季節ネタが書きたくなったので閑話として投稿します。本編とは関連がないので所々矛盾があるかもしれませんがそこらへんは目をつぶってください。
それではどうぞ、
大晦日、人類の経済活動が止まり人間社会から排出される熱が無くなったことと関係があるのかないのか、この冬は例年よりもだいぶ寒く感じる。
外では雪がちらつく中、巡ヶ丘学院の
「うー、外見てるだけで寒くなりそう。やっぱ冬はこたつだな~」
窓の外を眺めながらつぶやく凪原は背中を丸めるようにして炬燵で暖を取っていた。その目の前には半分くらいまで空いたウォッカの瓶と封の空いたジャーキー、氷の浮かぶグラスが置かれている。見るからに一杯やっているようだが、凪原の表情にいつもと変わったところは見られない。世に言うざる、うわばみである。
「はーい、年越しそばが茹で上がりましたよ~」
「畑の野菜で作ったかき揚げもできたわよ」
隣の部屋で料理していた慈と悠里が部屋の中に入ってきた。2人の手には大きな盆が握られており、慈のものには山盛りのそばが、悠里のものには揚げたてのかき揚げがそれぞれ盛られていた。
「ありがとりーさん、めぐねえ。おーい、そばできたからゲーム切り上げて食べるぞー」
「「はーい♪」」
それにお礼を言いながら、凪原が由紀とるーちゃんの方に声をかけると2人は元気よく返事をして遊んでいたゲームを中断して炬燵の方にやってきた。
テレビゲームは普段悠里から制限されているのだが、「
「そういや何のゲームやってたんだ?結構熱中してたみたいだけど」
「プクミン2だよ~」
「いろんな色の小人さんと冒険するの」
「あーあれか、俺もやったなぁ」
それなりの知名度を誇る探索型ゲーム、色とりどりの小人を引っこ抜いて連れ歩き、それぞれの特徴を生かしてお宝を集めるゲーム。凪原も以前ハマってた時期があった。
「お宝見つかった?」
「うん!るーちゃんがどんどん進むからたくさん取れたよ」
「たくさん集めたの」
問いかけに笑顔で答える2人。このゲームでお宝を集めるのは結構大変なはずだったので凪原は素直に感心した。
「おー、るーすごいじゃん。なんかコツとかってあるのか?」
「るーちゃんすごいんだよ!強い敵が出てきたらすぐに白い小人さんを敵の口に投げ込んで、痺れさせたら赤い小人さんでやっつけちゃうんだ」
「大を生かすために小を切り捨てるのも時には必要なの~」
「お、おう…」
「でも、その切り捨てた小の事を忘れずにいることも大事なの、献身があってこそ先に進めたことを覚えておくの」
この幼女、帝王学を学ばせると化けるかもしれない。
そんなことを考えながらも、背筋に寒いものを感じた凪原は思わず目を泳がす。そして動かした視線の先にいたのは―――
「……??」
なにやら疑問を覚えているような顔でこたつに入っている胡桃であった。
「ん?どうした胡桃、難しい顔して」
「いや、なんか違和感があってさ。…つい最近まで夏前だったような気がするんだけど…」
「何言ってんだ、お前?」
しきりに首をかしげながらそんなことを言う胡桃に、怪訝そうな顔で返す凪原。
「うーん、あたしの気のせいかなぁ」
「こたつで居眠りでもして寝ぼけたんじゃないのか?」
「まさかなぎ君、くるみさんにお酒飲ませちゃったりしてないでしょうね?」
「おいおい冤罪だよめぐねぇ。ちゃんと見て管理してるって」
ジト目であらぬ嫌疑をかけてくる慈に肩をすくめて弁解する凪原。いまだに納得する様子のない胡桃に次に声をかけたのは由紀だった、こたつに肩まで入って至福の表情を表情を浮かべながらてきとうに話す。
「あれじゃない?胡桃ちゃん昨日今日って特訓してなかったから調子でないんじゃないの~」
「まさか胡桃が特訓依存症になっていたとは…」
「いや、無いから!人をそんな風に言うな」
由紀とその言葉に悪ノリする凪原の2人にウガーっとなる胡桃。
「まあ胡桃が特訓ゴリラなのは今は置いておきましょ」
「待った、りーさん。誰がゴリラだって?」
「ほら、あなたの分のそばとつゆよ。こぼさないようにね」
「聞けよっ」
そのままやいのやいのしだす2人を尻目に慈が他の皆にもとりわけた分を配っていく。なおかき揚げは冷めないように大皿にまとめておくようで、取り皿だけが配られている。
「るーは夕ご飯結構食べてたけどまだ食べれるか?
「ううん、平気なの」
「そっか、まあ無理はしないようにな」
るーちゃんのお腹を心配して一応声をかけるが特に問題はないようだ。というか既にお箸を構えて食べる気満々である。
「それじゃ」、と一つ手を叩いて慈が口を開いた。
「冷めないうちに食べ始めちゃいましょうか」
「いっただきまーすっ」
「あっ、こら由紀。お行儀悪いわよ」
「お~おいしいよりーさん」
「もう、聞いてないわねこの子は」
少しフライング気味で由紀が食べ始めたのを見て、皆も箸を取って食べ始める。ある者はそばをズルズルとすすり、またある者は今で湯気を上げているかき揚げにかぶりつきサクサクと音を立てる。
しばらくは無言の時間が続いたが、やがて胡桃が口火を切った。
「いやー、にしてもこんな風にのんびり年を越せるとは思わなかったな」
「お、なんだ。もう寝ぼけてないのか」
「もうそれは良いってナギ」
茶化すように言う凪原にそばをすすりながら頬を膨らませるという器用な技をやってのける胡桃。凪原の方も冗談冗談と軽く流している。すると今度は悠里が感慨深げに口を開く。
「でもほんとにそうよねぇ、今年の年越しがこんな穏やかになるなんて…。半年前は思ってもみなかったわよ」
「まぁまず無事に年を越せるかってとこから怪しかったからねぇ」
「すごく怖かったの」
「その日一日を生き残るのに必死でしたからねぇ」
悠里の言葉に頷きながら続ける面々。それぞれがパンデミック当初のことを思い返しているのかその顔は沈んでいる。微妙にしんみりした空気になったが次の凪原の言葉でその空気も霧散した。
「俺はとりあえず何とかなるって思ってたけどなぁ」
「はいはい空気読めナギ。今はしんみりする場面だろうが」
「そうですよ、第一なぎ君だって田宮さんの一件で気負いがあったじゃないですか」
「あー…、まぁ確かにそれを言われちゃうと何も言えないわ」
とぼけた発言をしたことを嗜める胡桃と慈の言葉に頭を掻きながら答える凪原。しかしそのおかげで場の空気は柔らかくなった。そしてそのまま話題はパンデミック当時、凪原が合流した頃へと移っていった。
「今だから言うのだけど、凪原さんの第一印象って不審者なのよね」
「私は、なんか近寄っちゃいけない人って感じたなぁ」
「おっとぉ、半年近く経って明かされる衝撃の事実に動揺を隠しきれないんだが」
「そりゃしょうがないだろ、あたしだって皆を守るって気持ちが無かったら避けたかったし」
「マジかぁ」
突然の酷評にこたつに突っ伏して大げさに沈んで見せる凪原。そこに慈からの声が掛かったので首から上だけを持ち上げて顔を向ける。
「うーん、私はなぎ君のことを前から知ってたのでそんなことはなかったですねぇ」
「めぐねえ…」
「――でも初対面だったらちょっと顔を背けちゃったかもしれないです」
「めぐねえ⁉」
まさかの追い打ちだった。
元の位置に戻しかけた頭を再び勢いよく伏せる。ゴンッと鈍い音が天板から響き、そこそこ大きい音がしたのでるーちゃんが心配そうに頭をなでてくれた。
「大丈夫?ゆーにい」
「ああ大丈夫だ。俺を心配してくれるのはるーだけだよ」
起き上がって笑顔を向けるとるーちゃんはニパッとほほ笑むとまたおそばに戻っていった。
「それに比べて高校組の容赦のなさときたら…」
半目で由紀たちの方を見やれば、それぞれから反応が返ってきた。
「あはは、ごみんごみん」
「もちろん今はそんなことないわよ?頼りになるし、性格もすごくいいと思っているわ」
「なんだよ、思ったこと言っただけだろ~」
「フォローありがとう由紀にりーさん。……胡桃は年明けの訓練2倍な、あとめぐねえはしばらくビール取ってこないから」
「げっ」
「そんなぁっ⁉」
凪原の宣言に悲鳴を上げる胡桃と慈の2人。
慈は見た目に似合わず結構な酒豪であり、今日も涼しい顔をしてビールの500㎜缶を数本空けていた。学校では生徒に隠していたようだったが今となっては隠す意味もないので皆知っている。探索の後持ってきたビールをこっそり渡しているところを見つかった、ともいう。
なお、なぜ凪原は慈の酒好きを知っていたのかというと、生徒会メンバーで文化祭後の打ち上げに行ったときに慈自身がノリノリで「ビールお願いします、ジョッキでっ」と言い放ったことが原因だったりする。
そんな酒好きな慈に対して凪原が宣言したビール禁止令は青天の霹靂だったのだろう。体を乗り出すようにして凪原に抗議していた。
「なんでですかっ、私がビール好きなのはなぎ君も知ってるでしょう⁉」
「教え子のフォローをせず、あまつさえ追い打ちをかけてくるような恩師に持ってくるビールはありません。ウォッカなら俺の備蓄分があるよ」
「あんなアルコールの香りが前面に出てるもの呑めませんよっ」
「おおん?ウォッカをバカにするならたとえめぐねえでも容赦せんぞ」
「望むところですっ。今日こそなぎ君にビールの素晴らしさを教育してあげます」
そのまま酒トークに突入する成人組の2人に冷ややかな目を浴びせるその他の一同。
「ねぇりーねえ、ゆーにいとめぐねえは何の話をしてるの?」
「あんまり見ちゃいけません。まったくこの2人は…」
「まーた始まったよ、これで何回目だっけ?」
「もう覚えてないなぁ。いっつもあれで喧嘩になるんだもん」
「だよなぁ、酒ってそんなにうまいもんなのか?」
「私に聞かないでよ、飲んだことないんだから。というか今回だって結果は見えてるわ、ほら」
そういう悠里につられて2人の方を見れば――
「とりあえず日本酒はうまいということで」
「そうですね、そこで手打ちにしましょう」
そう言いながらがっしりと握手する凪原と慈の姿があった。
「ね?」
「やっぱこうなるか」
「もはやお約束だよね~」
「2人ともほんとにお酒好きなの」
そう言って笑い合う4人に?マークを浮かべる凪原たち2人であった。
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「あと10分くらいで年明けだぞ」
「お、もうそんな時間か。っていうかこの電波時計、いまだにちょくちょく自分で調整してるけどどっから電波拾ってんだ?」
「案外どっかの生存者が装置を動かしてるんじゃないの~」
そばを食べ終わった面々はそろってこたつに当たりながらみかんを食べていた。皆がこたつの魔力にやられてポヘーっとした顔になっている。
「それにしてもこのミカン甘くておいしいわねどこから持ってきたの?」
「あーそれか。なんかいい感じに水道が壊れて水撒きがされてるビニールハウスがあってさ、そっから持ってきた」
「何とも都合のいい話ね」
「あれ見つけた時はびっくりしたな~」
あっちこっちに話題が飛びながら話しているうちに、いよいよその瞬間が近づいてきた。
「いよいよだよっ、みんなカウントダウンの準備はいい?」
由紀の声に皆が了承の返事を返す。
「それじゃいくよ~、5っ」
「「「4」」」
「「「3」」」
「「「2」」」
「「「1」」」
「0っハッピーニューイヤー!((あけましておめでとうございます))((あけおめ~))(おめでとうなの~)―――ってみんなバラバラすぎるよっ」
カウントダウンでの息の合い方が嘘のようにてんでバラバラな新年のあいさつに由紀が思わず突っ込みを入れる。
「しょうがないでしょ、事前に話してたわけでもないんだし」
「アハハッ、まぁあたしららしくていいんじゃないか」
「だなぁ。まっ、次回の課題ということで―――うん?なんだコレ?」
笑いながらそう言った凪原の頭にどこからともなく一枚の紙が降ってきた。
疑問の声を上げながら確認する凪原に皆がこたつの上に広げられた紙をのぞき込む。
「どういうことでしょう?」
「マジで意味が分からないんだけど」
「由紀のいたずらとかじゃないのよね?」
「違うよっ」
「神様からのお告げなの?」
「神様がいるなら今の状況を何とかしてほしいもんだけど、この内容を言えってだけなら別に損もないしいいんじゃないか?」
凪原の言葉に皆が頷く。
「んじゃいくぞ~3、2、1」
「「「皆さま、新年あけましておめでとうございます!今年もどうか本作をよろしくお願いします!」」」
「………さて、なんか分からないのを挟んだけど、無事年が明けたところで」
「そうそう明けたところで」
「明けたわね」
「明けたの~」
ニヤニヤと笑いながら口を開いた胡桃に続いて、由紀、悠里、るーちゃんも意味ありげな笑みを浮かべながら凪原と慈の方を見やる。
「な、なんだみんなして?」
「み、皆さんどうしたんですか?」
状況が読めない凪原と慈の2人がうろたえていると、満面の笑みになった皆は「せーのっ」と息を合わせると―――
「「「お年玉ちょーだいっ」」」
「「ファッ⁉」」
その後の学園生活部の部室には未成年組にグイグイ詰め寄られる成人組の姿があったがそれはまた別の話。
皆さまあけましておめでとうございます!
投稿時間的に読んでる間に年が明けるように設定してみました
内容に関して、
やっぱり年末と正月はこたつにみかんだと筆者は思うんですよ。まぁそんなのんびりした正月なんてあんまり無いんですが。
あと、凪原と慈の成人組は2人ともお酒好きにしました。凪原はウォッカ好き、めぐねぇはビール好きです。この設定は本編とか他の閑話でも機会があれば使っていきたいと思ってます(へべれけめぐねぇとか見たい、……見たくない?)。
るーちゃん
会話にしっかり参加するのは閑話が初めてになってしまった…。原作ではほとんど話してなかったので勝手ながら想像してこんな口調にしました(筆者の趣味とも言う)。
次回更新は本編の続きの予定です。多分日曜かなぁ…
それでは皆様
2020年も本作、「学園生活部にOBが参加しました!」をどうぞよろしくお願いいたします!
高評価、感想等をお年玉感覚でいただけますと筆者は大変喜びます。特に感想は非ログイン時でもできるのでぜひに