前回言い忘れましたがUA50000回突破ありがとうございます!!
まだ微妙に忙しいのでちょっと執筆が大変ですが執筆は好きなので続けていきます。
今回はちょっと最後にアンケートがあるので答えてもらえると嬉しいです。
「太郎丸、お手!」
「ワンッ」
「おかわり!」
「アオンッ」
「よーし、いい子いい子」
「いい子なの~」
「ほんと頭いいね」
地下室から戻ってみると残っていたメンバーが犬と戯れていた。
由紀が差し出したそれぞれの手に左右の前足を乗せてしっぽを振っている柴犬は、圭や
「太郎丸って名前だったのか?あの犬」
「いえ、特にそんな話は聞いてませんけど…」
凪原の言葉に戸惑ったように答える美紀。胡桃も同じように首をかしげている。
「なんか由紀ちゃん先輩が急に『よし、君は太郎丸だ』って名前つけちゃったんだよね。まあ当人も嫌がってないみたいだし私もあってると思うよ」
凪原達に気付いた圭が寄って来て説明してくれた。
「あってると思うよ、じゃないよ圭。葵さん、ホントはあのワンコなんて名前なんですか?」
「ん~、知らないっ」
「って知らないのかよ」
堂々と宣言したに思わず突っ込む凪原だったが、言われた葵はアハハ~と笑いながら口を開く。
「実はその子別に私の犬じゃないんだよ。首輪はしてたからどっかで飼われてたんだろうけど、避難所から逃げてる途中で偶々会ってそこからついてきたってわけ」
「そうだとしても、ここに来てから結構経つのに名前つけたりしなかったの?」
「いや~皆が来るまでは私とその子しかいなかったからさ、おーいとか犬~って呼べば来てくれたし」
「「「ええ…」」」
彼女の説明に呆れた声を漏らす凪原達。
もともと自分の飼い犬ではなかったというのは少し驚いたが考えてみれば変なことではない。個人や家族だけでの避難ならばペットを連れていくこともできるだろうが、避難所などに身を寄せるのであればそうはいかない。ならばせめてつながれたまま餓死することが無いようにと、彼等を解放した飼い主がいたとしてもそれほどおかしくないだろう。
ただし、それと名前を付けなかったことは関係ない。少なくとも3ヶ月以上は一緒に暮らしているはずのに名前を付けていないというのはそれなりにおかしい。
「いくら何でもストレートに犬はないだろ。実は嫌われてるんじゃないか?」
「そっそれはないよ。私と犬とは仲良しだからね、今も呼んだらすぐ来てくれるはずお~い犬ー」
凪原の言葉に少し焦ったように答えた葵は、それを証明するようにまだ由紀と両手を繋いで
そしてその返答はというと―――
「………。」
―――無言、であった。
一応パタリ、と1回しっぽが振られたので嫌われていることはなさそうなものの、少なくとも今は2人から離れて葵の方に来るつもりはなさそうだった。
「そんな…」
「まあそりゃそうだろうな。柴犬って頭いいらしいし、ちゃんと名前を付けてくれた人がいたらそっちに懐くだろ」
ガックシと両手両膝を地につけてうなだれる葵を尻目に柴犬、太郎丸へと近づいて頭をなでる凪原。「なあ?」と声を掛ければ、その通りとでもいうかのように「ワオンッ」と鳴き声を上げてた。
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「ご飯ができましたよ~」
「テーブルの上を片付けて手を洗ってきてちょうだい。
「「「はーい(なの)」」」
カウンター中から出てきた慈と悠里に皆いい声で返事をする。彼女達が持つ大皿に盛られた料理からは湯気がと共に良い香りが立ち上っており、嗅いだ者の空腹感を刺激している。
「…ところでそこの2人は何をしているのかしら?」
「気にしないでいいぞ、単に沈んでるだけだから」
悠里が見つめる先では葵と美紀が並んで失意体前屈をしていた。
凪原の後に続いて皆かわるがわる太郎丸をなでたのだが、その時なぜか美紀だけが顔を背けられてしまった。とはいえ嫌がっているというほどではなかったし、葵と比較すれば友好的な態度だった。
それでも美紀にとってはショックが大きかったようで、わざわざ葵の横まで移動した後に同じ姿勢で崩れ落ちたというわけである。
髪型と髪色が似ているためパッと見では姉妹が揃って落ち込んでいるように見えなくもない。
「なら問題ないわね、美紀ちゃんも葵さんも手を洗ってきてください」
「分かりました」
「うぅ、悠里ちゃん結構キツイね。変に気を使われるより全然いいんだけどさ」
マニュアルや銃など、統一感は無いがこれまでの説明に必要だった物達をテーブルからどかせば、空いたスペースに料理が並べられていく。どれもおいしそうで、調理した2人の腕がいかんなく発揮されたようだった。
「しっかり料理するのは久しぶりでしたから張り切っちゃいました」
「お茶碗が足りなかったからおにぎりにしたわ。ラップとかは使ってないから食べている途中で汚いところとか触っちゃだめよ」
「はーい」
「なんか、りーさんどんどんお母さんじみてきたよな」
胡桃の言葉に「誰がお母さんよ」と返しているが表情はまんざらでもなさそうだ。なんだかんだで悪い気はしないのだろう。
「おまたせー、ってうわすっごい豪華じゃん!私も食べていいの?」
「ダメなわけないですよ、そもそも材料はほとんどあおちゃんが出してくれたんですし」
「それもそうだね。それじゃ、せっかく2人が用意してくれたんだから冷める前に食べちゃおっか。
席について手を合わせ、「いただきます」の合唱を合図に皆思い思いに箸を取って夕食を食べ始めた。
「………。」
左手におにぎりを持ち右手の箸をおかずへと伸ばしながら、凪原は慈が葵のことを
彼は今まで慈が誰かのことをあだ名で呼ぶのを見たことがなかった。
教師という職業と慈の元々の性格上、たとえ卒業したとしても凪原達は彼女にとっては生徒、すなわち守るべき対象だ。それが可能かどうかというのはこの際置いておくとして、少なくとも精神的にはそうなのである。
この現実と精神との乖離が慈の心身の負担となっているのではないかと凪原は最近心配していた。
たとえどのような考えがあろうと、現実問題として学園生活部の安全を守っているのは凪原と胡桃、次点としては美紀であって慈ではない。本来守るべき子達に守られているというのは心に負荷をかけるには十分な理由だろう。
加えて、学園生活部の中で彼女だけ大人で他と立場が異なるのも問題だった(凪原は成人しているが慈からすれば子供と同じだろう)。自分だけ周りと違うというのはいい意味でも悪い意味でも精神に与える影響が大きいのだ。優越感や劣等感というものはベクトルが逆なだけで根本は似たようなものなのである。
この様な理由から、慈自身が自覚しているかどうかはともかくとして、少なくない精神負担がかかっていると凪原は判断していた。しかし、難しいのは精神的な部分というものは周りがどうこう言った程度では解決が難しいということだ。
であるからして、危惧を抱きつつも打つ手なしとそのままにしていたのだったが、今回の葵との出会いは慈にとってプラスに働いているようだった。
教師という全く同じ立場ではないものの、凪原よりは年上――恐らく社会人だろう――な彼女は少なくとも恵にとって守らなければいけない対象ではない。
こういうと突き放しているようにも聞こえるが実際にはその反対だ。無意識に気を張る必要のない相手というのはこちらの精神を安定に一役買ってくれる。いわゆる
今日会ったばかりの葵のことを仲間と呼んでいいかは議論の余地があるが、人柄は良さそうなだし、いくら精神に負担がかかっていたとしても慈が全く合わない人と短時間であだ名で呼び合うようになるとは思えない。
それに、そのあたりの感受性が強そうな由紀や
(めぐねえにとってもよさそうだし設備もしっかりしてるし、ここを拠点にできれば良さそうなんだけどな―――やめやめ、あとで考えればいいや)
そんなことを考えたところで一端思考を打ち切る凪原。これ以上は凪原が1人で考えても仕方ないし、何より今は食事中、悩み事をしながらではご飯のおいしさが損なわれてしまうのだ。
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結果として、凪原が後回しにした考え事は思ったより早く再び顔を出した。
「あーおいしかったぁー、こんなおいしいご飯食べたのはホント久しぶりだよ」
満足げなため息をつきながら椅子の背もたれに寄りかかる葵。彼女が撫でているお腹は見てわかるレベルで膨らんでおり、以下に食事を楽しんだのかがよく分かった。
「ここまできれいに食べてもらえると作った甲斐があるわ。でも材料は倉庫にあったものなんですよ」
「そうですよあおちゃん。ほとんどお料理していなかったでしょう、レトルト品の袋ばかりでしたよ」
どうやら葵はあまり良い食生活をしていたわけではないようだ。調理担当の2人がお小言モードになっている。
「うーん、まあ割とテキトウに済ませちゃってたね。元々料理はあんまり得意じゃなかったし、どうせ人間は私1人だけだったからご飯にはほとんど気を払ってなかったんだよ」
そう話す葵の雰囲気はのんびりとしていたものの、若干の寂しさを伴っていた。
「犬…じゃなくて太郎丸か、は一緒だったけどやっぱり会話ができるわけじゃないからね、やっぱり人恋しかったんだ。かといって外に出る勇気もなかったし、だからラジオ放送ができるって分かった時は喜んだよ」
それは先ほど話してくれた事実だけを客観的に並べた身の上話とは別の、主観が入り混じった、でもだからこそ感情が伝わってくる話だった。
聞いていた面々も思わず動きを止めて彼女の話へと耳を傾ける。
「ラジオの向こうで実際に誰かが聞いてくれているのかは分からなかったけど、少なくとも人と話しているような気分になれた。だからどんどんラジオ放送のことばかり考えるようになったんだ」
ほんとに話してるわけじゃないのにね、と自嘲気味に笑う葵に言葉を凪原達は誰も言葉を返すことができなかった。
「もちろん頭では分かってたよ?、このままじゃダメだって。でもここに閉じこもってる時間が長くなればなるほど、どんどん外に出るのが怖くなっちゃってさ」
この数か月間、葵が体験していたのはゾンビに襲われるかもしれないというある意味直接的な恐怖ではなく孤独からくる精神的なものだ。
対して凪原達学園生活部はというと、初期メンバーの4人と
彼女が過ごしたおよそ半年にも及ぶ期間には到底及ばなかった。
葵がこの期間をどのような思いで過ごしてきたのか、想像してもしきれるものではないがそれでも想像してしまい、その長さに戦慄を覚えた。
学園生活部は、仲間同士で互いに助け合い支え合うことで日々を送ってきた。もしがそれがなかったとしたら、そう考えただけで背筋に冷たいものが走る。
重苦しく停滞した空気は、次に葵が発した「だからね、」という言葉で断ち切られた。
「ほんとうにありがとね。ラジオ放送を見つけてくれて、それから会いに来てくれて」
にへら、という擬音語が似合いそうな柔らかい笑みを浮かべた葵の姿に凪原達にかかっていた体のこわばりが解ける。
「そういうことならお礼は由紀に言うべきだな。なんせ実際にラジオを見つけたのは由紀なわけだし」
「えぇっ!?わ、私より凪さんでしょっラジオ貸してくれたの凪さんだし!」
しれっと飛んできたキラーパスに由紀の声が思わず裏返る。そのままワタワタと焦った調子で自分以外の手柄にしようとするもそうはいかない。普段からかわれている者達がここぞとばかりに声をあげる。
「おっなんだ由紀、照れてんのか~」
帽子の上から胡桃に乱暴になでられ、
「そもそもあの時最初にラジオの話題を出したのも由紀先輩ですし、おとなしく褒められてください」
美紀からは正論で指摘され、
「恥ずかしがってる由紀先輩ってのも珍しいね~うりうり」
ついでに便乗した圭にはわき腹を肘で小突かれる。
そんな集中砲火を受けた由紀は―――
「う、うぅ~~~っ」
―――不思議な鳴き声を上げながら部屋の隅で丸くなってしまった。
いわゆるカリスマガードというものに近い体勢だが、それと異なるのは両手で帽子を押さえる代わりに太郎丸を抱えて楯のようにしていることだろうか。いきなり抱え上げられた太郎丸は状況がよく分かっていないようで、小首をかしげている。
一連の流れにより、先ほどまであった重苦しい空気は霧散していた。
そして楽しそうに戯れている一同の様子を見た葵は一つ頷くと、何かを決心したように口を開いた。
「あのさ、みんなもここで暮らさない?」
飛び出した言葉のないように皆の視線が彼女へと向けられる。
「さっき聞いたけど大学に行くっていうのは新しい拠点を探すためなんでしょ?、だったらここに住んじゃいなよ、ここなら電気も水もちゃんと使えるしさ」
「どうかな?」と言いながら両腕を広げ、この建物の有用性を語る葵。いきなりの誘いに学園生活部の面々はとっさに反応を返せなかった。
「そりゃまた急な申し出だな。なんか心境に変化でも?」
「急ってわけではないよ、もともとここに誰か来て、それが良い人そうだったら提案しようとは思ってたんだ。部屋とかも余ってることだしね」
例により真っ先に我に返った凪原の当然といえば当然な質問に落ち着いて答える葵、どうやら以前から考えていたというのは嘘ではないようだ。
しかし実際に考えていたにせよ疑問は残っている。
「それにしても話を切り出すのが早くないですか?普通こういうことにはもっと慎重になることだと思うんですが」
美紀が発したのがその疑問である。
現在の状況において、同居するということは解消がほぼ不可能かつ完全な運命共同体となることと同義である。な何となく合わなかったからというような理由だけで出ていける以前のシェアハウスなどとは違うのだ。
特に学園生活部のような小規模な集団では、全員が互いに命を預けられるレベルでの信頼関係が必要となる。
人数が少ないと、集団内で何かもめごとが起きた際に全員が当事者となってしまう可能性が出てくる。そうなると客観的な判断をできる者がいないために解決が難しくなり、表面上は解決したとしてもどこかにしこりを残すという結果になりやすい。
これを回避するためには、共同体に所属する全員が全員に対して信頼感を持ち、意見の対立程度では揺るがないような関係を構築しておく必要がある。
そして、このような関係はどのような人でも時間を掛ければ構築できるというものではない。
互いに違う人間なのでどうしても性格が合わないということがあるかもしれないし、そもそもの性格からして人との調和に向いていないという人間も存在する。
よって、その人と自分が本当にうまくやっていけるのか会って即座に判断することは難しい。
それにも関わらず葵は凪原達と初めて顔を合わせてから数時間、ラジオでの接触から考えても1日に満たない。このような提案をしてくるにはいささか早すぎるといった印象はぬぐえないだろう。
「まあそういう反応になるよね、私だってこんなに早くするつもりは無かったし。でもね、」
葵はそこでいったん言葉を切った。
「実際に皆と顔を合わせてみたらそんなに我慢できなくなっちゃった。みんなと会って、話して、お茶を飲んで、一緒にご飯を食べて、それができるのが本当に嬉しかったし楽しかった。そのせいでさ、正直に言っちゃうともう1人でやっていける気がしないんだよね」
口調は軽いままだったが、葵の言葉にこもった思いは本物だった。
あるいはずっと1人のままだったとしたら、葵はまだしばらくの間孤独に耐えることができただろう。
しかし幸か不幸か学園生活部と巡り会い、人と過ごすことの暖かさを思い出してしまった葵には、もはや昨日までの生活に戻ることは不可能だった。
太郎丸がいるので完全な孤独というわけではないが、動物の与える癒し効果には個人差がある。葵にとって、言葉を交わし事のできないペットの存在は気休めにはなるものの、孤独を完全に埋めるまでは至らない。
「だからお願い。私も仲間に入れてくれないかな」
言葉と共に下げられた頭は、彼女の内心を表すかのように小さく震えていた。
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「と、いうことみたいだけど皆はどう思う――って聞くまでもないって顔してるな」
「ちょっとお風呂入ってくるから考えておいて」と言い残して葵が出ていったリビングにて、皆を見廻しながら口を開いた凪原の口調が途中から苦笑交じりのものになった。
「そっちだって多分あたし等と同じ顔してるぜ、ナギ」
笑いながら返事をしてくる胡桃と、それに賛同するように頷く学園生活部の面々に凪原の顔も自然と笑顔になる。
皆、仲間がいることの有難さはよく知っている。
そして孤独の恐怖については葵の語った様子を見てしまえばたやすく想像できた。もし自分が彼女の立場だったら耐えることができるか、もちろん答えは否である。
であるならば、一緒に住んでほしい、共にいてほしい、そう望む葵に対する返事は決まっていた。
先ほど即答できなかったのは少し驚いていたから、落ち着けば答えなど考えるまでもない。
「「「これからよろしく、大家さん」」」
お風呂から出てきたところにかけられたからかい交じりの、それでいて暖かい言葉に、葵は思わず安堵の涙を零してしまったが、その時の詳細を述べるのは野暮ということになるだろう。
なにはともあれ、
この日、学園生活部に新しいメンバーが加わった。
はーい安定の原作ブレイク、ワンワンワン放送局が新しい拠点になりました。
まあ普通に考えて黒幕が関わってそうなところをわざわざ拠点に選ぶのはどうなんだ、と思った結果です。原作では由紀の精神が回復しきってなくて進学するという流れが微妙に残ってましたし、お姉さんは(葵)は転化してしまった後なので、そのバタフライエフェクトですね。
ただ今後聖イシドロス大学には向かう予定なので心配は無用です。
今回の戯言
みーくん、ラジオ局のお姉さん、似てる?
ネット上だと親戚だとかタイムリープしてきたみーくん自身だとか、屋外で楽器演奏をラジオ放送して噛まれたとか、いろいろ考察がでてますが本作では「ちょっと似てる?」ってなるくらいの赤の他人です。引きこもっていたので外にも出てません。
それじゃアンケートに関する説明です。内容としては5章の閑話について、
①いつもと同じような感じで本作の世界観の中での小咄
②登場キャラによるメタ的な座談会、本作の裏設定とかを凪原達が話す
のどっちがいいかなという質問です。どちらも話のネタはできてるし、アンケート結果にを必ず採用するとは限りませんがお答えいただけると幸いです。
次の投稿は1週間後(にできるように)、頑張ります!
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それではまた次回!