この面倒臭い根暗に祝福を 作:漆塗り
「・・・おぉ」
レンガで建てられた家、道行く馬車、そして、言っちゃ悪いが地球では見ないような服装の人達。ドッキリなんかじゃなければ、本当に異世界に来ているみたいだ、なんだかワクワクしてきたぜ。
それにさきても、神の性格がゴミクズな感じの転生物じゃなくて良かった。支度金として10万エリス(価値は分からないけど)も渡してくれたし、アドバイスもしてくれたりと、良い女神様だったと思う。
さてと
「あのー、すみません。冒険者ギルドの場所を教えて貰えませんか?」
言葉は神パワーで覚えることが出来た、街の人の中で、人が良さそうな人を探してそう訊ねる。自分の経験上、こういう時に狙い目なのは2人以上のおばさんの集まりだ。基本的には気のいい人達だから少し関わるだけなら問題も起きない。異世界で通用するのかは分からないが。
「冒険者ギルドならすぐそこさ、あそこに見える赤い家で右に曲がれば、奥に一際大きな建物が見えてくるよ」
「あぁ、分かりました。ありがとうございます、助かりました」
ペコペコとお辞儀しながら離れ、その後は振り返らずに歩く。後ろをチラッと見るとなんだアイツ、と思われる可能性も少しある。
歩いていると、教えて貰ったとおり一際大きな建物に辿り着いた。1軒家2つ分位のサイズだ。
(でけぇドアだな・・・)
木製のドアをあけると、中の喧騒が一気に耳に飛び込んできた。
「いらっしゃいませー!お食事ならテーブルへ、冒険者絡みなら奥のカウンターまでどうぞ!」
「あ、はい・・・」
ウエイトレスらしき人に、そう言われた。どうやらここは酒場も兼ねているらしい。依頼を終えて疲れてる時に飯の匂いがすれば此処で金を落として行くと分かっているんだろう。
(・・・カウンター)
3人ほど受付らしき人が居る、美人で巨乳な金髪の受付嬢の所には10人を超える列が出来ており、並ばなければいけなさそうだ。
(いくら可愛くたってあんなあからさまに行くか?普通。望みなんてねぇだろ)
心の中では屈強な男達を馬鹿にしているが、勿論言葉どころか表情にさえ出すことは無い。殺される。
人の少ない所へと並び、ものの数分で順番が回ってきた。
「本日はどう言った御用事でしょうか?」
「ええと、冒険者になりたいので、手続きをお願いします」
「かしこまりました、先ず、登録費用として1000エリスが必要となりますが、宜しいですか?」
1000エリス。どれ位なのかは分からないが、必要となるなら払うしかない。
通貨の額は教えて貰ったので、1000エリスぴったりを支払った。
「はい、確かに。では、冒険者の説明をしますねーーー」
そこでの話は、あの世界で女神様に聞いたものと大体一致するものだった。
冒険者の証であるギルドカードを作成する為、カウンターに置かれている奇妙な球体に手をかざした。手をかざした瞬間から球体は綺麗な青の光を発し、その光は少しずつ増していく。
(綺麗な光だ)
「はい、これで完了です。貴方のステータスはしっかりとここに刻まれました。えぇと・・・オモイ コウメイさん、ですね。ステータスは・・・ウィザード向きですね。他の職業もなれない訳じゃないですが、1番活躍できるのはやはりウィザードだと思われますよ」
「冒険者でお願いします」
「・・・ぇぇと、冒険者?」
はい。
受付の人は、なんだコイツと言わんばかりの目で俺を見つめかけるも、プロ意識でそれを押さえ付けたような苦しげな表情をし、俺の説得に回った。
冒険者のデメリットを丁寧に伝えられたが、それは承知の上だと答えると、納得は行かないながらも受け入れてくれた。後で転職も可能だし・・・と言ってたから本当に納得はしてない。
まぁ、それでも問題なく登録は終わった。ここからするべきなのは情報集めだ。まず、ギルドの外に出る。途中、声を掛けられたが「急いでるんで」と、振り切った。
時計は無いが、太陽の感じからすると昼前だな、時間はある。外に出て向かったのは、途中で見つけていた商店街だ。1番初めに、物価を知らなくてはいけない。
数ある店の中からそこそこ人の姿のある八百屋を見つけた。値段を見る限り、概ね3桁エリスの物ばかりだ、次。
肉屋では、安いものはギリギリ3桁だが殆どは4桁で売られている。成程。
最後に屋台、野菜のサンドイッチのようなものが売られていて、一つあたり200エリスらしい。客も特にリアクションを見せずに買って行くことから高級品という訳でもないだろう。食事の物価は大体把握した。次は装備だな。
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安物らしき鉄剣 15000エリス
安物らしき皮鎧 20000エリス
「・・・これは無理だな」
残金の半分ほどが無くなる、まだ準備は出来てないのに払ってしまうとどうなるかが分からない。となると直ぐにでも狩りをするなんて事は出来ない訳だが・・・。
みーー君ーー!
「君ってば!聞こえてないの!?」
「うぉっ、なんだよ、あ、いや、なんですか?」
考え込んでいたら、誰かに声を掛けられていることに気が付かなかったようだ。と言うより、知り合いもいないから話しかけられるとは思っていなかったのだが・・・。
「あ、さっきギルドに居た・・・」
ギルドから出る時に話しかけられた、銀髪の女の子が後を追いかけて来ていたようだ。俺になんの用だろう。
「君、結構足速いね・・・人の間もスルスル抜けてくし。追い付くのに苦労したよ」
「はぁ・・・えぇと、それで、なにか御用ですか?」
そうだった、と女の子は呟き、
「あのね、ギルドでのやりとり見てたんだけど、この業界にあんまり詳しくないみたいだね?」
「まぁ・・・はい」
それがなんだと言うのだろう。
「で、ちょっと危なっかしいなーと思ってね。君が良ければなんだけど、あたしに冒険者のノウハウを教わる気はないかな?」
・・・は?
ちょ・・・、こんな状況は予想外だ。そんな事をしてコイツになんのメリットがあるんだ?ギルドで見掛けたルーキーを心配して、こんな所まで追いかけてくるなんて普通ないだろ。
「あー、怪しまないで?ホントにただ、そう。助けたいなーって思っただけだからさ」
いや・・・無理だろ・・・
「じゃ、じゃあさ。スキルだけでも覚えていかない?確か冒険者だよね。なんのスキルもない状態だと危ないじゃん?ほら、幾ら怪しいヤツでもこんな往来で悪いこと出来ないって」
えぇ・・・何がしたいんだ、この人は。確かに、こんな所で変な事をしても直ぐにバレるだろうけど・・・ハッ!いや、待てよ。ここは異世界だ。俺の想像もつかないような方法で悪事が行われるかも・・・
「(なんでそんな思考になるんですかぁ〜!)ぇ、えぇと、あ、ほら!コレ見て?あたし盗賊で、魔法なんかも使えないしさ、変な事をなんて出来ないよ〜」
「盗賊なんて悪い事しかしなさそうなんだけど・・・あ」
しまった、口に出していた。
「いやいやホントほんと、攻撃の技も殆どないし、ね?ホントに人助けしたいだけなんだって。信じてよ」
思わず悪口が出てしまった俺に気を悪くする事もなく、笑顔を浮かべそう言う彼女。ここまでされると、なんだか罪悪感が・・・。
「・・・じゃあ、5000エリス受け取って貰えますか。無償はやっぱり信じられないので」
「(面倒臭い・・・)・・・うん、それでいいよ。じゃあ早速やろう!」