【完結】我こそは武田高信である   作:どんぐりヒッター

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第九話 対戦、一色家

◇◇◇戦国時代だ、武勲を稼げー♪◇◇◇

 

 

 

 季節が代わり冬になった。御屋形様は俺の献策を用いて羽衣石城に移ったようだ。

黒田親子を第二軍団の軍団長にもしてくれた。

俺の手紙の返事も届いていた。

手紙の内容はこうだ。

 

 

『足利将軍家を滅ぼすなど、お主は何と言う事をしてくれたのだ。キエー!

しかも管領の細川家と事を構えるとは。

こうなっては山名家はおしまいだ。ウワー!

周囲の大名たちから総すかんで滅ばされてしまう。

貴様は命がけで戦い、敵なるものを徹底的に滅ぼしてまいれ。

危機が去るまで我が前には現れるな! シャー!』

 

 

御屋形様はご立腹。なにも手紙に奇声を書き込まなくても。

手紙は垣屋の爺様からも来ていた。

 

 

『御屋形様は家宝を得られて凛々しくなられた。

政治に軍事に明るくなられて、わしが教育をしたら早速弁舌を習得なされた。

今後の山名家の未来は明るい。

武田殿、よくやった。

くれぐれもむやみに戦を仕掛けて命を落とすでないぞ』

 

 

こちらは喜んでいるようだ。

しかし、垣屋の爺様の事。手紙の言葉を額面通りに受け取ってはいけない。

心配されずとも、軍団を作ったことにより山名家の行動力は残り少なく、

俺は戦を仕掛けることが出来なかった。

この季節は兵の訓練でもするしかない。

やる気の乏しい殿を担ぐと苦労する。

早く軍団長になって独立したいものだ。

 

 

 

 早く軍団長に成りたいのは確かだが、俺の山名家への忠誠度は低い。

低いままで軍団長に自薦などしたら、目的をあっという間に見抜かれてしまう。

たとえ平凡たる御屋形様であったにしてもだ。

 

 

黒田親子にはその時のための布石となってもらった。

先に誰かを推薦しておいたのだ。

これが成功すれば、自薦で軍団長にもなりやすいだろう。

軍団長に成るには武勲を稼いで身分を上げて、仮初めの忠誠度を上げていくと良い。

 

 

俺は焦る気持ちを抑えて御屋形様に手紙を書いた。

 

 

『足利将軍家の滅亡など気にする必要はない。

人のうわさも七十五日。もはや季節が過ぎ3か月が過ぎたのだ。

誰も将軍家のことなど覚えていない。

聞かれれば、あーそんな家もあったなー。位の話でしかない。

細川家の内実は崩壊寸前。内部で三好家の者どもがうごめいている。

心配ご無用。敵との戦はお任せあれ』

 

 

 

 兵たちの訓練を終えて俺は自分の能力を確認した。

 

 

政治29/78、戦闘91/138、智謀61/148

 

 

合戦と訓練で戦闘が大分上がって来た。政治と智謀は戦をすると下がっていく。

野戦中に流言を使って敵を混乱させられれば智謀が上がるが、今は必死の時。

余計な事をして、敵に付け込むすきを与える余裕はない。

まだ、山名家に財は無く。将兵の手駒も不足している。

敵から兵を奪ってやりくりしていくしかない。

戦の機会に俺の部隊適性が早く上昇してほしい。

 

 

部隊適性の上昇は、教育と戦場での戦闘で確率的に上昇する。

また、城攻めを行う際に本丸の扉を叩くことでも上昇する場合がある。

さらに一軍の大将であれば、野戦で勝利し敵武将の捕獲時にも上昇する可能性が有る。

意外と機会は多いのだが、それも豊かになってから。

 

 

敵の城に攻め込むときに、野戦場に敵兵が残っていると一気に危機におちいる可能性もある。

我慢は我慢で必要だ。

周囲の城に偵察を出し、事態の推移を見ながら季節の代わりを待った。

 

 

 

◇◇◇戦国時代だ、武勲を稼げー♪◇◇◇

 

 

 

 年が明け春が訪れ、俺は34歳になった。

第二軍団では細川藤孝が元服した。

やや野心家であるが義理堅く素晴らしい才能に恵まれている。

なんとか手元に置いておきたい男だが、今は第二軍団に隠して置いて良いだろう。

 

 

垣屋の爺様から手紙が届き、御屋形様に12歳の姫が産まれたとの報告が来た。

そう、27歳以上の大名には12歳の姫が産まれることが有るのだ。

場合によっては、その姫を武将として用いることも出来るらしい。

垣屋の爺様の手紙の他の内容はこうだ。

 

 

『御屋形様は益々さえわたり、弟の祐豊殿に弁舌をお教えになられた。

次は豊弘殿に教えるのだと、それはまあ楽しそうにしておられる。

わしも息子の光成に弁舌を教えて成功した。

次は和田殿に教えてみようと思う。

かの和田殿は武門の腕利きと言う話であったが、政治の方もなかなかであるのでな。

武田殿は命を大事にし、無謀な戦はするでないぞ。

山名は栄えるのだ。その時まで、大事に大事に』

 

 

なにやら本気の文面に見えてくる。文章だと表情が見れないから疑いがかけにくい。

しかしだ、偵察による周囲の状況が報告され、絶好の機会が訪れた。

 

 

北西の一色家の兵が再編成されたというのだ。

天翔記では一色家の大名、一色義幸(いっしきよしゆき)は暗愚。

子の義道(よしみち)は猪武者。

兵は義幸が無し。義道が17で稲富祐秀が40の足軽。

鉄砲を持ってこその稲富祐秀に足軽部隊を率いさせては宝の持ち腐れも良い所だ。

 

 

俺は確認の偵察を放ってから垣屋の爺様の手紙の返事を書いた。

 

 

『垣屋殿、毎度の手紙感謝する。

御屋形様の喜ぶ様子は目に浮かぶようだ。

俺も御屋形様の勘気(かんき)が解けたら、ぜひご機嫌を伺いたい。

和田殿は有用な様子。こちらも嬉しく思う。

戦の事は垣屋殿の言う通り、慎重に事を進める。

しかし、好機は絶対に逃さないつもりだ』

 

 

 

 数日後、偵察が帰って来た。詩人が報告してくれた。

 

 

「武田殿、また戦ですな。活躍を期待してますよ」

「ああ、任せろ」

 

 

率いる兵は40。一色家の城は建部山(たけべやま)城、京の北の舞鶴にある。

戦争対象にすると若狭(わかさ)武田氏の城が巻き込まれた様だ。

若狭の武田に強敵は居ない。どちらも大将を捕縛し兵を吸収させてもらうぞ。

 

 

「者ども建部山城に出陣だ!」

 

 

野戦を始めてみると、若狭の武田家が110もの兵を率いて味方の攻め手側に回ってしまった。

それを見た一色家の部隊が城にこもって籠城体制。

城攻めはかなわん、とばかりに若狭の武田家は城内に退却。

俺の放った偵察にこんな情報は無かった。

 

 

なんてことだ、野戦で兵の吸収が出来なくなってしまった。

山名家の行動力では、退却して別の攻撃対象を選ぶなどと言う事は出来ない。

少しでも得るものが無ければ、帰るに帰れない。

城攻めだ。行こう。

 

 

「一色の城など我らの前には物の数ではない!」

「みんな、張り切ってー!」

「おおー!」

 

 

タチアナの鼓舞はすごい。

 

 

 

 三の丸、二の丸の門をこじ開け本城の門も開けた。

本丸には義道、その前に稲富祐秀が陣取る。

俺は稲富祐秀に流言をかけるが通らない。

敵は攻撃を仕掛けてきて、互いに消耗していった。

敵軍が目に見えて減った時、俺は流言をあきらめて突撃に踏み切った。

部隊適性を上げたかったのもある。しかし、突撃してみるとこちらが混乱状態になってしまった。

 

 

幸い、混乱状態はすぐに解けて稲富祐秀を捕獲することが出来た。

40居た兵が20になってしまっている。

稲富祐秀を配下にする事が出来ればそれでも儲けものだが、今は兵の損害も痛い。

 

 

本丸の一色義道は暗殺で誅することにした。

義道は猪武者、育っていない猪武者だ。

誅にはもってこい。

 

 

数度繰り返すと、ぐわっと鳴いて亡き者になった。

タチアナに鼓舞してもらい兵の士気を回復させた。

兵の損耗が痛い。俺は肩を落としながらも本丸の城門を叩くよう兵に指示した。

 

 

一回、二回では叩いても開かない。三度目に叩いた時、それは起こった。

俺の部隊適性が足軽Dから足軽Cになったのだ。

稲富祐秀次第ではおつりがくるかもしれない。

 

 

俺は本丸に侵入し建部山城を落とした。

 

 

 

◇◇◇戦国時代だ、武勲を稼げー♪◇◇◇


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