学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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バイオハザードコラボ第4話,

……おかしいな,考えてたのの半分までしか書けてないぞ?


※※※
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これも読者の皆様のおかげです,本当にありがとうございます


4,RS(リアセキュリティ)少女の憂鬱

――8月12日 10:07 R.P.D. S.T.A.R.S.オフィス――

 

 

 警察署2階のS.T.A.R.S.オフィス.

 ほんの前であればαかβチームのメンバー全員が常に待機し,他のメンバーも顔を出すせいで賑やかだったこの部屋も今は閑散としている.

 洋館事件,仲間内でいつの間にかそう呼ばれるようになった悪夢の中で隊員12名のうち6名が殉職.部隊全体を取りまとめていたαチームリーダー,ウェスカーが実は裏切り者であることも発覚し,その彼も事件の中で死亡した.

 

 そして生き残った隊員達が提出した,全ての原因はアンブレラにあるという報告書も警察署長のアイアンズの手によって握り潰された.他の同僚にあの洋館での出来事を話しても,死体が起き上がり襲い掛かってきた,などという一見荒唐無稽な話を信じる者はほとんどいない.

 人員も半分以下になったため一部ではS.T.A.R.S.の活動停止,あるいは解体も囁かれ始めていた.

 

 しかし,その程度でへこたれるS.T.A.R.S.隊員ではない.

 

 アンブレラの悪行は紛れもない事実である.

 なればこそ,その悪行のすべてを白日の下に晒し,しかるべき裁きを受けさせることこそが自分達の使命であり,散っていった仲間達の供養となる.

 必ずやり遂げてみせる,それが隊員達の偽らざる本音だ.

 

 とはいえ,相手はいくら腐敗していようとも世界的大企業.それを構成する膨大な物量に対しこちらの人数はわずか5人.

 なにをどう考えても人手不足であり,仲間を増やすことが必須であった.

 

 しかしここでアンブレラの表の顔が立ちはだかってくる.

 世界最大手の製薬企業であり,それ以外にも様々な分野で事業を展開しているアンブレラは世界の中で確固たる地位を確立している.献身,誠実,品位を行動規範とし――裏の顔を知る身としては噓八百もいいところだが――,積極的に慈善活動にも貢献していてその社会的信用度も高い.

 

 特にこのラクーンシティはその成り立ちからしてアンブレラが絡んでおり,現在でも定期的に政治献金が行われているため街の上層部にかなりの影響力を有している.目に見えるところでそれなのだから,裏でどのような金の動きがあるかも容易に想像できる.

 

 さらに一般市民の認識も好意的なものが多い.

 アンブレラは「市井への還元」を謳って公共事業やイベントなどにも積極的に資金援助を行っている.実際S.T.A.R.S.メンバーも洋館事件の前までは快くその恩恵にあずかっていた.

 無論R.P.D.(ラクーン市警)の同僚達も同様である.

 

 つまりここはアンブレラにとっていわばホームグラウンドであり,それに反旗を翻す形となるS.T.A.R.S.にとっては非常に不利な環境である.仮にアンブレラの悪行を包み隠さず伝えたところで,「何をバカなことを」と相手にされないのがオチだろう.

 

 そんなわけで,アンブレラ打倒の同志を募ろうにも仲間に加わるどころかまず話を聞いてもらう事すら難しい,というのが現状だった.

 

――――だったのだ.

 

 

「それじゃあ,状況を確認するぞ」

 

 裏切者(ウェスカー)の仕事場だった隊長用区画を片付けて確保した会議スペースで,クリスがこれまでに集めた情報資料を広げながら口を開く.

 彼は持ち前の正義感の強さと精神的タフネスから,生存者達のまとめ役的立ち位置に収まっていた.S.T.A.R.S.隊長としてのウェスカーを慕っていた分,その本性への失望とアンブレラに対する怒りは誰よりも強い.

 険しい道のりになると決まっている打倒アンブレラという目標のため,どんな逆境も乗り越えて見せると堅く覚悟を決めていた.

 

 そんなクリスなのだが,その顔には困惑の色が浮かんでいる.

 彼だけではない.この場にいるS.T.A.R.S.の隊員誰もが不可解な表情をしていた.

 その原因は今目の前にある幾枚かの書類とこの数日の彼等の経験だった.

 

「俺達があの悪夢(洋館事件)から生き残ったのが2週間と少し前.そのすぐ後に提出した報告書がアイアンズ(クソ署長)に握り潰されたことで俺達はアンブレラ打倒のために独自に動くことを決めた」

 

 一息つきペットボトルのミネラルウォーターを口に含む,もちろんアンブレラが関係していない会社のものだ.アンブレラ印のものや水道水はとてもではないが飲む気にならない.

 

「ただこちらは少数.人手を増やそうとしてもアイアンズ(あのクソ)うち(S.T.A.R.S.)の解体を検討し始めたせいで同僚の協力を得るのがかなり難しくなった」

「だが,その風潮がこの1週間で変わり始めた」

 

 クリスの言葉を継いだのはバリー.部隊の装備担当でありクリスをS.T.A.R.S.にスカウトした人物である.元SWAT隊員であり,もうすぐ40に手が届こうというベテラン警官だ.

 その鍛え上げられた太い腕が,デスクに数枚の報告書を追加する.

 

「さっき地域課の連中とコールセンターの知り合いからもらってきた.昨夜の不審者の通報のうち不審死者だったものが3件に,不審火の通報から焼死体が発見されたのが4件だ」

 

 不審死者,とはこの数日にR.P.D.内で囁かれ始めた存在である.実際に遭遇した警官達いわく―――

 

・どう見ても致死性の外傷や腐敗を負っているのに動いている

・言葉が通じず常に唸り声をあげている

・こちらに気付くと噛みつこうと襲ってくる

・銃で撃っても怯まず,頭部を破壊しない限り止まらない

・動かなくなるとすぐに体から発火し,原形が崩れてしまう

 

 最後の1つを除けば彼等が洋館で対峙したゾンビの特徴そのものだ.

 

 不審者目撃の通報を受けたパトロール中の警官が,急行した先でこの不審死者に遭遇する.という事案がこの1週間で毎晩発生し,実際に相対した警官達から噂が広まった.当初は見間違いか作り話と考えられていたが,毎日,しかも地区も人も異なったケースが重なれば信憑性も高まる.

 報告を受けたアイアンズ署長が「事件性はない」の一点張りなため大事にこそなっていないが,署内の事情通の中ではS.T.A.R.S.が提出した報告書と関連付ける者も出始めている.

 

「俺も今朝マービンから聞かれた.奴等についてS.T.A.R.S.は何か知ってるんじゃないか,ってな」

 

 追加でブラッドが口を挟む.化学防護要員であることを示す黄色のベストがトレードマークの彼は,ややプレッシャーに弱いところはあるが警察官としての芯は一本きちんと通っている.

 というかそうでなければS.T.A.R.S.へ入隊できない.

 

「とりあえず,あいつ等はもう死んでいて止めるには頭を撃つしかないってことだけは言っておいたけど,それでよかったか?」

「ああ問題ない.マービンなら地域課全体に顔が利くから同僚がやられるという心配はなくなるはずだ」

「今のところ被害は出てないからな,このまま行くことを祈るよ.そういや,マービンの相棒の婦警がゾンビの胸にパトロールライフルを喰らわせたけど,やっぱり倒れてすぐ起き上がったらしい」

「5.56ミリでも駄目か,分かっちゃいたがバカげた耐久力だな」

 

 特殊部隊とはいえS.T.A.R.S.も警察内の組織,当然ながら部隊の外にも友人はおりそこから情報がもらえることも多い.

 ブラッドの友人であるマービン・ブラナーとその相棒の話は改めてゾンビの頑丈さを隊員たちに思い知らせた.

 

「にしても初見でライフルをぶっ放すとはなかなか肝が据わった娘さんだな」

「いや~リタさん怖いの駄目だからテンパってやっちゃったんじゃないかなぁ,多分」

 

 感心したように呟くバリーの言葉を苦笑いしながら否定したのはレベッカ.βチームのRS(リアセキュリティ)を務めていた彼女は,18歳にして大学の学士過程を優秀な成績で卒業した才女だ.年相応の子供っぽさはあるが化学や薬品に関する知識は本物である.

 そんな彼女だが,今日はどこか疲れたような雰囲気を纏っていた.

 

「もしかしてなんかあったかレベッカ?なんかいつもと様子が違う気がするが」

「い,いやっ全然何もないよ!?ちょっとあの日から色々ありすぎて疲れてるだけ,あんまり寝れてないしね!」

 

 大きく手と首を振って否定するレベッカ.焦って何かを誤魔化そうとしているように見えるが,彼女がワタワタするのは割といつものことなのでそう不自然ではない.

 しかも彼女はこの春卒業と同時にS.T.A.R.S.に配属されたばかりで,まだ二十歳にも満たない少女である.洋館事件とその直前に経験したという黄道特急事件,そしてその後の日々を考えれば疲労が溜まっていて当然だろう.

 そう判断し,クリス達はそれ以上追及はしなかった.

 

「それよりっ,ジルさんは大丈夫なの?一昨日電話した時はだいぶ参ってるみたいだったけど」

「あー…,まだキツイっぽいな,単独行動中に色々見てしまったようだし.ただ回復はしてきているからもう少しで復帰できると思う」

 

 レベッカが出した話題は唯一この場にいないS.T.A.R.S.の生き残りであるジルについてである.

 彼女は洋館事件で受けた精神的ショックから未だ立ち直れずにいた.

 

「無理したところでどうにかなるものでもないからな.焦らなくていいと言っておいてくれ」

「昨日アメリカンピザを配達してもらったから,しっかり食べて休んでほしいな」

「ああ,しっかり伝えておくさ」

 

 バリーとブラッドからの言葉に小さく笑みを浮かべて頷くクリス.ジルとクリスの仲の親密さはS.T.A.R.S.内の鉄板話題の1つだ.いつくっつくかについての賭けも行われていたくらいである.

 実際傍から見て秒読みに入っていたので,洋館事件がなければ今頃交際を始めていたかもしれない.

 

 

「まあジルについては一旦置いておくとして,ゾンビの発火現象についてだ」

 

 和んでいた場が一瞬で引き締まった.

 

 改めて言うまでもないが,ゾンビとはt-ウイルスに感染した人間の成れの果てだ.

 頭を破壊しない限り止まらないことと脳のストッパーが壊れているせいで馬鹿力なことを除けば,その能力は人間に準拠している.

 そして当然ながら,人類は発火能力を発揮できるほど進化していない.

 もちろんクリス達が洋館で対峙した中に発火した個体はいなかった.

 

 それなのにこの1週間,R.P.D.の警官達が遭遇したゾンビは例外なく死亡後――既に死んでいるのだがそこは置いておく――に発火している.その火力は非常に強く,後に残った焼死体は司法解剖が意味をなさない程だ.

 よって,厳密に言えば同僚の警官達が遭遇したのが本当にゾンビなのかは分からない.しかし他に考えようがないためゾンビでほぼ間違いないだろう.

 

 そして死亡したゾンビが発火するものとすると,この1週間で多発している焼死体の発見が高い関連性を持った事象として浮上してくる.

 どうやら周囲に可燃物がない状態にも関わらず面影をとどめない程に燃え尽きているそうだ.そして時に頭部と思われる箇所が完全に焼失していることから,対応にあたった消防隊の仲でも事件性を疑う声が上がっているらしい.

 

 

 制圧されることで発火するゾンビと発見された時点で完全に燃え尽きた焼死体,その2つが意味するところは一つしかなかった.

 

 

 

「「「……….」」」

「………………….」

 

 自分達以外にもゾンビの特性について知り,この街の闇で暗躍している者が居る.その事実がS.T.A.R.S.メンバーの背をじっとりと濡らす.

 その中でレベッカだけ汗の意味合いが異なっていたのだが,他のメンバーがそれに気付くことはなかった.

 

 

 

====================

 

 

 

――8月12日 16:32 ダウンタウン――

 

 

「………ふぅ~」

 

 警察署を出て自宅へと戻る道すがら,レベッカは安堵半分憂鬱半分のため息をついた.

 安堵の理由は今後の活動についてある程度の方針が固まったためと,彼女のささやかな(バカでかい)秘め事が周囲に露見しなかったためだ.

 そして憂鬱の理由はその秘め事の内容である.

 

 もちろんウェスカーのようにS.T.A.R.S.を裏切っていたりするわけではない.

 むしろこの街を救うための切り札足り得るものなのだが,いかんせん精神的な疲労がかさむのが問題だった.

 

「ほんと,どうしたもんかなぁ」

 

 1人呟いたところでふと自分がかなりお腹を空かせていることに気付く.思い返せばミーティングに熱中していたせいで昼食を食べ損ねていた.

 己の自炊レベルはレベッカ自身がよく分かっている.大人しく何か買って帰ることにしてあたりを見廻せば,黄色のMがトレードマークのハンバーガーチェーンの看板が目に入った.

 

 そういえば最近食べてないなという思考と,自覚した途端思い出したように空腹を主張し始めた胃袋に背中を押されるようにしてレベッカは店舗入り口へと足を向けた.

 

「いらっしゃいませ――あら,レベッカちゃんじゃない.久しぶりだけど元気してた?」

「お久しぶりです.この頃はちょっといろいろ忙しくて…」

 

 カウンターに近づいたところで担当していた恰幅の良い女性が笑いかけてくる.この店舗はハイスクール時代から利用しているので彼女との付き合いはかれこれ4年近い.

 面倒見のいい性格であり,レベッカも何度か相談に乗ってもらったことがあるのだが今回は問題が問題である.当たり障りのない返答しかできなかった.

 

「まあ飛び級で大学を卒業したと思ったらR.P.D.のエリート部隊にスカウト入隊だもんね,そりゃ忙しくて当然か.まあなんかあったら気軽に言いなさいな.さ,ご注文は?」

「あはは……ありがとうございます.えっと――」

 

 注文しようとしたところでルームメイト(仮)の好みを知らないことに思い至ったが,面倒臭いので自分と同じセットにすることにした.

 

「――チーズバーガーのセットを3つ.サイドはポテトのLでドリンクはコーラ…あ,2つはダブルパティにしてください.それとナゲットを20ピース,ソースはチリソースでお願いします」

「………レベッカちゃん.若いから色々やってみたいっていうのは分かるけど,いきなり彼氏が2人っていうのはおばさん感心しないよ?」

「違いますッ!!!」

 

 冗談よ~という笑い声に見送られ,自分1人だけの時と比べて2回りほど大きい紙袋を抱えて数分歩けば現在レベッカが暮らしているアパートに到着する.

 彼女の部屋は正面ではなく非常階段からの方が近い.一段進むごとに耐久性が不安になるきしみ音を上げる階段を上り,扉の前で振り返って周囲に人がいないことを確認してから鍵を開ける.

 送り狼型強盗の抑止,というより万一そのような不届き者がいた際にそいつがルームメイトの手でボコボコにされるのを防ぐためである.

 絶対とは言えないが()()2()()ならやりかねない.

 

「――ただいま」

「「おかえり~」」

 

 帰宅を告げたレベッカは,室内から返ってきた何とも気の抜けた2つの声によって出迎えられた.




レベッカを出迎えたルームメイト(仮)の2人って誰なんでしょうね?(すっとぼけ)


 それではまた次回!

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