そんな筆者の事情はともかく、今回は学校でのお話です
「というわけで今日は工作です、全員張り切っていきましょう!」
「はいなの~」
凪原の言葉に大きな声で返事をする
かなり歳が離れているにも関わらず
ところで今凪原達がいるのは巡ヶ丘学院の屋上であり、2人以外にも学園生活部の面々は全員そろっていたりするのだが、彼女たちは2人の様子を見ながら呆れたように話していた。
「毎度思うけど、るーちゃんはともかく凪先輩って元気良すぎじゃない?今日も3時間しか寝てないんでしょ?」
「だと思うよ。5時ごろにあたしが交代に行った時も起きてたし、朝ごはんには起きてきたし。ほんとになんで毎日寝るのが3時間で大丈夫なんだ」
「3年生の時もすごく活動的な子でしたけど、大学にいってさらにその傾向が強くなったみたいですね」
「そうなの?」と首をかしげる胡桃と圭に対して頷く慈。なんでもイベント前などは生徒会室に泊まり込み、深夜というより明け方近くまで書類作成などの仕事をしていたのだという。さらに、凪原だけでなく31代全員がその調子だったので、同席していた慈の方が寝落ちしてしまうこともしばしばだったらしい。
「生徒会室の机で寝ちゃったはずなのに起きたら仮眠室のベットの上で、タオルケットまでかけてもらってたりして……」
「それはなんというか…、ドンマイめぐねぇ。ナギみたいのが何人もいたら仕方ないって」
当時を思い出してどんよりとした雰囲気を醸し出す慈を慰める胡桃。その話を聞いていた美紀が「もしかしたら」と口を開く。
「凪原先輩はショートスリーパーかもしれないですね、なんでも普通の人よりも短い睡眠時間で健康を保てるとか」
「うひゃ~~、私じゃ無理だな。できるだけ寝ていたいもん」
「由紀は逆に寝すぎよ、今日だって寝坊してたじゃない。……というかどうして今日はこんなに暑いのかしら、まだ夏じゃなかったと思うのだけど」
由紀を嗜めつつ、忌々し気に太陽を見上げる悠里。園芸部としての作業はしていたものの、基本的にインドア派である彼女にとって真夏を思わせる太陽は天敵なのだ。
「お、なんだなんだみんなして変な顔して。特にりーさん、るーと姉妹なのに大違いじゃないか」
「じゃないか~」
「余計なお世話よ。るーちゃん、あまり凪原さんの真似をしちゃだめよ?イベントバカになっちゃうから」
「おーう、りーさんも言うようになったな」
凪原の言葉を切って捨てる悠里。会った当初の微妙な距離感を考えればよい変化なのだが、バッサリ言われるのは何となく寂しくもある。
(めぐねえみたいに楽しいリアクションをしてくれると面白んだけど)
などと本人が知ったら涙目になる(そしてそれを楽しまれる)こと必至なことを考えていると、その内容を察した胡桃が半眼になりながら声をかけてきた。ポーカーフェイスが得意なことを自負する凪原だが、最近は胡桃に表情を読まれることが増えてきてたりする。
「はいはいそれで?今日はバリケード製作をするんだろ、あたしたちは何すればいいんだ?」
「そうだな、それじゃ最初から説明するか―――」
現在、凪原たち学園生活部が普段過ごしているのは本校舎の3階である。
そして3階へつながる3ヶ所の階段のそれぞれにバリケードが築かれスペースを守っているのだが、このバリケードが問題である。机を積み重ねて鉄条網でつなぎ合わせただけの簡易的なものであり、ゾンビ1体程度の力ならば耐えられるが複数体の力では壊れてしまう恐れがあった。
そのため深夜から明け方にかけては凪原が、明け方以降は胡桃が不寝番として近寄ってくるゾンビのがいないか見張り、もしいれば排除を行っている。今は特に問題は起きていないのだが不測の事態というものはいつでも起こりうる上に、凪原自身今の睡眠時間が続くと遠からず万全のパフォーマンスを発揮できなくなると感じていた。
よって早急なバリケードの補強が必要になり、そのために材料として鉄パイプに白羽の矢が立ったため先のホームセンター遠征が計画されたわけである。当初の予定としては机の間に鉄パイプを渡し、少ない資材で現在あるバリケードの強度を向上させることを計画していた。
「―――んだけど、想定以上の資材が手に入ったからな。どうせなら新しいバリケードを作って2階までを安全地帯にしようと思う」
「おおー、安全な場所が広がるんだね!」
「2階まで解放されたら図書室にも行けるようになりますね」
予定よりも上方修正された内容の凪原の説明に好意的な声を上げる面々。
由紀に比べると反応の薄い美紀だが、小さく手を握っているあたりかなり喜んでいるようだ。読書好きの彼女としては読みたい本があっても戦闘役の付き添いでしか図書室に行けないのが解消されるのは嬉しいのだろう。
「購買部や食堂の設備も使えるわね」
「そうですね、発電量と相談になってしまいますが食堂で働く人用のシャワーなども使えるはずです」
「あ~今3つしかないから結構待ったりするもんね」
と、こちらは生活向上について話す悠里たち。
2階には図書室の他にも学生食堂を兼ねた家庭科室に購買部及びそのバックヤードがある。慈の言うように発電量次第ではあるがうまくやりくりすれば学校生活をより豊かにすることができるだろう。
そのようにより良い未来に思いをはせてる皆に凪原が手を叩きながら声をかける。
「はいはい。期待するのはいいけど、それはバリケードができてからだからな」
「ごみんごみん、ついいろいろ想像しちゃってさ~」
照れたように頭を掻く由紀。皆彼女ほどではないにしても気もそぞろになっていたようで、少し赤くなっていたりあらぬ方を向いていたりしていた。
「じゃ、じゃあ始めようぜ。まずはどうするんだ?」
「最初は材料のカットだな。全部一遍にやると分からなくなるから1セットずついこう。工具はいくつかあるから3組くらいに分かれてくれ」
「分かった」
「あっ私カットするのやりたい!」
「るーもやりたいの!」
凪原の言葉に由紀と
「ちょっと、由紀はともかくるーちゃんは危ないからダメよ」
「やーっ」
危ないから、と妹を止めようとする悠里だったが当の本人は首を振って拒否の構えだ。放っておくと姉妹げんかになりそうなので凪原がやんわりと間に入る。
「大丈夫だってりーさん。資材と一緒に危なくない工具も持ってきたからさ、使い方を間違えなければ刃の部分には手を触れなくて済む。俺も近くで見てるからやらせてあげなよ」
「そう?
………分かったわ。るーちゃん、凪原さんの言うことをよく聞くのよ?」
「はいなの。ゆーにぃ、よろしくお願いしますなの」
「おうさ」
お姉さんからのお許しに返事をし、凪原にペコっと頭を下げる
そんなことを考えながら
―――慈が工具を握っているを見て動きを止めた。
「………えーっと、めぐねえ、なんで工具持ってるか聞いてもいい?」
「?、作業するためですよ?」
何を言われているか分からない、というようにキョトンとする慈に大きくため息をつく凪原。そのまま彼女に歩み寄るとヒョイっと工具を取り上げて口を開く。
「ダメ、めぐねえは工具使っちゃいけません」
「どうしてですか!」
「むしろなんでその言葉が出るかなぁ。こっちの方がびっくりだよ!」
大声で異を唱える慈に同じく声を大にして返す凪原、怒っているというよりも呆れているようだ。
「だってめぐねえぶきっちょ過ぎてすぐケガする上に図面読めないでしょうが!文化祭のゲート作りのこと忘れたとは言わせんよ」
「あっあれはちょっと間違えちゃっただけです!」
「ちょっと間違えただけで角材を全部真っ二つにされてたまるか!おかげで材料調達からやり直しになったわ!」
「そ、それはぁ………ごめんなさい」
文句を言うも一刀両断に切り捨てられて撃沈する慈。話を聞いている周囲からも、「それはさすがに…」やら、「でもめぐねえならやりそう」、「むしろなんで料理はできるのかしら」などの言葉が聞こえてきて半分涙目になっている。
「大丈夫めぐねえ、ちゃんとめぐねぇにもやってほしいことがあるから」
「(グスン)ほんとですか?なぎくん」
「うん。飲み物とかタオルとかの、ちょっと休憩するための準備とかをお願い。あと疲れてそうな人がいたら休むように声をかけてあげて、めぐねえは皆の様子を見るのが得意だからこれはめぐねえにしか頼めないんだ」
「なぎくん………分かりました!それじゃ皆さんがしっかり休憩できるように準備してきますね!」
「ああよろしく、頑張ってね」
「なぎくん達も頑張ってくださいね」と手を振りながら階段に消えていった慈に自身も笑顔で手を振っている凪原へ、圭と胡桃が何か言いたげな様子で声をかける。
「凪先輩……」
「ナギ、なんというかお前さぁ………詐欺師ではないけど、ペテン師?」
「人聞きの悪いことを言わないでくれ。どっちも安心して気持ちよく作業できるんだ、詐欺だなんてとんでもない」
「だからペテン師って言ったんだよ」
胡桃の言葉に肩をすくめつつ飄々と答える凪原。罪悪感など欠片も感じていない表情である。
「何というか、当時の生徒会の様子がよく分かるわね。正直めぐねえに同情するわ」
「おいおい、こっちだってめぐねえの
悠里の言葉に答える凪原。話しているうちに当時を思い出してげんなりとした顔になる。
「うわ~、それはひどい。それでどうしたの?」
「役員全員と追加人員でさらに数日徹夜する羽目になったよ」
「何の行事だか分からないけど、そのまま諦めてくれたら平和だったのに ボソッ)」
「おい、なんか聞こえたぞ胡桃」
「さあ?気のせいだろ」
「……ちくしょう」
半目を向ける凪原に胡桃はニヤッと笑いながら返す。最近は彼女の方から凪原をからかう場面も見られるようになってきていた。
数秒ののち、かぶりを振って意識を今日の作業へと切り替える。
「―――ま、昔のことはいいや。そろそろ始めよう、パーツの図面を配るからその通りの長さにカットしてくれ。同じグループの人はどのパーツが何本できたかを常に把握しておくように」
「「「はーい(了解)(分かった)」」」
その掛け声に合わせて皆が動き始めた。
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「っあ~、やっぱ作業をした後の水分はうまいな」
「もう、他の人は休ませてるのに自分は休まないんだから、悪い癖ですよ」
「そうだよ、休めっつってんのにずーっとやるんだから」
入れてもらったお茶を飲み干して一息ついている凪原に慈と胡桃が苦笑交じりに声をかける。
早々にバテてしまった
「ナギさんすごかったよね~、全然疲れないんだもん」
「ほんとほんと、ああいうの見るとやっぱ鍛えてるんだなって思うよ」
「「「(ウンウン)」」」
由紀や圭の言葉に頷く面々。
「うーん…ついもうちょっとやったらって思っちゃうんだよな」
「でも無理は良くないぜ?体調崩したりしても医者はいないんだからな」
「ああ、気を付けるよ」
「絶対だぞ?」と念を押す胡桃に「はいはい」と手を振りながら返す凪原。ふとすれば顔がくっつきそうな距離であるにもかかわらず2人にそれを気にした様子はない。
「(なんか距離が縮まってる気がするんですけど、あの2人)」
「(そう見えるわよね?ほんとさっさとくっつけばいいのに)」
「(確かに、胡桃先輩はともかく凪先輩はそんなに鈍くないと思うんだけどな~)」
コソコソと話をする彼女たちの視線の先では、2人におぼんを持った
「ゆーにぃとくーねぇ、お疲れ様なの。おにぎりを作ったから食べてほしいの」
「もしかしてるーが作ってくれたのか?
「ええ、お手伝いがしたいって言って来たので一緒に作ったんですよ」
「がんばったの~」
ほめてオーラを出しながらそう話す
「そうだったんだ。ありがとう、るーちゃん、めぐねえ」
「いただき(ヒョイ)」
「あっおいナギっ」
「おおーうまいじゃん!ありがとう、るー」
話している横からおにぎりの一つを取り上げて口に放り込む凪原を咎める胡桃だったが、すぐに
何より自分もおなかがすいているのだ、注意をする暇があるなら手を伸ばすべきである。
「あたしももらうね。
―――おいしい!塩加減もちょうどいいし、形も崩れないしるーちゃん上手なんだな」
「えっへん、なの」
それからしばし、誰も口を開くことなく昼食の時間が続く。皆が片手におにぎりを持ち、もう一方の手で慈が手早く作ったおかずをつまむ。天気は快晴であり、そよそよと吹く風が頬を撫でて作業で上がっていた体温を下げてくれる。
この瞬間、屋上には平和な時間が流れていた。
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「由紀先輩っもっと右右!ぶつかるってっ」
「えっと…こっち?(ゴンッ)あっ」
「逆っ!右と左くらい分かってくださいよっ」
「も~、後ろ向きなんだから分からないよ~」
鉄パイプの前後を持って階段を下りている最中の由紀と圭の会話である。長さが祟り、踊り場での切り返しをしようとした時に、後ろ向きに歩いていた由紀が左右を間違え壁に当ててしまった。そこそこ大きな音が階段に響く。2人の後ろでは美紀と悠里も同じように鉄パイプを担いでいた。
「おい2人とも、いちおう掃除はしたから安全だけどもうちょい静かに」
前を歩いていた胡桃が振り返って注意する。彼女は警戒のためにシャベルを手にしているのでパイプを持っていないのだった。
「そんなこと言われても難しいよ~」
「そうなんだよ、というか凪先輩はどこ行ったの?力仕事はあの人の担当でしょ、あたしみたいなか弱い美少女に仕事を任せちゃって」
「ほー、元気よく改造さすまたを振り回していた癖に何言ってんだ」
「あ、おかえりナギさん。何してたの?」
冗談交じりに圭が文句を言っていたところに姿の見えなかった凪原が戻ってきた。
ちなみに改造さすまたというのは部室の武器庫にあった折りたたみさすまたに、ショッピングモールのアウトドアショップで見つけた大型のテントペグを取り付けたもので圭は特訓の際にこれを武器としていた。
「ちょっと2階のベランダ、というか1階の天井にラジカセをいくつか仕掛けてきた。多分これで作業中に邪魔されることもないだろ」
「ああ、それで先に行ってたんですね。お疲れ様でした」
「おう」
話している間に2階と3階の間に設置されているバリケードの一つへと到着する。
「それじゃ始めるか。目標作業時間は1時間、ちゃっちゃっとやってパッパッと終わらせるぞ。あ、胡桃と圭は下のフロアの警戒を頼む」
「分かった」
「りょうか~い」
持ってきていた圭の武器を渡しながら警戒を頼むと、2人とも快諾してくれた。
さて、残ったメンツでバリケードの補強である。組み立て方については事前に説明してあるのでもたつくことはない。
「最初は下側の机にパイプをわたすんだったかしら?」
「そうだな。通したらU字金具でパイプと、あと机の脚同士をつなぐ。終わったら中段、上段、それから周りの壁への固定だな」
悠里と凪原の言葉に合わせて他のメンバーも動き始めた。1人は鉄パイプを、もう1人は金具と工具をもって仮設バリケードへと近づく。
「よーし、私も頑張るよ!」
「由紀先輩またすぐにバテないでくださいよ?」
「う……が、がんばるよ」
「ハハハッま、無理しない程度にな」
結局、作業中にゾンビが現われることはなく、終始和やかな調子で進んだ。
~巡ヶ丘学院繰り返しクエスト~
・Secure the safe zone
進捗:バリケード設置数 1/6
はい、バリケード製作回でした。
ゾンビ系の小説なら確実にありますよねこの手の話。ありきたりだけどそれだけ大事なものです、無かったら死にます(確信)。原作では2階と3階の間にしか設置してないですが、男手も資材もあるし2階まで安全地帯にしてしまおうという魂胆ですね。防衛ラインが一重だと一箇所でも破られると危険です。必ず二重以上にしてどこかが破られても大丈夫なようにするのが鉄則となります。古今東西の軍事施設で防壁が一重しかないものがないのがその証拠ですね。
ぶきっちょめぐねぇ
うん、まぁ………なんだ、うちのめぐねぇはこんな感じの人なんだ…。やればできる人ではあるハズなんだけど、書いてるうちにどんどん残念属性が増えていくんや。そしてそんな彼女を言葉巧みに作業から遠ざける凪原、はいそこ詐欺師とか言わない
改造さすまた
圭専用の白兵武器。文中では由紀についてしか書いていないが実戦訓練で圭が使ったのがこれになります。テントを張るときなどに使う地面に突き刺す大型のパイルとさすまたを組み合わせたもので、白兵武器の中では比較的遠距離での使用を想定しています。包丁を使った槍を割とよく見かけますが、実際に包丁で人体を刺すと1発でグニャグニャになるらしい(ネット知識)ので、初めから突き刺すという用途を想定しているパイルを用いることとしました。他のメンバーの武器もそのうち紹介できたらと思ってます。
来週は普通に更新できる、その次は、……まだ未定です。執筆頑張ります。
それではまた次回!