この面倒臭い根暗に祝福を   作:漆塗り

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自分が主人公の作品を書くのが恥ずかしくなってきました


孔明に罠

何をするにも金が必要だ。ゆんゆんさんに殆どの財産を渡したので、5000エリスしか残っていない。道に迷いながらもギルドに辿り着いた俺は、掲示板を眺める。昨日ならどうするか悩んでいた所だが、今の俺には魔法がある。クリスさんに習った盗賊スキルも合わせれば、少しはやれるんじゃないだろうか。幸い、早い時間に寝たおかげで今は朝早くだ。依頼も多く残っていた。

 

『ジャイアントトード3匹の討伐』

 

(受けるか、期限も3日あるし、一日一体倒せればどうにか)

 

その依頼表を剥がし、カウンターへと持っていく。昨日何かと世話になった受付の人は居なかったので、1番近いカウンターに向かった。

 

「すみません、この依頼を受けたいのですが」

「はい、少しお待ち下さい」

 

職員が手元の資料を捲り、重井 光明と言う冒険者がこの依頼を受けたという事を書き記す。と、ふと職員の手が止まった。

 

「申し訳ございません、|パーティリーダーのゆんゆんさんはいらっしゃいますか?《・・・・・・・・・・・・・・・・・・》リーダーに任命された人、若しくはリーダーから許可を貰った人でないと依頼は受けられないんですよ」

「・・・えっ、と。パーティリーダー?」

 

どういう・・・あぁ、そう言えば受付の人にはパーティに入りたいって事を伝えてたな。なら、俺がパーティに入ったと勘違い・・・してるのか?

 

「えぇと、すみません。自分は昨日受付でパーティに加入したいと手続きしたんですが、結局パーティには入れなかったんですよ。報告が遅れました」

 

報告しないと、こういう間違いが起きるんだな。知らなかった。そう納得した俺とは違い、受付嬢は怪訝な表情をする。

 

「?いえ、資料によるとゆんゆんさんが昨夜、コウメイさんとのパーティ結成の手続きをされたようですが」

 

???

 

どういう事だ?そんな記憶はさっぱり・・・ハッ!

 

酔っ払ってる間に・・・そういう感じになったのか!やらかしたな俺!

パーティ入るつもり無かったのに・・・そんなに女の子のパーティに入りたかったのか酔ってる俺・・・。

 

「えぇっと、そのパーティ登録って解消出来たりは・・・」

「無理ですね、リーダーと抜けるメンバーの両方が揃っていないと」

 

( ◜ ࿀ ◝ )

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

酒なんて飲むもんじゃないなと再確認した俺は、ゆんゆんさんを探しにギルドから出た。逃げ出して来たのに直ぐに戻るのは気恥ずかしいが、仕事が出来なければ生きていけない。まだ街のほとんどに見覚えが無いことを逆に活かし、出てきた宿へと戻る事に成功した。と

 

「あ、ゆんゆんさん」

「こ、コウメイさん!戻って来てくれたんですね!」

 

丁度、宿を出たゆんゆんさんと出会う事が出来た、声を掛けるまでは何処か落ち込んだ様子だったが、こちらの存在に気がつくと一気に元気になった。

まぁ、向こうからすれば

長年ぼっちだったけど遂にパーティメンバーが・・・!って感じだったのに逃げられたという事だし、申し訳ない事をしたな。

 

「ゆんゆんさん、先程ギルドに行ってきたんですが」

 

ビクゥ!

 

「すみませんでした、昨夜の記憶が飛んでいて。パーティを組んだ事を忘れてたみたいです」

「イ、イエ、コウメイサンハワルクナイデスヨ・・・(私が勝手にやったんだし・・・)」

 

・・・?随分とビクビクとしているみたいだ。もしかすると、また逃げられてしまうかもと不安がっているのかもしれない。

 

「安心して下さい。正直全く覚えていませんが、1度決めたからにはもう逃げません」

 

そう言えば安心して貰えるかと思ったが、どうにも緊張が取れない様子。

 

(まぁ、そう簡単に信用出来るものじゃないか)

 

入るつもりは無かったが、もう入ってしまったのだから仕方ない。強力なアークウィザードの力を貸してもらえるんだし、結果オーライだと思っておこう。ゆんゆんさんは、悪い人間では無いだろうし。

 

「そ、その、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」

「えぇと、若輩者ですが。よろしくお願いします」

 

こうして、正式にパーティが結成された。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(え、えへ、えへへへ。私にも遂にパーティメンバーが・・・!)

 

相手はオモイ コウメイさん。17歳らしい。初めに声を掛けられた時は、その、目が少し怖くて萎縮しちゃってたけど、話してみるとすごく優しい人だった。名前を聞いても、少し驚いただけで全然笑わなかったし、見ず知らずの私の為にアドバイスまでしてくれた。まぁ、それは魔法を習うって言う目的もあったらしいから少し残念だったけど・・・。

 

年下の私にも敬語で丁寧に接してくれて・・・人付き合いが上手く出来ない私の事をからかったりもせず、優しくしてくれる人はコウメイさんが初めてだった。

 

コウメイさんの『怖気付かなくていい』って言葉でなんだか気が楽になった私は、少し勇気を出してみる事にした。

まだ会って間もなかったけど、人生で初めて男の人を食事に誘ったし、食事の間も普段より頑張って会話をした。

 

(・・・ホントは、普通にパーティに誘うつもりだったんだけど・・・)

 

やっぱりそこまでは勇気が出なくて、2つ目に考えていた『お酒を飲ませてなし崩し的にパーティを組もう作戦』を発動する事になった。

でも、それも上手くいかなくて、焦った私は魔法に手を出した。

 

(あんなにお酒に強いなんて、予想外だったわ・・・)

 

やってる事が悪い事だって言うのは分かってたけど、コウメイさんなら許してくれる気がして・・・。思わずスリープを唱えてしまったのだ。

コウメイさんはレベル1の冒険者、魔法抵抗も弱く一瞬で意識を失い机に頭を打ち付けた。申し訳気持ちでいっぱいだったけど、今の機会を逃してしまえばもう二度と勇気が出てこなくなるのが何となく分かったので、つい。

 

そのあとはカウンターでパーティを結成した事を伝え、眠っているコウメイをどうにか宿まで運び、ベッドへと寝かせた。上着は、汚れていたのであまり見ないようにしながら脱がせて魔法で洗濯した。

 

その後寝ようと思っても、同じ部屋に男の人が居るって意識しちゃうと目が冴えちゃって、暫くは寝れなかった。

 

朝起きた時は混乱したけど、私よりも混乱したコウメイさんがいたから直ぐに落ち着けた。コウメイさんからすれば何が何だかだもんね、申し訳ないと思いながらも嘘の説明をして、さぁ最後。パーティの話をしようと思った瞬間にコウメイさんは部屋を出ていってしまった。

悲しむと同時に、コウメイさんの置いていったお金を見て、私は酷いことをしてしまったのだと理解した。

心優しいコウメイさんなら、お酒に酔って正気を失ったとなれば自分に責任を感じてしまうだろう。何も起きていない、と言うのは問題じゃない、何が起きてしまうかもという事が、コウメイさんにとっては問題なんだ。

 

その時私は、もちろん反省してたけどそれ以上にコウメイさんの優しさが嬉しく思った、やっぱりコウメイさんは私の事を大事にしてくれる・・・♡

 

ゆんゆん14歳。里で、騙されていると分かっていてもお金を貸してしまうような彼女。

 

チョロ紅魔族だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「リーダーはゆんゆんさんなので、従いますよ。まぁ、出来れば簡単なもので慣れていきたいんですけども・・・」

「ぜ、全然大丈夫ですよ!!で、でも、そのままじゃ危険だと思うので、装備を買いに行きませんか?」

 

和解?した後、これからどうするかという話になったのだが。ゆんゆんさんはそんなことを言い始めた。

 

しかしながら俺は今、ほぼ無一文である。

 

「あ、それは、さっきのお金を返せば・・・」

「いえ、それはお詫びの気持ちなので、受け取って下さい」

 

しかし、無装備は危険だというのももっともな意見である。

 

・・・

 

「そ、それなら、私がもともと持っているところからお貸しします・・・よ?あんまり変わらないかもしれませんけど・・・」

 

14歳、中学生の女の子から武器を買うお金を借りる高校三年生の男。ゴミじゃん。

それ以外に選択肢が無いことは分かっているが・・・ぬぅ・・・。

 

「・・・お願い、します・・・」

「か、返さなくてm「いや、直ぐにでも返します」は、はい」

 

俺は、『わりー、100円貸してくんない?』と、貸してと言いつつも返すつもりが微塵もないカスとは違うんだ。変に誤魔化さず最初から頂戴って言えよウザいから。

そんなことを言えば面倒なことになるから抑え込むのだが。

 

そういう感じで、俺たちは武具を扱っている店へと向かった。


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