学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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一瞬誤って投稿してしまいました,ごめんなさい.

バイオハザード編,第2話です.少し説明回っぽくなったけど全部がそうではないからヨシッ.


2,自分の定義

===Dr.の備忘録===

 

1983.8.20

 アークレイ研究所地下にラボを整えることができた.この場所から新しく,そして究極ともいえる人類の知恵の結晶を生み出すことができると考えると興奮を抑えられない.私の研究はここから始まるのだ!

 

1983.8.21

 昨日は少し取り乱してしまった.ラボの運営やプロジェクトを主導することは多くあったが,今回ほど心が昂ったことはない.昔から,それこそ幼少期からやってみたいと願っていたことに取り組めるとあれば,落ち着けという方が無理だろう.ああだめだ,冷静にはなったもののまだ興奮が冷めやらない.

 

1983.9.16

 アレクシア嬢からt-Vウイルス入りのアンプルパックが届いた,量も頼んでいた分の1.5倍はある.おかげで実験素体の数を増やすことができそうだ.次の報告会で会った時に礼を言っておくことにする.

 恐らくただの善意ではなく,人間関係の無用なトラブルで煩わされることがないよう私のような年寄りに動いてもらうための布石なのだろう.とはいえ()()()()()()使()()()程度には人工的に作られ(コーディネートされ)た天才に評価されたという事だ,天然物(ナチュラル)としてここは大人しく喜んでおこう.

 

1983.10.22

 全40体の素体の培養を開始,ようやく実験としての第一歩を踏み出せた.長く時間は掛かるだろうがこれからが実に楽しみである.

 

1983.11.9

 社のパーティーでアレクシア嬢から頼みごとをされた.『自身に対し長期の実験を行うのだが少なくとも10年はかかるのでその間公的には死亡扱いとする.なので実験終了まで南極研究所が閉鎖されないように取り計らってほしい』という内容だった.既に幹部数人にも話を通しているという事だったので特に考えず了承することにした.

 そもそもあそこの維持費はほぼ全てアシュフォード家から出ている.私のような年寄りが数人集まればそれくらいは訳ないだろう.

 彼女の実験が終わるまでに私の研究も目途がついているはずだ.彼女自身と彼女が生み出したものを種にした研究だが,アッと驚く成果を見せてやりたいと思う.

 

~~~~~

 

1984.4.5

 培養開始から半年足らずで全ての素体がウイルスの投与が可能な最低ラインまで成長した.タンパク質からの培養速度としては通常の3倍近いペースであり,これだけでも十分な成果だ.げに恐るべきはcode:ベロニカとそれを昇華させた私の頭脳だろう.

 

1984.6.21

 夏至,いよいよ素体達にt-Vウイルスを投与した.この実験で生まれた子供達は今頭上で輝く太陽のように我々を照らしてくれることを願う.

 

1984.6.28

 投与から1週間で約半数の素体が死亡した.

 

1984.8.4

 悪いニュースが2つと良いニュースが1つ,

 まずは悪い方から,1つ目は素体の数が先週で10を切った.やはり人体への適合はハードルが高いらしく想定の中でも低い方の経過をたどっている.とはいえこちらはまだ予想の範囲内だが問題はもう一つの方だ.理事会の連中,code:ベロニカでの素体生成を実用的でないと言いやがった!

 確かにコストはかかるが素体のDNAをある程度指定できるのは大きなメリットだろう!今の孤児院経営や誘拐と比べたらリスクも効率も勝っているのがなぜ分からない?ウイルス適合者が偶然見つかる確率を知らないのか?

 良いニュースは残った素体が安定状態に入ったことだ,是非とも成果を出して連中の鼻を明かしてやりたい.

 

~~~~~

 

1988.11.8

 素体は順調に成長している.

 t-ウイルスに研究はようやく知能向上の方向へ舵を切ったらしい.指示を受け付けるかどうか以前に指示を理解できないのは問題だとようやく気付いたようだ.

 

~~~~~

 

1994.5.5

 想定していた背格好まで素体が成長したが現時点ではt-Vウイルスの影響は確認できない.アレクシア嬢は少なくとも10年と言っていたからまだしばらくはこのままだろう.

 

~~~~~

 

1995.8.15

 なんてことだ!031と033を除いたすべての素体が突然死亡した.残った2体も体温が乱高下を繰り返している.ウイルスの影響がいよいよ出てきたらしい,頑張って耐えろ!

 

1995.8.20

 素体が2体とも安定状態に戻ったが手足や胴体の一部,腰の後ろ辺りにわずかに皮膚異常が見られる.経過観察が必要だ.

 それにしても心配でここ数日間まともに眠っていない.もし私に子供がいて病気にでもなったらこんな風になるのだろうか?などというらしくもない考えが浮かび1人で笑ってしまった.

 

1995.10.3

 尻尾が生え始め,体表面も変化してきている!どうやら無事に適合できたらしい,さすがは私の創った子供達だ!

 

~~~~~

 

1997.4.7

 ついに2()の体組織変異が完了したようだ.最終的に031は左半身,033は右半身の多くにおいて体表組織が変化しており,一部組織を採取して解析したところ未知の物質が検出された.詳細についてはデータベースに記録してあるからここでは省略するが,人体のものとは比較にならない程の強靭性を有してる.

 また尻尾が成長しきるのと同じ頃,その外殻と同じ材質と推定される角が頭部に2本ずつ生成された.031と033で生え方が異なっている.もしこれが性差によるものだとしたら実に素晴らしい.ウイルスが強制的に体を変化させたのではなく,融合したうえで新たな種として進化した可能性があるからだ!

 

1997.4.13

 変異が一段落したのでいよいよ2人の身体について検査を始めていくことにする.検査開始にあたって製品名を決めることになった.面倒をみはじめて既に14年,自分でも思ってみなかったほど情が湧き2人をもの扱いするのは正直気が進まない.

 とはいえ規則は規則なので仕方ない.考えた結果私の出身国の伝説にあやかりZmeuと命名した.優れた身体能力と高度な知性を持つ龍人族,まさにぴったりの名前だろう.

 ちなみに個体コードはそのままtV-Zmeu0031tV-Zmeu0033だ.

 

1997.8.8

 素晴らしい!検査をすればするほどポテンシャルの高さが露になる.いったいどれほど私を驚かせれば気が済むんだ?目を覚ますときが待ち遠しくて仕方ない.

 それはそうとデータを見た本部が2人をこちらに送れと言ってきた,成果が出そうになったからって汚い奴等だ.そしてどうやらNESTのバーキンが大喝して黙らせてくれていたらしい.あまり交流がなかったがどういう風に吹きまわしだ?彼が研究しているというGウイルスとかが関係しているのだろうか?

 

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1998.3.12

 アシュフォード嬢から連絡があった,適合が無事に終わったようだ.彼女の生存は未だ秘匿事項のためこちらからは連絡できないのがもどかしい.半年ほどかけて今の体に慣れてから行動を始めると言っていた.子供たちを見せた時の反応が今から楽しみである.

 

~~~~~

 

1998.5.11

 研究所で事故が発生した.今や施設内は理性の欠片もないバケモノ共がうろついている.だから知性のない奴なんぞ開発するだけ無意味どころか害になると言ったんだ.まあ今となってはどうでもいい,噛まれた以上もはや私も奴等の同類だ.もっとも老いたとはいえ私も従軍経験者,手遅れになる前に始末はつける.

 

 唯一の気がかりが子供達だ.区画は封鎖した.回収できた物資は運び込んだ.培養装置の維持についても余剰エネルギーを回すようシステムに割り込みをかけたし,バッテリーもあるから仮に施設が吹き飛んでも1週間はもつ.とうとう目覚めることはなかったがあれだけのポテンシャルがあるなら覚醒しさえすれば大丈夫なはず――だめだな,やれるだけのことはやったのに心配でしょうがない.そして自分の性格の変わり具合にも笑えてくる.これでは完全に父親ではないか.

 さて,いい加減にしないと腕が動かなくなってきた.それではさよならだ子供達,君達が無事に目覚めることを祈っている.

 

 ああそうだ,()()()()()が間に合って良かったよ.

 

 

 

====================

 

 

 

「―――ま,要するに俺は俺ってことだな.アンブレラの研究者にしちゃまともな感性してるじゃねえか,クソ親父」

 

 そう声をかけたのは壁際でこと切れている高齢男性っぽい拳銃自殺死体.こいつが俺と胡桃を作ったドクターだろう.腕に噛み傷があるし,自分で始末をつけると書いていたから間違いない.

 

 さて,右も左も分からない状況で何とも意味ありげな死体と一緒に無駄に豪華な日記帳が落ちていたらどうする?

 はい結論.読むよな,とりあえず.

 

 そんな非常に合理的な思考の下,手に取った日記帳をパラパラとめくってみたわけだが思ったより収穫があった.

 ただ俺にとって一番重要なのはやはりさっきの一言に集約される.

 

 即ち,『自分は自分であり他の何者でもない』という事だ.

 

 バイオハザード世界に異形の姿で目覚めた時点で俺と胡桃がB.O.W.であることはほぼ確信していた.

 そして,多くの人型B.O.W.は生身の人間を素体にしているというのは,このシリーズを多少なり知っている人にとっては常識だ.

 

 だからこそ,今『自分は凪原勇人である』と主張するこの意識は信用できるのか,本当は誰か別人の体と意識を乗っ取って生成されたものなのではないか.そんな恐怖が背中につきまとってたんだ.

 そんなことは考えないし気にしないって人もいるかもしれないけど,俺にとってはかなり重要なことだから早めに分かって良かったわ.

 まあ培養タンパク質に意思が芽生えてる時点で今の俺がオリジナルじゃないのはほぼ確定だけどその辺は正直どうでもいい.オリジナルが使役してこようとするなら話は別だがそうじゃないならクローンだろうが何だろうが俺は俺だ.

 

 懸念が解決してスッキリしていると,足音と共に別行動していた胡桃が戻ってきた.

 

「ただいま」

「おーおかえり,そっちどうだった?」

「ん,なんかドア閉まってたしこの区画だけ閉鎖されてるっぽい.()()使えばブチ破れそうだけどゾンビとか色々いそうな気がしたからやめといた」

 

 答えながら胡桃が()()を振って見せる.胡桃といえばソレ,ソレといえば胡桃.この関係はこいつの特徴だし他に成り立つ奴がいるとも思えない.

 うん,俺はともかく胡桃については『何者か?』なんて問いは愚問だったな.

 

「どうしたんだよ,何も言わないでじっとこっち見て」

「いんや,世界中どこ探しても胡桃ほどシャベルが似合う人はいないなって話」

「喧嘩売ってんの?」




 かなりまとも(社内比)なドクターの研究の産物として凪原と胡桃(異形ver.)がこの世界に産み落とされました.
 ちなみに2人の製品名であるZmeuはズメウと読みます.出典はルーマニアの逸話.よく似た名称の竜伝説はこの地域の国一帯にあるが,これだけは由来が異なる可能性がある,らしい.

 次はいよいよ2人がラクーンシティに到達する予定です.


 それではまた次回!
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