学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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2週間ぶりにこんにちは、
今日から第4章高校生活・後編がスタートです




第4章:高校生活・後編
4-1:ナイフ術とちょっとした日常の変化


 地下倉庫での一件からしばらくたったある日のこと、

 

「―――シッ、やぁっ!」

「甘いっ」

 

 とても晴天とは言えない、雨が降っていないだけマシという曇天の下、凪原と胡桃の2人は屋上での訓練に勤しんでいた。

 至近距離で向かい合う2人の手には模造ナイフが握られ、先ほどからいかにして相手に一撃を入れるかというやり取りが行われている。

 

「どうしたナギっ、さっきからよけてっばっかじゃ、ないかっ」

「はっ、そっちこそっ、スピードがっ、落ちてるぜっ」

 

 突き、切払い、パリィ、ステップ互いが互いの動きを邪魔するように動く。一見すると胡桃が凪原を攻め立てているように見えるが、実際はそうではない。確かに攻撃回数は胡桃の方が多いが、それは大振りであったり軌道が読みやすいものが多い。対して凪原は、比較的コンパクトな振りに加え、フェイントや途中で狙いを変えるような動きを織り交ぜている上に、あまり動き回らないで体力の消耗を抑えている。

 

 至近距離でのナイフ戦はほぼ無酸素運動だ。そのような動きを続けていてどちらが先にバテるかなど考えるまでもない。最初と比べると勢いを落としてナイフを突き出してきた胡桃の右腕を、右足を踏み出して左腕に抱え込む(半身となり胡桃の右腕と並行になった体前面でひじを、左手で胡桃の右手首を押さえて動かせないようにした)や、いつの間にか逆手にしていた右手のナイフを胡桃の額、正確にはその背後にある脳へと振り下ろす。

 

 思わず目を閉じてしまった胡桃だったが実際に模造ナイフの切っ先が当たることはなく、皮膚に触れる寸前で止められ、すぐに離れていった。合わせて抱えられていた右腕も解放される。

 

 

「はい終了~。時間は……47秒か。結構長くなってきたな」

「だぁ~っやっぱ勝てない!なんでナギはそんな動けんだよ⁉」

 

 傍らに置いていたタイマーをチェックする凪原をよそに、胡桃は屋上に倒れ込んで荒い息を吐く。冷たいコンクリートの感触が火照った体に心地よい。

 

「だから実際俺はそんなに動いてないんだって。なるべくコンパクトに、隙を見せないようにするって言ってるだろ?」

「頭では分かってるんだけどさ~」

 

 言いながら差し出された凪原の手を取って立ち上がり、ペットボトルに入れたスポーツ飲料を口に含む。何回やっても勝てないのが悔しいのか、胡桃はちょっと拗ねたような顔をしていた。

 

「ってか普通白兵戦ってこんなに長く続かないんだからな?それだけ胡桃の動きに隙が無くなってきてるってことだ、短時間でこれだけ伸びるのは誇っていいと思うんだけどな」

「1回も勝ててないのにそんなこと言われても実感が湧かないよ」

 

 そんな風に言いながらも、凪原に褒められて顔をほころばせる胡桃。ナイフの扱い方を褒められて喜ぶのもどうかと思うがそれを指摘する人間はこの場にはいなかった。

 

 

 

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 しばし休憩ということで2人はコンクリートの出っ張りに並んで腰かけていた。例によって距離が妙に近いのだがそれを指摘する人はry

 

「そんでまた訓練を再開したわけだけど、本当に体調の方は大丈夫なのか?」

「もう、大丈夫だって言ってるじゃん。むしろ噛まれる前よりも調子がいいくらいだって」

「確かにそう聞いてるし、見てる感じではその通りなんだけどさ………なんで休んでたのに運動能力上がってんの?」

 

 どうにも納得がいかない、と首をひねる凪原。

 実はこの日は胡桃が噛まれて以降初めての訓練であった。

 

 噛まれた翌日、あろうことか胡桃は「もう大丈夫だから訓練したい」などと言い出し、学園生活部の面々総出で止めることになった。確かに体調は回復しているように見えたのだが、そんなすぐに動き回るなど許さないということで数日間の絶対安静が彼女には言い渡された。

 なお、「俺は噛まれてないから」などと抜かして一人だけ訓練しようとした凪原も首根っこを掴まれて引き戻されている。曰く、「効果があったとはいえあんな得体のしれないお薬を摂取してすぐに動くなんて許しません」とのこと。

 

 凪原の訓練禁止期間は数日で済んだが、胡桃の場合はそうもいかない。何しろ言い方は悪いが本来であれば死んでいる状態だったのだ、いくら心配してもしすぎるということはない。結局胡桃の訓練禁止は2週間近くに及んだ。

 

 そんなわけで胡桃はここしばらくの間全く運動できていなかったのである。

 久しぶりの訓練なのであまり飛ばさないように、と考えていた凪原だったが、蓋を開けてみれば胡桃の調子は悪いどころか絶好調だった。

 これだけの期間運動から離れていれば多かれ少なかれ運動能力は落ちていておかしくないのにそんな様子は見られず、わずかにではあるが動きも良くなっている。

 

 まぁどう考えても普通ではない。

 

「それはあたしだって分からないよ。体調は良かったけど体力は落ちてると思ってたし」

 

 答える胡桃も首をかしげている。ただ、彼女自身も言いたいことがあったようで、「でもさ」と口を開く。

 

「それを言うならナギだってそうだぜ?微妙にだけど動きが滑らかになってる。多分重心移動が早くなったんだと思う」

「………really?」

「うん」

 

 頷く胡桃からは嘘をついたり冗談を言っている雰囲気は感じ取れない。少なくとも彼女から見て、凪原の動きは以前と比べて変化しているようだ。

 

「あ~~マジか、俺の気のせいかと思ってたけど、胡桃にもそう見えるんじゃ違うみたいだな」

 

 ゴロリ、と仰向けに寝転びながらそんなことを言う凪原。彼自身も自分の動きが良いことは感じていたが、自分を客観的に見ることはできないので誤差の範囲だろうと納得していたのだ。

 とはいえ、それが他人から見てわかるレベルとなると話は違う。何かしらはっきりとした原因があると考えるべきだろう。

 

「一応聞くけど、何か心当たりは?」

「いや、アレしかないでしょ」

「まぁそうなるわな」

「「どう考えてもあの薬が怪しい」」

 

 顔を見合わせて頷く、というかほかに考えられない。

 ゾンビ化に対する抵抗薬であり、開発者、開発意図共に不明で原材料も何もかもが不明。それでいて効果は出るとかもう怪しいとしか言いようがない。

 わずかに分かることと言えば生物兵器開発の副産物だということだけで、それすらも推測を多分に含んだものだ。

 

「そもそも試験薬って書いてあったしな、効いたこと自体が奇跡と言えば奇跡だ。ただの毒の可能性もあったわけだし」

「そこまで分かったうえで、噛まれてもいないのに自分に投与したバカがあたしの目の前にいるんだけど……」

 

 暢気に振り返る凪原に対し胡桃はジトリとした目を向けて文句を言う。そんな視線に対しても凪原は全く反省していない調子で答えた。

 

「胡桃を1人で死なせてたまるかってんだ、それなら一緒に死んだ方がまだましだな」

「なっ、 い、いきなりそんなこと言うな!とにかくっ、次同じようなことがあっても今度はやめろよ?」///

「ご意見は真摯に受け止め横向きに検討させていただきます」

「そこは前向きだろ⁉やめる気ゼロじゃんっ!」

「当たりまえだろ。というか次は絶対守るから次なんてない」

「~~~っ、そういうことじゃない!」///

(はいかわいい)

 

 真顔でそんなことをのたまう凪原に思わず言葉に詰まる胡桃。何とか反論することには成功したが顔を赤くしながら言っても説得力はないに等しい。

 ふと、そんな彼女が愛しく思えて、凪原は知らず知らずに穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 

「とはいえ、このことめぐねえ達には」

「言えないよな~、絶対心配されるよ」

 

 胡桃が落ち着いたところで、話題は2人の身体能力のことに戻る。凪原も胡桃も他の面々には報告しないということで意見が一致した。

 なんせ、起こったことを簡潔にまとめれば―――

 

『怪しげな薬を飲んだら、瀕死の状態から万全の体調まで回復し、なおかつ以前よりも動きが良くなった』

 

―――である。

 こんなことをストレートに伝えたら心配性の慈がどうなるか分からない。正確に言えば、分かるが想像したくない。もちろん慈だけでなくその他の学園生活部メンバーも大いに心配するだろう。

 

 とはいえ薬の効果に不安が残るから訓練を辞めよう、という訳にもいかない。現在の生活が安定しているといってもそれは物資がそれなりに潤沢にあるからであり、その物資はどうしたかというと凪原と胡桃が遠征で持ち帰ってきたものである。無くなれば再び取りにいかなければならない。

 

 そして外に出るためには訓練をが必要で、それに耐えられるのは凪原と胡桃だけだ。

 もちろん皆自分たちも出ると言ってくれるだろうが、体力、精神力の両方を考えると彼女達ではリスクが大きいというのが2人の見立てである。

 

「ま、不便になったわけでもないし、みんなを必要以上に心配させなくてもいいんじゃない?

「だな。劇的に変わったってわけではないしこっちから言わなきゃ分からないだろうし」

 

 胡桃の言葉に凪原も首肯して口を開く。

 過程はともかくとして結果だけを見れば不利益は一切生じていないのだ。ならば周りを不安にさせるようなことわざわざ伝えるのは得策ではないだろう。

 

「それに実際のとこ疑いが強いってだけで確実にあれ(試験薬)のせいかは分からないしな」

「うん、まあ他になさそうな気がするけど」

 

 そこまで話したところでひとまずこの件に関しては保留ということになった。

 

(他に思い当たるといえば投与直後のキスくらいだが……無いな、ファンタジーじゃあるまいし)

(あの時ナギとキスしたこととか関係あるのかな………ってあたしは何考えてんだっ!なわけないじゃん物語じゃないんだし)

 

 揃って同じようなことを考えるあたり、やはりこの2人は根本的なところで似ているのだろう。

 

 

 

====================

 

 

 

「さて、さっきはナイフでの対人戦闘の訓練をしたわけだが、あの使い方じゃ恐らくあいつ等相手には効果はほぼないと思う」

「おい」

 

 気を取り直して訓練再開、となったところで凪原がしれっと言い放った内容に思わずツッコミを入れる胡桃。少なからず体力を使った先ほどの模擬戦が無駄になったのだ、文句の一つくらいは言いたくなる。

 

「ああ言い方が悪かったな。あれはあれで体力づくりや身のこなしの訓練にはなるんだが、あいつ等を相手にするときはさっきの使い方じゃダメって話だ」

「? どういうことだよ?」

 

 首をかしげる胡桃に、教師モードになった凪原が説明を始める。

 

「それじゃ質問その1、さっき俺はナイフの戦い方はどんなだって教えた?」

「えーっと……『なるべく隙を見せずに相手の隙を見つけてそこを突いて、小さな傷をつける。それを繰り返して相手に動揺や出血によるパフォーマンスの低下を狙う』だっけ?」

 

 訓練を始めた時に言われたことを思い出しながら話す胡桃に凪原は頷いて先を続ける。

 

「そう。それじゃ質問その2、あいつ等に小さい傷って有効?」

「いや、頭を破壊しないとどれだけ傷ついても向かってくる―――あそっか、あいつ等にはさっきのやり方じゃ意味ないのか」

「そういうこった。詳しく話すとな―――」

 

 胡桃は自分の言った言葉で気づいたようだ。それに返事をして凪原は解説を始める。

 

 基本的に人間というのは痛がりであり、大したことないレベルであっても傷ついたら動揺したり逃げ腰になったりする。よく鍛えていればそういったことはないにしても出血が続けば確実に動きが鈍る。

 ところがゾンビが相手の場合はそうはいかない。まず意識がないからひるむことはないし、すでに血液が役目を失っているから出血させる意味もない。動きを止めるには頭部を破壊するか、最低でも腕や脚などの運動に必須な箇所を損壊させる必要がある。

 そんなことを説明したあと、凪原は胡桃に改めて問いかけてみた。

 

「―――それに動きがのろいんだからナイフの間合いに入る前に撃っちまえって話だしな。じゃあ胡桃、今のを踏まえてあいつ等を相手にした時のナイフの使い方はどうだと思う?」

「つまり、不意打ちを食らった時に鞘から抜いてそのまま急所に一撃、ってこと?」

Exactly(そのとおり)!」

 

 胡桃の回答に凪原は指を鳴らしながら満足げに頷いた。

 

「そんなわけでナイフは超至近距離での戦闘におけるお守りみたいなもんだな。ゲームとかでも掴みかかられたときナイフを持ってれば突き刺して緊急回避ができるとかあるだろ?あんな感じ」

「あー、あんな感じか」

 

 もともとホラー系のゲームなどを嗜んでいた胡桃にとって凪原の例えは分かりやすかったらしく、納得したような表情になった。

 

「ということで、まずは鞘から素早く引き抜く練習だな。どの位置が抜きやすいかは人に寄るから色々試してみよう」

「りょうかーい」

 

 

 

====================

 

 

 

「「ただいまー」」

「「「おかえりなさい~」」」

 

 訓練を終えて部室に戻ってきた2人を、居合わせたメンバーが元気よく迎える。部室にいたのは悠里、由紀、美紀、圭の4人。皆ソファーに座って漫画を読んだり、お茶を淹れたりと思い思いに過ごしていた。

 

「胡桃ちゃんっ、久しぶりの訓練だったけどどうだった⁉怪我したりとかしてない⁉」

「全然平気 ってちょっ由紀引っ付くな、汗かいてるんだから!」

「や~だよ~」

 

 椅子から立ち上がって胡桃の方へすっ飛んでいく由紀。友達思いの彼女のことだ心配するなという方が難しいだろう。ただ、突撃してそのまま頭をぐりぐりこすりつけるのはどうかと思う、もし本当に怪我していたら悪化しそうだし。

 

「おかえりなさい胡桃。見たところ問題なさそうだけど、大丈夫なの?」

「ああ、本当に大丈夫だよ。むしろ久々に体を動かせたから調子いいくらい、ほらこの通り」

「もう、病み上がりには違いないんだから無茶しちゃだめよ?」

「は~い」

 

 由紀をくっつけたまま、手を拭きながら声を掛けてくる悠里に対応する胡桃。気づかわしげな悠里を安心させるように胡桃は力こぶを作るような動作をして見せた。当然大した力こぶなどできないがその様子が面白かったのか、悠里は安心したように笑った。

 

 その横では美紀と圭が凪原に近寄って声をかけていた。

 

「凪原先輩もお疲れ様です」

「おう、めぐねえとるーは?姿が見えないけど」

「図書室って言ってたよ、持ってきてた本を読んじゃったから返しがてら新しいのを借りてくるって」

「そか」

「それよりどうだったのさ?訓練は」

「そうですよ。胡桃先輩は病み上がりですし、凪原先輩も本格的なのは同じくらいぶりでしたよね?」

「いんや、特に問題はなかったな。俺はいつも通りだし、胡桃の方もブランクを感じないくらいには動けてたぞ、流石は元運動部だな」

 

 正直に言う訳にはいかないがわざと悪く言って不安にさせるのも忍びない。胡桃と相談した結果、『2人の体力は以前と同じくらいのレベルを維持できていた』と伝えることにしていた。この程度なら多少不自然であはあるがそこまで異常ではないだろう。

 配慮のかいあってか、凪原の言葉を聞いた2人は安心したような表情になった。

 

「それなら良かったです。凪原先輩も胡桃先輩も学園生活部になくてはならない人ですから」

「そーそー、でも2人とも無理しちゃだめだよ?あたし達だって少しくらいは戦えるんだからね」

「あいよ、なら今度何か頼ませてもらおうかな」

 

 「任せて(ください)」と返事をする美紀と圭、実際に戦闘を任せるかは置いておくとしても、そう言ってくれるだけでも結構嬉しいものである。それに、皆が助け合いや協力の重要性を理解しているグループは、人数と物資が多いだけのグループの何倍も強いのだ。

 

「さて2人も戻って来たことだし、そろそろお昼の準備を始めましょうか」

 

 悠里の言葉に時計に目をやってみれば、1時を過ぎたところだった。時刻を認識したところで、思い出したように凪原と胡桃の腹が鳴る。当然のことながら体を動かせば腹が減るのだ。

 

「フフッ、急いで準備するわね」

「ありがとう、んじゃそれまでにシャワーを浴びてくるわ」

「曇りなのに結構汗かいちゃったしね」

「あ、はい分かりました」

「いってらっしゃ~い」

 

 美紀たちにそう言うと、2人は連れ立ってシャワー室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………………ちょっと待った。

 

「………何のためらいもなく一緒に行きましたね」

「行ったね」

「行ったわね」

「行った」

「「「………。」」」

 

「「「え?」」」




章始めということで日常回です


身体能力向上
「あれ、これかなりでっかい原作乖離じゃね?」と思ったんですが有意義に無視することにしました。バイオハザードのウェスカーやアリスに投与された薬とか比べればかわいいもんです(多分)。
小説説明文に書いた通り、諸々の設定は原作卒業編以前に明らかになっているものまでを使います。今考えているプロットの関係上、大学編以降の設定は使えませんのでご了承ください。


ナイフの扱い方
ネット知識と自分なりの考えを1:1の割合で混ぜて溶かして型に流し込んでできた自己流の対ゾンビ用ナイフ術になります。痛覚がない相手にいくら傷を負わせても動きは鈍らないでしょう。なら1発で頭蓋を破壊するなり腕を落とすなりしないと意味がないですからね。本文には書きませんでしたが、口を横に切り裂いて顎の筋肉を切断するのもいいかもしれませんね。噛みつけ無くなればゾンビの脅威度はだいぶ下がるはず……


4章でも今まで通りシリアス世界にはっちゃけ成分を放り込んだ感じでやってきたいと思ってますのでどうか応援をよろしくお願いします。

それではまた次回!


~お知らせ~新連載始めました、不定期ですがよろしければぜひ
『2人デュノア』 原作:インフィニット・ストラトス
一言:シャルはかわいい、いいね?
https://syosetu.org/novel/224620/
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