学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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ここまでならR15でも大丈夫、だと思う。

それ以前の問題として筆者の文章力及び構築力が壊滅してるのはユルシテ…ユルシテ……



4-8:おとまり 下

「ポンプ式ってのもそう捨てたもんじゃないな」

 

 洗面所で見つけたタオルで頭を拭きながら凪原は感心したように呟いていた。

 

 久しぶりにカップラーメンを食べた後にシャワーを浴びたのだが、いくら第2拠点として定めたこの家がソーラーパネルを備えて自家発電ができるとはいえ、消費電力が大きい給湯システムを作動させるのはいささか難しい。

 そこで、凪原達はキャンプや海水浴など向け用品であるアウトドアポンプを使うことにした。これは普通のポリタンクにシャワーノズルとチューブ、それに灯油ポンプの握る部分を取り付けたような外見をしている。ポンプを何度か握るとタンク内の空気圧が上がり、その力でシャワーノズルからお湯を押し出すという構造で、言ってしまえば幼いころに遊んだシャカシャカとパーツを動かすタイプの大型水鉄砲と同じ原理である。ポットで沸かした熱湯と井戸で汲んだままの水を混ぜて適温にするのに少し手間取ったが、シャワーとしての性能自体は各家庭のものとほとんど遜色がなかった。

 

「ドライヤー…は別にいいな、電気がもったいないしすぐ乾くだろ」

 

 そう結論付けてタオルを首にかけると、凪原はテーブルに置いていたペットボトルのお茶を(あお)った。冷蔵庫を稼働させているためよく冷えているのがシャワーで温度の上がった体に気持ちいい。ゴクゴクとのどを鳴らしてすぐに1本飲み干してしまった。

 

「うーん、流石文明の利器。もう1本飲も」

 

 悠里が見ていれば「もったいない」と言われそうだが幸い彼女は学校だし、胡桃も凪原と入れ替わりでシャワーを浴びているため今は1人である。遠慮なく冷蔵庫から2本目を取り出し、今度は腰掛けてのんびりと飲む。

 

 

 

 そのままボーっとしているといきなりビープ音が響き始めた。見ればソファーに投げ出していた無線機の受信ランプが点灯している。

 

「どした?さっき夜の定時連絡はしたはずだけど…、っもしかしてなんかあったか⁉」

「あ~違う違う、そんなんじゃないから安心していいよ」

 

 瞬間的に気を引き締めて尋ねた凪原に応じた声は圭のもので、声の調子ものんびりとしていた。脱力し、改めて椅子に腰かけた凪原は苦情交じりの声を上げた。

 

「ったく脅かすなよな。そんで?なんか用事でもあんのか?」

『いや特に理由があったわけじゃないけど、今日はこの後どうするつもりなのかな~って』

「別にどうって聞かれても、特に無いな。明日の午前中にはそっちに戻る予定だし、胡桃がシャワーから戻ったらそのまま寝ると思うぞ」

 

 そう答えると無線機の向こうから大きな、とても大きなため息が(それも複数個)聞こえてきた。

 

『はぁ~~~、それだけ?』

「なんだよなんか言いたげだな。逆に聞くけど他になんかあんのかよ?」

『じゃあ単刀直入に言うけど、せっかく2人で外泊してるのに胡桃先輩とヤらないの?』

「ブファッッ!?(バシャバシャ)」

『うわっ、汚い』

 

 完全に想定外の一撃に、思わず凪原は口に含んでいたお茶を全て噴き出してしまった。無線越しに苦言を呈す圭に対して文句を言うこともできず、さらに数回せき込んでからようやく言葉を返す。

 

「ばっ、なっ、いきなり何言いやがるお前は⁉」///

「おっ、照れてる凪先輩って珍しいね。なんか得した気分」

 

 楽しそうな様子の圭だが凪原としてはそれどころではない。噴き出したお茶を首にかけていたタオルで拭きながら発言の意味を問いただす。

 

「得した気分、じゃねぇ!圭お前、いきなりどういうつもりだ?」

「別にいきなりではないでしょ、凪先輩と胡桃先輩がいい感じなのは周知の事実なんだし。今日はせっかく2人っきりなんだから一気に進展させちゃいなよ☆」

「なんでそんなことお前に言われなきゃなんないんだよ⁉つーか俺と胡桃はまだそこまでは――」

「ハァ?」

 

 凪原の言葉に圭の雰囲気がキレ気味になる。

 

「普段あれだけイチャついといて何言ってんの?この前(4-2)地下に行った時だって2人で抱き合ってたじゃん」

「ちょっと待て!なんでお前がそれ知ってんだ⁉」

「あたしが自分の近くでのイベント発生の気配を察知できないわけないでしょ!とにかくっ、なんで当事者じゃないあたしたちがソワソワしなきゃいけないのさ!さっさとガッツリくっついちゃって欲しんだけど⁉」

 

 暴論ここに極まれりであるが圭の言い分ももっともである。

 なんせ日常を一緒に過ごしている仲間のうちの2人が、やれキスしてシャワーを一緒に浴びて抱き合ってあーんまでしているのだ。まだそこまでじゃない?、どの口が言っているんだろうかという話である。

 

 誤解のないように言っておくと、圭達学園生活部のメンバーは凪原と胡桃の関係を応援していた。確かにメンバー唯一男性の凪原のことは皆好ましく思っているものの、異性としてどうこうといった感情はないのである。

 最初の頃は微笑ましく見守っていたのだが、胡桃が噛まれた際にあれ程熱烈なキスを(タオルケット越しとはいえ)見せられたにも拘らず、そこから進展する気配の無い2人にヤキモキしていたのである。

 そんな中で経緯はどうあれ件の2人が外泊することになったのだ、さてどうなるかと連絡してみれば普段と全く変わらない様子の凪原に思わずキレてしまった圭を誰が責められようか。

 

「こんだけ状況が整ってて平常心保てるって凪先輩マジでなんなの⁉実はホモだったりするの?」

「ホモじゃねぇわ!」

 

 何の因果で好きな異性がいるのにホモ疑惑を掛けられるのだろうか。

 そのままギャイギャイと言い合うも当然ながら落ち着くことはなく、最終的に埒が明かないとばかりにヒートアップした圭が強引に話をまとめに入った。

 

「ああもうっ、回りくどいのは無し!ほかのことは置いておいて、シたいのっ?シたくないのっ?」

「あーはいはいシたいですよっ。俺だって男なんだ、そりゃシたいに決まってんだろうが!」

 

 と、こちらもヒートアップしていた凪原が半ばヤケクソ気味にそう宣言すれば、途端に圭の声が満足したものになった。

 

「うんうん、そうでしょそれが聞きたかったんだよ」

 

 無線の向こうでニヤニヤと笑っているであろう圭に対し「もう切るぞ」と言って通信を切った凪原は無線機をテーブルの上に戻すと大きく息を吐いた。左右に首を振って先ほどの会話を頭から追い出す。そして少し体を伸ばそうと座ったまま伸びをしたところで、何やら視線を感じて廊下に続くドアへと視線を向けた。

 

「「あ」」

 

 そして2人の声が揃う。

 開いたドアの隙間から、胡桃がこちらを覗き込んでいた。

 

 ショッピングモールの時のものとは違うピンク色で模様の入った年頃の女の子らしいかわいいパジャマを着て、普段ツインテールにしている髪は降ろしていた。まだ水分を含んだ髪は艶っぽく見え、さらに頬をわずかに朱に染めていることも相まって彼女の姿は妙な色気を醸し出しているように見える。

 思わずつばを飲み込んだ凪原だったがそんな場合ではないと思いなおす。今重要なのは先ほどの会話を胡桃がどこまで聞いていたのかである。

 

「………。どっから聞いてた?」

「えーっと、「今日はこの後どうするのか」ってとこから」

「ほぼ最初からじゃねえか…」

 

 言い繕うのがバカバカしくなるほど丸聞こえで、凪原はがっくりと肩を落とした。

 

 

 

====================

 

 

 

「「………………。」」

 

 もう夜も遅いためとりあえず寝室へと移動してきた2人だったが、お互い口を開かないまま既に数分が経過していた。その何とも言えない気まずさたるや昼間のそれの比ではない。

 

 さらに移動してきた寝室にまた問題があった。部屋の真ん中にでかでかと鎮座しているベッドの上に枕が2つ仲良く並んで置かれているのだ。雨戸が閉まっていなかったために窓からの光で天日干しができていたのか、数ヶ月手入れされていなかったにもかかわらずマットレスや布団のコンディションは悪いどころか上々である。

 問題なのはそのサイズだった。横になろうとすれば体同士がかなりに近い距離になってしまうそれはキングサイズというにはいささか小さく、恐らくはクイーンサイズ、ともすればダブルベッドサイズであろう。主に同棲中の()()()()()()家庭で用いられるサイズだった。 

 

(ってか新婚なのになんでこんな高級住宅に住めてんだよ、もっと落ち着いてさらに大きいベッドか別の部屋で寝るようになってから越してくるべきだろ⁉)

 

 凪原が家の持ち主に対して見当違いな怒りを抱いていると、胡桃の方から声をかけてきた。

 

「あの、さ、ナギ」

 

 ベッドの中央でいわゆるペタン座り、両足の間にお尻を落として座っている胡桃は、左右の拳をそれぞれの膝にのせつつ、上目遣いで凪原の方を見つめていた。

 

「あ、ああ。なんだ?」

 

 と、こちらはベッドの端に腰掛けていた凪原。テンパりながらもとりあえず胡桃の方へ体を向けようと身じろぎしたところで―――

 

 ギシリ

 

―――と、ベッドがきしむ音が部屋に響く。

 

「「~~っ」」///

 

 そしてその音から色々と想像してしまい、揃って顔の赤さ加減を一段階あげて悶絶する2人。

 少し時間を置き、頭を振って軽く息を吐きだしてから改めて口を開く。

 

「それでなんだ胡桃?」

「え?あっそっその…、さっき聞こえちゃった話なんだけどさ、なっナギもやっぱりそういうことしたかったんだなって」

 

 途切れ途切れではあるが興味の方が勝ったのだろう、胡桃は最後まで言わないまでも思っていることを凪原に伝えることができた。

 

「そりゃ俺だって人並みにはその辺の欲はあるからな、いつもすぐそばに好きな人がいるとなれば尚更だ。もしそうじゃないってやつがいるならそいつは頭か身体のどっちかが腐ってるな」

 

 普段の凪原であればもし似たようなことを聞かれても笑って煙に巻くくらいはできるのだが、先ほどの圭との会話をがっつり聞かれているので完全に開き直っていた。

 

「ほんとに?」

「なんでそこで疑問形になるかな、人が恥ずかしいのを我慢してしゃべってるってのに」

「だ、だってキスも結局2回しかしてないし普段一緒にいても全然そうしたいなんてそぶりがなかったし…、あたしはめぐねえとかりーさんみたいにスタイルが良いわけでもないから。だから好きとは言ってくれてたけどてっきりそういうことにはそんなに興味がないのかなって」

 

 言っている間に自分で落ち込んできたのか、だんだん声が細くなってうつむいてしまう胡桃。その様子が可笑しくて凪原は小さく笑ってしまった。

 

「なんで笑ってんだよっ」

「いや、そんな見当違いなこと考えてたって思ったらちょっと面白くてさ」

 

 そう言ってさらに笑う凪原だったが、プルプルと震えながら彼を睨む胡桃の目にジンワリと涙が浮かんできたのに気づき慌てて先を続ける。

 

「そういうことに興味がなかったら1回目はともかく2回目のキスはやってねえよ。それに胡桃だって自分で言うほどスタイルは悪くないっていうかむしろかなりいい方だと思うぞ。ってかそもそもあんま自分で言いたくないけど、俺はその辺単純なの。好きってこととそっちのことは割とイコールで繋がっちゃってんだから、もし胡桃にそんな風に見えなかったってんなら俺が必死こいて自制してたからだな」

 

 むしろ俺の鋼の意志力を褒めてもらいたいぐらいだ、と話す凪原の言葉(のうち特にスタイルは良いと思うという部分)を聞いて少し落ち着いた胡桃は当然の疑問を口にする。

 

「じゃ、じゃあなんでそういうそぶりがなかったの?」

「そりゃ俺の方も胡桃がそういうことを望んでるのか測りかねてるってとこがあったし、それに」

「それに?」

「ちょっとでもタガが緩んだら自分を抑えられる自信がなかった」

「?、…………!(ボンッ)」

 

 胡桃は最初凪原が言っている意味が分からなかった様子だったが、理解すると同時にさらに顔の赤みが増した。もはや顔だけでなく耳の先から首の下まで、パジャマから見えている部分が全部真っ赤っかである。

 

「ふ、ふーん。そうだったんだ」

 

 何とか平静を装おうとしているが失敗している、目は泳いでいるし口元は微妙に緩んでいた。

 

「あとは周りの皆の反応だな。なんかあったら後から色々言われる、どころかほぼ確実に出歯亀してくるだろ」

「うん、絶対すると思う」

 

 スンッ、と一気に真顔になる胡桃。いくら凪原のことが好きな気持ちが強かったとしても、仲間達に見られながら―――、というのはごめんこうむりたい。

 

「まあ俺が自制してた理由はそんな感じ。自慢じゃないが俺は恋愛経験が零だからな、そういうことをしようとして胡桃にどう思われるかとかばっか考えてたよ、途中で止めれる自信がなかったからなおさらな、ってなに笑ってんだよ」

「プックク、い、いや、そんなこと思ってたんだ。普段あれこれいろんなこと考えてるナギとは大違いだな」

「へーへー、どうせこの手のことに関しちゃ奥手のチェリーボーイですよ、俺は」

「あーほらほら怒んなって」

 

  拗ねたように背中を向けてしまった凪原に近づくと、胡桃はその背中を後ろからそっと抱きしめた。

 

「大丈夫、ナギがあたしのことをすごく大事に思ってくれてるのは、分かってるからさ。毎日学園生活部のことを色々、それこそあたしには全然思いつかないようなことまで考えてるのに、それでもあたしのこともいつも気にかけてくれてる。あたしはそれで十分だよ」

 

 言葉を尽くしたというわけではない。ただ自分が思うことを口にしただけの胡桃の言葉は、その正直さゆえに彼女の思いを余すことなく凪原に伝えることができた。そしてその言葉は凪原にとって彼女以外の人に万の言葉でもって認められるよりも嬉しいものであった。

 しかしだからこそ、このまま彼女の思いを受け入れてしまってもいいのかと不安に感じてしまう。胡桃から見た凪原と、彼自身が思う凪原勇人という人間との間に差があるように思えるのだった。

 

「いいのか?俺は色々考えてるように見えてるみたいだけど、中身は結構抜けてるとこのオンパレードだぞ?今の恋愛関連とかがいい例だな。胡桃にも多分、迷惑をかける」

 

 それは凪原にとっては秘密の告白のつもりだったが、それは胡桃にとっては匙にも満たないほど些細なことだった。

 

「そんなこと気にしなくっていいって。前にも言ったろ?ナギが悩んだり凹んだり、うまくいかなかったときはあたしが助けるってさ」

「ハハッ、確かにそうだ。胡桃にとっては今更だったな」

 

 胡桃の言葉に軽く笑うと、凪原は肩にかかっていた胡桃の腕を軽くたたいて離してもらい、彼女の方へと向き直った。そしてその顔を真っすぐに見つめると感謝の言葉を口にした。

 

「ありがとな、こんな俺のことを認めてくれて」

「ううん。あたしの方こそありがとう、いつも隣にいてくれて」

 

普段の大分年上に見えるそれとは異なり年相応の、ともすれば年下にも見える笑みを浮かべた凪原に、胡桃も小さく微笑みながら返した。

 

 

 

「そ、それでなんだけどさ」

「うん?」

 

 少し落ち着いたところで改めて胡桃が口を開いた。

 

「さっきのであたしもナギも相手の気持ちを確認できたじゃん?」

「ああ」

「それに昼にこの辺の奴等は根こそぎ倒したから夜の間は警戒とかしなくて大丈夫だよな?」

「まあまず問題ないな」

「最後にここは学校じゃないから皆も近くにいないよね?」

「ああ確かにそうだ」

「だ、だからさ、えーっとその、なんていうか、つまり「わーった、それ以上言わなくていい」そ、そう?」

 

 ようやく胡桃の言わんとしていることを察した凪原は、最初「何を改まって言ってるんだろう?」と思ってしまった自分を殴りたい気分だった。既に胡桃は噛み噛みだし、顔の赤さは湯気が出ていないのが不思議なレベルである。

 察しの良さには自信があったのだが、どうやらことこの手の話題に関して自分は呆れ果てるレベルで鈍かったらしい。

 そもそも今回の会話の出発点がそれだったのに忘れていたあたり、たとえ刺されても文句は言えない。

 

「あーくそ、自分がアホすぎて嫌になるな。ちくしょうマジで恥ずかしい、ってそれは今どうでもいいか」

 

 自己嫌悪の念は尽きないが今はその時ではない。今は自分の至らなさのせいで不安にさせてしまった目の前の少女の思いにこたえる時間である。

 ほとんど言われてしまって情けない限りだが、せめて最後の最後に関してだけはこちらから行動を起こさないと凪原は男として自分を許せそうになかった。既に胡桃は腹を決めているのだ、ならば一線を踏み越えるのに必要な度胸は凪原の担当だろう。

 

「さて、胡桃」

「うん?」

「ちょいと失礼」

 

 

 トンッ―――ポスッ

 

 

 首をかしげる胡桃に一言断ってからそっとその肩を押すと、彼女はそれに逆らうことなくベッドの上に仰向けに倒れた込んだ。そして凪原も身をかがめると、彼女の顔の両側に手をついて上から覆いかぶさるような体勢になる。

 鼻と鼻が触れ合いそうなほどの至近距離で、凪原は自身が最も愛おしく思う彼女へ正直な気持ちを伝えた。

 

「俺は胡桃、お前のことを心の底から愛してる。だから、お前が全部欲しい」

 

 その言葉に一瞬だけ目を丸くし、そこからゆっくりと時間をかけて作られた花開くような笑みは、歓喜なのかそれともまた別のものか、凪原には想像もつかない程様々な思いが込められているように見えた。

 

「――うんっあたしもっ、あたしも愛してる。だからいいよ、全部あげる」

「ありがとう、それじゃ………いただきます」

「………………うん、どうぞ」///

 

 直後に落とされた軽く、触れるだけのような甘い口づけが、これから先2人の頭に幸せな記憶として残り続ける一夜の始まりを告げる合図となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

 翌朝、凪原は1人リビングでダイニングテーブルに座り、両肘をつき手を口元で組ん(ゲンドウポーズ)で固まっていた。

 彼の視線の先にあるのはテーブルの上に置かれた無線機である。先ほどから何度か手を伸ばしているのだが、そのたびに途中で手が止まり、再び元の体勢へと戻ってしまう。

 

「ハァー………」

 

 さらに逡巡することしばし、凪原は大きくため息をつくと覚悟を決めた表情で無線機を手に取ってマイク部分へと口を寄せた。

 

「こちら学園生活部遠征班の凪原から拠点班へ、応答願う、どうぞ」

『こちら拠点班の悠里よ、おはよう凪原さん。―――今日はいつもより起きるのが遅かったみたいだけど、ゆうべはお楽しみでしたね?』

「………。」

 

 投げかけられる伝説のセリフに半ば予期していたとはいえフリーズする凪原。応答してきたのは悠里のみだったが、気配的に彼女の周りには拠点班の皆が集まってこちらの言葉を待っているのだろう。全員に聞かれている状態でこれからとある報告をしなければいけないと分かり、凪原は早くも気が重くなった。

 

「あー、実はそれについてなんだけど―――」

 

 ちょっと連絡事項があってな、と続けようとした凪原だったが、気恥ずかしさから変な風に口ごもってしまう。そしてそれがどのように聞こえたのか、無線機の向こう側の温度が一気に下がる。

 

『はい?もしかして、何もしてないとかいうんじゃないでしょうね?昨日あれだけ焚きつけたのに?』

「いや、そうじゃなくてな………」

 

 何やら誤解が生じていると気づいた凪原だったが、いくら様々な経験を積んでいる彼でもこのような場合の最適解を瞬時に導くことはできなかった。

 

『そう、それならどういうことなのかしら?』

 

 悠里の声が怖い。さらに言うと彼女の横で凪原のあだ名を、チキン、タマなし、ヘタレのどれにするかで話し合っている圭と美紀はもっと怖い。そんな呼び方をされたら凪原は死ぬ、主に精神的な意味で。あと、「最初の鳥さん以外意味が分からないよ(の)」と言っている由紀と瑠優(るーちゃん)はどうかそのまま純粋な君たちでいてほしい。

 

『早くどういうことなのかはっきり言ってちょうだい。場合によっては情状酌量を認めないこともないわ』

 

 口調から目が笑っていない悠里の笑顔がありありと想像できるうえ、いよいよ凪原のあだ名が、タマなしヘタレに確定しそうになっている。そろそろ恥ずかしがっていないで誤解を解かないと男として人生最大級の汚点をつくることになってしまう。凪原は再度覚悟を決めて連絡事項を正直に伝えることにした。

 

「えっと、そのだな―――」

 

 一旦言葉を切って深呼吸し、意を決して凪原は続きを一気に口に出した。

 

「―――胡桃が足腰立たなくなったから帰るのが予定よりも遅くなる」

 

『えっ、それって――「じゃ、そういうことで」――あ、ちょっとまっ(ブツンッ)』

 

 そして向こうが何か言ってくる前に即座に無線の通信を切り、呼び出し音をミュートにした。

 

 

 

 

 




なにをいただいたのかは知りません(断言)。

次はいつもみたいな感じで学園生活部の日常回の予定ですので、今回「うーん…」だった人、お気に入り解除しないでくださいお願いします。
今度は某ゲーム会社(カプ〇ン)製のヘリが来る辺りのイベントを考えています。

それではまた次回!
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