学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

11 / 108
本作品を見に来ていただいた皆さん初めまして!逢魔ヶ時と申します。

人生初の小説投稿ということで緊張してますが、学園生活部の面々が救われる未来を目指して頑張ります。
それでは記念すべき第1話です、どうぞ〜


第1章:学園生活部加入編
1-1:OB、終わった世界を歩く


 良く晴れた平日の昼下がり、一人の青年が道路を歩いていた。

 日本人としては平均的な体躯に黒髪黒目の風貌、どこか子供っぽさが残る顔立ちからして社会人というよりは大学生であるように見受けられる。

 それだけ書くと特におかしな点はなく、せいぜい不真面目な学生が講義をさぼって日中からぶらついているという程度の日常の一コマに過ぎないだろう。

 

 しかし、青年の格好がそんな日常に不審感の影を落としている。

 

 動きやすそうなジーンズに半袖のTシャツ、アウターを重ねた服装に腰にポーチを下げているまでは良い。しかしその背に背負われているリュックは通学に使われそうなシンプルでスタイリッシュなものではなく登山用、ともすれば軍用と言われても納得できるほどに武骨で機能性が重視されたものだった。それが肩掛け紐だけでなく複数のベルトを用いて、走っても揺れないように固定されている。さらに足元を見ればスニーカーやデッキ―シューズのようなよく見かけるものではなくトレッキングシューズ、様々な地形でより長距離を歩くことを目的とした靴を履いている。少なくとも暇な学生がちょっとその辺まで出かけるといった格好ではない。

 

 これらに加え、不審感を生み出しているのが腰にぶら下げられた山刀(マチェット)と両手に握られたシャベルだろう。鞘から察するに刃渡り40㎝はありそうな山刀はそれだけで警察官が職質に飛んでくるには十分なシロモノだが、今回に関して言えば青年の持つ危険物ランキング1位の座を明け渡している。

 そしてランキング堂々の1位たるシャベルはというと、もともとはどこにでもあるような道具だったはずだがいくつかの改良が施されていた。もとはごくごく一般的な剣先スコップだったものが木製の軸にはテニスラケットに用いられるようなラバーグリップが巻かれ、素手でつかんでも滑りにくいようになっている。さらに、軸の上下にはスリングが結び付けられて肩に掛けることができるようにされている。また、スコップの最も重要なパーツである先端の金属部分は地面に突き刺す側が研ぎあげられ、刃物のような鈍い輝きを帯びていた。

 

 そして、不審感を決定的なものにしているのがシャベルを彩るグロテスクな装飾たちである。金属部分や軸の随所に赤黒い液体が飛び散った跡があり、所々には赤くぐちゃぐちゃになった何かが小さくこびりついている。

 そんな、全うな土仕事をすることでは決してつかないような汚れが付いたスコップを持つ青年もまた、目を凝らしてみれば同種の汚れがTシャツの前面や靴の端に付着していることが見て取れる。

 総合的な評価として、青年の格好はどうひいき目に見ても不審者としか言いようがないものである。

 

 それなのに、青年のことを咎めだてようとする人間はいない。

 青年のような明らかな不審者がいれば、自らが前に立ちふさがり直接声をかけて引き止めることはできずとも、警察へ通報したり周囲へ注意を促したりするのが普通であろう。

 にもかかわらず、そのようなことをする者が出ないのはなぜなのか、

 

 端的に言って、

もはやそれをするような人間が存在していないからである。

 

 これは青年の周囲が無人であるからこのように言っているわけではなく、文字通りの意味で存在していないということである。また、もし仮に通報した者が居たとしてもそれを受ける者が居ないであろうし、そもそも警察機構そのものが現在まともに機能していない。

 予め断っておくが、今青年がいるのは紛れもなく日本であり、決して紛争地帯のような治安が崩壊していた地域にいるというわけではない。

 それならばなぜ治安維持のための組織が機能していないのか、

 

 こちらも端的に言ってしまえば、

それらの社会秩序を崩壊させるだけの存在が出現したから、ということになる。

 

 数ブロックほど進み、交差点に差し掛かったところで青年は立ち止まり、顔をわずかに覗かせて左右の道路の様子を確認する。 

 

 10数メートルほど離れたところを一つの人影がゆっくりと移動していた。

 服装としてはスーツのズボンにワイシャツといったサラリーマンを思わせる姿であり、少し暑かったのか袖を折るようにしてまくっていた。

 服装だけをならば外回り中のサラリーマンに見えるその人影はしかし、生気というものが全く感じられなかった。

 

 日本人らしく黄身がかった色をしていたはずの肌はどす黒く変色し、その瞳は白く濁り意志の光を認めることはできない。さらにワイシャツは一面が乾いてしまって黒ずんだ血で染められていることに加え、何かにかかじり取られたように肉がえぐれた左腕からは白い骨が顔を出している。

 それらの特徴すべてがかつて人間であったそれが、もはや人知の及ばぬ存在になり果てていることを何よりも雄弁に物語っていた。

 

 

 古くからホラー系の作品で使い古されてきた存在、ゾンビである。

 

 

 死者が蘇り生者を襲う、襲われて死亡した者もまた死者として蘇り生者に牙をむく。恐ろしい感染力を持ち、軽く噛みつかれただけでも発症し新たな死者を生産し続ける。

 それはフィクションにもかかわらず、いやフィクションであるからこそ多くの人々を魅了し、娯楽の一大ジャンルを築いていた。

 

 しかし現在、架空の存在であったはずのそれは、現実のものとして地上を闊歩していた。

 

 ゾンビたちが姿を現したのはおよそ1週間前、すべての通信が途絶したのはそれからわずか3日後のことだった。世界中で同時多発的にゾンビが発生し、各国政府が対応に当たっているというところまでが青年が知る情報のすべてであった。

 

 (それにしても、発生から蔓延、さらには通信の途絶までが早かったな。もう少し保つかと思ってたんだけど。)

 

 

 今となっては益体もないことを考えつつも青年は注意深くサラリーマンのゾンビを観察する。

 ゾンビは道路の中央あたりをゆっくりと進んでいるため、現在のところ青年に気づく気配はない。しかしながら追い越すようにして通り過ぎればさすがに気づきその牙を突き立てようとしてくるだろう。

 

 青年は顔を引っ込めると、シャベルを道端に立てかけて腰のポーチから小さく折りたたまれた地図を取り出し広げた。

 

 地図は比較的縮尺が小さいものであり、建物の形や裏路地までが細かく描かれているものである。そして地図の上にはこれまで青年がたどってきたルートや様々な情報が書き込まれていた。

 ルートは所々で戻った跡があり、行き止まりになった箇所には、「ゾンビ多数」や「事故、不通」などと注意書きがなされていた。

 

 書き込みの様子を見ると、このところ青年が通ろうとしたルートは尽く何らかの理由で通れなくなっており、既にだいぶ遠回りを強いられているようであった。この上にまた迂回をするということになると、今日の移動ルートをほとんど無駄にすることになってしまう。

 

 軽くため息をつき地図を折りたたんでポーチに戻すと、青年は再びゾンビの様子をうかがい、相も変わらず緩慢な動作でこちらに背を向けて歩き続けていることを確認した。

 

 シャベルを拾い上げて構え、足音を殺しながらゾンビに近づいていく。

 気づかれないまま十分に近づいたところで振りかぶり、横向きにスイングして平たいほうの面を頭にたたきつける。

 

 突然側頭部に打撃を受けたゾンビはその勢いに逆らえず横向きに倒れ込みうつぶせになった。

 起き上がる前に背中を踏みつければゾンビは立ち上がれなくなる。

 

 もぞもぞと動き続けるゾンビの頭部に十分な速度でもってシャベル突き立てると、かたい殻を破った感触に続いて豆腐を切ったような感覚が伝わってくる。

 脳を破壊されたゾンビには二度目の死が与えられ、その動きを完全に止める。

 

 もう動かないことを確認した青年は背に乗せていた足をどかし、シャベルを軽く振って付着した血や脳みそをはらう。頬にはねた血がむずがゆく、なめとりたい衝動に駆られるが袖で拭って口に入らないようにする。

 

 周囲を軽く見まわして新しいゾンビが姿を表さないことを確認すると、油断なくスコップを構えたまま移動を再開する。

 

 この様にして青年は進んでいく。

 ゾンビを発見した時には、確実に始末できるようなら先ほどと同様に永遠の眠りにつかせる。ゾンビが複数体いたり、奇襲が難しそうな場合は無理をせずルートを変更する。

 

 

 

====================

 

 

 

 何度も迂回を繰り返しているうちに時間は進み、あと2時間もすれば日が沈むという時間になった。

 暗くなり周囲が確認できない状態での移動は自殺志願でもない限り遠慮願いたいので、どこかで日が明けるまで休む必要がある。

 とはいえゾンビが地上を支配している現在、開店しているホテルやネカフェなど無い。たとえ入口が開いていたとしても、どこに奴らがいるか分からない閉鎖空間では落ちついて休むことはできない。

 

 では、いかにして夜を越すか。

 青年はブロック塀を乗り越えてある住宅の敷地内に入った。住宅は2階建てで敷地は塀で囲まれており車の出入り口であろうゲートも下りていた。建物の周りを一周して窓が割れているなどゾンビが侵入できそうな箇所がないか、血痕が付着してないか確認する。一見したところそのような箇所は見当たらなかった。

 

 続いて玄関のドアに耳を当てて中で物音がしないかを確かめる。しばらくしたらドアを強めにノックしてもう一度確かめる。

 これは家の中にゾンビがいないかを手早く確認するためだ。たとえ外から危険が確認できなくてもその家が安全だとは限らない。ゾンビに噛まれて逃げ込んだ後にゾンビ化しているかもしれないし、何らかの理由で家の中でゾンビ化した家族を監禁しようとして噛まれ家族そろってゾンビ化している可能性もある。

 もし室内にゾンビが居れば、家の外で音を立てればうめき声や移動する音でそれが確認できる。

 

 幸い、室内から物音が聞こえてくることはなかったので、青年はこの家を今日の宿とすることにした。壁にシャベルを立てかけ、それを足掛かりにして1階部分の屋根に上る。2階の部屋の窓ガラスをあまり音を出さないように割り、内心でお邪魔しますと言いながら中に侵入する。

 ちなみにシャベルはスリングを引っ張って回収してある。

 

 室内に入っても靴を脱いだりせず警戒は切らない。リュックとシャベルを置いて身軽になると、青年は左手に懐中電灯、右手に山刀(マチェット)を持って室内のクリアリングを始めた。トイレや浴室などの閉所では大ぶりなシャベルよりもこちらの方が取り回しがいい。

 

 納戸から床下まで家の中を隅々見て周り、生存者もゾンビもいないことを確認して青年はようやく警戒心を緩める。

 どうやらこの家の住人は家族ぐるみで避難したらしい。慌てて準備をしたように家の中は散らかっていた。

 

 夕食としてクリアリングついでに回収した菓子やら缶詰やらを食べ、ペットボトルの水をでのどを潤す。

 

 腹ごしらえを終えると、外はもう暗くなり始めていた。ゾンビは音や光に反応して寄ってくるので、外に光が漏れぬよう雨戸をきっちりと閉まっていることを改めて確認する。それでも油断は出来ないのでライトの明かりは最小限だ。

 

地図と手帳を取り出した青年は、今日の移動ルートを地図に書き込む。倒したゾンビの数やその状況、気が付いたことなどは日記帳代わりの手帳に記入する。

 ゾンビが現れてから始めた習慣であるとともに、青年がこの世界を生き抜いてきた証でもある。

 

 日課を終えてしまうと本格的にすることが無くなる。

 最近は明るくなるとともに行動を開始して暗くなる前に終えるという生活ルーチンが出来上がっているため、この時刻になると眠気が感じられる。

 青年は軽くあくびをすると、リュックから着心地の良い服を取り出して着替え部屋にあったベットに潜り込んだ。

 

「おやすみなさい。」

 

 誰に言うとでもなくつぶやき、青年はライトを消した。

 

 床に広げられたままの地図には「私立巡ヶ丘学院」と言う学校が目的地という書き込みとともにぐるぐると囲まれていた。




以上、第1話でした!

「学園生活部出てきて無いやんけ!」という方ごめんなさい許してください何でもしますから(なんでもするとは言ってない)。
一応学園生活部と接触するところまでは書き溜ができてるのでそこまでは短い間隔で登校する予定です。

誤字脱字等ありましたらご指摘いただけると幸いです。コメント、感想等いただけると励みになるのでぜひぜひお願いします。なお作者豆腐メンタルにつき批判や酷評はお控えください。

それでは続けて第2話もどうぞ~
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。