この面倒臭い根暗に祝福を 作:漆塗り
「私の名前はクリス、よろしくね。じゃあまず、どうやってスキルを覚えるのかは知ってるかな?」
道のど真ん中でやるわけにも行かないので、端によってからいきなり冒険者講座が始まった。
「一応(女神様に教わったし)」
「なら、話が早いね。居心地悪そうだし、手早く済ませようか」
窃盗
敵感知
潜伏
短剣術
俺が教わったのはこの4つだ。
窃盗は相手から確率で物品を奪い取ることができる。俺は運が悪いので、相手の持っていた石ころしか奪えなかったが。
敵感知・潜伏は合わせて教えられた。後ろを向いて、と言われその後衝撃が頭に走った時はやっぱり悪人だったのかと思ったが、それ以上は何もなく。後ろを見てみるとクリスさんの姿は無かった。あるのはあからさまに怪しい樽のみ。
「・・・」
もし相手が嫌いな相手だったら思い切り蹴飛ばしたのに、教えて貰ってる立場だから苛立ちを抑えるしかねぇな。
最後の短剣術は剣舞を見せてもらい、習得した。
何となく剣の使い方が頭で理解出来るようになり、少し怖かったが知らない言語が分かるという経験をしているので問題ない。
「とりあえず、コレがあれば最低限大丈夫かな。何か聞きたいことはある?」
「・・・じゃあ、日収はどれくらいですかね」
「日収って・・・うぅん。10万エリスくらいかなぁ」
恐らくそこそこの腕利きであろうエリスさんで、10万か。命の危険のある職業でそれは、高いのか?分からない。
「まぁありがとうございました助かりましたコレ、お礼ですそれでは」
相手の目的がなんにせよ、教わる事は教わったので5000エリスを支払ってその場から離れる。
「ぇちょ、待ちなy」
物陰に隠れて潜伏!その後は人混みに紛れながらギルドへと向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ギルドで、本が読める場所はないかと聞いた所、ギルドに一般開放されている資料室があると言う事を教えて貰った。一言断りを入れてから資料室へと入る。
あの荒くれ者達が利用するとは思えないが、キチンと掃除されているようで埃っぽさは感じない。
(スキル・・・後は魔物・・・あった)
目当ての資料を発見し、備え付けの読書スペースへと移る。戦闘の経験が無い俺にとってスキルとは生命線だ。めぼしい物に目を付けて、冒険に出る前にどうにか習得したい。そして魔物の資料も読んでおく。討伐するかもしれない相手の特徴をしっかりと覚えておきたい。暮らしていたら身に付く常識も持っていない訳だしな。
ーーみーーきみーー!
「おぉい・・・!君・・・!また無視かい・・・!?」
「え?・・・あ、すみません。って、クリスさんですか」
読むのに夢中になっていて、身体を揺すられるまで全く気が付かなかった。
と言うか、なんで俺の場所がバレてるんだろう。
「全く、まだ話は終わってないのにいきなり居なくなるから、探すのに苦労したよ」
「えぇと、それは申し訳なかったですけど(・・・いや、申し訳なくはないか)なんで俺のいる場所が分かったんですか?」
「え?そ、それは・・・盗賊だからね。幾らでも方法はあるのさ」
・・・へぇ。怖いけど、みつかってしまったものは仕方ないか・・・。
「んん、君がまた逃げるといけないから、最初にコレから聞いて欲しいことを言うよ?まずね、この街の駆け出し冒険者は皆馬小屋に泊まるの」
マジカヨ
「宿は1泊でも1万取られたりするからね、お金が無いととてもじゃないけど無理だよ。それと、最初の頃によく狙いに行くジャイアントトードについてだけど」
「あ、それはもう大丈夫です。資料に載ってたんで。金属製の武具を持ってなかったら、呑まれる危険があるんですよね」
「・・・そう、だけど。あぁ、資料読む為に此処に来てたんだね。キチンと準備をするのは偉いよ」
むしろ資料読む以外で何をしに資料室に来るんだろうか?
「じゃあ、後は1つだね。もし、討伐クエストに行くのなら、絶対に1人じゃダメだよ。パーティを組まないと、ね」
「あー、・・・はい」
言いたいのはそれくらい、じゃね。そう言ってクリスさんは資料室を出ていった。・・・ここでも、何かされることは無かったな。こっそり敵感知を使ってたけど、敵意は感じなかったし。まぁ、理解は出来ないけど、お人好しなんだろう。
「パーティか・・・」
まぁ、そりゃそうだな。魔法も技術も何も無い冒険者が1人で出来ることなんてたかがしれてる。
そして魔法も技術も無い冒険者が入れるパーティなんてたかが知れてるんだよなぁ・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
時刻は3時頃。新たに狩りに出かけるには遅く、仕事を終えて飲みに来るには早い。そんな中途半端な時間に資料を読み終えた俺は資料室を退室し、掲示板を眺めていた。
『ジャイアントトードの討伐(3匹)5万エリス』
ジャイアントトードが3匹の小さな群れを作った、1人では追い払うのも難しいので討伐して欲しい。
『別荘の掃除 1万エリス』
使っていなかった別荘でパーティを行うこととなったので、なるべく早く掃除を終えて欲しい。仕上がりで追加報酬アリ
簡単そうな依頼は、やはり報酬が安い。1・2日かかりそうな依頼でもパーティで挑めば宿に泊まれない位の物になってしまう。馬小屋に泊まるのもやむ無しなのだろう。
まぁ、命と尊厳を天秤にかけたら大概は命に傾くんだろうな、そう思いながらパーティ募集の掲示板を見た。
『中級以上が使えるウィザード1名募集』
今のメンバーはシーフ、ナイト、アーチャーです。
『罠発見・解除の出来るシーフを募集してる』
近々ダンジョンを探索する予定だ、今はウィザード、戦士、プリーストなんでシーフが欲しい。
(大半は無理だな)
募集条件を全然満たしていない。
初心者の募集でも、あんまり自分にぴったりの募集は無かった。欲しがられるのはウィザードが多く、次いでプリーストだ。シーフや戦士は基本的に溢れているらしく、余りみない。
(おっ、これは・・・?)
『職業不問』という文字が目につき、その募集紙を手に取ってみる。
『パーティメンバーを募集しています』
当方紅魔族のアークウィザードです
レベル・職業は不問です
アークウィザード、確かウィザードの上位職だったかな。そんで紅魔族ってのも確か・・・魔力と知力に優れ、ウィザードに向いている種族・・・だったっけ?スキルの資料に乗ってた気がする。皆上級魔法ってのを覚えてるんだったっけな
・・・んなとこにレベル1の冒険者が行ったら流石に呆れられるな。寄生する気満々かよって感じだ。
ん?待てよ。この紙2枚目が・・・
『追記』
名前を笑わない方
意地悪をしない方
噛んでもゆっくり話を聞いてくれる方
たまに一緒にお出かけしてくれる方
ご飯を一緒に食べてくれる方
etc・・・
そんな人を募集しています
えぇ・・・(困惑)
文面見るに、ぼっちだ。それも相当こじらせてるよ。文に切実さが滲み出てるから釣りなんてことも無いだろう。俺は人間の良い感情はあまり信じないが悪感情は信じる。人間の本性は悪い所にこそ出るものだと俺は思っている。
こんなに真剣に友人を求めてる人なんて初めて見た、いや、求めてるのはパーティメンバーなんだけど、コレはもう友人募集でいいだろ。
こんなこじらせてる人が社会の闇に飲まれず未だに生き残ってるとはな・・・。正直騙されて借金背負ってたりしてもおかしくないぞ。
・・・コレなら、冒険者が行っても問題無く受け入れられそうだ。俺は表面だけなら万人に嫌われない、良い人な自信がある。
・・・行くか。
剥がした募集紙を持ち、カウンターへと向かう。時間帯が微妙なので、人は並んでいなかった。
「すみません、パーティの事なんですが。この人のパーティに入りたいんです」
「かしこまりました。パーティですね。えぇと・・・えっ」
募集紙の詳細を確認し、2枚目の文面を読んだ受付嬢さんは俺を正気かと言うような目で見てきた。流石に抑えられなかったようだ。
キチンと正気である事を伝え、パーティの申請を催促する。
「この募集を出している方は、その、あそこの隅に座っている方です」
指さされた方向に目をやる、そこに居たのは
複数の箱を使用しているのであろう、超巨大トランプタワーに挑戦している少女だった。