学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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あとがきに今後の更新についての連絡事項がありますので良ければご確認ください

それでは第6話です、どうぞ。


1-6:少女達、OBの学生時代を知る

「おっまたせー!ご飯できたー?」

「ちょっと由紀。楽しみだからって走らないの、転んでも知らないわよ?」

「胡桃さん、なぎ君お待たせしました」

 

 シャワーを浴びていた面々が戻ってきたのは、凪原たちの調理が終了ししばらく時間が経ってからのことだった。たとえシャワーだけであっても女性の入浴は時間が掛かるらしい。

 3人の来ている服を見ると、種類こそ変わってないがシャワー前についていた汚れがなくなっていたので恐らく予備の服に着替えたようだ。ちなみに一番小柄な子はかぶっていたケモミミ帽子を外して手で持っていた。

 

「はいお疲れ、こっちは準備できてるよ」

「3人とも遅い、もう食べ始めちゃおうかと思ってたところだよ」

 

 そうぼやく胡桃はよほどお腹がすいていたのか、調理が終わってからは机に突っ伏してエネルギーの消費を抑えていた。

 

「うー、ごみん胡桃ちゃん。許して―」

「はいはい、分かったからくっつくな。こっちはまだ汚れてんだから」

 

 飛びつこうとする由紀を押しとどめる胡桃の様子を見つつ、立ち上って準備を始める凪原。料理をよそおうと思ったところで器を持ってないことの気づいて動きを止めた。

 

「あー胡桃、どっかに器ないか?できれば深めのヤツ、今までそのまま食べてたから皿のこと忘れてた」

「皿?確かこっちの棚にしまった気がするけど、ちょっと待って……はい」

「ん、サンキュ」

 

 なんか打ち解けた様子の凪原と胡桃に、由紀の目がキュピーンッと光ったがそれに気づかず盛り付けを続ける2人。

 悠里と慈も席についたところで盛り付けを終えた凪原と胡桃が完成したカレーうどんを運んできた。

 

「お待たせ、消化に良さそうでお腹に貯まるものってことでカレーうどんにしてみたよ。おかわりも少しならあるから食べたかったらどうぞ」

「おー!カレーなんて久しぶりだねっ。すごくおいしそうだよ」

「これは…おいしそうですね。本当にいいんですか?」

「皆に食べてもらうつもりで作ったからな、食べてもらわないと逆に困る」

 

 目を輝かせる由紀と対照的に不安そうな表情の悠里に笑って答える凪原。実際5人分として作ったため食べてもらえないと無駄になってしまう。

 生徒たちの様子を笑顔で見ていた慈も口を開く。

 

「なぎ君、ありがとうございます。本当においしそうですね。それじゃあ皆さん手を合わせて…」

 

 

「「「「「いただきます!」」」」」

 

 

 食卓に5人分の元気な声が響いた。

 

 

 

====================

 

 

 

「「「「ごちそうさまでした!」」」」

「はい、お粗末様でした」

 

 多めに用意したカレーうどんは綺麗になくなり、代わりに満足げな表情を浮かべる皆に凪原も笑顔で返す。

 

「おいしかったねぇ」

「ああ、久しぶりにまともな食事だったし大満足だ」

「おいしかったです、ありがとうございました」

「そう言ってくれると作ったかいがあるな」

 

 その辺にあった茶葉とティーセットを使って入れたお茶を配りながら答える凪原。ちなみに内心では電気が通っていてポットが使えることに喜んでいる。

 真っ先に受け取った慈は「なぎ君のご飯は相変わらずおいしいですねぇ」などと言いながらなごんでいる(教師としてそれでいいのかと思わないでもない)。

 皆がお茶を飲んで一息ついたところで、口火を切ったのは凪原だった。

 

「さて、改めて自己紹介といこう。さっきも言ったけど俺は凪原勇人(なぎはらゆうと)、現大学2年生で2年前のこの学校の卒業生だ。周りからは凪原とかナギとか呼ばれてたけど好きに呼んでくれて構わない」

「あ、すいませんご丁寧に。私は若狭悠里(わかさゆうり)といいます。高校3年生で一応学園生活部の部長をやっています」

「私は、丈槍由紀(たけやゆき)っていうんだ。高校3年生で学園生活部の部員だよ。さっきはありがとね凪さんっ」

 

 凪原の自己紹介に慌てたように返す悠里と元気よく返事をする由紀、その様子には2人の性格がよく表れていた。

 

「若狭さんと丈槍さんね、オッケー覚えた。それじゃ2人もいろいろ聞きたいことがあるだろうし、色々説明した方がいいかな」

「そ、そうですね。色々教えていただきたいのでお願いしま「りーさんちょい待ち」胡桃?」

 

 凪原からの提案にうなずきかけた悠里の声を遮ったのでは胡桃だった。不思議そうな顔をする悠里ではなく凪原の方を向くと頬をポリポリ掻きながら切り出す。

 

「あー…ナギ、悪いんけど先にシャワーを浴びてきてくれないか?さっきお前から聞いたことはあたしが話しとくし、その、できればナギ抜きで話したいというか…」

 

 若干言いづらそうな胡桃の様子に凪原も彼女に言いたいことを察した凪原は納得したようにうなづくと工程の返事を返した。

 

(確かに本人がいる前でそいつに関する話はやりにくいか)

「分かった、そういうことならお言葉に甘えようかな。何分くらい浴びてた方がいいとかあるか?」

「ありがとう。んー、多分30分まではいらないと思う」

「了解、じゃあ先に浴びさせてもらうよ。……めぐねえのんびりしすぎ」

 

 胡桃に返事を返しつつ、お茶を片手にくつろぎモードに入っていた慈に注意する凪原。案の定ぼうっとしていた慈は「ふぇっ?」と気の抜けた返答をした後に我に返ると少し怒ったような表情を作って口を開いた。

 

「もうっ。めぐねえじゃなくて佐倉先生ですよ、なぎ君」

「そう呼んでほしいなら教え子と元教え子が話しているときにぼうっとしてないでほしいな」

「うぅ、1年ぶりでもやっぱりなぎ君は厳しいです」

「そんなこと言ってないでほら、罰としてお皿とか鍋を洗ってきてね」

 

 ショボーンとする慈を気にせず追い打ちをかける凪原。

 

「はーい…、それじゃあ行ってきますね、なぎ君もごゆっくり」

「あーい、……じゃあめぐねえも行ったから、胡桃たちだけで話したいこととかあったら今のうちにしときなよ」

「ナギお前…、まぁあたしらだけにしてくれたのはありがたいけどさ、めぐねえの扱いがひどくないか?」

「在学中もあんな感じだったし平気だろ、んじゃ俺もシャワーを浴びてくるわ」

 

 「案内します」と声をかけた悠里に「在学中に何回も使ったから大丈夫」と手を振って答えた凪原はそのまま生徒会室から出ていった。

 慈と凪原が出ていき室内に残される形となった3人。

 

「とまあ、おぜん立てされた感じだけど、都合がいいことに違いはないから今のうちに話しておこうぜ」

「そうね、結構気配りができそうな人だけどやっぱり気になることは多いわ。私たちがシャワーを浴びている間に話したこと教えてくれる?」

 

 真面目な表情で話す悠里と胡桃。それと正反対な様子の由紀は無邪気に口を開く。

 

「いい人そうだよねぇ、凪さん」

「もう、由紀。そんな簡単な話じゃないのよ?」

「えー、でもさっきはめぐねえを助けてくれたし、今食べたカレーうどんもおいしかったじゃん」

「それはそうだけど…」

 

 早くも凪原を信頼した様子の由紀を嗜める悠里だったが、由紀の返答に言葉に言いよどむ。実際のところ、悠里としても凪原のことを悪く思っているわけではない。

 

 自分たちではどうしようもなくなった時に現れて慈を助けてくれたし、久しぶりの普通の食事を提供してくれた。教師である慈が保障していることから自分たちの先輩であることもほぼ間違いないのでどこの誰とも分からない相手というほどではない。

 また態度も友好的であり、悪意などは(少なくとも悠里自身から見たところ)感じられない。

 

 しかしながら、面識がなく自分よりも大柄な男、しかも銃を持っているともなれば警戒するなという方が無理な話。悠里が警戒心を解くことができないのも無理からぬことである。

 

「まぁ、あたしも大丈夫だと思うな」

 

 そんな悠里の内心を知ってか知らずかあっけらかんと言い放つ胡桃。

 

「胡桃は会ったばかりの割にずいぶん信用してるわね」

 

 「何か根拠はあるの」と問う悠里に顎に手を当てて考えながら答える胡桃。

 

「んー具体的な理由があるわけじゃないんだけど、何となく、かな?」

「胡桃ちゃんの勘なら信用できるねー」

「ええ…。まあ胡桃の勘はよく当たるのは知ってるけど、とりあえずさっきどんなことを話したのか教えてくれる?」

「ああ、予め断っておくけどちょっと辛いとこもあるぜ?」

「構わないわ」

「あたしも大丈夫だよー」

 

 2人の返事に頷くと胡桃は先ほど凪原から聞いたことを話し始めた。

 

 

 

====================

 

 

 

「―――ってわけだってさ。あとは特に何もなくて今日学校に着いてあたしらを助けてくれた感じらしいよ」

「そう…そんなことがあったのね」

「凪さんそんなことがあったんだ…」

 

 話し終えた胡桃に、少し沈んだ様子の2人。悠里も先ほどまでの不安げな表情は鳴りを潜め、痛ましげな表情をしていた。

 

「まぁこの話が本当かどうかは今確かめることはできないけど、実際にあたしらを助けてくれたこともあるし、あたしは信じてもいいと思うんだ」

「胡桃がそう言うなら信じてもいいかもしれないわね」

「私も信じる~」

 

 

 3人の意思統一が完了したところで、話題は凪原の高校時代に移る。

 

「それにしても今大学2年ということは私たちの2つ上よね?私たちが1年の時の3年生ということになるけど、2人は何か覚えてたりする?」

 

 疑問を呈する悠里だったが、2人とも首を振って否定の返事を返す。

 

「うーん覚えてないよぉ」

「あたしも覚えてないなー。というかあたしらの2つ上ってあの(・・)代だろ?いちいち覚えてないって」

「そうなのよねぇ…」

 

 含みがある胡桃の発言に、答える悠里。何とも言えない表情をしている2人だが、由紀だけは楽しそうな表情で口を開いた。

 

「にぎやかな先輩たちだったよねー」

「いや、にぎやかと言えばにぎやかなんだけどさ」

「お祭り騒ぎみたいな1年間だったわね」

 

 由紀の言葉に応じる胡桃と悠里。自身の1年生の時の記憶がよみがえり疲れた表情になる。

 

 

「入学式ではいきなりクラッカーの集中砲火を浴びるし…」

 

 胡桃がまず口に出したのは入学式。生徒会長の「入学おめでとう」の声と同時に体育館の2階に隠れていた先輩たち数十人からバズーカ型の特大クラッカーの集中砲火を浴びた。

 ちなみに胡桃は頭から色テープの塊をかぶった。

 

 

「球技大会は優勝景品が豪華で白熱しすぎたわね」

 

 悠里が次に挙げたのは球技大会。大掃除の免除(免除されるとその日は休日になった)に加え、食堂の1カ月無料券という景品に全クラスが盛り上がり、すべての試合が白熱しいくつものドラマが生まれた。

 ちなみに悠里は慣れない運動を1日中したせいで大変な筋肉痛に悩まされた。

 

 

「みんなで鬼ごっこも楽しかったよね」

「由紀は楽しんでたよな…。っていうかあの時の時間割調整ほんとにどうやったんだ」

 

 由紀が思い出したのは全校鬼ごっこ。いきなり午後の授業がLHR(ロングホームルーム)になり全校参加(教師含む)の鬼ごっこ大会が始まった。

 ちなみに由紀は持ち前のすばしっこさから最後まで生き残り、ベストプレイヤーに選ばれていた。

 

「あの年はほんとに色々あったからなぁ」

「特に生徒会がはっちゃけていたのよね…」

 

 話しているうちに細かい記憶が蘇ってきたのか、さらに疲れた表情になる。

 

「やばいな、あの代の先輩ってことはなかなかに厄介な性格かもしれないぞ」

「ええ、あの代はノリが良すぎる先輩が多かったのよね。特に、生徒会の人達」

 

 下手をすると先ほどまでの凪原を警戒していた時よりも深刻そうな表情で話す2人。しかし由紀の次の発言に凍り付くことになる。

 

「んー、多分だけど凪さん生徒会だったんじゃない?」

 

 突然の発言に固まった2人はゆっくりと由紀に向き直ると声を上げた。

 

「マジで?」

「由紀、どうしてそう思うの?」

「だってさっき凪さんがこの部室(元生徒会室)に入った時懐かしそうにしてたし、胡桃ちゃんがきいたときも在学中にちょっと、って言ってたからそうなのかなぁって。」

「た、確かにそんなこと言ってたわね…」

「いやいや、きっと在学中に書類の提出をしに入ったことがあるとかそんな感じだよ。うん、きっとそうだ」

「「「……。」」」

 

 3人の沈黙を破ったのは、扉が開かれた音だった。

 ばっと振り返った視線の先にいたのはお皿洗いを終えて戻ってきた慈であった。

 

「お皿洗い終わりましたよー。あれ、どうしたんですか?3人で顔を寄せ合って」

 

 顔を突き合わせた格好の3人の様子に首をかしげる慈。

 凪原との面識があったらしい慈に、誰がきくかを目線で話し合ったのち代表して由紀が口を開いた。

 

「ねえめぐねえ、めぐねえって凪さんのこと知ってるんだよね?どんな感じの人だったの?」

「もう、佐倉先生ですよ由紀ちゃん。えっと、なぎ君のことですよね?よく覚えてますよ。私が教師になった1年目に担任を持ったクラスの子でしたし、それに…」

「それに?」

「私はその次の年に学校の行事に慣れるという名目で生徒会担当教員を任されたんですけど、なぎ君はその時の生徒会長だったので…」

 

 続いた慈の言葉に思わず机に突っ伏してしまう胡桃と悠里。よりによって凪原が、胡桃達が1年生だった時のお祭り騒ぎの仕掛け人(諸悪の根源)だったことに精神に多大なダメージを受けたようだ。

 

「マジか、まじかぁ…」

「これは大変な感じになりそうね」

「やっぱりそうなんだー。なんか楽しいことになりそうだねっ」

 

 三者三様の反応に、慈自身も遠い目をしながら教師生活の最初の2年間を思い出していた。

 

「教師になったばかりで授業とクラス運営だけでも苦労するはずなのに、なぎ君たちが色んなイベントの計画を立ち上げて、それでほかの先生方と会議したり、準備をしたり…本当に大変な2年間でした」

「そういえばあたしが2年の時めぐねえが担任だったけど、新人の先生とは思えないぐらい色々手馴れてたよね?」

「ええ、なぎ君たちと過ごした1年でたいていの事は経験したんですよね。それで余裕ができたので2年目の途中あたりからは安心して仕事ができました。そういう意味ではありがたいと思ってます。生徒会の皆さん、特になぎ君は組織運営に秀でていましたし」

「すごい人だったんだねぇ」

「なんか聞けば聞くほど凪原さんが普通の人じゃないように感じられるのだけど」

 

 素直に感心した様子の由紀と、不安が増した様子の悠里。

 慈はそんな悠里の不安を打ち消すように慌てて口を開いた。

 

「あっ、そんなに不安に思う必要はないですよ。なぎ君はとてもいい生徒でしたし性格も親しみやすいので皆さんもすぐに仲良くなれると思います」

「めぐねえがそう言うなら大丈夫そうだね」

 

 先ほど凪原にもらったお茶を飲みながら安心したように話す胡桃だったが、続く慈の言葉に思わずせき込むことになる。

 

「そういえば、胡桃さんはもうなぎ君と打ち解けてましたよね。なぎ君をあだ名で呼んでましたし、名前呼びを許していましたし」

「っ!…エホッエホッ、いきなり何言ってるのめぐねぇ⁉ナギとは別に打ち解けてるわけじゃな「そうだよくるみちゃんっ」由紀⁉」

 

 途中で割り込まれて驚く胡桃に構うことなく、目をキラキラさせてまくしたてる由紀。

 

「私がくるみちゃんって呼ぶの許してもらったのは友達になって1カ月以上経ってからだったのにもう名前で呼ばれてるし、さっきお皿の場所聞かれてた時もすっごく打ち解けて見えたよ」

「確かに私たちがシャワーを浴びる前と後でずいぶん距離が縮んでいたように見えたわね。…胡桃、なにかあった?」

「べ、別に何もないって!名前呼びを許したのは今はそっちの方が慣れてるからだし、あだ名で呼んでるのは本人にそう言われたからだし」

 

 顔を赤くした弁明する胡桃が、本当にぃ?やら、怪しいわねやら、からかわれている間に当の本人である凪原は何をしていたのかというと、

 

「~♪」

 

 久しぶりに浴びる暖かいシャワーを上機嫌で堪能していた。




以上、第6話でした!

主人公の学生時代のあれこれが明かされた回でしたね。
ここまでハチャメチャな学生時代を過ごした方はそうそういないでしょうが、筆者の高校生活はなかなかにぎやかでした、この回くらい賑やかだったらもっと楽しかっただろうなぁ。

さて前書きで言った今後の更新予定なのですが、少なくとも週1、筆が乗れば週2で投稿したいと思います。基本的に日曜の昼間は必ず投稿できるようにしたいと考えていますのでどうかこれからもよろしくお願いします。

それでは、第7話でお会いしましょう。


高評価、お気に入り、感想等いただけますと筆者のやる気が上がります。


……なんか話が全然進まないなぁ
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