そんな浮かれた気持ちになったところで次話投稿します。今回は前回登場した学園生活部の面々と主人公が対面します。
それでは第4話です、どうぞ
「やっぱりなぎ君よね、なんでここに…いや居ちゃダメってわけじゃなくて、なぎ君はもう卒業してて、でも実際ここに居て、なんか銃を持ってて、ええと、ええとぉ…」
突然の状況に混乱してしまい、まだ近くにゾンビがいる状況にも関わらずしどろもどろになっている女性は佐倉慈。
凪原の在学中の担任でもあった彼女はまだ新人と言ってもよい年齢であり、生徒達からもめぐねえと呼ばれ慕われていた。本人は「佐倉先生でしょ」とたしなめてはいたがまんざらでもなく思っていることは明らかだったので、呼び方を改める生徒はいなかった。
教師としての責任感は人一倍強いが、元の性格のせいなのか想定外のことが起こると若干ポンコツ化してしまう。
在学中と変わらない様子をほほえましく感じていた凪原だが、このままではまずいので学生の時と同じ方法で先生を再起動することにした。
簡単に言うと、猫だまし、である。
いきなり眼前で手を鳴らされた慈は「ひゃっ」と声を上げて無事に再起動を果たした。
「めぐねえ、近くにほかの生存者はいる?いないなら3階にバリケードがあるみたいだしそっちに避難したいんだけど」
「ハッ、い、います!あっちの教室の中に生徒たちが3人っ!」
「ん、了解。じゃあめぐねえは俺のぴったり後ろについてきて。離れないようにね」
そう言った凪原は左手で慈を背後にかばうように動かすと、右手を前に突き出すようにして9ミリ拳銃を構えて発砲を開始した。
慈を追ってきていたゾンビたちは数こそ多かったが、廊下という直線の地形であったことが幸いした。ゾンビたちは皆廊下に出てしまっていたし、廊下にいる分は真っすぐ凪原たちに向かってくるだけである。
側面からの攻撃を警戒する心配がなく相手を一方的に攻撃できる状況ならば、この数日で腕を上げた凪原に負ける道理はない。
近くから順に銃撃していき、数回マガジンを交換する頃には脅威となる存在は2階の廊下から一掃されていた。
「ふぇぇ…私の教え子が1年で変わっちゃいました…」
頭部を破壊された大量のゾンビの凄惨さと1年ぶりに再会した教え子の豹変ぶりに、慈はちょっと泣きそうになっていた。ちょっとかわいいと思いながらも顔には出さずに声をかける凪原。
「それじゃめぐねえ、早いとこ生徒達を連れて3階に行こうか」
「そ、そうね。ええっと、あの子たちを隠れさせた教室は…ここです!由紀さん、胡桃さん、悠里さんっもう大丈夫ですっ。3階に避難しま「めぐねえっ!」」
言い終わる前にガラッと勢いよく扉が開き、ケモミミのような帽子をかぶった生徒が慈に飛びついてきた。
「無事でよかったよぉ」と顔をこすりつけている様子は主人を出迎える猫そっくりであった。
「めぐねえ、無事だったんだ…ほんとに、ほんとによかった」
後から出てきたツインテールにシャベルを持った少女もつぶやきながら慈に抱き着いた。最後に出てきた少女も涙ぐみながらうなづいていた。
涙ながらに再会を喜ぶ女性と少女たちの様子にほっこりしながらも、廊下の端にゾンビの姿が見えてきたため咳払いをして注目を集めた後で口を開いた。
「あー、再会を喜ぶのは後にして、今は3階に避難した方がいいと思うんだけど」
「っ!、誰だお前っ⁉」
少女達は凪原に気づいていなかったようで一様に驚いていたが、ツインテールの少女だけはすぐに我に返り声を上げた。仲間たちを背にかばうように前に出て凪原の前に立ちふさがる。丸腰でないことを示すためかシャベルを掲げるが握りしめる手が震えていた。
「おいおい、俺に害意はないぞ。怪しいとは思うだろうけど、いろいろな説明は後回しにしてもいいか?」
「それを無条件で信じろって?」
「信じてもらうしかないんだよなぁ」
「ふざけっ「胡桃さん、その人は大丈夫ですっ。凪君もそんな言い方しないでちゃんと自己紹介としなさいっ」めぐねえ?」
激高しかけたツインテ少女だったが、慈に機先を制されると振り返っていた。慈がうなづくのを確認してか顔の向きを戻した少女と、不安そうにこちらを見るあとの2人。
3人分の視線を受けた凪原は笑顔を向けると、
「凪原勇人、大学生で2年前のこの学校の卒業生だよ。お世話になっためぐねえと、可愛らしい後輩たちが無事でよかった」
ちょっとだけふざけた。
予想外の言葉に後輩たちが一瞬固まるのと慈が呆れた表情になったのを確認すると、振り返ると同時に片膝立ちになり近づいてきていたゾンビたちに鉛玉を叩き込み始めた。
唖然とした表情で固まる少女たちに凪原が短く叫ぶ。
「ツインテショベルの君っ、皆を先導して3階まで撤退して。俺は後ろで追いついてくる奴から始末するっ」
「つ、ツインテショベル?それあたしのことかよっ⁉」
「他にいないだろう。4人の中で君が一番戦闘に向いてそうだから君が先導してくれ。あと武器にシャベルを選んだのは良いセンスだ、分かってるな」
いきなりあんまりな呼び方をされ、怒る少女だったが武器にしたショベルを褒めるとキョトンとした後に「お、おう。ありがと」とつぶやくと他の3人に合図をして階段に向かい始めた。
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「くっそ、全然減らないな。どれだけいるんだ?」
「こんなに押し寄せてくんのは、初めてだよ。やっぱ外で雨がふってるからかな」
その後何とか3階まで避難した5人だったが、次から次へとバリケートに取り付いてくる折ってきたゾンビたちの対処に追われていた。
凪原はゾンビたちの額に1発ずつ発砲し、ツインテールの少女はシャベルを使って取り付いたゾンビたちをバリケートから引き離そうとしていた。
机を積み上げて有刺鉄線でつなぎ合わせたバリケートは現状はきちんと機能していたが、適宜ゾンビたちを排除しないと壊れてしまいそうで現在は凪原とツインテ少女の2人がつきっきりで対応している状態である。
拳銃を使っている凪原はまだ余裕がありそうだが、シャベルをふるっている少女の方には疲れが見え始めていた。
「2人とも、その、いいニュースと悪いニュースがあるんですけど。どちらから聞きたいですか?」
他の階段や校舎外の様子を見に行っていた3人が戻ってきたあとに、おずおずといった感じで口を開く慈。その口調と言葉のギャップに先ほど胡桃と呼ばれていたツインテールの少女は軽くため息をついて応じた。
「めぐねえ、もうちょっと緊張感持とうぜ。…じゃあ、いいほうのニュースから聞こうかな」
「はい、由紀ちゃんと悠里さんが見てきたところ、残りの2箇所の階段には彼らは1人もいなくて心配する必要はないみたいです」
この校舎は3箇所に階段があり凪原たちは中央の階段で防衛をしていたのだが、左右の階段にはゾンビたちの姿がなく安全なようだった。文字通りのいいニュースに笑顔を見せる防衛組の2人。
「それで、悪いニュースなんですが、その、校舎に入ってくる彼らはまだまだ途切れないようです」
「「ちくしょうっ」」
今度は文字通りの悪いニュースにそろって声を上げる防衛組。意外と気が合うのかもしれない。
「このままじゃ持たないって程ではないけど結構つらいぞ。弾も無限にあるってわけじゃないからどうにかしないとまずい」
「とは言っても、そんなすぐにいい案が出るわけないよ」
言い合いながらもゾンビたちに対処していく2人に、難しい顔で思案する慈とケモミミ帽子をかぶった少女、4人の耳に入ってきたのは最後の1人の声だった。
「あの、もしかしたらいい方法があるかもしれません」
「りーさん、なんか手があるのかっ?」
その言葉に「ホント、りーさん⁉」「本当ですか⁉」と沸き立つケモミミ少女と慈。凪原も続きを促すように顔を向けた。
りーさんと呼ばれた少女はうなづくと自分の考えを話し始めた。
「ええ、彼らは以前の生活ルーチンに沿ったような行動をしているわよね。それで今はもう夕方になっているから、その、下校のチャイムを鳴らせばみんな帰り始めるんじゃないかなって思ったの」
「…なるほど、確かにあいつらは今までの習慣を繰り返してるから可能かも。でかしたりーさんっ」
「さっすがりーさん!私たちの部長なだけはあるねっ」
興奮したように褒めるツインテ少女とケモミミ帽子少女を見ながら、凪原と慈も感心したように話していた。
「なるほどな、確かにあいつらは生前のルーチンに従うからうまくいくと思う。めぐねぇ、放送室の器材って動かせる?」
「大丈夫よ、この学校の先生はみんな放送室の使い方を知ってるの。すぐに放送を掛けるから胡桃さんとなぎ君はもう少しだけ頑張って。悠里さん、由紀ちゃん、ちょっと手伝ってくれる?」
「はい、分かりました」
「はーい、2人とももうちょっとだから頑張ってね」
小走りで廊下を走っていく2人の後に続くように駆け出そうとしたケモミミ帽子少女だったが、振り返ると笑顔で手を振ってから「2人とも待ってよー」と言いながら追いかけていった。
「さて、これがうまくいけばあと数分でこのゾンビラッシュが終了するみたいだけど、それまで持つ?」
「はっ、当然!」
声をかけた凪原に対し、ツインテ少女は元気よく答えるとシャベルを握りなおした。
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~下校の時刻となりました。校内に残っている生徒は速やかに下校してください。繰り返します。下校の時刻となりました。校内に残っている生徒は速やかに下校してください。~
3人が放送室に向かってから数分後、聞き慣れたチャイムに続いて下校を促す放送が流れた。
放送が流れるとすぐにゾンビ達は動きを止め、それまでバリケートに取り付いていたのが嘘のように後ろを向いてのろのろとした動きで階下に向かっていった。
「終わった…のか?」
呆然としたようにつぶやく少女に、9ミリ拳銃を構えたまま階下の様子をうかがっていた凪原は構えを解いて答えた。
「そうみたいだな、お疲れ様」
「…はは、よかったぁ」
緊張の糸が切れたのか、その場に座り込んで安堵の息を吐く少女に小さな影がぶつかってきた。
「くるみちゃーん!うまくいったよっ!あの人たちもみんな帰ってく、みんな助かったんだよ!」
「ちょっ由紀、苦しい、離れてっ」
小さな影は先ほど由紀と呼ばれていたケモミミ帽子少女だった。放送室から走ってきた勢いのまま飛びついたのだろう、座り込んでいたツインテ少女を押し倒し、そのままほおずりしながら外の様子を話していた。
(さっきめぐねえにも飛びついてたし、そういった感じの子なのかな。)
気の抜けた思考でそんなことを考えながら凪原が9ミリ拳銃をホルスターに戻してマガジンを抜き取っていると、後の2人も凪原たちの方に歩いてきた。
「胡桃、お疲れ様。彼らはみんな帰っていくから今日はもう安全だと思うわ」
「なぎ君もお疲れ様でした、もう大丈夫ですよ」
もみあいになっている少女たちに話しかけたりーさんと呼ばれていた少女に対し、慈は一息ついていた凪原に声をかけた。
「めぐねえもお疲れ。最初にも言った気がするけど1年ぶりだね、全然変わってなくてびっくりだ」
「もう、めぐねえじゃなくて佐倉先生ですよ。そういういうなぎ君もあんまり変わってないですね。持ち物とか格好はとっても変わってますけど…」
「まぁその辺はこの1週間くらいでちょっとね。あとで説明するさ」
「分かりました。それじゃ色々話したいこともあるし教室に移動しましょうか、ここにずっといるのもなんですしね」
手を打って、移動を提案する慈に皆それぞれ返事をすると、数分前までの戦いの場を離れていった。
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「学園生活部?」
ほかの面々についていった凪原が付いたのは彼の記憶の中では生徒会室だった教室であった。
しかし、現在教室のドアの上の表札には生徒会室という文字の上から、「学園生活部」と書かれた紙が張り付けられていた。
「それは私たちが今入ってる部活だよっ」
独り言が漏れた凪原に反応したのはケモミミの帽子をかぶった少女だった。キラキラした目をなぎはらにむけて
「そうなんだ、名前からして学校で暮らす部活動なのかな?」
「そう!学園生活部は学校全体が舞台なんだよっ。寝るときもご飯を食べるときもみんな一緒に学校で過ごすんだー」
「それはなかなか楽しそうだなぁ」
「でしょでしょっ?一緒にやろうよ、えーっとあれ?何さんだっけ?」
「こらー由紀、あんまり迷惑かけないの」
「う、りーさんごみん」
「なぎ君もどうぞ入ってくださーい」
「はいよー」
慈に声を掛けられた凪原も返事をして中に入る。部屋の中の様子は凪原の記憶と変わっていなかった。
「この部屋は変わってないなぁ」
「ん?お前在学中生徒会だったのか?」
「まあねぇ」
こぼれた独り言にツインテールの少女が反応したので、てきとうに返事をしておく凪原。
窓側に置かれた会長机の前にある会議用の机の皆が座ったところで慈が切り出した。
「さて、それじ「グゥ〜」……。由紀ちゃん…」
言葉を遮ったのはケモミミ帽子の少女のおなかの音である。小柄な体に似合わぬ豪快な音に、残り2人の少女から呆れたような視線を受けた彼女は恥ずかしそうに縮こまりながら「ごみん」とつぶやいていた。
「ねえめぐねえ、話し合いより先に食事にした方がいいんじゃないか?」
「そうかもしれないんですけど、今食べ物があんまり無くて…」
会議の前に食事を提案する凪原に、慈はつらそうな顔で答えた。少女達も悲しそうな顔をしてうつむいているのをみて凪原は今の状況を察した。
「よし、それじゃあ俺が持ってる食料でご飯にしよう。準備するから少し待ってて」
驚いたように顔を上げる少女達に笑いかけると、凪原は背負っていたリュックの中身を探り始めた。「いいんですかっ⁉」という慈に大丈夫と返し、準備に時間が掛かるから少し待っていてほしいと伝えると、なら待つ間に体を洗ってくるということになった。独立システムを使っている電気と水道が生きているため、職員休憩室のシャワーが使えるらしい。
「それじゃあなぎ君、悪いけどお願いしますね」
「あいよー、多分2,30分くらいかかるからゆっくりどうぞ」
返事をしながら着替えが入っていると思しき袋を持った慈と少女達を送り出す凪原。
「なぁ、ちょっといいか?」
鼻歌交じりにリュックから缶詰などを取りだしていた凪原が振り返った先には、シャベルを手に持って真剣な表情をしたツインテールの少女が立っていた。
以上、第4話でした!
戦闘描写って書くの大変なんですよね(なお他の場面なら書けるとは言っていない)。
さて、学園生活部と接触を果たした主人公、なんか胡桃が声をかけてきましたが無事になじむことができるのでしょうか?
それでは第5話でお会いしましょう。
誤字脱字等ありましたらお知らせください。
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