この面倒臭い根暗に祝福を   作:漆塗り

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ゆんゆんは、拗らせたらこれくらいやりそうだなぁって。


病ん病ん

ゆんゆんは、どうにも俺の中級魔法習得祝いとしてギルドでお祝いをしようとしているらしい。ちょっと意味が分からない。

 

俺のアドバイスへのお礼はスキルを教える事で終わった話のハズ。態々その後お祝いまでする理由は無い。そもそも初対面同士が、しかも人付き合いが苦手な2人が一緒に飲んだ所で楽しくは無いと思うんだが。

 

「き、気持ちは嬉しいんですけど・・・うっ」

 

うるうる

 

そういう音が聞こえてきそうな程に潤んだ瞳。かなりの勇気を出して言った言葉らしい。

 

(もしかして、俺が怖気付かずに、とか言ったから・・・?)

 

そんな所で勇気を出さなくてもいいのだが。しかし、コレを断るのはそれなりに度胸が要るな。向こうはそう思っていないかもしれないが、俺のアドバイスは正直スキルの対価として足りていない物だったので後ろめたい気持ちがあるからだ。

 

パーティの募集文にも『ご飯を一緒に食べてくれる方』なんて書いていたし、誰かとご飯を食べてみたいのだろう・・・不憫だ。

 

(・・・俺実は薄幸少女が好きなんだよな。現実だから尻込みしてたけど)

 

光明は折角天下無双の力を得れる機会に『どうすれば多くの人助けに繋がるのか』を考える男だ。基本的には優しい(?)男である。タブンネ

 

「まぁ、中級魔法以外にも教えて貰った恩があるので、お言葉に甘えましょうかね・・・」

「!ほ、ホントですか!(や、やった!家族以外と一緒にご飯を食べるなんて、久しぶりだなぁ・・・グスッ)」

 

潤んだ瞳を通り越して、既に泣き掛けている。そんなに嬉しいのか・・・不憫だ。

 

「(よ、よし。この機会を逃さないように、あの作戦を・・・!)」

「ん?何か言いました?」

 

イ、イエナニモッ。変に焦りを含む声、何か聞かれたくないことを呟いたのか?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「そ、それではコウメイさんの中級魔法習得をお祝いして、かんぱい」

「かんぱーい・・・」

 

侘しいお祝いである。特にめでたいとは思っていない上に2人、盛り上がりは望めないだろう。

 

手元にはゆんゆんに『お、美味しいですよ!飲んだ事ないけど・・・』と勝手に注文されたお酒が。ネロイド?と呼ばれていた。なんで勝手にお酒を頼むのか、コレガワカラナイ。

広場を出てから、随分と積極性が増したような気がする。そのやる気は俺にではなく、パーティメンバーの獲得に使って欲しいものだが。

 

まぁ、お酒については問題ないだろう。この世界の法律では既に飲んでも問題ない様だし、地球でもこっそり飲んだ事はある。家系的にも強いらしいのでそこまで心配はしていない。

 

グイッ

 

味的には・・・甘みがある。癖のない甘酒みたいな感じだな。普通だ。つまみによく分からない肉やチーズの何かを食べたりして腹を膨らませた。そう言えばこちらの世界に来てからまだ何も食べていなかった。

 

(と言うか、まだ1日目何だよな・・・)

 

随分と濃い一日を過ごした気がする。地球では、平日は学校だし、休日も一日スマホをつついているだけで過ぎていく日々だった。

 

(あ、そう言えばスマホ無いんだ。俺大丈夫かな)

 

光明はかなりのネット中毒者だ。ゲームも好きだったし、ネットで小説を読む事も多かった。

 

まぁ仕方ない、と問題を先送りにした所で、ゆんゆんが声を掛けてきた。最初はお互いの自己紹介なんかの当たり障りのない話題だったが、少し困る物も。

 

「あ、あの、コウメイさんって、なんで冒険者になろうと思ったんですか・・・?」

(あー、どう答えりゃいいんだろうな)

 

女神に世界を頼まれたので、とは答えられない。となると適当に言うしか無いのだが・・・

 

「えぇと、まぁ、男によくある理由ですよ。魔物とかとカッコよく戦う冒険者って言う職業に憧れたからです」

「な、なるほど・・・」

 

勿論微塵も憧れていない。上手く誤魔化せた所で、コッチからも質問を投げてみる。

 

「ゆんゆんさんは?」

「ふぇ?」

 

ふぇ?って、クソっ可愛いなおい。3次元に呑まれる・・・

 

「冒険者になった理由ですよ」

「あ、あぁ。私はその、とあるライバルを見返したくて・・・」

「ライバル?」

 

酷なことを言うが、この子とそんな関係性の人間が居るとは思わなかった。

それからゆんゆんは、そのライバルとの馴れ初めを話し始める。

 

里の学校で、何時も相手は1番、自分は2番だった事。

 

族長の娘として負けていられないと勝負を挑んでも、毎回マトモに戦ってくれない事

 

お弁当を毎日食べられていた事。

 

「・・・それは、ライバルなのかな?」

「ら、ライバルですよ・・・多分」

 

自分で言っていて自信を無くしたらしい。しかし、その子の事を話している間の顔は今日の中で1番落ち着いていて、信頼しているんだろうなと感じさせた。

 

(じゃあ、その子との関係を改善させれば、友達もGET出来てこの子も助かりそうだな)

 

話を聞く限り、強かな子のようだし。

 

「そ、そんな事より、もっと飲みませんか?その・・・めでたい日ですしググッと、さぁもう1杯」

「え、いや、・・・うん、ありがとうございます」

 

少し考え事をしている間に、目の前はお酒らしき物でいっぱいになっていた。おかしいな、俺は1つも頼んでないのに・・・。

 

さぁさぁと勧められるままにグイグイと飲んでいくが、そんなに酔っている感覚は無い。身体は熱くなっているが、クラっとしたりと言うものは感じなかった。

 

「(お、おかしいわ。戦士の人でも、これくらい飲んだらベロンベロンになっていたのに・・・。こうなれば、奥の手の・・・)」

 

「さ、流石にお酒はもういいよ、お腹が苦しくなってきた」

 

食い物もロクに入っていないのに、水分だけで腹が膨れてしまった。お腹は苦しいが食べたという感覚はないので腹は減っている。誤算だった・・・

 

「そ、そうですね(えぇい、怖気付いてちゃダメよゆんゆん!『スリープ!』)」

 

じゃあ、そろそろお暇します。と、言おうとした瞬間、いきなり視界が歪んだ。

 

(あれ、ね、む・・・)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

チュンチュン・・・

 

「ん・・・?あれ、俺いつの間に・・・」

 

ぼうっとする頭を働かせ、記憶を掘り起こす。

 

(中級魔法教えて貰って、お祝いつって酒飲んで・・・あれ?俺、酔って寝たのか・・・?)

 

最低じゃないか。酔っ払って寝落ちとか・・・。てか、ここ何処だ。

 

どこかの一室みたいだ、俺はベッドで寝ていた。

 

「記憶に無いけど、宿を取ったのか。馬小屋で我慢するつもりだったんだけど・・・って、俺服脱いでるじゃん」

 

偶に、寝苦しい時は抜いじゃうんだよな。えぇと、服は何処だろうか・・・

と、部屋を見渡すと、何やら違和感のある物を見つけた。ベッドの横に膨らんだ毛布が落ちていたのだ。

 

「あぁ、また布団蹴ったのか。俺寝相悪いからな・・・」

 

それにしても、この部屋を取るのに幾ら掛かったんだろう・・・安くても1万らしいし、いい所だから3万とか・・・?

なんて事を考えていた俺を、予想外の事態が襲う。

一息に毛布を取り去り、とりあえず一眠りでも・・・えっ?

 

「・・・えっ・・・!?」

 

毛布の下に隠れていたのは、人間だった。ゆんゆんだった。

 

「アイエエエ!?ユンユン!?ユユンユンナンデ!?」

「ん、・・・はれ?なんでこーめーさんが・・・、!(そ、そうだ、私が運んだんだった)」

 

待て!そうなると俺は、酒に酔って正気を失った挙句年下の女の子の家に転がり込んで家主を床で寝かせたクズという事になるぞ!というかなんで俺は裸なんだ!?寝苦しいからじゃなくて・・・、ヤッタノカ・・・?

 

「うわぁぁぁっ!!」

 

光明は後にこう語る

『あの日、俺は命を絶とうと思った』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

衝動的に壁に頭を打ち付け始めた俺はゆんゆんの手によって止められた。女の子の細腕に抵抗も出来なかった俺のプライドはもうズタボロだ。

それからゆんゆんは俺に昨日の事の顛末を話す。

 

俺は食事の最中に急に倒れてしまった事

置いていく訳にも行かないので、ひとまず宿まで運んだ事

服は食べ物で汚れてしまったので、自分が脱がせた事

 

(・・・やってない!最高の気分だ!)

 

俺は人としての最後の一線を越えていなかった!よくやったぞ俺、しかしもう酒は飲まない。

 

洗濯されていた服を着終えた俺は、ゆんゆん、いやゆんゆんさんへと向き直り深深と頭を下げ謝った。

 

「自分で飲んでおきながら酔っ払ってしまって本当に申し訳ございません。介抱して下さり、本当に助かりました。コレはほんの少しばかりの気持ちです。・・・すみませんでしたっ!」

 

俺は服のポケットから小分けした財布用の袋をベッドへと並べ、脱兎のごとく逃げ出した。ヤッテナカッタとしても、ゆんゆんさんの前に立つと胸が痛くなるからだ。

 

「い、いえ。ドンドンお酒を飲ませた私が1番悪いので・・・(ホントは無理やり眠らせただけだし・・・)って、あれっ!?」

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