Fate/stay night at the Museum   作:ゲオザーグ

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EP1

「今回も……でしたか……」

 

「はい……恥ずかしながら……」

 

 職業案内所(ハローワーク)の窓口にて、年下の女性職員とやり取りする1人の中年男性。脱いで膝の上にかけたコートはくたびれ、漂う煙草の匂いは過敏な人こそ顔をしかめそうだが、身なり自体は決して不潔感はせず、むしろ年や場を考えれば十分好印象を与えるよう考慮されている。

 

「やはり、この経歴と年齢が原因で敬遠されてしまうんでしょか?」

 

「あぁ、いえ、御本人の留学や、衛宮(えみや)さんのように親御さんの転勤などで海外に渡る人は昨今珍しくありませんが……」

 

 相談者――衛宮切嗣(きりつぐ)が自虐的に言うように、彼の持つ履歴書の内容はまず見ないものだった。まず小中学校の学歴がない。これは幼少のうちから父矩賢(のりたか)に連れられ国外の辺境で暮らしていたため、そもそも通える学校がなかった。しかもその最中矩賢は病死してしまい、すでに母もいなかった切嗣には日本に帰る手段も当てもない以上そのまま現地で暮らすしかなく、とある縁からそこを離れることになった頃には、すでに青年となっていた。その後も各所を転々としながら暮らす中様々な職や資格に手を付けてきたものの、残念ながら日本で活かせる以前に表沙汰にできる様なものは少なく、何とか埋めても逆に「コイツは何をしてきたんだ」と面接者に悪い印象を与えてしまっている。

 

「さすがにいつまでも貯蓄を食いつぶしてるだけってのは色々不安要素も多いですし、将来子供に『僕の父は何をしてるか分かりません』なんて言われたくはないんで、最近通信制の大学で頑張ってはいるんですが、せめて年末までにはどこかでいい縁に巡り合えないかと願っているんですがねぇ……」

 

「こちらとしても何とかそうなる様にとは手を尽くしていますが、ここまで相性が悪いともうどうしようもなくなってしまいまして……もう私の方がどうしたらいいのやら……」

 

 すでに切嗣がここに通うようになって長く、もう20件以上は紹介しているのだが、その(ことごと)くから拒絶されている。普通なら対応する職員の様に参ってしまうのだろうが、切嗣としては妻子を持つ身としてのプライドから、何としてもまともな職について安心させられるようにせねばと不貞腐れることなく耐えてはいるものの、それでも正直ここまで断られてばかりとあっては、段々と自信を無くしてしまう。

 

「ん~……あ、今検索してたらこんなのありましたけど、どうですか?」

 

 そんな切嗣の様子に、職務としてはもちろん、決して長くはないが短くもない付き合いから「何とかしてやりたい」と思っていた職員が新たに見つけたのは、博物館の夜警。ただし夜間勤務だとしても給与が妙に高く、更に募集要項には「経歴不問。口が堅く、秘密を守れる方」とやけに意味深な一文が載っている。

 

「秘密を守れる、か……一応口の堅さには自信がありますね」

 

「わざわざ記入する辺り、なんだか一筋縄じゃ行かなそうな感じがしますし、胡散臭い部分がなくもなさそうですが、折角ですし、受けるだけ受けてみては?」

 

「はい、早速お願いします!」

 

 確かに条件としては気になる部分ではあるものの、裏社会や、それこそもっと人前で語れぬような業界まで足を踏み入れたことのある切嗣としては、今更博物館の警備くらいで気にするようなことは起きまい――あってもせいぜい盗掘品の展示くらいだろう――とは思うし、折角見つけてくれたのなら、それを拒むような道理も余裕も今はない。即座に快諾すると、その場で面接の手続きを行った。

 

 

 

 

 

 

「やぁ切嗣、まさか君がここに来るとはね」

 

「恥ずかしながら説明した通りでね。こっちこそ、ここには何度か来ていたけど、まさか君が館長だったなんて思わなかったよ」

 

 面接当日、閉館直後の『冬木総合博物館』で親し気に切嗣を迎えたのは、真紅のスーツを着こなした遠坂時臣(とおさかときおみ)。とある事情で以前から交流があり、互いに同年代の子がいることもあって、彼の数少ない交友関係のある人物の1人である。

 

「ははっ、まぁ館長と言っても、実質名誉職のような感じだがね。しかし来たのが君だったのは、ある意味よかったかもしれん」

 

「ってことは、もしかして……」

 

「あぁ、大方君の予想通りだろう。尤も、何がどうなるかは実際に身ながら説明をした方が早いと思うがね。さて、まずここが警備室だ」

 

 時臣の様子からして、今回の件は2人が知る事情に関する物らしい。肝心な部分をぼかすような話し方には不満があるものの、話しているうちに目的地に着いたようだ。時臣が軽く扉をノックをすると、中から欧米系の老人が姿を現す。

 

「やぁ時臣、彼が私の後継かい?」

 

「あぁセシル、衛宮切嗣だ。彼も『こちら側』の人間でね。切嗣、彼はセシル・フレデリックス。訳あって長いことここで警備員を務めてもらってきたが、そろそろ休みをと思って今回募集をかけたんだ」

 

「ど、どうも……」

 

 初対面でも早々友好的(フレンドリー)に接してくるセシルに少々押され気味な切嗣だが、そっけなく振る訳にもいかないので、差し出された手にこちらもかえし握手をする。時臣の紹介からすると、どうやら彼は『自分達とは違う』ようだが、そちらに関しても説明が入るだろう。




書いたの前日(10日)でしたが、色々調べがてら見てたら切嗣も誕生日も今日だったんね
ちなみに考えてる限り舞台設定に関しては以下な感じ(並びは可能な限り時系列順を意識)
・太平洋戦争中の第三次聖杯戦争に当時の帝国政府が介入し大聖杯を強奪。終戦後の混乱で消息不明に(Apocrypha の舞台に送るかどうかは未定)
・臓硯は冬木全域への焼き討ちの最中政府指揮下のサーヴァントに倒され死亡。間桐は実質魔術師としては断絶
・自然史博物館の警備員はセシルのみ。黄金板の能力に気づいた先代遠坂当主が影響を受けた他の展示物ごと引き取った際、口止めがてら連れてきた。
・作中の通り矩賢は騒動の前に風土病で死亡。切嗣はしばらくそのまま現地で過ごし、矩賢殺害の依頼を受けて訪れたナタリアに事情説明後、原作同様弟子入り
・経緯の違いもあって歪みは少なく、「見知らぬ多数より親しい少数」なごく普通(?)の感性に。独立後助手兼弟子として舞弥を引き取るなど一部行動は(目的や心情はともかく)同様
・大聖杯喪失の影響かアイリスフィールは小聖杯としては失敗作。次代への母体として育てられる中、護衛として雇われていた切嗣とゴールインしイリヤ出産
・冬木派遣に関してアハト翁は当初いい顔をしなかったが、失われた大聖杯の行方かその新造の手がかりを掴める可能性を説得され、納得いかないながらも承諾
・切嗣情報収集のため時臣と接触。その際子供の話題から意気投合した
・間桐没落のため桜は養子に出されず、ソラウ的ポジションに。雁夜も魔術とは無縁なジャーナリストで関係はZERO冒頭のまま
・調査中の切嗣が龍之介の殺人現場に遭遇し咄嗟に仕留め、両親が犠牲になった士郎を憐れみ養子として引き取る

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