学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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あけましておめでとうございます!(←その年最初の挨拶ならセーフ)
そして,お待たせして大変申し訳ありませんでした!!!(全力土下座)


諸々のことは後書きに回すとして,まずはお納めくださいませ.


時節ネタ:冬休み

 学園生活部において突発的なイベントが始まる時、基本的にその発端となるのは凪原か早川、或いは由紀であるのが通例だ。

 そして今回の場合誰かと言うと,早川である。

 

「冬休み期間全員仕事禁止ね」

「どうしたよいきなり?」

 

 なんでも彼女の基準で言えば自分達は働きすぎ、頑張りすぎであるらしい。

 このままでは疲れが溜まる一方なためここらで一発派手にだらけておこう、とのことだった。

 

 彼女に照山、凪原と胡桃で構成される戦闘組は分かりやすい。

 主な仕事は拠点周囲の哨戒及び安全確保、そして物資調達のための遠征である。このご時世、一度外に出ようものならほぼ確実にゾンビとの戦闘が複数回発生するので文字通り命がけの仕事だ。

 

 さらに加えて旧拠点である巡ヶ丘学院とレゾナンス巡ヶ丘の見回りと維持管理も行っている。

 ゾンビの巣窟になったり素性のしれない連中の根城にされることを防ぐためだが、こちらは放送局から距離があるため泊りがけになってしまう。

 一切の支援なしで、かろうじて把握できている地形や状況すら変わってしまっているかもしれない場所で活動するというのは精神にかなりのストレスがかかる。

 

 以上のような仕事を程度の差こそあれほぼ毎日行っているのだ、彼等の心身に溜まる疲労具合たるや推して知るべし、といったところだろう。

 

 

 ところで、戦闘組だけが特に疲れているのかと言えば決してそんなことはない。

 むしろそれ以外のメンツの方が深刻な点すらあった。

 

 

 まずは慈と悠里の家事組、通称『お母さんチーム』

 

 家事の重要性については改めて言うまでもない。

 自宅での日常生活におけるすべての行動と共に家事があると言っても過言ではなく、しかもそれは毎日──戦闘組の仕事とは違い文字通り一年365日という意味──朝昼晩と途切れることなく発生するのだ。

 一般家庭における専業主婦の年収を計算してみると600万を超えるという試算もある。総勢11人の学園生活部全員分の家事ともなれば1000万を超える労働量となっても不思議ではない。

 

 もちろん彼女達だけで全ての家事をこなしているわけではなく、他のメンバーも積極的に手伝ってはいる。

 しかし責任感が強いうえに我慢強く、さらには気配りも上手な2人である。周りが気付いていないところで疲労と気苦労を貯め込んでいるに違いなかった。

 

 

 続いて、葵を筆頭に由紀、美紀、圭の自称『大家さん&下宿生チーム』

 

 この面々のやることは多種多様だ。具体的にはお母さんチームの家事手伝いを始めとして拠点敷地内及び外縁の安全確保、戦闘組の遠征への同行やドローンを使用した警戒システムの維持管理といったところである。

 特に最後はかなり重要度が高い。いくら戦闘組が日々脅威の排除に動いてるとはいえ、二人組(ツーマンセル)が2組だけでは──たとえそれが人外×3+その領域に片足突っ込んだのが1人であっても──必ず漏れができる。

 ゆえにこそ,上空から広範囲を素早く索敵できるドローンは現在の学園生活部にとって必要不可欠だった.

 

 いわゆる便利部門のようなもので,他のチームの手伝いをすることも多いためにその日によってすることが変わるというのも珍しくない.

 予定が容易に変動し得るという点から,最も気が休まらないのはこのチームかもしれない.

 

 

 最後に、瑠優(るーちゃん)

 

 そのタスクはしっかり勉強することと遊ぶこと,そして何より日々を健康に過ごすことだ.

 「何を当たり前のことを」と思うかもしれないが,彼女が少し前まで世界で最も治安のよい国とされる日本の 小学生だったことを忘れてはいけない.

 本来彼女程度の年齢であれば保護者に教師,地域の目の庇護の下で何も心配せず,何も不安に思うことなく,健やかにのびのびと過ごしていたはずなのだ。朝起きて学校に行き、同い年の友人達に囲まれながら広いグラウンドを駆けまわっていていいはずなのだ.

 

 それが今は、最も年が近い美紀と圭ですら10歳ほどの差があり,生活の場は家としては広くとも学校として見ればあまりに狭い.

 安全こそ確保されており、日々の中で見せる屈託のない笑みは凪原達の癒しともなっているが根柢のところで精神に負荷がかかる環境であることは間違いない.

 

 

 以上のように,学園生活部の全員がそれぞれの理由で無意識のうちにストレスを溜め込んでしまっている,というのが早川の言い分だった.

 確かに言っていることはもっともであり,凪原はもちろん何を言い出すかと身構えていた慈悠里美紀の良識枠も面々も納得した.

 

 『ではどうすればいいのか』というと,早川の提案は『非日常をめいいっぱい楽しむ』というものだった.

 日常が失われ,いわば毎日が過酷な非日常の中で何を言っているのかという話だが,早川が言っているのは日常の中にあった非日常だった.

 

 昔の日本に合ったハレとケの概念.

 

 ケの日常のを穏やかにほどほどに騒がしく生き,偶のハレの日は思いっきり羽目を外して騒ぐ.それが江戸っ子の粋な生き様というものだ.

 

 

 別に早川どころか学園生活部のうち誰一人として江戸っ子はいないが,そんなんことは大した問題ではない.

 大抵の場合において,最も大事なのはノリと勢いである.

 

 

 

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「───にしてもこれはやりすぎじゃねえの?」

「お前も嬉々として準備してたくせに今更何言ってんだ」

 

 そんなこんなで年が明けてしばらく,コントローラーを握りながら思い出したようにぼやく照山に凪原が呆れたように答えた.

 

「そうだけどよ,冷静に考えてこれは変化しすぎだろ」

「そりゃまぁ…たしかにな」

 

 なおも続ける照山に答えつつ,凪原もチラリと視線を部屋全体へ巡らす.

 ワンワンワン放送局のリビング,以前から学園生活部の憩いの場であったこの空間は,劇的なまでに様変わりしていた.

 

 まず,ほとんどの家具が撤去されている.

 普段であればダイニングテーブルやソファーなど,多くはないにしても一般的なリビングと同じくらいの家具は置かれていたのだが,現在残っているのはこたつとテレビの2つだけだった.

 ではその分部屋が閑散としてるのかと言えば決してそんなことはなく,むしろ常よりもせせこましい印象を受ける.

 

 

 床一面に布団が敷かれているからである.

 

 下のフローリングがほぼ見えないほどに敷き詰められた布団達──明らかに凪原達の人数よりも多い──の上には当然同じ数だけの枕と布団.凪原達元生徒組が巡ヶ丘高校の指定ジャージ,慈と葵の社会人組だけは普段と同じような服装であることも相まって合宿の大部屋の様も見える.

 とはいえテレビには据え置きのゲーム機が繋がれ,その辺には大型クッションやらカードゲームやら漫画やらが散らばり,挙句の果てには壁にプロジェクターで映画が映し出されている現状ではなにも学べるとは思えない.

 

 この,いるだけで人間性を喪失していくようなだらけ空間こそがここ数日の学園生活部の生活空間である.

 疲れたらその場に倒れ込むだけで休めるうえ,何なら柔らかな布団や独特の感触が癖になるクッションに包まれてそのまま仮眠もできる.手が届く範囲には少なくとも2つ以上の玩具が有り,室内でみればおよそ考え得るすべての屋内型娯楽が完備されている.

 そしてなにより,それらを一緒に楽しめる気心の知れた仲間がいる.ここでだらけずしていつだらけるのかと言わんばかりの至れり尽くせり具合だった.

 

 そして,家事の類も作業量が大幅に低減されている.

 まず掃除については年末の大掃除で屋上から地下倉庫に至るまで徹底的に片付けてあるうえ,基本的に全員リビングでしか過ごさないので他の場所は汚れず,リビングは床一面が布団なので掃除のしようがない.とはいえ各所に小型のごみ箱が設置され,菓子の食べかすなども目に付くことはないのは基本的に皆がきれい好きなことの表れだろう.

 洗濯は乾燥まですべて全自動洗濯機任せだ.普段であれば節電のために洗い終わったものを屋上の物干し場に干しているのだが,最近は晴天続きなこともあり電力備蓄が十分なので最新機種の機能をフル活用している.

 その他の家事についても基本的には機械任せか後回しにしている.

 

 唯一の例外は食事である.

 さすがにすべてインスタント食品というのはお母さん組(慈と悠里)が許さないし,何よりせっかくの年末年始の食事がそれではなんとも味気ない.

 よってこちらについては予め献立を決め,下ごしらえを誰でも──それこそ瑠優(るーちゃん)でも──調理できるところまで終わらせてある.それを食事のタイミングごとに2~3人ずつに分かれたグループの当番制で調理していくのだ.

 担当になった者はそのタイミングで必要な最低限必要な家事も行う.それでも全部で5グループあるので,皆が1日半は完全に何もしなくて良いという寸法である.

 

 そして今はこの家事サイクルが3周目の後半に差し掛かったところ,全員が状況に慣れリビング全体にだらけ切った空気が充満している.

 

 さて停滞ここに極まれり傍から見れば堕落の楽園,といった具合だがここまでなってしまったのは主として先にも述べたノリと勢いのせいだった.

 言いだしっぺたる早川も当初はここまでやるつもりはなかったらしい.せいぜい一部の仕事を省略または簡略化し,残りを手の空いたメンバーで分担することで全員の負担低減を考えていたようだ.

 ところが提案を聞いた面々それぞれが「どうせなら,」と削れる仕事を削りまくり,そして休みを楽しむための準備を入念に行った.その結果生まれたのがこの惨状(パラダイス)というわけだった.

 

 全員が完全オフモードとなっているため,もし非常事態が起きた時に即応できるのかとか休み明けに元のように動けるのかなど,いろいろと懸念はあるもののまあ問題はないのだろう.なんだかんだで切り替えはきちんとできる面々なうえ,凪原達が何かあった時のことを考えていないはずがない.

 『やるべきことは完遂し,文句を言われなくしてから思う通りにはっちゃける』それが31期のやり方だ.憎らしいほど完璧に義務は果たしているから叱りにくい,とは当時の巡ヶ丘教員同士の間でよく言われていた愚痴である.

 

 

 と,いうわけで現在休暇を満喫中の学園生活部だが,その満喫の仕方は各々で異なっていた.プロジェクターで上映中の映画を鑑賞をする者,幾人かでカードゲームに興じる者,布団にくるまってまどろみを享受する者と様々である.

 ちなみにとある元生徒会担当教員はビールの空き缶で出来たトーテムポールを5本建立したところでようやく限界がきたらしい.今は実に幸せそうな顔で眠りこけているのを最近相方になりつつある元ラジオDJの手で回復体位に体勢を変えられている.

 

 そんな中で凪原と照山が選んだのはコントローラーを持っていることからも分かる通り,テレビゲームである.

 先ほどの会話をしながらでも指が止まることはなく,画面の中ではそれぞれが操作するキャラクターが動き回っていた.

 

「っとあぶね」

「くっそ流石に無理か.でも集中切れてきたみたいだし今回は俺のストレート勝ちになりそうだな」

「何言ってんだ勝負はここからだっての.とりあえず叩っ切ってやるからそこになおれ」

「勇者がそんな物騒なこと言うじゃねーよ」

 

 プレイしているのはスマブラの愛称で親しまれる対戦アクションゲームだ.

 正式名称通り,複数人での乱闘を楽しむのも良いが1対1のタイマンも互いの技量がもろに反映されるのでなかなか面白い.特に凪原と照山はプレイヤースキルがほぼ同じであるため,この年末年始の間は隙あらば雌雄を決せんと対戦を繰り返していた.

 

 このゲームのプレイスタイルは大きく分ければ2つだろう.すなわち様々なキャラで戦うことを楽しむか,それとも1つのキャラをやり込むか,である.そして彼等はどちらも後者のプレイヤーだった.

 凪原が扱うのは青き衣の勇者,リ○ク.基本装備は剣と盾だが豊富な飛び道具を持つ中・長距離タイプのファイターである.

 対して照山が操るはガ○ン,時代を超え幾度も魔王として世界を脅かすリ○ク永遠の敵役である.ファイターとしては徒手と大剣という近距離特化のパワータイプだ.

 魔王と勇者,王道とも因縁ともいえる対戦カードだった.

 

 原作においては紆余曲折を挟みつつも勇者に倒される役回りの魔王だが,このゲームにおいてはその限りではないらしい.3ストック勝負において,凪原が既に2つ失っているのに対し照山はまだ1度も撃墜されていない.

 連戦により互いの集中力が切れてきたところに魔王の一撃の重さが効いてきているのだろう.

 

「そこだラァッ!!

「あっちくしょう!」

 

 ジャンプしたところに狙いすました大剣の一閃がもろに入り勇者の体が画面外へと吹き飛んでいく.当然ながら撃墜判定であり,これにてストックを使い切った凪原の敗北が決定した.

 

「ハッハッハ どうだ会長,俺のハリセンの威力は?」

「だからハリセンじゃねえだろそれ!」

 

 画面内のキャラと同じような動きで笑う照山に悔しさを滲ませながらツッコむ凪原.1ストックも削れずにストレート負けしてしまったのがかなり堪えたようだ.

 

 と,そこで凪原のすぐ隣にあった布団の塊が動き出した.室内にいくつかあるものと比べて二回りほど大きいそれは,中に丸まった人が入っていると考えればちょうどいいサイズだった.

 塊はそのまま出口を探すようにモゾモゾと動き,数秒後にようやく布団の端が持ち上がった.

 顔を出したのは胡桃である.トロンとした瞳と小さく開いた口から判断するについさっきまで夢の国にいたらしい.

 

「あ,悪い.起こしちゃったか?」

「ううん平気,完全に寝てたってわけじゃなかったし」

 

 答えながら凪原に寄りかかり肩に頭を預ける胡桃と,その頭に自身の頭をもたらせる凪原.一連の流れには一切のためらいがない.

 2人の距離感は本日も順調にバグッているらしい.

 

「ん~?なんだよナギ,思いっきり負けてるじゃん」

「いんやこりゃ偶然だよ偶然」

「いーや,こりゃ純然たる実力差だな.どうやら俺の技量は会長様をぶっちぎってしまったらしい」

「んなこたねーし,次やれば絶対───」

 

 照山の煽りにそこまで返したところで凪原ははたと言葉を止め,間をおかずに彼の唇が三日月を形作った.

 

「───そうだ胡桃,ちょっと加勢してくれよ」

「別に構わないけど…,あたしそんな強くないぜ?」

「大丈夫大丈夫,絶対勝てる作戦があるから」

「「?」」

 

 

 

====================

 

 

 

「ちょ,おまえらっ,それっ,はっ,卑怯だろっ!?」

 

 数分後,照山からは先ほどまで見せていた余裕が見事に消え去り,必死の形相でコントローラーを操作していた.

 その一方で凪原&胡桃タッグはというと,こちらでは実にほのぼのとした空気が漂っていた.

 

「いいか胡桃,これがスマブラ版の()()()()()だ」

「へー確かにそれっぽい.それに簡単にできて面白い」

「まあガチ勢相手じゃ通用しないし2人でじゃないと安定しないけどな.ある程度息を合わせる必要もあるし」

「それはあたしとナギなら問題ないだろ?」

「確かに」

「そっちは楽しそうだなちくしょう!」

 

 さてどうしてこうも雰囲気が対照的になっているのか,その答えは当然モニター内の乱闘会場にある.

 フィールドは戦場,一つの浮島の上に3つのすり抜け床がピラミッド状に配置されたシンプルかつ最もスマブラ『らしさ』を楽しむことができるステージだ.プレイキャラは元々やっていた2人はそのまま,胡桃は凪原に倣ってリ○クを使用している.

 

 そして,このリ○ク2人による遠距離武器の波状攻撃が照山の焦りの原因だった.

 先にも軽く触れたがリ○クは飛び道具を豊富に持つ遠距離タイプのファイターである.連射力に優れる弓矢に行きと帰りの両方に当たり判定のあるブーメラン,罠として活用できるリモコン爆弾と体力満タンという条件は付くが長射程の剣ビーム,と実に多彩で特徴的な武器を取り揃えている.

 これらの攻撃を組み合わせることで弾幕を張り,相手に出血を強いるというのはオーソドックスな戦法の一つだ.

 ただし,いくら弾幕とは言ってもそれぞれの攻撃の間には時間があるうえ攻撃モーションも分かりやすい.そのため1対1の戦いではタイミングを読まれジャンプやガードで距離を潰されてしまうことも多かった.現に先ほどの試合で照山は容易くとまでは言わずとも余裕をもって肉薄することができていた.

 

 ところが,リ○クが2人となるとその厄介さは跳ね上がる.単純に火力が2倍になったのもそうだが,何より位置取りがまた悪かった.照山操るガ○ンがステージの右端にいるのに対し,一番左にあるすり抜け床の上に凪原下に胡桃という配置である.

 

 胡桃が連射してくる矢を避けようとジャンプすればそこを狙って凪原から矢が飛んでくる.ガードで数発は防げるが受け続ければバリアが割られてしまう.何より2人からは間断なく攻撃され,時折飛んでくるブーメランのせいで前後共に警戒する必要があるので落ち着いて作戦を練ることができない.

 タイミングを見極めて──胡桃はともかく凪原に対してそれは難しいのだが──上から迂回しようとしてもご丁寧に中央のすり抜け床には爆弾が置かれており,さらに上空から回ろうとすると自ずと経路が限定されて凪原による対空攻撃のキルゾーンに飛び込むことになる.

 ほぼ唯一の遠距離ワザである下強攻撃で正面突破を図ったところで絶妙に届かない距離を保たれているうえ,安易に飛び込めば魔王特効の退魔の剣が2本連続で振り下ろされる.

 

 どうにもならないがどうにかするためには近づくしかない.

 迫りくる飛び道具をジャンプで躱しながらなんとか前に出ようとするガ○ン様子は,なるほどたしかに凪原の言うハードル走という表現が適切かもしれない.

 

 

だぁーッ!また負けかよちくしょう!

「「イェイ」」

 

 3回連続でストレート負けしたところでとうとう照山がコントローラーを投げ出しながら叫ぶ.2対1でフルボッコにされ続けたことを考えればむしろよくもった方だろう.

 そしてその隣でコツンッとグータッチをする凪原と胡桃.いつの間にやら胡桃の位置が凪原の胡坐の上に変わっている.

 

「つーか今更だけど卑怯だろ,2対1は」

「何言ってんだテル?ちゃんとタイマンだろ,2対1の」

「それはタイマンじゃねえんだよ馬鹿」

「細かいこと言うのは男らしくないって照先輩」

「細かくないだろこれは!ってかナギ,お前の彼女だんだんお前に似てきたぞ.どうにかしろよ」

「嬉しいからヨシ」

「ダメだコイツすでに手遅れだ」

 

 そのままダラダラと会話を続けていると,不意に廊下側の扉が開く同時に声が掛けられた.

 

「おらぐうたら共ー,飯の時間よ」

「お昼ご飯なの~」

「もうすぐに用意できるから準備お願いね」

 

 入ってきたのは上から早川瑠優(るーちゃん)悠里の3人,この時間の家事係にして食事担当だ.どうやら部屋の外──頬や耳が赤くなっているので恐らくは屋上──で調理していたようである.

 

「姿が見えないと思ったら外でやってたのか,今回メインなんだっけ?」

「オイカワの塩焼き,旬だしちゃんと七輪で焼いたから絶品よ」

「お好みでカボスもあるの~」

 

 問いかけに答える早川の手には確かに七輪があり,悠里と瑠優(るーちゃん)が持つお盆の上には魚が入っているであろうアルミホイルの包みがいくつも乗っていた.

 

 3人はそのままキッチンに入っていったので,残された面々は一旦怠惰を返上して食卓の準備を始めることにした.

 こたつ周りを片付け,部屋の隅に立てかけていた同じ高さの折り畳み式テーブルを隣に配置する.ついでに箸や取り皿,飲み物などの準備する.この辺りは食事係ではなくこちらの仕事なのだ.

 なお慈について,まだ眠り続けていたところに葵が耳元でビールのプルトップを開けたところ一瞬で目を覚ました.そこそこ冷たい視線が多方向から注がれたはずだが全く気にしている気配は見られなかった.

 やはり元生徒会担当,メンタルの強さは常人の比ではないらしい.

 

 

 

 数分経ったところで食事の準備も整い,メンバー全員が食卓の席に着く.

 

「「「さて,それじゃあ手を合わせて(合わせるの~)」」」

「「「いただきます!」」」

 

 

 学園生活部の冬休みはまだ終わらない.




はい,改めましてお久しぶりです.

 前回更新から実に2ヶ月以上,大変長らくお待たせしてしまい申し訳ありませんでした.色々な事情が重なって心身が両方ともズタボロになり,執筆ができる状況ではなかったためここまで期間が開く形となってしまいました.少し前にようやく回復したので現在はなんとか以前に近い状態へ戻っています.

 さて今後について,鈍ってしまった執筆の勘を取り戻しつつボチボチやっていきたいと思っています.ただ内容についてはメンタルが死んでいる間にちょっと書いてみたいネタができたので本編は一旦おいておいてそちらを書くかもしれません.(うまく書けなかったら何事もなかったように本編に戻ります,現時点ではどちらとも言えません)


 最後に,これほど期間が開いたにもかかわらず再び本作を開いてくださったあなたに心から感謝申し上げます.ありがとうございます.


それではまた次回!

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