とある研究施設の中に設けられたオフィス。
そこで
イライラした様子の妙齢の女性と眼鏡をかけた青年が議論と言う名の口論を繰り広げていた。
「プレシア主任、このプロジェクトは本社からも情報を制限するよう言われているってご存じですよね?」
「ええ、私もその場で聞きましたから」
部下は深いため息を吐く。
「だったら見学なんてもっての他だと理解していらっしゃるでしょう?!」
「うるさいわね…!そもそも本社の要求は最初からコストから期間まですべて滅茶苦茶だったのよ?!」
「…それはそうですが、だからといって主任のお子さんとはいえ一般人をここに入れて良い理由などありませんよ!」
「だからアリシアの経歴を上手く誤魔化して研究員として入れるのよ」
「…ダメだこの人、何とかしないと」
「…」
「そう睨まないでください。私は何も見学は完全にダメだと言ってるわけではありません。
実用化されている旧式の駆動炉の見学コースなら…」
「それでは私の職場を見せることにはならないわ」
この人は一種の天才ではあるが彼女の娘に向ける愛情はハッキリ言ってバカが何個も付きそうなくらい親バカだ。
その上頑固で自分の信じたもののために退くことを知らないような人だ。
あと娘のことになると普段の理路整然とした理屈に基づく考えは微塵もなく、感情に基づいた行き当たりばったりの考えを吐き出してくる。
「……わかりましたよ、通常の見学コースを案内した後にこのエリアの監視システムをその時間だけダミーに差し替えて娘さんを案内しますよ…」
「そんなこと出来るの?」
「かなり難易度は高いですが30分程度なら誤魔化すことは自体は可能です」
「なら最初からそうしなさいよ」
「…これ違法行為だってわかってますよね?」
ーーー
今日はママの職場を見学する日だ。
予定としては旧式の実用されてる駆動炉の見学をした後にママのいる開発部に行くらしい。
パッと見ただけど、うむよくわからん。
前半の説明では色々説明されたが半分以上は専門的すぎてほぼわからなかった。
大気中の魔力を少量取り込んで炉の中で何か難しい物質と反応させて増幅させて云々…
呪文か何か?
あと、ちょっと難しかったかな?とか言われたが文字通り次元が違いませんかね?
「ふわあ、これがミッドの電力供給施設なんだ~」
我ながら白々しい反応だ、多分目が死んでる。
「これはさっきの説明でも出た現在稼働中の駆動炉ネメア、第一管理世界ミッドの首都を中心に電力供給してるよ」
「これがママのお仕事なんですか?」
「いや違うよ君のママと僕が関わっているのはこれの次の世代の駆動炉の開発さ」
ママの部下の男性職員がカードキーを通して機密エリアへのドアを開ける。
「ここからは入ったことは内緒だからね?」
「はい!」
さあ、ここからだ。
確か何かの映画の言葉だったかな?
未来は決まってなどいない、そう心の中で呟き私は歩を進めた。