ゲームに登場する爆速ゾンビが相手だったら凪原達も生き残りは無理だろな~、などと考えながらプレイしています。
さて今回本編ではあの子が出てきますよ~
(話数表記を変更しました)
「おい胡桃、人を人外みたいに言うなよな」
と、こちらは
凪原の苦情は胡桃に「事実だろ」と一蹴された。解せぬ、という顔の彼に由紀が声をかける。
「相変わらず身軽なんだねナギさん、あれってまだ続けてるの?ほら、パー、パー、…パールハーバー?」
「そりゃ真珠湾だ由紀、パルクールな。なんだかんだでまだ続けてるよ、面白いし」
「パルクール…、街中を素早く動くスポーツでしたっけ?」
由紀の覚え間違えを正しつつ肯定する凪原。その会話を聞いていた美紀が会話に入ってくる、ようやく動けるようになってきたらしい。
「ああ。もともとは街中、自然の中を問わず障害物に対しても動きを途切れることなく効率的に目的地へ移動する移動手段でな。体動かすのは好きだったし、ちょっと必要になったから高校時代に始めたんだ」
「高校生活でその技術が必要な場面が思いつかないんですが…」
「例えば放課後の校内とかイベント中とかかな、ああいう時って色んなとこに人がいるし素早く動ければ便r「嘘ですよ美紀さん、信じちゃだめです」ちょっとめぐねぇっ」
説明の途中に割り込まれ焦ったような声を出す凪原、その様子に何かあると感じた美紀は慈の方に向き直る。
「そうなんですか?」
「はい。なぎ君、というか第31代のみんながパルクールを始めたのは私がお説教しようとしたときに逃げるためです」
「え?」
慈が口にした予想外の理由に目が点になる美紀。それに対して凪原が何か言う前に、いつの間にか近くに来ていた悠里が口を開く。
「めぐねぇの言う通りよ。私たちが1年の時は、めぐねぇに追いかけられて2階の窓から飛び出してきたり、逆に飛び込んできたりする
「「えぇ…」」
悠里の言葉と、「あれは壮観だったよな、ほぼ映画だったもん」と頷く胡桃に美紀と圭の2人は開いた口が塞がらない様子だ。本当なのかと当の本人の方に顔を向けてみると―――
「~♪(巡ヶ丘学院校歌のメロディー)」
―――明後日の方向を見ながら口笛を吹く凪原の姿があった。これまた映画やテレビでしか見たことが無いくらい典型的なごまかし方である。音のクオリティが妙に高いのが腹立たしい。
「「凪(凪原)先輩」」
「一応言っておくけど、最初に言った理由も本当だからな?「でもメインは違いますよね?」――だって、めぐねぇのお説教超こわいし、
要約すると、生徒会担当教員だった慈から逃げて仲間に貧乏くじを引かせるためにパルクールの技術を身につけたらしい。
端的に言ってゲスである。
「なるほど、それで逃げてる同士で邪魔し合ってたのか。みんな逃げてるはずなのにおかしいと思ってたんだ」
「廊下に置いてある物まで使って妨害してたから通った後はいろんなものが散らかってたのよね、それこそ嵐が通過したみたいに」
「はた迷惑すぎませんかソレ」
「後で片づけを手伝ったりはしてたみたいだよ?一応1年間通してけが人とかは出なかったみたいだし」
「その気配りと能力を別の方向に使えよ…」
呆れたように胡桃が言った内容は、話を聞いている全員の内心を代弁するものであった。
「というかめぐっち先生、なんで捕まえた1人にしかお説教しなかったのさ?全員にすれば良かったじゃん」
「本来ならそうなんですけど、なぎ君たち全員捕まえようと思ったら何時間かかるか分からなかったので…」
「「「ああ…」」」
圭の疑問への答えに皆が納得したように声を上げる。高校時代の凪原の行動についてあれこれと話していた一同だったが、そのせいで現在の凪原への注意が散漫になっていた。
「さて君たち、散々好き勝手に言ってくれたけど忘れていないか。まだ今日の訓練は終わっていないぞ?」
そしてその言葉に、ハッとした顔になる面々。盛り上がっていたため気づかなかったが、凪原の表情が危険なタイプの笑顔になっている。
「残りの皆も美紀と圭の時と同じように3分間の制限時間有りの鬼ごっこのつもりだったけど気が変わった。俺を捕まえるまで終わらない超耐久仕様に変更だ、全力で逃げるから覚悟するように」
結局、慈たちは1時間以上走りまわらされて疲労困憊になり、その日の昼食と夕食は凪原が用意することになった。
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「あー、今日は実戦訓練をやります」
「……」
そういう凪原と、その横に立つ胡桃はやや難しそうな顔をしている。どちらも「気が乗らねぇ…」と内心で思っているのが丸分かりである。対してその正面に並ぶ面々は緊張こそしているものの、2人のように気が進まないということはなさそうである。
「ほらなぎ君、そこで止まらないでください」
「いやそうはいってもさ…」
一同を代表して慈が声をかけるも、何とも歯切れが悪い凪原。基本的に言いたいことははっきりいうタイプである彼にしては珍しい。
「なぁ皆、やっぱりやめとかないか?ある程度の実戦を経験するのは俺も賛成だけど、正直
「そうそう、今んとこあたしとナギだけで事足りてるし、みんながそこまでやる必要はないと思うんだけど」
訓練を始めてからしばらく、ある程度の基礎体力と武器の取り扱いを身につけたところで対ゾンビの実戦訓練を行うことになった。そこまでは凪原も胡桃も特に異論はない、というか2人が企画した。問題なのは慈たちが制圧、つまりゾンビの殺害まで経験しておきたいと言い出したことである。
もともとは牽制の仕方を教える程度のつもりだった凪原らにしてみれば予想外である上に、仲間たちに(すでに死んでいるとはいえ)人を殺してほしくないという思いもある。何とか思いとどまってくれないかと頑張ってみたが、「いざという時に手が止まってしまうことが無いように」と押し切られてしまった。
まぁ皆の言うこともよく分かるので了承はしたのだが、気が進まないことに変わりはないのでぎりぎりまでこんなことを言っているのである。
「もう、その話は何回もしたじゃないですか」
「確かに気分がいいものではないけれど、いざという時に初めて…というのは嫌だもの。胡桃や凪原さんがいる時に経験しておきたいわ」
「これから先ずっとその時が来ないとは考えにくいので早いに越したことはないです」
順に慈、悠里、美紀の言葉である。言い方こそそれぞれ異なるが意味するところは同じであり、やめる気はないということが見て取れる。しかし、口に出しているもの以外の理由もあるであろうと凪原と胡桃は考えていた。
(多分俺と胡桃だけに戦闘を任せていることへの負い目をどうにかしたいってのもあるんだろうけど。……まぁそれぞれが勝手に外に出られるよりはいいか)
チラリと胡桃の方を見ると、彼女は何とも困った顔をしてこちらを見ていた。多分凪原も同じような顔をしていることだろう。どうしようもない、と視線による会話で結論付けると、2人揃って小さくため息をついてから口を開く。
「ハァ……分かった、それじゃ予定通りやっていこう」
「前に言ったけど万が一に備えて1人ずつな、なんかあった時にあたしとナギとでフォローできるように」
仕方ない、という風に話す2人に聞いていた皆は満足げに頷いた。
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「ってことで最初は由紀か」
「そうだよ、よろしくねナギさん、胡桃ちゃん」
そう話す由紀が手に持っているのはクロスボウ、言うまでもなく部室の
もちろん威力に見合うだけ弦の重さがあり、滑車などを用いて軽く引けるようにされているとはいえ女性が引くのはかなり大変である。
それでも、白兵武器を用いてゾンビに致命傷を与えられるだけの威力を出すことは難しいということと、遠距離武器の方が精神的なダメージを低くできるだろうという判断から、制圧用としてこの武器の扱い方を訓練で教えていた。
「由紀はすばっしこいから牽制とかの方が合ってるとあたしは思うけどなぁ」
「うーん、まぁ私もそんな気がするけどやっぱり経験しときたくてさ~」
胡桃が指摘した通り、由紀は筋力こそ低いが運動能力は高い。2年前の全校参加鬼ごっこ大会の時もベストプレイヤーに選ばれていたくらいで、身のこなしに限って言えば学園生活部内で凪原に次ぐ第2位である。
よってゾンビと相対しても、正面から戦うことなく牽制(例えば足を攻撃して転ばせるなど)したのちに逃げる方がいい、と凪原も胡桃も重々言っているのだが、やはり制圧もできるようにしておきたいとのことで聞く耳を持ってくれない。それでも自分の特性を把握しているあたり他よりはマシと言うべきか。
「今後は牽制の仕方に重点を置いて鍛えるからな。…じゃ、行くか」
「はいはーい」
由紀を引き連れて階段を下り2階へと移動する3人、ここが由紀達の初めての実戦場所となる。今回の訓練場所としてここを凪原が選んだのは安全地帯に近く、ゾンビの数が少ないからである。
現在2階と3階の間にバリケードがあるため、その防衛を兼ねて2階部分は凪原と胡桃とで定期的に巡回している。そのため外と比較してゾンビが少なく一度に相手にする数を抑えることができ、初の実戦には都合がいい。
由紀と胡桃を少し待たせて、廊下をのぞき込む凪原。見える範囲で廊下に出ているのは制服を着たゾンビが3体、それぞれが離れた場所におり、各個撃破には理想的な状態だ。
それだけ確認してこちらを見ている由紀に振り返り声をかける。
「見た感じの数は3体、教室の中にもいるかもしれないから注意しろよ」
「う、うん。分かった」
そう答えると、由紀は緊張した面持ちながら前に出て自分でも廊下をのぞき込む。凪原が偵察している間に弦を引いていたのか、クロスボウには既にボルトが装填されていた。
一番近いゾンビの位置を確認し、クロスボウを構えたまま音を立てないように動き出す由紀。
凪原と胡桃はその後ろをついていくだけで声をかけることはしない、より本当の実戦に近い形にするためだ。気が進まないとはいえやる以上は最高効率となるように全力を尽くすというのが凪原の考え方だ。
それは由紀にも事前に伝えてあるため、2人はいないものとして考えて時折後ろも確認しながら進んでいく。射程圏内まで近づいたところで、クロスボウを目線の高さまで持ち上げて構え直す。
「………(プルプル)」
重量3kgオーバーのクロスボウを支えるのはかなり筋力を使う。実際両手で保持しているにもかかわらず由紀の腕は小さく震えている。
しかし手の震えなどは、クロスボウに備え付けられた照準器をのぞき込む由紀にとっては意識の外のことのようだ。彼女の顔は真剣そのものであり、そこにいつもの元気な笑顔はない。若干の戸惑いをはらんではいるものの、その目は冷静に相手を見定めている。
腕の震えが止まった瞬間を見計らって引き金を引く由紀。弦が蓄えていたエネルギーのすべてがボルトへ与えられて一直線に飛び出す。
火薬を用いている銃とは異なり、クロスボウは発射音がほとんどない。
よって、その場にいた3人の耳に入ったのはボルトがゾンビの頭に突き刺さる音だけであった。
左側の後頭部から侵入したボルトは頭蓋骨を突き破り、矢羽の近くまで埋まったところで進むのを止めた。フラフラと、こちらから離れるように進んでいたゾンビは糸が切れたマリオネットのように崩れ落ちて動きを止める。名前も知らぬ1人の生徒が真に死亡した瞬間であった。
「……っ」
由紀の表情が小さくゆがむが、それ以上の変化ははた目からは確認できない。これも凪原が訓練の中で何度も言っていたことである。
曰く、「悩んだり後悔することは後でもできる、でも戦闘中にそれに捕らわれるのは命取りだ。分かりやすく言うと、―――手と頭を止めるな」
凪原のその言葉通り、由紀は手を止めることなくクロスボウの再装填を始める。周囲にゾンビがいないことを確認すると、先端のわっかに足先を入れて押え、両手で弦を持ち背筋を使って背をそらせるようにして引く。こうすれば由紀でも比較的楽に弦を引くことができる。
カチッと音がするまで弦を引いた後は腰の矢筒からボルトを1本抜き出してセットする、これで再装填は完了しいつでも発射できる状態になった。
その後も由紀によるゾンビの
現在3人は、事前に胡桃と凪原とで想定外の事態が起きた時の退避場所として使えるよう安全を確保しておいた教室で一息ついていた。
「さて、初めて奴等を倒した訳だが、どうだった?」
「うーん…よく分からない、かな。こんなものかなって今はあっさりした気分なんだけど、まだ実感がないだけなのかも」
背中にしょっていたリュックからペットボトルを取り出して水分補給をする由紀に声をかけると、難しそうな顔をしながらそう答えた。考え方によっては殺人を犯した直後であるため、場合によっては取り乱したりする可能性もあったのだがそのような様子は見られない。念のために質問してみたが特に問題はなさそうだった。
「(精神的な面に関しては事前に胡桃とも話したけど、やっぱ内面がタフなのかな)まぁ今の段階でそんな感じなら特に心配しなくても大丈夫そうだな。ただ、あとでどうなるかは分からないから、どんな些細なことでも何かあったら俺か胡桃に言うんだぞ」
「はーい。――さ、そろそろ行こうよ。この後は階段まで移動して3階に戻るんだよね?」
「ああ、3階に戻ったら訓練終了だ。くれぐれも気を抜くなよ」
「了解であります!」
凪原の言葉に敬礼して答えると由紀は教室のドアへと向かう、クロスボウを残して。
「おーい由紀、こーれっ(クロスボウを指さす)」
「あっ忘れてた!」
「まったく、武器無しでどうやって訓練する気なのか教えてほしいよ」
「ごみんごみん」
「えー、訓練中に武器を忘れる、マイナス1点……っと(メモを取るふりをしながら)」
「あーん、ひどいよなぎさん」
そんな一幕を挟みつつも、訓練の後半戦が始まった。
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バァンッ
休憩後も訓練は問題は起こることなくあと数歩も進めば階段に到着する、といったところで破壊音が廊下に響き渡った。音の発生源は階段脇の女子トイレの中であり、恐らくは個室の扉が壊されたのだろう。人間が壊すはずないので確実にゾンビである。
想定外の事態に、知らず知らず緩んでいた気を張りなおす3人。凪原は即座にホルスターから9ミリ拳銃を引き抜いて、廊下の前後を見渡す。今の音で教室内にいる(かもしれない)ゾンビが出てくるのを警戒しての行動だ。胡桃も
「大丈夫だよ胡桃ちゃん、こういう時にも自分で対処できるようにならないと」
「……分かった、でもダメだと思ったらあたしがやるからな」
クロスボウを構えながら言う由紀に、胡桃はそれだけ答えると半歩下がる。
トイレのドアは内側からは押すだけで開く、そのためゾンビもすぐに廊下まで出てくるだろう。数舜ののち、ドアがゆっくりと開かれ体をこすらせるようにして1体のゾンビが姿を現す。
「アァァ……」
女子の制服を着てチョーカーを付けたそのゾンビの頭は、由紀が構えるクロスボウの真正面にあり、引き金を引くだけですぐに片が付くだろう。そう思った凪原と胡桃の思いに反し、由紀は引き金を引くことは無かった。
その目は見開かれ、クロスボウを構えていた腕は下がり、ゾンビの頭から斜線が外れてしまう。
「……
かすかに震える唇から、小さく声が漏れた。
はい、柚村孝枝ちゃんすなわちチョーカーさんゾンビver登場です。
チョーカーさんはキャラ的に好きなんですが、シナリオの時系列上泣く泣く生存をあきらめざるを得ませんでした。なのでゾンビの姿で由紀の前に現れることになりました。彼女の登場に果たして由紀はどうするのか...
皆が実戦訓練に乗り気な件
かなり原作とは設定が異なりますが一応筆者なりの理由付けはあります。
原作では学園生活部における戦闘は基本的に胡桃のみでときどきみーくん、緊急時のみその他のメンバー、みたいな感じになっていましたがこれは体力的な理由のほかに精神的にそんな余裕がなかったことが原因なんじゃないかと考えています。人数が少なく由紀が正気じゃない上に恐らく物資も本作ほど余裕はなかったはずです(めぐねぇの車だけとトラックも使うとじゃ輸送量は文字通り桁違い)。その状態でさらに負担を受けることになる戦闘などできようはずがございません。
しかし、本作では凪原がいます(テッテレー)。彼の加入により現在の学園生活部はかなり安定した状態にあり、精神不安定枠の由紀とりーさんもそれぞれめぐねぇとるーちゃんが生存しているので問題ありません。そんなわけで精神的余裕があれば、もともと頭がいい子たちなので戦えないよりは戦える方がいいという思考になるんじゃないか、と考えています。
チョーカーさんのお話はもう1話続きます、
それではまた次回!