この素晴らしい世界に嘲笑を!   作:湯瀬 煉

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と、いうわけで、ブルーアリゲーターですっ!


第三話 この水の女神に活躍を!

 クエスト選びはいつも難航する。

「カズマ。このクエストはどうでしょう?」

爆裂魔法が撃ちたいめぐみん。

「ねぇねぇ。それよりこのクエスト受けない?報酬たっぷりよ?」

とにかく酒を飲む金が欲しいアクア。

「それよりこのクエストの方が良いんじゃないか? モンスターも強力だ。私は攻撃するがなすすべもなく敗北するのだ…。そして……」

ただ攻撃を受けたいだけとしか思えないダクネス。

と、このように全くクエストをやる『目的』がまとまらないのだ。もちろん、強くて金になり、なおかつカズマたちのレベルでも挑めるモンスターはそういない。

 が、俺は見つけてしまった。

「…………アクアがいるこのパーティーならばこのクエストは適任ではありませんか?」

 

 汚染された湖の浄化クエストだ。

クエスト内容は簡単。湖が汚くなってきたからきれいにして欲しい、というだけだ。これに対し、俺達の答えは。

「ね、ねぇカズマさん…? 本当にやるの? 私凄く不安なんですけど。というか湖にはワニがいるって言うし………」

「大丈夫だ。問題ない」

 女神アクアには、浸かっているだけで液体を浄化する能力がある。詰まるところ俺達はアクアを湖に沈めてきれいになっていく過程を見ていればいいのだ。

 

数分後。

「いやぁぁあぁぁぁぁっ! カズマさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!! 助けて! 死んじゃうわ! 私死んじゃうから!!!」

きれいな水が苦手なワニが彼女のいる檻に集まっていた。檻の中ならば安全だろうと思っていたが予想に反しワニはその形を変形させるほどのパワーを持っていた。

「な、なぁ…。私もアレに参加し…そろそろアクアを助けに行かなくても良いのか?」

ダクネスはワニにたかられているアクアを羨ましそうに眺めている。

「あの…。アクアは大丈夫なんでしょうか?」

めぐみんは心配そうにアクアの入っている檻を見つめる。優しい子だな、全く。

「大丈夫ですよ。あの檻は一番堅牢なんですし」

「そうそう。それにワニが来てから若干浄化が進んでないか?」

普段は偉そうにしているアクアの痴態を眺められただけでもう十分嬉しいのだが、そのことは言わず、濁っていた水面が透明度を取り戻す様をじっくりと見ていた。

 

 

「ドナドーナ……」

「な、なあ、もう檻から出ないか?」

「嫌よ。檻の中は安全だけど、外の世界は怖いもの」

当たり前のことだが、複数のワニに捕食されかけるという衝撃体験は彼女のトラウマになったようだ。普段ならばざまあ見ろと言ってやるところだが、その心中を察してやらなくもない。 なにせ一番堅牢な檻がひしゃげ、もう一時間でもあの湖に浸かっていたらバラバラになるレベルだった。

だが、そのこととは別として、今の状態はかなり目立つ。見た目は大変美しいアクアが傷心した様子で、しかも大きな壊れかけの檻の中に籠もっているのだ。端から見たら奴隷商か何かに見えるに違いない。

 不本意だし効果があるとも思えないがココで『神具』を使って心のケアでもしようか…? と考えたところで、声をかけられた

「め、女神様っ!? 女神様じゃないですかっ! 何をしているのですか、こんな所で!」

……何だか面倒臭そうな予感がする。

 俺の予想通り彼はアクアが入っていた檻を破壊して彼女を救助…する前にダクネスに止められた。

「……おい、私の仲間に馴れ馴れしく触るな。貴様、何者だ? 知り合いにしては、アクアがお前に反応していないのだが」

ごもっともな正論である。

 おそらくは彼はきっとアクアによって日本からこの世界に転生させられたチート勇者の一人なのだろう。だがまあ、適当なアクアのことだ。どうせ

「……あんた誰?」

やっぱ覚えてなかったか。

「何言ってるんですか女神様! 僕です、御剣響夜ですよ! あなたに、魔剣グラムを頂いた!!」

「…………?」

 

取り敢えず、カズマがコレまでの経緯を彼に説明した。これならば分かってくれるだろう。なぜ彼女が檻の中にいるのか。彼もきっとゼロから努力を積み上げてきたのだろうから同情し立ち去って

「……バカな。あり得ないそんな事! 君は一体何を考えているんですか!? 女神様をこの世界に引き込んで!? しかも、今回のクエストでは檻に閉じこめて湖に浸けた!?」

……コイツこそ何を考えているのだろう。

ああそうか。こいつはたいした努力もなくゴミのような正義感と使命感に燃えているんだろうな。

やあやあやり合っている彼らを見ながら一人、考察していると、ちょっと聞き捨てならない言葉が飛んできた。

「……クルセイダーにアークウィザード? ……それに、随分綺麗な人達だな。君パーティーメンバーに恵まれているんだね。それなら尚更だよ。君は、アクア様やこんな優秀そうな人達を馬小屋で寝泊まりさせて、恥ずかしいとは思わないのか? さっきの話じゃ、就いている職業も、最弱職の冒険者らしいじゃないか」

だろう? めぐみんは可愛いだろう? なにを鼻が高くなっているんだ俺は。

「君達、今まで苦労したみたいだね。これからは、僕と一緒に来るといい。もちろん馬小屋なんかで寝かせないし、高級な装備品も買い揃えてあげよう。というか、パーティーの構成的にもバランスが取れて良いじゃないか。ソードマスターの僕に、僕の仲間の戦士と、そしてクルセイダーのあなた。僕の仲間の盗賊と、アークウィザードのその子にアクア様。まるであつらえみたいにピッタリなパーティー構成じゃないか!」

そこまできてカズマが声を出すよりも早く、俺の声帯が震えた。カズマが仲間の様子をちらっと見たから、俺の方に発言権がシフトした形だ。

 

そのときの俺は、珍しいくらいに感情が表に出ていた。

 

「くだらぬ」

「……は?」

【嘲笑の悪魔】がついに、このパーティーに入ってから初めてその本性を現した。

 

「くだらぬと言っておろうがニンゲン。ゴミのような正義感と気色の悪い使命感に駆られて一生懸命だったであろうなぁ? 出来ない人間の気持ちが分からずに上から目線の救済を重ねて英雄気取りで楽しかったであろう? 魔剣もあるしな。切れ味だけが取り柄のガラクタのような剣が。

なんだその顔は? では俺と戦ってみるか? 貴様と同じような神具など数千とあるぞ。分かるか? お前は数千分の一の使い捨ての駒なのだよ。使い捨ての駒が暮らしを保証するとは随分とまあ、偉くなったものだな勇者風情が。所詮は寿命のある、知恵の付いた猿風情が、強大な生き物を狩って気分をよくしたのだな。気持ちは分かるぞ」

そして、俺が持ちかけた勝負に乗らんとする彼を冷たく見つめ、トドメを刺す。

「そうそう。俺との勝負に負けた際は魂とその魔剣の所有権は貰うからな。安心せい。すぐに死ぬわけでは無い。お前は選ばれた者なのだからな、魔剣無しに魔王でも倒した後の貴様の魂を俺はゆっくりとなぶるとするよ」

と、にやりと深く笑い、彼と彼の仲間、そして俺の仲間にだけ俺の姿を見せる。

 和服に朽ちた翼をもつ紅い目の悪魔、高慢なるテトロドとしての姿を――。

 

 彼らがふらふらと立ち去っていくのが見える。

「ふう…。追い払えました、ね……?」

「ごめんなざい…命だけは……!」

周囲の人間が皆、土下座していた。困惑していると、カズマがそっと近づいてきた。

「お前…悪魔の姿みんなが見てたぞ」

 

おっといけない。めぐみんを取られると思ってつい制御に失敗してしまったか。




 テトロドくんは人気投票はめぐみんのところ連打してそうですよね。で、かずめぐ読ませたらどんな反応するんでしょうか? ちょっと気になってきました。
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