ。

ふぁぁぁ……ん? 外が騒がしいが、どうかしたのか?

なにやらどこかの部屋のドアを叩いているらしいが、俺にまで迷惑だ。

 

ドアを開けて外に出てみると、遊城達の部屋の前になにやら屈強な野郎共が数名

あと、先頭というか、リーダーっぽい女性が1人……はて、誰だったかな?

 

「お前は……堅守瑞貴だな?」

 

「……何か?」

 

はて、俺が呼ばれる理由なんて大量に有りすぎて何故呼ばれたのか分からんな。

大体予想はできるが、当たっていたら面倒だ。

 

「お前を倫理委員会に連行する」

 

…………あ、やっぱり?

素直に倫理委員会に付いていく事にする……前に、着替えとかは当然するけどな。

 

………………

…………

……

 

「「えぇー! 退学!?」」「た、退学?」「退学……」「…………え、私も?」「…………(煩い)」

 

集められたのは6人。

遊城と丸藤、前田、天上院、咲良、そして俺だ。

この6人で同時に呼び出された、その原因なんて簡単に思いつく。

 

『本日未明、遊城十代以下6名は

閉鎖され、立ち入り禁止とされている特別寮に入り込み、内部を荒らした

調べはついている』

 

「なんでも言う事聞くからチャンスく「どうやって?」……え?」

 

『なんですか?』

 

「どうやって、特別寮に入り込んで内部を荒らしたと調べたのかを質問しています」

 

俺の言葉に倫理委員会の女性が少し口を閉じる。

どうやら具体的に調べきっていないと見えるが……

 

「まぁ、入り込んだのは事実ですが

不審人物が現れ、天上院を気絶させ誘拐し、特別寮へと侵入、それを目撃した俺と咲良は特別寮に入りました

自主的に入り込んだのは遊城、丸藤、前田の3人のみ

どんな理由だとしても特別寮に入るのは禁止だと言うのなら、不審人物が入り込まないようにしてほしいですね

具体的に言うと警備を強化したり、島へ入る者の荷物チェックなど」

 

『不審人物? そんな話は聞いていないぞ』

 

俺の言葉に倫理委員会は難しい顔をし始める。

校長も驚いた顔をし、真剣に考え事を始めた。

クロノス教員は顔を青くし、見るからに焦っている……馬鹿か?

 

『た、例えそうだとしテーも、校則違反に違いは無いノーね

ペナルティは与えなければならなイーの!』

 

「だとしても、警備に隙が有ったのも事実では?

これは学園側の責任、不審人物から天上院を助けた事を褒めるべきだと思いますけどね

助けを呼ばず、なにやら洗脳みたいな事をされた身なので俺と咲良も情けない事ですが

自主的に入った3人は俺達3人を助けました、これについての感謝や謝罪は無いのですか?」

 

『しカーし、それでも……』

 

「校則違反とこれは別問題ですよ、クロノス教員

校則違反のペナルティは余程理不尽でなければ素直に受けます

ですが不審人物を追い払い、生徒を救出した者に何も言わないのはどうなのでしょう?」

 

予想外の展開に、誰も話しに付いてこれていない。

馬鹿どもめ……もう少し頭を使え、恩を売ればペナルティは軽くなるんだぞ?

具体的には、校則違反で退学→しかし生徒を救ったのも事実→よって停学ぐらいでは?

という形になる可能性が高い、主に人間の心理的な意味でだけどな。

ま、倫理委員会が人間性よりもルールを重視する場合、このやり方は通用しないがしないよりはマシだ。

 

『ふむ、この話は本当なのですか?

遊城君、丸藤君、前田君、天上院君、咲良君』

 

「え、ほ、本当だぜ!

確かに好奇心であの寮には行ったけど、明日香が捕まってたのは本当だ!」

 

「殆ど気絶していた身ですが、私は確かに誘拐されたみたいです

1度目を覚ました時、知らない男が目の前にいました

また気絶してしまい、気がついた時には外に出ていましたけど……」

 

「天上院さんが誘拐された事は目撃しました

それで堅守瑞貴と天上院さんを助けようとしたのですが

情けない事に、何かされたみたいで記憶が曖昧で……」

 

遊城、天上院、咲良が校長の質問に答える。

丸藤は緊張、前田は遊城が言ったので言うことを無くしてしまったらしい。

 

『そんなの、辻褄合わせを相談しただケーで……』

 

「ちなみに俺と咲良は天上院が特別寮を調べているらしいと知った為

本当かどうかを確認する為に特別寮へ行きました

天上院は特別寮の周りを散策するだけで、中に入ろうとはしていません

帰ろうとしていた所へと不審人物が現れ、天上院を誘拐していきました」

 

詳しい状況説明までしたんだ。

ここまで言われ、辻褄合わせだと簡単に言えるはずが無い。

そして甘い校長の性格を考えれば……

 

『確かに校則違反はいけない事です

ですが、生徒を救ってくださったのは事実……

本当にありがとう遊城君、丸藤君、前田君

そして学園の警備の薄さで大変迷惑をかけてしまった

本当にすまない天上院君、咲良君、堅守君』

 

校長は心から真面目な顔をし、深く頭を下げる。

慌てるのはクロノス教員、遊城達を悪くするはずが学園が悪い事へとなっていたのだ。

当然困るし、どうすればいいのか頭を悩ませる。

 

「いや、校則違反しちゃったのは事実だし……

俺もごめんなさい、もうしないようにする」

 

「ぼ、僕も!」

 

「俺もなんだな、ごめんなさい」

 

遊城達も反省する。

 

「すみませんでした」

 

「ごめんなさい!」

 

「校則違反についてはこちらも悪い事をしました

この件について、こちらも悪いので反省しておきます」

 

天上院、咲良、俺も謝罪。

全員が反省をし、謝罪までした。

さてと……クロノス教員、何かできるかな?

 

『……反省をしている所申し訳無いが、校則違反のペナルティは与えられる

学園の警備などは我々も深く反省しておき、二度と同じ事が無いようにしよう』

 

倫理委員会の女性も素直に頭を下げる……真面目な人間のようだ。

まぁこれで、再び誰かを呼び寄せるなんて手段を使えなくしておいた。

クロノス教員もこれで下手な事はしないだろう……多分。

 

『しかし、我々の不始末を片付けてくれたのも彼らです

突然退学というのはどうかと……』

 

『確かにそうですね、どうしますか?』

 

『な、ならば別のペナルティの方法を提案すルーの!』

 

自分の目的の話題になったらしく、クロノス教員が水を得た魚のように元気を出した。

さてはて、原作の流れは咲良から聞きだしているから知っているが……

現在俺達は6人、タッグでは人数がごちゃごちゃになってしまう。

 

『それは、制裁タッグ決闘(デュエル)!』

 

「制裁……」「タッグ」「決闘(デュエル)?」

 

遊城達、お前ら息がピッタリだな。

 

『その通ーり!

君達6人で3組のタッグを作り、決闘(デュエル)をすルーのね

決闘(デュエル)に勝利したら無罪放免なノね』

 

「タッグ決闘(デュエル)か……おもしろそうだな」

 

「俺はシングルを望みたい」

 

『む……』

 

俺の言葉にどういう事かと睨んでくるクロノス教員。

他の奴らも俺が何を言うのか気になっている。

 

「こいつは弱すぎてタッグを組むと負ける

だからシングルにしてほしい」

 

「んな……俺達が弱いって!?」

 

「昨夜の決闘(デュエル)で僕達に負けたのはどこの誰ッスか!」

 

「負けてやったに決まってるだろうが……堕天使ゼラートの効果、教えてやろうか?

手札の闇属性モンスターを1枚捨て、相手の場のモンスターを全て破壊する

そしてこの効果を発動したターンのエンドフェイズ時、このモンスターは破壊される

あの時、俺の手札には暗黒魔族 ギルファー・デーモンが破壊された時

万魔殿《パンディモニウム》-悪魔の巣窟-の効果で手札に加えたモンスター……闇属性のミストデーモンが有った

手札交換もしていないし、捨ててもいない、つまり間違い無く手札に闇属性モンスターが存在した

だが、俺があの時に何をしたか覚えているか?」

 

俺の言葉を聞き、考える遊城達。

咲良は俺の言葉を聞き、呆れている。

 

「(まさか、この時これを言う為だけにあんな事を?)

堅守瑞貴はマッド・デーモンを召喚し、デーモンの斧を装備させて攻撃した

もしミストデーモンを堕天使ゼラートの効果で墓地へ送っていた場合

場のスチームジャイロイドとサブマリンロイドは破壊され、場にはカードが1枚も無い状況になっていた

そして結城君達の残りライフは1500、堕天使ゼラートの攻撃を防ぐ手段は無い

例え防げたとしても、マッド・デーモンを召喚されて再攻撃を受けていれば終わり

もしミストデーモンを捨てなくても、マッド・デーモンも闇属性モンスター……堕天使ゼラートのコストになれる

堅守瑞貴が自ら負けなければ、あの決闘(デュエル)で勝っていたのは私達」

 

咲良の俺へのフォローという名の事実に絶句する遊城達。

まさか実力で勝ったと思ったら、本当は負けていた……弱いと思われても仕方無いだろう。

それを調子に乗って、自分達に負けたのはどこの誰かって? お前らの負けなんだよ。

 

「まぁ、他にも態と変なプレイングをした時は何度も有ったけどな」

 

「インフェルニティ・バリアを伏せなかった時は驚いた

自分の場に攻撃表示のインフェルニティが存在し、自分の手札が0枚の場合のみ発動できるカウンター罠カード

相手が発動した効果モンスターの効果・魔法・罠カードの発動を無効にして破壊する

態と伏せなかったんでしょ? 伏せていたら強欲な壺やミラクル・フュージョンを無効にできたし

それにヘイト・バスターの効果対象、シャイニング・フレア・ウィングマンじゃなくてテンペスターにしていたらすぐに破壊できたし

ギルファー・デーモンの生贄を別モンスターにしていたら伏せていたインフェルニティ・リフレクターを使えていた

自分の場のインフェルニティと名の付くモンスターが戦闘によって破壊され、墓地へ送られた時

手札を全て捨て、破壊されたモンスターを蘇生して相手に1000ポイントのダメージを与えられる

インフェルノクインデーモンの効果で攻撃力を上げたインフェルニティ・デーモンの攻撃力は2800

もし生贄にせずに場に残し、インフェルニティ・バリアを発動してミラクル・フュージョンを無効にしていたら

遊城君は何もできずにエンドフェイズ、次のターンに攻撃力を上げてテンペスターと相打ちをしてインフェルニティ・リフレクターを発動

相手に1000ポイントのダメージに追加してバトルフェイズ中の蘇生で攻撃が可能で再攻撃ができた

他にもテンペスターで攻撃されたのなら、その時にヘイト・バスターを発動できていた

その場合、テンペスターの攻撃力である2800のダメージ、更にこちらの総攻撃で終わり

堅守瑞貴が本気で勝つつもりだったのなら、あの次のターンで終わっていた」

 

こいつ、俺のフォローをしたいのか遊城達の傷を抉りたいのか、どっちだ?

おそらく事実を指摘しているだけのつもりなのだろうが、完全に固まっているぞ?

事実だから俺からは何も言わないがな。

 

「咲良が俺の言いたい事を殆ど言ってしまったが……理解したな?

そういう訳で、シングル戦をしたい」

 

『そ、そうなノーね?

どどど、どうしましょ?』

 

決闘(デュエル)の途中経過しか分かりませんが……』

 

『それでは他の者と公平になりません

彼にもタッグを組んでいただきます』

 

『……だ、そうです』

 

「わかりました」

 

校長だけなら楽そうだったのだがな。

さすがに倫理委員会から許可を得るのは難しいか。

 

「タッグ決闘(デュエル)か……燃えるぜ!」

 

「アニキったらそんなお気楽な……」

 

「十代らしいんだな」

 

「ふふ……」

 

ほのぼのしている空気で悪いのだが、お前ら状況を理解してるか?

下らない事ばかり話していると負けるぞ?

 

『校長、本人達も納得したみたいでスーの!』

 

『ならいいでしょう

負ければ退学……は、やり過ぎですね

停学処分が妥当でしょう』

 

『決まりなノーね、負けたら停学処分!

制裁タッグ決闘(デュエル)の対戦相手は、追って私から発表すルーのね!』

 

楽しくなってきたし、さてはてどうするか……

停学処分なんてお断り、停学処分を受けたなんて知られたら就職に影響が出る。

まぁそこまで調べたりしないだろうが、無いに越した事は無いからな。

 

………………

…………

……

 

「それで、どんな組み合わせにするんだ?」

 

「僕なんかじゃダメだぁ!

どうしよう、どうしよぉーーー!」

 

「お、落ち着くんだな翔

退学処分にならなかっただけ良かったと思うんだな」

 

遊城達3人は相変わらず。

 

「うーん……」

 

「天上院さん、何を悩んでいる?」

 

「私は誰と組むべきかって考えているのよ」

 

「デッキ相性だけを言えば遊城君?

だけど機械族デッキと獣族デッキだと相性が悪いし……

戦士族と獣族、戦士族と機械族……どっちもイマイチ?」

 

咲良は天上院と話し合い。

誤算だったのは退学処分でも良かったのだが停学処分に落ち着いてしまった点か?

咲良が負けてくれれば色々と楽だったのだが、まぁそこは妥協しよう。

咲良が持ってくる厄介事も、面倒だが楽しいといえば楽しいしな。

 

「堅守瑞貴、誰と誰で組めばいいと思う?」

 

「……別に誰でもいいだろ

俺は自分が負けなければなんでも構わん」

 

「相変わらずそんな言い方……」

 

「分からないなら試せばいいだろうが

適当にタッグを組んで決闘(デュエル)をすればいいだろう?

人数は居るんだ、タッグ決闘(デュエル)の練習ができる人数だぞ」

 

こいつらと練習なんてするつもりなんて無いがな。

デッキ内容さえ見れば誰とでも組めるデッキは作れる。

咲良はデッキを複数持っているから若干悩むが、問題は無いだろう。

 

「で、そう言う貴方は誰とタッグを組むの?」

 

「誰でも構わん、興味が無いね

誰と組んでも何も変わらないからな」

 

「大した自信ね」

 

勘違いされているな。

 

「デッキ相性、手札事故、プレイミス……いくらでも状況は変わる

それを少しでも抑える為にデッキ内容を考えるんだろうが

これは誰と組んでも変わらない、当然だろう?」

 

何より、弱みなんて見せたくない。

これぐらいの余裕を見せていなければ俺と組まれた時に緊張されても困る。

例えるなら、ずっと頭を抱えている丸藤みたいな奴だな。

 

「断言できる貴方が凄いわ」

 

「天上院さん、女子同士で組まない?」

 

「私は構わないけど……みんなは?」

 

天上院と咲良が組むのか?

問題は有るだろうが、他を考えると……

 

「デッキ相性から考えて却下するべきだろうな」

 

「天上院さんに合わせたデッキを使うだけ」

 

「それ以外は? 俺も相方に合わせればいいが、残り1組が酷くなるぞ?

遊城は戦士族の【E・HERO】、丸藤は機械族の【ロイド】、前田は獣族の【コアラ】

この3人は殆どデッキシナジーが無い」

 

「なら天上院さんと結城君で戦士族コンビ

丸藤君と前田君は私達の方がデッキを合わせるという事?」

 

「ベストとは言わんが、ベターだろうな」

 

まぁだからと言って、誰と組みたいかと問われれば難しい問題だ。

この中で俺が組むとして、誰が戦いやすいか……

あまりしたくは無いが、咲良と組めば楽だろうな。

 

別に他が負けても何も問題は無いんだし、それで推してみるか?

咲良が煩そうだが、黙らせる為の手段はいくらでも浮かぶ。

だがそれ以上に楽しそうな事はいくらでも有る。

 

「お前ら、別に誰と組んでも構わないだろう?」

 

「俺は誰とでもいいぜ!」

 

「それはちょっと……」

 

「どうしようかなぁ?」

 

「私は誰でも構わないわ」

 

「私は誰とでもはちょっと……」

 

遊城と天上院は問題無し、前田は若干悩み中、咲良と丸藤は希望が有るか。

ならこの場合、誰が誰と組むか簡単に決められるな。

 

「では遊城は天上院と

前田は俺と、咲良は丸藤と組むが問題は全く無いな」

 

「問題しか無い!

丸藤君とタッグなんてお断り!」

 

「即答!? しかも酷い!」

 

「覗き魔となんて絶対に嫌!」

 

「だからそれは誤解だって!

それにそっちはストーカーじゃん!」

 

「堅守瑞貴の嘘を信じるな!」

 

咲良があの件以来、丸藤に嫌悪感を持っているのは知っていた。

若干予想以上だが、問題は有るだろうが楽しそうだから俺的にはOK。

というか咲良、そこまで覗かれたのがショックだったのか?

 

「それに……」

 

咲良が俺の横に来て小声で話しかけてくる。

 

「十代と翔がタッグを組まないと原作通りにならない

その決闘(デュエル)が切欠で翔の心が強くなった

できるだけこの流れを変えたくない」

 

なるほど、それも有るだろうが単純に丸藤を嫌がっているだけだろ?

それぐらいは見れば分かるのだが、他に気付いている奴が居ないな。

丸藤は覗きの件を出されて怒っているし、遊城と天上院はタッグ決闘(デュエル)で相談中。

前田は丸藤の態度を苦笑いで見ているだけで、咲良の感情には気付いていないようだ。

 

「……まぁいいだろう

お前が理由を付けて、なんとかそれを押し通せよ?

俺は俺で案を言ったからな」

 

「くっ……」

 

そこまで考えていなかったらしく、顔を歪ませて苛立ちを隠そうとしない。

俺がお前の面倒まで見るはず無いだろう?

何より、俺の案で通した方が俺が楽しいのだからな。

 

「タッグの組み合わせだけど、私の案を言ってもいい?」

 

咲良の言葉で全員が咲良の方を向く。

さて、どんな言い訳を使ってくるのか楽しみだ。

つまらなかったら俺がその言い訳を叩き潰してやろう。

 

「遊城君と丸藤君は兄弟分、ならその2人でタッグを組んだ方が息を合わせやすいと思う

前田君はあまり授業に出ていなかったはず……実力の高い堅守瑞貴と組んだ方がなんとかなる

天上院さんは私と組んで、実力は(あまり信用できないけど)高いから戦いやすそう」

 

まともだがつまらんな……潰してやろうか?

どんな組み合わせにしてやろうか悩むな。

 

「あー! こんなに考えるんだったら1回全部組み合わせて決闘(デュエル)しようぜ!

そうすりゃ相性なんてわかるだろ! それでいいだろ?」

 

頭を使う事を嫌う遊城の大声で場が静まる。

言っている事は確かにその通りなのだが……

 

「それは5回も決闘(デュエル)をするという事か?

さすがに面倒だからお断りしたいのだが?」

 

「面倒って……」

 

「だけど十代の言う事も尤もじゃない?

組み合わせはいくつも有るのだし、試しておいても損は無いわ」

 

天上院まで援護してきやがった。

その試す事が面倒だから断っているんだろうが。

 

「俺は抜けるぞ?

誰と組んでも合わせるデッキを組むだけだからな」

 

「慣れないデッキを使って大丈夫なの?」

 

「俺はこの学園に来て、1度も同じデッキを使っていないが?

似たデッキは使っても、戦い方が全く違うデッキを使っているし」

 

エクゾディアとかな……この前は戦うエクゾディアパーツのデッキだったし。

ドローして揃える、ロックして揃える、自分のデッキを破壊して墓地回収をして揃えるなど。

エクゾディアを揃えるにも全く違うデッキを使うからな。

 

「なら堅守瑞貴、組み合わせを試す為に相手になって」

 

「全組み合わせを試す為に10回も戦えと?

余計に面倒だろうが、それは……」

 

「なら1人2回、5戦だけ

残りはこちらでしておく」

 

5戦も十分多いぞ?

組み合わせを考える事にも飽きてきたし、後は押し付けるのも有りか?

まぁ面倒とはいえ、全員を叩きのめしておくのも有りかもしれないな。

先に心を折っておいても損は無いか……今後、俺に逆らわせない為にも。

折れそうに無い奴が居るが、そいつは最初から諦めておいてもいいだろう。

 

「仕方無いから妥協してやろう

俺が1人で2つのデッキを使うが、構わないだろう?」

 

「……【フルバーン】は使わないように」

 

「チッ」

 

手札が10枚有ればライフを8000削る事ぐらいできるのだがな。

まぁいいだろう、咲良の言う事が正しければ……ならあのデッキにするかな?

 

「ルールはライフは共通で8000ポイント、場、墓地、除外は全員共通で通りモンスター、魔法・罠5枚まで

手札、デッキに戻るカードはそのターンプレイヤーの手札やデッキに戻すので決闘(デュエル)後に注意

ターン順は自分→相手A→相方→相手Bの順番で進行……質問は無いな?」

 

特に問題は無く、全員が頷く。

 

「では少し待ってろ、デッキを組んでくる

そっちは俺との2戦で誰と誰で組むか相談しておけ」

 

少し離れ、5つのデッキを組み始める。

さーてっと……動かし方を考えないとならんな、どうやってデッキを回そうか?

 

――――――――――――――――――――

 

「誰と誰で組む?」

 

「2戦かぁ……」

 

誰と誰で組めば相性が良いのか悩む。

私は明日香以外とはあまり組みたくないのだけど、この中からだと……

 

「私は天上院さんと組んでみたい

もう1戦の希望は……丸藤君以外なら誰でもいい」

 

「ま、まだ言うのぉ?」

 

覗き魔とはお断り。

 

「手っ取り早く決める為にも出た案でさっさと決めましょう

私は咲良さんと……さっき案に出たし、十代と組もうかしら?」

 

「なら俺は翔と組もうかな?

これで俺は決まったな」

 

「じゃあ俺は翔と咲良さんと組むんだな

これで全員決まったぞ」

 

十代&明日香、明日香&結美、結美&隼人、隼人&翔、翔&十代

これで5戦でのチームが決まった、後は堅守瑞貴がデッキを組んでくるまで待つだけ。

どんなデッキを使ってくるのか……タッグ戦に特化したデッキだと思う。

【フルバーン】は止めるように言ったし、舌打ちをしていたけど多分使わない。

 

可能性が高いと予想するのは、両方が同じテーマにする事で格段に強化されるデッキ。

墓地のワイトが増え、ワイトキングが強化される【ワイト】の可能性が高そう。

似たような理由で【ハーピィ】、神竜-エクセリオンも墓地に同名モンスターが存在すれば強化されるモンスターだし

封魔の伝承者なんて墓地に5体存在すれば……6属性中5属性を攻撃時限定とはいえ一方的に倒せる凶悪モンスターと化す。

チェイン・スラッシャーなんて合計で6回も攻撃できてしまうモンスターにまで……攻撃力が上がれば恐ろしい。

 

モンスターではなくても凶悪なカードは複数存在する。

ゴブリンのやりくり上手を使われれば6枚ドローから1枚デッキ戻しで、5枚もの手札増強。

もし墓地に2枚のゴブリンのやりくり上手が存在していて、4枚を同時発動から非常食を使用した場合。

7枚ドロー1枚デッキボトム×4で28枚ドローから4枚デッキ戻しで24枚もの手札増強に……なにそれこわい。

そこまではしないと思うけど、彼はあの堅守瑞貴……断言ができない!

 

暫く待つと堅守瑞貴が戻って来た。

どんなデッキを組んだのか……訊く事が怖い!

 

「デッキが組み終わった、始めるか

最初は誰と誰だ? 希望が無いのなら俺が指名するが」

 

「なら俺が最初だ!」

 

立候補したのは十代、だけど翔はやる気がイマイチ……先にさせるべき?

後にすれば堅守瑞貴の戦い方を見て更にやる気を無くしてしまいそう。

 

「相方は?」

 

「私と翔君よ」

 

「なら丸藤が先だな」

 

「僕!?」

 

同じ事を考えたのか、堅守瑞貴は翔を指名。

渋々と前に出てくる翔、そしてやる気満々な十代。

 

「さっさと始めよう」

 

堅守瑞貴は両手に決闘盤(デュエルディスク)を装着して2人分を使うらしい。

やりにくそうだけど、本人がいいのなら気にしない。

他の人にさせればいいのに……

 

決闘(デュエル)!」「決闘(デュエル)」「決闘(デュエル)……」

 

十代……元気だなぁ。

 

「先攻は俺が貰おうか、ドロー

自分の場にモンスターが存在しない場合、太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)は特殊召喚できる

俺はこの効果により、手札から太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)を特殊召喚する

この効果で特殊召喚した場合、元々の攻撃力と守備力は半分となる

更にこのモンスターは場に1体しか存在できない」

 

青い船体に、上下に帆が付いているというなかなか不可思議な構造をした船。

元々のステータスは攻撃力800の守備力2400、半減して攻撃力400と守備力1200まで下がる。

シンクロもエクシーズも無いこの時間軸でこのモンスターをどう使うつもりなのだろうか?

 

「永続魔法、アドバンス・フォースを発動

自分がLV7以上のモンスターを生贄召喚する場合、LV5以上のモンスター1体で召喚ができる」

 

「……つまりどういう事だ?」

 

堅守瑞貴の言う事を理解できない十代。

あんなカードを使うという事は……あのデッキは最上級モンスターを中心としたデッキ?

でもあの堅守瑞貴が普通に通常召喚するデッキって、どんなデッキ?

 

「見て理解しろ

アドバンス・フォースの効果により、俺は手札のLV7以上のモンスターを生贄1体で召喚する

俺は太陽風帆船(ソーラー・ウィンドジャマー)を生贄にし、LV7の水魔神-スーガを召喚する」

 

……え? 水魔神? え? え?

ちょ、待って、何故? どうして?

 

「いきなり攻撃力2500のモンスターか……やるな!」

 

「うぅぅ……どうしてこんなに簡単に最上級モンスターを召喚できるのさ」

 

も、問題はそこじゃない! そこじゃない!

どうしてそのモンスターをチョイスしたのか、それが最大の問題!

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

青色の、額に水の文字を持つ三魔神の1体である水魔神-スーガ……

十代は興奮、翔は相変わらずやる気が出ない。

だけどターンは進行する、頑張ってもらいたい所。

 

「僕のターン……ドロー

僕はジェット・ロイドを守備表示で召喚して、ターンエンド」

 

赤いボディのデフォルメされたジェット機のモンスター

確か効果は攻撃対象にされた時、手札から罠カードを発動できるカード。

弱くはないけど、強いとは言い切れないという、若干微妙なモンスターかな?

 

「俺のターン、ドロー

手札のカードを1枚墓地へ送り、手札に存在するLV5のモンスター、THE トリッキーを特殊召喚する」

 

顔に?を貼り付けた、黄色がメインカラーと思われる道化師のようなモンスター

まさかもう2体目が……

 

「更にゼンマイソルジャーを召喚する」

 

V字型の頭部で背中にネジ巻き用の部品まで装着された、玩具のようなモンスター

だけど機械族じゃなくて戦士族、黄緑と白のカラーなのだけど……ゼンマイソルジャー?

THE トリッキーを生贄にすれば……あ、手札に三魔神が入っていない?

 

「永続魔法、進撃の帝王を発動

このカードが存在している限り、自分の場に存在する生贄召喚に成功したモンスターは

カード効果で破壊されず、カード効果の対象とならない

デメリットとして、エクストラデッキからモンスターを特殊召喚できないが……問題は無い」

 

大体あのデッキが読めてきた。

あのデッキはアドバンス・フォースをメインにした【アドバンス召喚】

そしてアドバンス召喚に成功したモンスターに関係するカードを多用しているはず。

欠点は条件付き特殊召喚モンスターが多そうだから、場に左右される点?

だけど、それはレベル操作ができる下級モンスターを採用すればいいだけだからそれほどでも無い。

下級モンスターを採用時は最上級モンスターの展開が遅れる点が欠点か?

 

【冥界軸最上級多用】デッキに比べて手札を稼げない事が辛いけど。

アドバンス・フォース以外に必要なカードは殆ど存在しない点で優れる。

けど、お互いに優位な点が有るからどちらの方が強いとは言えない。

必要カードが少ない点でアドバンス・フォース、手札アドバンテージの冥界の宝札。

今回の堅守瑞貴のデッキは、アドバンス・フォースをメインとした【三魔神】デッキ。

 

「バトルフェイズだ

THE トリッキーでジェット・ロイドに攻撃」

 

トリッキーはカードを持つような動きをし、何かを投げるような動きをする。

だけどその手には何も持っておらず、何をしたのか……

 

「ジェット・ロイドの効果発動!

このモンスターが攻撃対象となった時、手札の罠カードを発動できる!

僕は手札の罠カード、聖なるバリア-ミラーフォース-を発動!

相手の攻撃宣言時、相手の攻撃表示のモンスター全てを破壊する!」

 

これなら進撃の帝王の効果で守られたスーガはともかく、他の2体のモンスターは破壊できる。

ライフを減らさないまま、十代のターンに回せた事は大きい。

 

「カウンター罠、オーバーウェルムを発動

自分の場にLV7以上の、生贄召喚に成功したモンスターが存在している場合に発動できる

罠カード、または効果モンスターの効果の発動を無効にし、破壊する

このカードの効果により、ミラーフォースを無効にして破壊」

 

「えぇ!? そんな!」

 

ジェット・ロイドの効果は永続効果だから無効にできない。

だけど、ジェット・ロイドの効果で発動した罠カードは無効にできる。

やっぱり生贄召喚に成功したモンスターのサポートカードを入れていた……

 

「ミラーフォースの効果は無効となり、トリッキーの攻撃は続行する」

 

トリッキーの投げた何かはジェット・ロイドに当たったらしく、ジェット・ロイドが仰け反る。

そしてジェット・ロイドの周りに強烈な風が巻き起こり、ジェット・ロイドは破壊された……

多分、風でできたカード状の何かを投げつけ、当たった相手の周りに風を起こす攻撃?

風属性・魔法使い族らしい攻撃方法だと思う。

 

「さて……ゼンマイソルジャーで直接攻撃(ダイレクトアタック)

 

ゼンマイソルジャーの発条が少し回転し、ゼンマイソルジャーが動き出す。

腕を前に突き出し……ロケットパンチ!?

戦士族なのに機械族みたいな攻撃方法ってどうなの!?

ま、まぁとにかく1800のダメージで残りライフは6200。

 

「水魔神-スーガで直接攻撃(ダイレクトアタック)

 

「うわぁあああ!」

 

スーガから吐き出される水流で大ダメージを受ける翔。

残りライフは3700と、既に半分を切っている。

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

この状況で、既に勝つ事は難しい。

次のターンでなんとか凌がなければ……勝つ以前に終わってしまう。

 

「う、うぅぅぅ……」

 

そもそも、勝つ負けるという問題ではなかったらしい。

翔がもう泣いている……昨夜は頑張っていたけど、単に夢中になっていただけか。

それとも助けようとする使命感なのか、はたまた他の何かなのか。

どんな理由にしろ、今は既に戦意喪失なので使い物になるかもわからない。

 

「やっぱり僕なんかじゃアニキのパートナーなんて無理なんだ……」

 

「そんな事は無いぜ翔! まだ少しやられただけだろ!

決闘(デュエル)はまだまだこれからだぜ!」

 

十代の言葉に、少し顔を上げる翔。

十代は人を元気に与えられる人間、彼のような人に励まされれば大抵の人は元気が出てくる。

彼ほど毎日元気でやる気に満ちている人は、殆ど存在しないのだから当然とも言える。

 

「別に諦めてもいいけどな

俺が楽になるし、無駄な時間を減るからな」

 

「っ!」

 

逆に、ここで酷な発言をするのも堅守瑞貴らしいと言える。

彼は人の心を折り、やる気を削りきる事を得意としている。

彼ほど人の気持ちを平気で折るような人も、同じく殆ど存在しないと思う。

 

「瑞貴、お前!」

 

「名前で呼ぶなと何回言わせる気だ、お前は?

事実だ、やる気も無い奴の相手をしてやるほど、俺は暇ではない、あぁ暇ではないとも

こんな決闘(デュエル)をしている時間が有ればデッキを5個は組めるのだからな」

 

「くっ……くぅっ!」

 

段々と涙を瞳に浮かべだす翔、だけど堅守瑞貴に容赦という言葉は存在しない……多分。

前回の決闘(デュエル)を考えると、容赦ぐらいは持っている気がする。

だけど結局心を折るような事を言ったから……やっぱり容赦なんて存在しない!

 

「まったく、逃げるのならさっさと逃げろ、邪魔だ

そんな態度ではお前と組む相手が哀れで可哀想で同情してしまいたくなってしまうだろうが

パートナーを失望させたくなければ、僅かにだけでもやる気の1つでも見せたらどうだ?

もっとも、やる気を出した所で勝てるかと問われれば、全く無関係としか言えないがな」

 

励ましているのか気力を折っているのか全く判らない……とは、端から見た時の言葉なのだけど。

この言葉を受けた本人からすれば、今の言葉は完全に心を折られてしまう。

 

「そうだよね、僕なんかがパートナーじゃ相手が可哀想だよね……」

 

完全に泣き、戦意なんてどん底以下にまで落としてしまう。

後ろを向いて走りだそうとし……

 

「ふざけんな!」

 

十代の声で、足を止める。

 

「ふざけていない、事実だ」

 

「事実なんかじゃない!

翔と組む相手が哀れで可哀想で同情してしまうだと? パートナーが失望するだと?

馬鹿にすんな! 俺が翔に失望なんてするもんか! 同情や哀れみなんて真っ平だぜ!

決めた、残りの決闘(デュエル)なんて関係ねぇ! 俺は翔とタッグを組む! 文句は言わせねぇ!」

 

「アニキ……」

 

「翔、俺のパートナーはお前だけだ!

この決闘(デュエル)だって、本番だって絶対に勝つぞ!」

 

「う、うん!」

 

十代の言葉に涙を消し、笑顔を浮かべる翔だけど。

それが一時的なのか、今後も続いてくれるのか全くわからない。

対して堅守瑞貴の表情は呆れと嫌悪……何故?

 

「よくそんな臭い台詞が言えるもんだ、俺には理解できん

そしてあんな言葉1つで元気を取り戻す、なんとも軽くて調子の良い奴だな

また負けそうになったら同じ姿を晒すんだろ? 無駄な努力は止めておけ」

 

「馬鹿にするな!

僕だってやる時はやるんだぞ!」

 

「なら最初からやれよ、だからこんな状態なんだろうが

馬鹿にもしたくなる俺の気持ちを理解してくれないかねぇ?」

 

「理解なんてできるもんか! 俺のターン、ドロー!

俺はE・HERO バブルマンを召喚、そして効果を発動!

自分の場にバブルマン以外のカードが無い時、デッキからカードを2枚ドローする!

そして魔法カード、突然変異(メタモルフォーゼ)を発動!

自分の場のモンスターを生贄にし、同じLVの融合モンスターを1体、特殊召喚する!

俺はLV4のバブルマンを、E・HERO バブルマン・ネオに進化させる!」

 

言い方はアレだけど、実際はバブルマンを生贄にしてバブルマン・ネオを特殊召喚。

OCGでは効果モンスターであり、場のバブルマンと手札の突然変異(メタモルフォーゼ)を墓地へ送って特殊召喚されるモンスター

アニメではバブルマンと他のモンスターの融合体であり、バブルマンとして扱う効果を持っている。

バブルマン鰭が生え、若干ヘルメットが変わった程度の見た目……どうなのだろうか、これは?

 

そして元の世界ではネタ扱いにもできないぐらいに役に立たない以前にそもそも場に出せないというカード。

突然変異(メタモルフォーゼ)がコスト、バブルマンが場に存在し、更にバブルマン・ネオが手札に存在する必要が有る。

これだけのカードを、例え突然変異(メタモルフォーゼ)が無制限でも使う人はファン以外存在しないと思う。

 

「(……そういえばあのカード、アニメ世界ではヒーロー・キッズとの融合モンスターだったな

どうしてOCGでは効果モンスターとして出たのか、誰にも理解できなかっただろうな……哀れ)」

 

「更にバブル・ショットをバブルマン・ネオに装備させる!

このカードはバブルマンにのみ装備できるカードだが、バブルマン・ネオはバブルマンとして扱えるから装備できる!

バブル・ショットの効果で攻撃力を800ポイントアップ!」

 

これは……もうこのコンボを使う?

十代、君はあのモンスターの恐ろしさを知らない……正確にはあのモンスターに関係するモンスターをかな?

残念だけど十代、貴方は選択肢を間違えた!

 

「バトルだ!

バブルマン・ネオで水魔神-スーガに攻撃!」

 

「…………ふん」

 

スーガに向かってバブル・ショットから水が発射される。

素直に攻撃を受けるスーガ、堅守瑞貴は何もしない。

 

「この瞬間、バブルマン・ネオの効果発動!

このモンスターと戦闘したモンスターをダメージステップ終了時に破壊する!

更にバブル・ショットの効果、このカードを代わりに破壊し、戦闘ダメージを0にして戦闘破壊から免れる!」

 

バブルショットは破壊されてしまったが……

 

「忘れたのか? 永続魔法、進撃の帝王の効果を……

生贄召喚されたモンスターは効果によって破壊されない

スーガを倒したければ、素直に戦闘破壊するんだな」

 

「げ……」

 

私も忘れてた……目立たない上にあの会話が有った。

しかもオーバーウェルムの発動も有って、完全に記憶から消えていた。

この状況じゃどうしようも無い。

 

「カードを2枚伏せて、ターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー

場のゼンマイソルジャーの効果を発動

メインフェイズ時、エンドフェイズ時までLVを1上昇させ、攻撃力を400ポイントアップさせる

ただしこの効果はこのカードが場に存在している限り、1度しか発動できない

この効果により、ゼンマイソルジャーのLVと攻撃力を上昇させる」

 

ゼンマイソルジャーの発条が大量に周りだし……煙を上げた?

なるほど、ゼンマイのモンスター達が効果を1度しか発動できないのって、発条が壊れるからだったらしい。

元々巻かれていて、動ききったから効果が使えないと思ったけど、まさか壊れていただなんて……

あーあ、ゼンマイソルジャーの目が白眼になってしまっている、完全に壊れた?

 

「LV5となったゼンマイソルジャーはアドバンス・フォースの効果を受ける事が可能だ

ゼンマイソルジャーを生贄にし、LV7の雷魔神-サンガを召喚する」

 

上半身のような体をした、額に雷の字を持つ……黄土色? っぽい色のモンスター

雷魔神-サンガ……2体目の魔神である最上級モンスター!

そして進撃の帝王の効果を受ける事が可能な攻撃力2600のモンスター!

 

「防ぎきれるかな?

バトルだ、水魔神-スーガでバブルマン・ネオに攻撃」

 

「罠カード発動、ヒーローバリア!

自分の場にE・HEROが存在している場合に発動できる!

相手からの攻撃を1度だけ無効にする!」

 

スーガの水流を防ぐけど……

 

「雷魔神-サンガ、バブルマン・ネオに攻撃」

 

殆ど動揺などせず、攻撃を続行する堅守瑞貴。

これをどうやって防ぐか……と思ったけど、防ぐ事ができずにサンガの雷撃に破壊されるバブルマン・ネオ。

サンガも進撃の帝王の効果を受けているのでバブルマン・ネオの効果で破壊されない。

戦闘ダメージは1400、残りライフは2300だからこのターンは凌ぐ事ができる。

 

「THE トリッキーで直接攻撃(ダイレクトアタック)

 

「罠カード、ヒーロースピリッツを発動!

E・HEROが戦闘で破壊されたターンのバトルフェイズ中に発動できる!

相手モンスター1体からの戦闘ダメージを0にする!」

 

再びカードを投げるトリッキーだけど、バブルマン・ネオの姿が現れて攻撃を防ぐ。

戦闘ダメージが0になった……ライフは少ないけど、まだ大丈夫そう。

 

「……ターンエンド」

 

不機嫌そうだけど、このターンに決められなかったから?

それとも他に理由が?

 

「(手加減が難しい……)」

 

「ぼ、僕のターン、ドロー!

魔法カード、強欲な壺を発動! デッキからカードを2枚ドローする!」

 

ん? 翔の表情が変わった?

何か考え込むような、思い出すような……翔のデッキであんな顔をするカード?

確か、確か何か有ったはず、確か……思い出した! パワー・ボンド!

 

「…………」

 

「ん? どうした、翔?」

 

「あ、いや、なんでもないよアニキ」

 

明かに様子がおかしいが、それでもなんとか頑張ろうとする翔。

手札をずっと見続け、どうするか悩んでいる。

 

「……よし、魔法カード、融合を発動!

手札のレスキューロイドとキューキューロイドを融合!

レスキューキューロイドを融合召喚!」

 

消防車の姿をしたロイドのモンスター、そして何故か炎属性という謎なモンスターでもある。

攻撃力は2300と、上級モンスターとしては低めなのに攻撃表示?

まぁ、あのモンスターをパワー・ボンドで融合したらデメリット効果で負けだから仕方無い。

 

パワー・ボンドは融合先モンスターが機械族の場合、融合の魔法カードとして使用できるカード。

そして融合後、融合召喚されたモンスターの元々の攻撃力を倍にする。

ただし、エンドフェイズ時に融合召喚されたモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受けてしまうカード。

残りライフ2300でレスキューキューロイドを融合したら、自滅ダメージでジャストキルになる。

 

「バトルだ!

レスキューキューロイドでトリッキーに攻撃!」

 

「…………(受けてやるか)」

 

レスキューキューロイドの放水器から吹き出る……炎!?

消防車なのに炎を噴くから炎属性!? 火炎放射ならぬ火炎放車!?

そ、それはともかく堅守瑞貴は何もせず、炎に焼かれるトリッキーは破壊される。

受けたダメージは僅か300だけど、堅守瑞貴にダメージが通った!

 

「よし! デコイロイドを守備表示で召喚!

カードを1枚伏せて、ターンエンド!」

 

融合解除が伏せられていた場合、無限ループが起こせるモンスター達が揃った。

戦闘以外の手段を使えばいいだけとはいえ、どうなる事やら……

 

「俺のターン、ドロー…………まぁいいか

魔法カード、クロス・ソウルを発動

相手の場に存在するモンスターを選択して発動する

俺が選択するモンスターはレスキューキューロイドだ

このターン、自分がモンスターを生贄にする場合、選択した相手モンスターを生贄にしなければならない

ただし、このターンはバトルフェイズを行う事はできないがな」

 

「ま、まさか……」

 

「アドバンス・フォースの効果だ

LV6のレスキューキューロイドを生贄に、LV7の風魔神-ヒューガを召喚だ」

 

これは酷い……球体の体に腕が生えた、額に風の字を持つ緑のモンスター

翔が苦労して召喚したモンスターだったのに、これでは報われない。

 

「バトルフェイズが行えないので俺はこのままターンエンドだ

お前達は三魔神に勝てるかな?」

 

この状況は確かに辛いかもしれない状況。

十代ならなんとかしそうな気がするけど、大丈夫?

 

「俺のターン、ドロー!

魔法カード、融合を発動!

手札のE・HERO ワイルドマンとE・HERO エッジマンを融合!

E・HERO ワイルドジャギーマンを融合召喚!」

 

ムキムキマッチョな半裸の男性、左腕と右足と股間部分に鎧が……そこまで見て、すぐに目を逸らす。

ちょっと刺激が、カード状態ならともかく実体化されたら私には刺激が強い……

見ていても恥ずかしいし、私にはまだまだ早い、あんな男性は苦手。

 

「ん? どうしたの?」

 

「なんでもない、なんでもない……」

 

明日香に質問されるけど、そんな事どうでもいい。

うぅぅぅ……早くあのモンスターをどうにかして、堅守瑞貴!

 

「(…………へぇ?)」

 

「更に永続魔法、騎士道精神を発動!

このカードの効果により、攻撃力が同じモンスターと戦闘をしても、俺のモンスターは破壊されない!」

 

ワイルドジャギーマンの攻撃力は2600、サンガと同じ。

だけど三魔神の効果は、攻撃をされた時のダメージ計算時

表側表示の間に1度だけ、相手モンスターの攻撃力を0にする効果。

相手モンスターの攻撃力がどれだけ高くても、攻撃力を0にされれば意味が無い。

この勝負、堅守瑞貴の勝ちか……

 

「バトルだ!

ワイルドジャギーマンで雷魔神-サンガに攻撃!」

 

「…………」

 

ワイルドジャギーマンは飛び上がり、背負った剣でサンガを真っ二つに叩き切る……え?

素直に破壊されるサンガ? どうして効果を発動しない? 今度は何を考えている!?

 

「ワイルドジャギーマンは相手モンスター全てに1回ずつ攻撃ができる!

水魔神-スーガ、そして風魔神-ヒューガに攻撃だ!」

 

同じように破壊されるスーガとヒューガ。

戦闘ダメージは僅か300、合計でたったの600ポイント。

いったいどうなっている? 堅守瑞貴が苦戦しているとでも?

 

「…………」

 

だけど、そんな顔には見えない。

何が狙いで無抵抗で攻撃を受けている?

それにしても、ワイルドジャギーマンの存在で目の向け所に困る。

 

「どうだ瑞貴!

俺はこれでターンエンドだ!」

 

状況は圧倒的に十代達が有利。

だけど堅守瑞貴がこのまま終わるはずが無い。

何を狙っているのかわからないけど、油断したらすぐに終わってしまう。

 

「…………だから、名前で呼ぶなと言っているだろう

俺のターン、ドロー

相手よりも自分の場のモンスターが2体以上少ない場合、このモンスターは特殊召喚できる

俺は手札より、魔導ギガサイバーを特殊召喚」

 

全体的に黄金の鎧の、名前的には魔法使い族で見た目的には機械族の戦士族モンスター

劣勢時には頼りにできる、攻撃力2200の半上級モンスター

だけど今召喚されても状況を好転させる事はできない。

 

「LV6の魔導ギガサイバーを生贄に、LV7の風魔神-ヒューガを召喚

風魔神-ヒューガでデコイロイドに攻撃」

 

ヒューガの起こす突風でデコイロイドはアッサリと吹き飛ばされて破壊される。

ワイルドジャギーマンの存在が本当にネックなのだけど、効果を使えば簡単に終わる。

どうして堅守瑞貴は三魔神の効果を発動させないのだろうか?

 

「ターンエンド」

 

「僕のターン、ドロー!

このままバトル! ワイルドジャギーマンでヒューガに攻撃!」

 

「…………」

 

効果を発動されずにそのまま破壊されるヒューガ、ダメージは200ポイント。

残りライフは7200、まだまだ多いけど状況は本当に悪い。

それでも何も行動しない、何を狙っているのか全く予想できない。

 

「僕はこれでターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー

カードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

手札がドローカードだけ、伏せれば何もできない。

あの伏せカードは?

 

「俺のターン、ドロー!

フレンドッグを召喚して、フレンドッグとワイルドジャギーマンで直接攻撃(ダイレクトアタック)だ!」

 

機械でできた犬が現れ、堅守瑞貴に噛みつく。

そしてワイルドジャギーマンの大剣で攻撃され、合計ダメージは3400ポイント。

残りライフは3800……そろそろ動かないと危ない。

 

「…………」

 

それでも動かない堅守瑞貴が不気味過ぎる。

何が彼をここまで動かさないのか、私には予想できない。

 

「これでターンエンドだ!」

 

「俺のターン、ドロー

魔法カード、魂の解放を発動

墓地に存在するカードを5枚までゲームから除外する

俺が選択するカードはお前達の墓地に存在する融合のカード2枚

そして俺の墓地に存在する雷魔神-サンガ、風魔神-ヒューガ、水魔神-スーガの合計5枚だ」

 

融合を除外したのはフレンドッグを破壊した時に効果を発動されない為かな?

フレンドッグは戦闘で破壊された時、墓地の融合の魔法カードとE・HEROを1体、手札に加える効果。

両方が墓地に存在していなければ効果は発動できない。

そして3体の魔神を除外? もしかしてあの伏せカードは!

 

「罠カード、異次元からの帰還を発動

ライフを半分支払う、俺のライフは3800なので1900の支払いだな

ゲームから除外されている自分のモンスターを可能な限り特殊召喚する

ただし、この効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズ時に除外される

特殊召喚するモンスターは当然、先ほど除外した3体のモンスターだ

戻ってこい、雷魔神-サンガ、風魔神-ヒューガ、水魔神-スーガ」

 

三魔神が場に揃った……これを狙っていた?

だとしてもドローしたカード、前から伏せられていたカードではない。

あのずっと伏せられているカードはいったい?

 

「へっ、だけどそのモンスター達じゃワイルドジャギーマンは倒せないぜ」

 

「なら倒せるようにするまでだ

雷魔神-サンガ、風魔神-ヒューガ、水魔神-スーガを生贄にする事でのみ特殊召喚できるモンスターが存在する

俺はこの3体のモンスターを生贄にし、ゲート・ガーディアンを特殊召喚する」

 

特殊召喚、乗っただけ・ガーディアン!

……冗談はさて置き、3体の魔神が下からスーガ、ヒューガ、サンガとぶっちゃけ乗っただけのモンスター

だけどその攻撃力は3750と高く、ワイルドジャギーマンの攻撃力を大きく超えている。

 

「攻撃力……3750だって?」

 

「またこんな強い上級モンスターが……」

 

さすがにこのモンスター達は強いのか、2人が動揺する。

十代は楽しそうだけど、翔はもう負けが決まったかのような表情をしている。

 

「ゲート・ガーディアン…………まぁいいか

フレンドッグに攻撃」

 

暫く攻撃対象を悩み、フレンドッグに攻撃をした。

この攻撃が通れば十代達のライフは0に!

 

「翔の罠カード、進入禁止! No Entey!!を発動!

攻撃表示の相手モンスターを全て守備表示に変更する!

ゲート・ガーディアンは守備表示になってもらうぜ!」

 

アニメでは相手モンスターにだけ効果が発動されるカード。

OCGでは攻撃表示の全てのモンスターが守備表示になる。

どちらにも利点が有るからどちらが強いとは言えない。

 

「(防いでくれないと困っていたぞ)

このままターンエンドだ」

 

ゲート・ガーディアンの守備力は3400と十分に高い。

この守備力を超えるモンスターは翔のデッキに存在していないはず。

パワー・ボンドで攻撃力を上げて、やっと倒せる守備力。

 

「そろそろ守りのカードも無いだろう?

ゲート・ガーディアンを放置しても、負けるだけだぞ?

精々勝てるカードをドローできるよう、己の悪運を信じるんだな」

 

どうして堅守瑞貴はこんな事を?

絶対に手加減しているのはわかる、だけど何故?

彼の性格から考えて、手加減はしても相手に勝つようにする。

だけど今の行動を見ていたら……

 

「僕のターン……ドロー!」

 

何をドローした?

 

「(これを使えば勝てる……だけど、本当に大丈夫なの?

あの伏せカード、あの伏せカードがもしそうなら負けてしまう!

どうすれば、どうすれば、どうすれば……どうすれば!)」

 

凄く悩んでるけど、どうしたのかわからない。

少し移動し、翔の手札を覗いてみると……手札のカードは3枚。

スチームロイド、ユーフォロイド、そしてパワー・ボンド。

 

この状況で堅守瑞貴に勝つにはユーフォロイド・ファイターをパワー・ボンドで融合召喚する以外に無い。

スチームロイドを召喚し、ゲート・ガーディアンをユーフォロイド・ファイターで撃破

そしてスチームロイドとフレンドッグで直接攻撃(ダイレクトアタック)で翔が勝てる。

だけど、翔はまだあのカードを使う勇気が無い……かな?

 

「……スチームロイドを守備表示で召喚して、全てのモンスターを守備表示に変更

ターンエンドだよ」

 

勇気は、出なかった……か。

 

「…………ふーん、俺のターン、ドロー

魔法カード、強欲な壺を発動し、更に2枚ドローする

装備魔法、メテオ・ストライクを発動

装備モンスターの攻撃力が攻撃をした相手モンスターの守備力を上回っていた場合

その差分だけ相手に戦闘ダメージを与える貫通効果を付与する

このカードをゲート・ガーディアンに装備させる

(このモンスターはもう不要だな、召喚するまでも無い)」

 

攻撃力3750の貫通効果を得たモンスター

十代達の残りライフは2300、ワイルドジャギーマン以外に攻撃をすれば終わる。

 

「ゲート・ガーディアンを攻撃表示に変更

ゲート・ガーディアンでフレンドッグに攻撃」

 

スーガの水で水弾を作り、サンガの雷で電気を通した水へと変える。

そしてその電水弾をヒューガの突風で撃ち出しす。

機械族のフレンドッグは水を受け、電気を通しやすくなりショート、そのまま破壊される。

フレンドッグの守備力は1200、2550のダメージで十代達の負け。

なにはともあれ、半裸の大男が消えてくれて色々な意味で助かった。

 

「負けたかぁー……ちっくしょー!

でも、惜しいとこまで追い詰めたぜ!」

 

さて、イベントは起こしておかないと。

今成長してもらわないと、後々困る。

 

「やっぱり僕なんかがパートナーなんて無理なんだよ……」

 

「そんな事無いだろ、かなり良い線行ってたじゃないか

そういえば翔、最後のターン動きが止まってたな

ちょっと手札見せてくれよ」

 

「あ、ちょっとアニキ!」

 

私が動く前に十代が先に動いた。

翔の手札を確認し、疑問の顔になる。

 

「パワー・ボンド? どうして最後のターンに使わなかったんだ?

俺のワイルドジャギーマンとユーフォロイドを融合してユーフォロイド・ファイターにすれば

ゲート・ガーディアンを倒して、残りのモンスターの直接攻撃(ダイレクトアタック)で勝っていたじゃないか」

 

「これは使っちゃダメなんだ!

このカードはお兄さんに封印されてるんだ……」

 

「ふ、封印?」

 

「やっぱり僕なんかじゃアニキのパートナーなんて無理なんだよ!」

 

「翔!」

 

逃げ出してしまう翔、唖然として動けない十代。

誰も動かないけど、これは多分、あの2人の問題だから私が介入する事じゃない。

なにより……抜けられて困るのは私達全員なのだからしっかりと説得してもらわないと。

 

そういえば堅守瑞貴の手札と伏せカードは?

疑問に思い、片付けようとしている堅守瑞貴から決闘盤(デュエルディスク)を奪う。

 

「…………何故奪う」

 

「何を考えていたのかわからなかったから

三魔神の効果も使っていないし、最後まで伏せカードを発動しなかった

どれだけ手加減しているのか、それが気になった」

 

手札を確認してみると……The()tyrant(タイラント) NEPTUNE(ネプチューン)!?

モンスター1体の生贄でも召喚できるLV10のモンスター、生贄にしたモンスターの元々の攻撃力と守備力の合計値となる。

そして生贄にしたモンスター1体を選択、そのモンスターの名前と効果を得る。

なるほど、特殊召喚モンスターであるゲート・ガーディアンの攻撃力を受け継いで進撃の帝王の耐性を持たせる。

他にも、三魔神の効果を使用後、名前と効果を奪って効果の再発動やゲート・ガーディアンの生贄にも使える。

この感じなら合成魔獣 ガーゼットもデッキに入っていても不思議じゃない。

 

伏せカードは……超古代生物の墓場?

特殊召喚されたLV6以上のモンスターの攻撃と効果の発動を不可能にするカード。

だからあのデッキは生贄召喚に拘っていたか……三魔神は最上級モンスターで攻撃力は2400以上と高い。

そのモンスターを超える手段は、主に特殊召喚を使う以外にあの2人にはほぼ手は無い。

可能性が有るとすれば、生贄召喚したE・HERO エッジマンぐらい?

それでも、三魔神の効果を発動されればもう手は無いと言ってもいい。

 

高速生贄召喚、三魔神の攻撃力を0にする効果、そして超古代生物。

この3つが合わさった時、あのデッキに勝つ手段はモンスターの効果破壊か超古代生物の破壊。

だけどモンスターの効果破壊は帝王の進撃で止められる。

魔法カード以外の魔法・罠カードの破壊も、オーバーウェルムで止められてしまう。

サイクロンや大嵐が無ければとは思うけど、どうせあのデッキにはアヌビスの裁きや王家の呪いが入っているはず。

オーバーウェルムの効果外の魔法カードを封じるカウンター罠を使えば、あのデッキに勝つのは難しい。

なんて厄介なデッキを作ったのか……予想通り、かなり手加減していたとしか思えない。

 

「どうしてこんなに手加減を?」

 

「勝つだけなら簡単だった、当然だろう?

強いて言うなら、丸藤のあの茶番劇を楽しみたかっただな

俺には理解できないあの思考回路を見てみたい、それだけだ

案の定、訳の解らない、意味不明な考え方で逃げ出したよ

なんともまぁ、見ているだけで楽しめるが腹の立つ光景だな」

 

吐き捨てるように翔を批判する堅守瑞貴。

気持ちは理解できないとは言わないけど、言っている事はなかなか酷い。

 

「時間を無駄に過ごした気分だよ、こんなに下らない茶番は初めてだ

以前の女子寮の事件よりも遙かに酷いね」

 

「それは言い過ぎ」

 

十代は明日香と話している。

多分、アニメ通りなら丸藤亮の件について話していると思う。

こちらの話を聞いていない、有る意味幸運だった。

 

「……手加減って、どういう意味なんだな?」

 

「ん?」「え?」

 

私達の近くに居たのは前田隼人。

どうやら彼には聞かれていたらしい。

 

「言った通りの意味だ

俺はやろうと思えばダメージ0で勝つ事も可能だった

サンガ、ヒューガ、スーガの効果も、発動可能なのに使わなかったしな」

 

「なんで、そんな事を?」

 

「茶番」

 

2文字!?

 

「十代と翔を、馬鹿にしてんのか!」

 

「馬鹿だとは思っているな、頭は実際に悪いし

丸藤の思考回路に関しては馬鹿以前に……小学生並かと疑うぐらいだ

俺の妹より遙かに酷い、6歳下の10歳だぞ? どうなんだ、その辺り?」

 

「今は玲ちゃんは関係無いでしょ」

 

「……お前に妹の名前を教えた記憶は無いのだがな」

 

「気にしない」

 

少し睨まれ、すぐにどうでもよさそうな顔をする。

私が堅守瑞貴を知っていると、そう思っているから妹の事も知っていると思ったのだろう。

絶対に玲ちゃんに手出しはしないでおこう、何をされるか全く予想できない。

 

「翔だって頑張ってるんだな!」

 

「頑張るだけなら幼稚園児でもできるぞ?

結果を出さなければ意味が無いだろうが

過程も大切だと思うが、殆どの人は過程よりも結果を重視する

勉強だってそうだろうが、どれだけ勉強を頑張っても、テストで赤点を取れば意味が無い。

知らない人が見れば、どれだけ怠けていたのだと言われても仕方無いだろう?

本人や周りが、いくら頑張っていたと言っても誰も信用できん

丸藤が努力をしていると信用してほしいのなら、それ相応の行動で示すんだな

あんな態度を見せられては、アレだけの事を言われても仕方無いと思うがね」

 

「言い過ぎなんだな!」

 

「全面的に賛成するつもりは無い

だけど、あながち間違っているとは言えない」

 

「咲良さんまで!?」

 

相変わらず、堅守瑞貴は言う事だけは正論。

なんだかんだで、堅守瑞貴も努力をしていないとは言えない。

授業でも、デッキでも、決闘(デュエル)でも、どんな行動にしても。

目的などはともかく、結果を出しているから好き放題言える。

カードプールの広さの強さだけではない、使いこなすだけの能力が有るからの実力。

どれだけ強いデッキを持っていても、デッキを使いこなせなければ弱者と言われるのだから当然。

 

「だけど言い過ぎ、もし逃げ出したらどうする?」

 

「放置でいいだろ

誰かがタッグではなくシングルで戦えば済む話だ。

丸藤の処理は学園で決められるだろうからな、俺達には関係無い

そして俺は、丸藤が停学だろうが退学だろうが逃げだそうが興味も無い」

 

それだけ言い、堅守瑞貴は去って行った。

1つのタッグが決まり、残りのタッグは誰でも良いとでも言いたいのだろう。

私と隼人は堅守瑞貴が去って行くのを見届け、十代と明日香に話しかける。

 

「どうする?」

 

「どうするって、俺はカイザーと決闘(デュエル)したいぜ!」

 

……十代に訊いた私が馬鹿だった。

どうしてそんな結論に落ち着いたのか、私には理解できない。

 

「天上院さん、説明お願い」

 

「翔君の実の兄、カイザー亮の存在を教えたのよ

翔君がカードを封印されているって言っていたし、理由も人間性も知りたい

だから決闘(デュエル)をしてカイザーを知るんですって」

 

私には理解できない思考回路。

確かアニメでは……十代と亮の決闘(デュエル)で翔がやる気を出すだっけ?

だけど、アニメでは退学を賭けていたけど今回は停学、そこまでするだろうか?

 

「そういえば、俺は翔と組むけどお前らはどうするんだ?」

 

「私は咲良さんとかしら?」

 

「俺が堅守と? ちょっと自信が無いんだな……

それに、タッグを組んでも一緒に戦える気がしないんだな」

 

隼人は先ほどの会話で、堅守瑞貴に苦手意識を持ったらしい。

こんな状態で組んでも本来の実力を出し切れるとは思えない。

 

「はぁ……仕方無い、私が堅守瑞貴と組む

これが一番誰とも揉めない組み合わせかもしれないし」

 

「ご、ごめん……」

 

「いい、半分予想はしていた」

 

堅守瑞貴の性格からして、この展開も予想していたかもしれない。

誰と組めば一番動きやすいかを考えれば、私と組んだ方が楽に決まっている。

だけどそう簡単にいかせてやらない!

 

「(堅守君と組めて嬉しいのかしら?

なんだか笑っているし)」

 

私は暗い笑みを浮かべながら、どのデッキを使うか考える。

覚悟しておくように、堅守瑞貴!

絶対に苦戦させてやる、負ける気は無いけど私と組みたくなくなるぐらいに!




「今日の最強カードはゲート・ガーディアン
攻撃力3750、守備力3400の闇属性・戦士族のLV11のモンスターだ
雷魔神-サンガ、風魔神-ヒューガ、水魔神-スーガという最上級モンスター3体を生贄にして特殊召喚できる
攻撃力は3体の合計値の半分、しかも元となるモンスターの効果などは持っていない
明かにネタ、ギャグ、ロマンでのみ構成されたモンスターと言っても過言では無いな」
「自分で使っていながらそこまで言う?」
「事実だからな、弱いとは言わないぞ? 使い道は召喚以外にも色々と有るし」

Q.呼ばれる理由が大量に有るの!?
A.色々と隠しておきたい事が有るのでしょう。

Q.アニメと大分違う?
A.アニメで呼び出されるのは十代と翔のみでしたが、全員呼びました。
アニメ通りでも良かったのですが、作者がつまらない!

Q.まさかの押し切り。
A.どんな屁理屈だろうと、勝てばいいのです、勝てば。

Q.ネタバレ早かったね。
A.隠しておく意味も無いのでさっさと晒しました。

Q.結美は何を考えて瑞貴のフォローを?
A.彼女自身はそんなつもりは全くありません。
ただただ事実を言っただけという無自覚、悪い子ではないのですけどね……

Q.結美の言うタッグ案にベストではなくベターと言った理由は?
A.瑞貴&結美タッグがベストだからですね、瑞貴のみを考えた場合ですけど。

Q.結美が翔を嫌いすぎじゃない?
A.彼女はあの事件を引き摺っているので仕方無いでしょう。
なんだかんだで謝ってもらっていませんしね。

Q.堅守瑞貴の今回のデッキは?
A.【ゲート・ガーディアン】【三魔神】【アドバンス召喚】の合成でしょうか?
基本はアドバンス召喚を中心とし、チャンスが有ればゲート・ガーディアンを特殊召喚します。
単純ですが、実はエクシーズを使わない相手からすればとても厄介なデッキ……かも?

Q.ちなみに残り4つの組んだデッキはどんなデッキなの?
A.全て【ゲート・ガーディアン】【三魔神】+何かの要素を加えたデッキです。
全部使おうと思ったのですが、展開的に使えなくなってしまったので作者の没案デッキですね。
ちなみに【アンデット】【除外】【冥界軸最上級多用】【死皇帝の陵墓】を考えていました。

Q.どうして【三魔神】を選んだの?
A.結美から迷宮兄弟の話を聞いていたので、使用デッキを思い出したので使って先取りしてやりました。
これできっと、十代達は三魔神やゲート・ガーディアンを見てもそこまで興奮しないでしょう。
……え? 理由はそれだけですが何か?

Q.E・HERO バブルマン・ネオが融合モンスター?
A.原作効果ですね、アニメでは瑞貴の言う通りでヒーロー・キッズとバブルマンの融合体でした。
まぁ、突然変異(メタモルフォーゼ)でしか特殊召喚されていないので召喚条件がアレなんでしょうね。

Q.進入禁止! No Entey!!の効果が若干違う?
A.結美の言う通りで原作効果です。

Q.結局、組み合わせはどうなったの?
A.十代&翔 明日香&隼人 瑞貴&結美
この3組となっています。

Q.結美はどうするつもり?
A.さて、彼女は何を考えているのでしょうか?

Q.そういえば、瑞貴達の立ち絵って、作者とどうイメージが違うの?
A.瑞貴の髪はもう少し長く、もっと眠そうな怠そうな顔をしています。
大人瑞貴も髪の長さが……しかし、それ以外は割とこんなイメージで合っています。
結美の胸はもっと小さいですね、例えるのなら……次回作に出てくる双子の妹(最終話を除く)より少し上ぐらい?
玲は普通です、それはもう普通の女の子ですはい、実は割とイメージ通り?

Q.次の更新はいつだよ……いい加減に安定させてくれ!
A.ごめんなさい、本当にその通りだと思います。
予定ではクリスマス辺りに更新をしたいと思っています。
クリスマスプレゼントにもならない内容かと思いますが、期待しないでお待ちください。

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