さて、今日は第4章の最終回ですよ~
その時は突然やってきた。
「ナギさんっ!!」
「グフゥッ!?」
自室で昼寝をしていた凪原は、胸の上に降ってきた由紀の腕で叩き起こされた。
こないだの祭の日の朝もこんな感じだったな、などとというのんきな考えは後に続いた言葉ですぐに吹き飛ぶこととなる。
「なんだ、どうした由k「ヘリコプターだよ!」―――は?」
脈絡のない由紀の言葉に一瞬凪原の思考が止まった。
「だから、ヘリコプターがこっちに飛んできてるの!!」
普段の見せるものとは違う切羽詰まったような表情と声の由紀を見て、機能停止していた頭が再び働き始めた。
「距離は?それにほんとにこっちに向かってるのか?」
「距離は私が最後に見た時はまだ豆粒くらいだったよ、絶対じゃないけど少なくとも近づいてきてると思う」
凪原の質問に慌てながらも的確に答える由紀。持ち前の索敵能力と、それを的確に伝える力は
「5秒待ってくれ」
そう声に出してから高速で思考を回転させ始める凪原。片手を額に当て、対応策を組み立てていく。普段から非常事態に対する動きは考えているので、そのうちの1つを少し変更すればよさそうだった。
「それじゃ、まずは屋上に出る扉の横の箱の中に発煙筒が入っているからそれを屋上で焚いてくれ。それが終わったら部室で待機だ。分かったか?」
「う、うんっ」
「よしっじゃあ駆け足っ」
「ラジャー!」
やるべきことの指示を出せば多少余裕ができたのだろう、由紀は元気よく返事をして駆けていった。
その背を見送りながら凪原は枕元に置いていた小型のトランシーバーを手に取る。普段遠征時に使っているものと比べるとおもちゃレベルだが、100mそこそこは電波が届くため校内の連絡用に使っているものだ。
「りーさん、めぐねえ、聞こえてる?」
そう問いかければすぐに双方から緊張をはらんだ返答があった。その返事を確認し、凪原はすぐに2人に指示を出していく。
「由紀から聞いての通り、こっちにヘリが向かってきてるらしい。もしかしたら無線放送をしてるかもしれないから2人は放送室の無線機で確認してほしい。放送されている周波数が分かったらポータブルの方で合わせてして部室に持ってきてくれ」
飛んできたヘリコプターが生存者の捜索をしているのなら、無線放送の1つくらいは流しているはずである。放送室の機材は無駄に優秀なため、付近で無線放送が行われていれば自動でその周波数にチューニングできる。作業には数分もかからないだろう。
「分かりました」
「ええ了解よ」
「ああただし、仮に呼びかけをしていても絶対に応答しないでくれ、聞くだけだ」
2人の返事にかぶせるように注意を付け加える。
これはヘリに乗っている人間がこちらに友好的であるかどうかが不明であるからである。友好的ではなかった場合に備えて、こちらが出す情報はできる限り少なくしたい。
由紀に屋上で発煙筒を焚くよう指示したのものそのためだ。
新しく煙、しかも色付きの人工的なものが上がればそこに生存者がいるのは一目瞭然である。ヘリが救助の目的で来たのならこの情報だけでも動いてくれるだろう。
もちろん屋上に出て旗などを振り回すのでもこちらの存在を知らせることはできるし確実ではある。
しかし、もしヘリに乗っている人間に悪意があった場合、その眼下に体を晒すなど「どうぞ撃ってくれ」と言っているようなものだ。
そして、救助ではなくこちらへ向かってきているのなら、相手は学園に地下倉庫を作った組織の関係者だと思われる。そうなればほぼ確実に銃を持っているはずなので、敵対的だった場合は十中八九撃たれる。
まあそもそもの話、相手が友好的でないのならこちらの存在を知らせない方がいいのだが、救助である可能性も捨てきれないことを考えればこれが最善とはいえずとも次善の策であろう。
と、ここまで詳しくは話せなかったが、凪原の少ない言葉でもだいたいのことを察してくれた2人は短く了承の返事をすると通信を切った。
「美紀と圭は女子みんなの持ち出し袋を持って部室に、るーと一緒にな」
「はいは~い、もう動いてるよ~」
「るーちゃんとは手を繋いでるから問題ありません」
最後に美紀と圭に連絡してみれば、2年生コンビは既に動き始めていた。
恐らく圭が美紀に声を掛けたのだろう、彼女は凪原達31期生に近い性格をしている。何か不測の事態が起きた際、じっくり考えるよりも先に(それがどのような結果に結びつくかは置いておいて)行動に出るタイプだ。
このタイプは落ち着きがないと評される場合もあるが今回の場合に関してはナイス判断である。
「おっけ、んじゃそのまま頼む。焦って転ばないようにな」
「も~こどもじゃないんだからってうわぁっととっ…………ありがと、美紀」
「もう、言われた途端につまずくんだから。凪原先輩、私が見ておきます」
「了解、任せる」
……調子に乗ったところで痛い目をみる、つくづく31期生に似ていると思う。生まれる年を間違えたのではないだろうか。
ともあれ、これでこの場にいない面子への指示だしは済んだ。残るは隣で一緒に昼寝をしていた胡桃だけだが、振り返ると既に彼女は戦闘用の装備を身につけ始めていた。
「胡桃?」
「ん?どしたナギ。あたしなりに先回りして準備してるつもりなんだけど」
ポカン、という言葉が似あう表情の凪原に、胡桃もまた首をかしげながら返した。当然のように話す彼女に凪原は今の状況をどこまで分かってるかを尋ねてみた。
「ヘリがこっちに向かってきてるんだろ? んでナギはそれがただの救助とかじゃないって思ってるわけだ」
「ああ、確かにその通りだけど」
指貫グローブをはめながら状況を的確に表現してみせる胡桃に凪原はやや戸惑いながら頷く。
「なんで不思議そうな顔してんだよ。そんなにあたしがテキパキしてるのは変?」
「そういう訳じゃなくて…、起きたばっかなのによくそこまで考えられるなと思ってな。いつもなら昼寝の後はしばらくくっついたままボーっとしてんのに」
「なぁっ!」///
突然ぶっこまれた
「こっこの緊急事態にいきなり何言ってんだよお前は!? もっと緊張感持つとかしろよ!」
そう凪原を諫める胡桃だが、顔を真っ赤にしてどもっている時点で自身も緊張感が吹き飛んでいることは一目瞭然である。
「いやだって寝起きの胡桃マジでぴったりくっついてくるじゃん。 (ひたすら無心で耐える俺の身にもなれよ)」
流石に状況を考え、凪原は後半部分を口に出さず飲み込むことにした。
「しょ、しょうがないじゃんっ。最近ちょっと寒く感じることがあるんだし」
「うっそだろお前今夏だぞ!?」
「そんなの知らないよ! ナギがあったかいのが悪い!」
装備を身につける手は止めないもののそのまま言い合う凪原と胡桃。非常事態とはいえ、なんだかんだで余裕がある2人だった。
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「なにあれ……こわい……」
由紀が半ば無意識にその言葉を放った瞬間、凪原は手にしていた89式小銃の
戦闘準備を整えた状態で部室に姿を現した2人に動揺の声が上がったが「もしもの為」と強引に納得させ、皆で屋上に出た時には既にヘリコプターは十分に視認可能な距離にまで近づいていた。
軍用のカラーリングが施されてがいるものの、どこかずんぐりとしたシルエットは攻撃用というよりは人員輸送用の機体に見えた。
それを見て、とりあえず全力で殺しに来たとかではなさそうだ、と幾分警戒心を下げた凪原だったが、校舎の上空まで到達してもただ旋回するだけで動きを見せる気配の無いヘリに不信感を覚え始めた。
彼以外の者も同様の思いを抱いたようで、眉を顰めたり「どうしたんだろう」と呟く。最初は大きく振っていた手も、今は降ろされてしまっていた。
やがて旋回をやめてホバリングに移るも、やはり何の反応も示さないヘリコプター。無線で何か言ってきていないかを悠里に尋ねてみても、放送自体が途切れてしまったらしい。
辺りには不安が広がっていた。
そこに先程の由紀の発言である。
屋上に出てから一言も発することなくヘリコプターを見上げていた彼女が発した声は、わずかに震えているようだった。
それを聞き、凪原は意識を観察から迎撃へと切り換える。由紀が『こわい』と評した以上、あのヘリコプターは救助ではない。
敵、もしくはそれに準じた存在である。
相手が地下倉庫を準備した組織であった場合、隠し部屋に置かれていた銃器については把握されているはずなので、それを上回る火器として89式小銃を持ち出して来ていたのだが、この調子だと本当に使うことになるかもしれない。
分が悪い賭けには違いないが、ヘリに
そして凪原に数秒遅れ、胡桃も初弾を装填する。視線をやってみれば、未だ戸惑いは見えるものの彼女は覚悟を決めた表情をしてこちらを見つめていた。
「学園生活部の皆に危険が及ぶなら、その時は……あたしもやる」、少し前に敵対組織が襲撃してくる可能性を伝えた時の胡桃の言葉だった。その言葉通り、両目には決意が宿っている。
心配ない、というように笑いかければ胡桃も微笑みを返してきた。互いに小さく頷き合うと行動を開始する、まずは2人以外の非戦闘組の避難だ。
「皆校舎の中に入っ――「あのヘリ……揺れて、ませんか?」」
しかし、校舎内への避難誘導をしようとしたところで美紀の口からこぼれた言葉にその動きが止まる。反射的に頭上を見上げてみると、ホバリングをしながら空中で静止していたヘリが小刻みに左右へ揺れ始めていた。
「着陸する……ってわけじゃ、なさそう、…だよね」
圭の言葉に誰も答えられないまま時間だけが過ぎていく。
全員が見つめる先で揺れはさらに大きくなり、
やがて、完全にコントロールを失った。
「っ、中に入って身を低くしろっ、急げ!」
自由落下を始めたヘリを前にして動けなくなっていた一同だったが、いち早く我に返った凪原の言葉に弾かれたように動き出す。
なんとか全員が校舎内に入り床に伏せた瞬間、質量物が地面に激突した轟音と衝撃、そして金属が引きちぎられたような甲高い音が襲い掛かってきた。
「全員無事か?」
数秒して墜落の余韻がきえたところで、凪原は体を起こし皆の安否を確認する。その声に応じるように次々に立ち上がった面々を見るに、とくにけがなどを負ったメンバーはいないようである。
「なっなんなの今の!?」
「なんだ圭、衝撃でかすぎて記憶でも飛んだか? ヘリが落ちたんだよ、校舎の裏手だ」
叫ぶ圭に軽口で答えつつ、「確認してくるっ」と再び屋上に飛び出していった凪原に一瞬遅れて胡桃も駆けだし、その後ろに残りの面々も続く。
屋上菜園の間を駆け抜け、校舎裏側の職員用駐車場を見下ろせるフェンスに到達した凪原は、眼下に広がっている光景を目にして思わず顔をしかめた。
「どうなってるっ!?」
「比喩抜きで大惨事だ、生存者はいないだろうな」
追いついてきた胡桃の言葉にそう返しつつ、凪原は改めて視線を眼下へと向ける。
頭から地面に突っ込んだのだろう。正面部分は原形をとどめない程グシャグシャにつぶれており、墜落に巻き込まれて大破した自動車の残骸と入り混じっている。
テイルローターと本体部分を繋ぐ部分はへし折れ、くの字に折れ曲がった金属のフレームで辛うじてつながっていた。テイルローター自体は近くにあった自動車に突き刺さっており、その回転を受け止めた天井部分はざっくりと切り裂かれて奥にシートが見える状態だ。
メインローターは機体から吹き飛んで1本は手近の車両を両断し、残りは数十メートル離れたところに変わり果てた姿を晒している。アスファルトの上にはローターとこすれた跡がハッキリと残っていた。
これ以外にも辺り一面に破片が散乱しており、駐車場は無事な場所を探す方が困難なありさまだった。
それだけでも惨状と評すには十分なのだが、さらに凪原が眉を顰める理由があった。
「クソッ、どっかショートしたか潤滑油でも漏れやがったかっ」
横転している機体の向こう側、詳しくは確認できないが恐らくメインローターの接続部付近から黒煙が立ち上っているのだ。今のところ燃料に引火してはいないようだが、煙が上がっている以上それも時間の問題である。
もし爆発が起これば、爆炎はここまで届くだろう。
舌打ちの一つでもしたいところだったがそうする時間も惜しい。
すぐ横では追いついてきたメンバー彼と同じようにフェンスに取り付いて駐車場を見下ろしている。あまりの惨状に言葉を失っている彼女達にその危険性に気付いている者はいないようだった。
すぐに皆を離れさせようと凪原が口を開きかけた時、
ゆらり
と駐車場の隅で陽炎が生まれた。横転した車から出火した炎が、同じく車から漏れ出したガソリンを伝ってヘリの残骸へと近づいていく。
悠長に警告している暇はなかった。
「全員伏せろぉぉぉおおおおっ!」
なりふり構わず全力で叫びつつ、凪原は近くにいた慈と由紀の頭を押さえ引き倒すようにして体を伏せさせる。視界の端で胡桃が美紀と圭を、悠里が
直後、凄まじい爆音が凪原達の鼓膜へと襲い掛かってくる。
先ほどの墜落時の音が子守唄に思えるほどの大音量に、意識が真っ白に塗りつぶされかける。伏せさせた2人の頭を押さえながらも凪原がわずかに顔を上げてみれば、予想通り爆炎が屋上をはるかに超えたところまで吹き上がり、スライドドアのような金属物が自身の目線よりも高く舞っているのが見えた。
残響がやんだところで立ち上がった凪原は2人が立つのに手を貸しながら安否を確認する。
「2人ともいきなりでごめん、怪我しなかった?」
「大丈夫です、ありがとうざいますなぎ君」
「私も平気だよ あ~、びっくりした」
見回してみればほかの面々も無事なようだった。
それを確認して視線を爆発の現場へと移してみれば、そこでは轟轟と炎が立ち上り、先ほどとは比べ物にならない勢いで黒煙が吹き荒れていた。
現場近くにいたゾンビは火が付いたまま倒れ込んで燃えるに任せている個体もいれば、自身が松明となって歩き回っている個体もある。
駐車場はさながら地獄の様相を呈していた。
(こうなっちまうと自然に火が収まるの待つしかないな。となると一旦ここを放棄、ただそれだと物資が足りない。………危険だけどやるしかない、か)
そこまで考えると、凪原は皆の意識を自分に向けるため大声を出した。
「注目っ!」
全員の視線が集まったのを見て口を開く。
「この学校から避難する、避難先はこないだから整備してる第2拠点だ。しばらくはここに戻れないと思ってくれ」
その言葉に動揺が走る。
これまで過ごしてきた場所を離れることを決めたのだ、動揺しない方がおかしい。
「だけど、今
続けて懸念事項を正直に伝える。確かに第2拠点は巡ヶ丘学院からの避難場所とすべく準備を進めていたが、物資の移動及び集積はまだ十分ではなかった。
このまま凪原達8人が転がり込めば、いくつかの物資が不足してしまう。
「ただ幸いって言っていいかは分からないけど、さっきの爆発の規模からしてこれ以上の爆発は起きないだろうし風向き的に煙が校舎に入り始めるまでは時間がある。だからその時間を使ってここにある物資をできる限り持ち出すことにする」
そこで彼から提案されたのは無謀とも思える内だった容。火事が迫っている中で避難せずに作業をするなど聞く人が聞けば「正気か⁉」と問われても不思議ではない。
しかしそれを聞く面々の顔に否定の色は無かった。代わりに浮かぶのは緊張感をはらんだものの決意の表情であろう。
その意思を示す一同の根底にあるのは、凪原を信じる気持ち。それも妄信によるものではなく信頼に基づくものだった。
これまでの凪原の行動が、彼が信じるに足る人物であるという信頼を彼女たちの中で築き上げていた。
「煙がこっちに来始めるまでの時間は恐らく3分ちょっとだ、だからそれまでに全部の行動を終わらせる」
「まず胡桃、美紀、それとるーは足の確保、こないだ持ってきたバンがいいだろう。非常階段近くに停めたら物資の積み込みを頼む。あと胡桃、さっきの爆発音で奴等がかなり集まってきてる。倒さなくてもいいからとにかく車に近づけるな」
「了解っ」
胡桃が左掌に右の拳を叩き込みながら返事をする。残りの2人も了承の意を示した。
「めぐねえ、りーさん、由紀、圭は物資の確保だ。優先順位は医療品と食糧、あとは任せる。梱包済みの奴は投げ落としても大丈夫だから障害物がない場所にまとめて落とせ、その方が時間の節約になる。終わったら非常階段を降りて車に迎ってくれ。ただしやばいと思ったら途中でもすぐに退避すること。めぐねえ、判断任せる」
「分かりました」
声に出して返事をした慈を筆頭にそれぞれが頷きを返す。
微妙に間が開いたタイミングで美紀が疑問を投げかけてきた。
「凪原先輩はどうするんですか?」
「俺は、少しでも火災が広がらないようにしてくる」
「「「危ない(です)よっ!?」」
美紀の問いかけに対する答えに全員が否定の反応を示すが、手を上げてそれを抑えるようなしぐさをする凪原。
「落ち着け、別にあそこに突っ込むって言ってるわけじゃない、集めていた消火器を上から投げ込むだけだ。あれの中身は消火剤だからな、熱で破裂すれば勝手に消火活動をやってくれるはずだ」
そのように言えば一同は何とか納得してくれた。言いたいことはあるのだろうがここで言い争っている時間はないと考えたのだろう。異論が無くなったを確認すると、凪原は念を押すように言葉を続けた。
「もう一度言うけど制限時間は3分、ただし各自の安全確保が最優先だ。全員無線は手放すな、何かあったらすぐに連絡すること、いいな?」
皆が頷いたのを見て大きく手を叩く。
「それじゃ、行動開始!」
その声に合わせて彼を含む全員が一斉に動き始めた。
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「くそ重……てぇ……なっと!」
悪態をつきながらも爆発の影響でガラスが砕け散った窓から消火器を投げ落としていく凪原。廊下に備え付けられている消火栓を使いたくなるが、燃料火災に水を掛けるのは逆効果である。短絡的な衝動を押し殺して次々と階下の火災へと投げ込み続ける。
備蓄していた消火器をすべて落とし終わった時、ちょうど最初に投げ込んだものが熱に耐えかねて破裂する音が聞こえてくる。窓から顔を出して様子をうかがってみると、真ん中から弾けた赤い筒を中心に白色の消火剤が飛び散りその一帯の炎が弱まっているのが見えた。
火の手が上がっている場所全体を考えればその面積は小さいが、投げ落としたもの全てが破裂すればそれなりに火の勢いを削ぐことができそうだった。
「ナギさんっ3分経った!」
「分かったすぐ行くっ」
由紀の呼びかけに大声で返事をし、凪原は踵を返して走り始める。先ほど予想したように、校舎内には煙が入り始めていた。さらに2分もすれば内部に充満してしまうだろう。
短めに見積もってよかったと考えながら廊下を走り抜け、非常口で手を振っていた由紀と合流する。
「首尾は?」
「ばっちり。お薬と保存食、それにお菓子とゲームも運び出したよ!けがした人もなし!」
「そりゃ上々だ」
非常階段を駆け下りながら問いかければ、期待以上の返事が返ってくる。どうやら凪原が消火活動をしている間に彼女たちは彼以上に動き回っていたらしい。
「大変だよナギさんっ ゾンビさん達がさっきよりもたくさんいる!」
「階段降りきったら背中に乗れっ」
「りょうかいっ」
校庭には爆発音に釣られて普段の10倍近いゾンビが集まってきていた、そのまま間をすり抜けるのは少し難しい密度だ。
掛けられた言葉に短く返し一足早く地上へと到達した凪原は由紀に背を向けてしゃがみ込むと、背負っていた89式小銃を両手に構え直しセレクターを
「乗ったよ!」
「んじゃしっかりつかまってろよ!」
凪原はそう叫んで立ち上がり、背に由紀を乗せた状態で走り始める。
寄ってくるゾンビに対してはを景気よく弾丸をばら撒いて強引に進路を確保していく。
もちろん精密射撃などはできないので的の大きい胴体部分めがけての射撃だが、銃口から吐き出される5.56ミリ弾は普段使っている9ミリパラベラム弾の3倍以上のエネルギーを持つ。
それを胸に複数発受けたゾンビ達はもんどりうって倒れ込んでいった。
「2人とも早く来い!」
「急いでください!」
「あとちょっとなの!」
同じく89式小銃を構えて車から2人を援護している胡桃や、彼女以外からも声が投げかけられる。
それ引っ張られるようにして凪原は校舎から車両までの距離を数秒で駆け抜けた。
「先に乗れ!」
「うんっ」
降ろした由紀を背に庇いつつ、凪原は近寄ってきていたゾンビ達に掃射を加える。1マガジン分撃ちきるとバンの周囲からゾンビは一掃された。
「ナギも早く!」
「了解っと ――いいぞめぐねえ!」
「それじゃ行きますよぉ!」
胡桃の呼びかけを受けてバンに飛び乗りドアを閉めながら凪原が声を上げれば、間髪入れずに慈がアクセルを踏み込んむ。タイヤが地面とこすれる音を立てながら発進したバンは、その勢いのまま校門を通過した。
パンデミック発生から3カ月半、突如として現れた来訪者により学園生活部の面々は安住の地を離れることとなった。
ツー訳でカ〇コンヘリ墜落回でした。
注:1000字くらい書いてた後書きが手違いで消えてやさぐれ中なので少々投げやりなところがあります。
さて今回の話のところ、原作でも大きなターニングポイントにして作中屈指の考察点ですよね。2次創作を書いている多くの作者様たちもどうしようか色々悩んだのではないでしょうか。かくいう筆者もめちゃくちゃ悩みました。
だって本作では風船(とアルノー鳩錦)飛ばしてないですからね、ヘリが来る理由がないんですわこれが。んで悩みに悩んだ結果、一応自分は(5割くらい)納得させられる設定を思いついたんですが、ネタバレになるのでまだ書きません。次章の本編中やその時の後書きにでも書こうと思っています。ただ一応筋は通ってると思うけど結構無理やりなので期待はしないでください。
ま、そんなことは置いておいて今回の解説タ~イム
ヘリの早期発見
原作では無線を傍受したんでしたっけ?本作では由紀が目視で発見したことにしています。でもそこまで不自然ではないですよ?ヘリコプターって飛行機と比べると高度が低い上に速度も遅いので探そうと思えば意外と探せます。屋上の高さを15メートルとすれば、理論上は半径14キロの範囲を見渡せますし、速度を時速200キロとすれば発見から到達までは3~4分あるので初動対応は十分間に合います。
ヘリの墜落
これも考察がはかどる点ですよね。本作における理由付けとしてはΩ型の設定が絡むので真相が明かされるとしてもかなり先の予定。なんせ作中での理由付けは凪原の推測という形で行っていますからね。神の視点の私たちはパイロットが注射を打とうとしたって知ってますけど、彼はそんなこと知る由もありません。ヘリが来て墜落しただけです。まあ彼なりの推測は次章で現場検証でもしたときにやってもらいましょう。
墜落→爆発炎上の流れは映像資料など見ながら書きました。爆発ホント怖い、そりゃりーさんも取り乱しますよ。
物資回収
原作とは異なり本作では第2拠点という名の避難場所があるので行先には困りませんが、物資はそれと別問題です。あえて触れることはありませんでしたが、作中時間で今はお泊り(4-7,8)からせいぜい2,3週間くらい。まだ物資を十分に移せてないんです。近所の物資はあらかた学校に集めちゃってるのでここが陥落すると物資回収は困難ということで、風さんに協力してもらって炎と煙を遠ざけてもらい、その間に物資回収をしてもらいました。
89式小銃さん
初登場は第2話でしたがそこからずっと出番がなく、今回初の実戦投入となりました。やっぱARっていいよね!弾が少ないことと、
こんなとこですかね。
さて今回で第4章は終了です。いつも通り閑話を挟んで新章突入となりますが、目次の説明に書いてある通りここから先はオリジナル要素が増えてくると思います。大まかな流れは原作に準拠しますが、今考えてるだけでも複数個大きな原作ブレイクが発生する予定です。なんせ本作の至上命題は
『原作キャラ達がそれなりに楽しく生きていくこと』
です。この点をご了承の上でどうかこれからも本作をお楽しみいただけると幸いです。また、お気に入り・高評価していただけるととても嬉しいです。
先ほども言いましたが次は閑話回です。
それではまた次回!
伏線仕込んだんだけどちょっとあからさまだったかな……
5章の閑話の内容はどんなのがいいですか?
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いつもと同じでワチャワチャ小咄
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ちょっと趣向を変えてメタ的暴露回
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ネタがあるなら両方書くんだよあくしろよ