学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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危うく間に合わないところでしたが無事に書けました、第60話目にして本章最終話です。

結構長め




5-11:巡ヶ丘第31代生徒会

早川(ハヤカワ) (サキ)です」

照山(テルヤマ) 京谷(キョウヤ)です」

「はい、というわけで俺の同期で一緒に生徒会をやってた2人が合流しました~、拍手~~~」

「「よろしくお願いしまーす」」

 

 転校生でも紹介するようなノリで新顔の2人を紹介する凪原と、その横に並んで頭を下げる男女。

 それに対する留守番組の反応は喜ぶか頭を抱えるかの2つに分かれた。

 

 喜んでいるのは葵、瑠優(るーちゃん)、由紀、圭の4人。前2人は純粋に仲間が増えたことを嬉しく思っており、後2人は今後賑やかになりそうな気配を察知して実に愉し気な表情を浮かべている。

 

 一方で頭を抱えているのは慈、悠里、美紀の3人である。一応言っておけば、こちらも別に2人を歓迎していないわけではない。

 ただ単に賑やかになった結果、自分達が振り回されるという未来が脳裏に浮かんだというわけである。

 

「なぎ君達が、なぎ君達が揃ってしまいましたぁ…」

「またあの騒がしさが蘇るのね」

「嵐の生徒会が全員…」

 

 当時を知る慈と悠里(特に慈は確率100%で巻き込まれていた)はともかく、直接体験していない美紀までもが同様の反応をしているあたり、如何に凪原達の武勇伝ないしお騒がせ話が数多く伝えられているかが分かるというものだ。

 

「あれー?なんか頭抱えられる?なんでかしらね~?」

「お前分かってて言ってるだろハヤ。ま、実際好き勝手やってたしなー。あと嵐の生徒会って何?もしかして俺等(31代)のこと?」

 

 慈達の様子に大きく首をかしげる咲。その動きに合わせて揺れる彼女の束ねられた長い髪が犬のしっぽのように見えなくもない。もっとも、見た目は非常に整っている彼女だがその性格は、愛玩犬というより飼い主の都合などお構いなしで引っ張りまわす大型犬に近い。

 そして咲に一応ツッコミを入れるも全く悪びれた様子もなく当時を振り返る照山。凪原よりも大きく、ガッシリとした体格はともすれば周囲に威圧感を与えそうなものだが、特にそのようなものは感じられない。彼の人柄が出ていると言えるだろう。

 

「おう、俺達(31代)のことで合ってるぞ、なんでも卒業した後に広まったっぽい。ちなみに、最初に言いだしたはそこで一番頭抱えてる人(めぐねえ)らしい」

「「め~ぐ~ね~え~?」」

「だって仕方ないじゃないですか!?」

 

 しれっと暴露した凪原の言葉に反応して咲と照山慈へと問いかけるが、矛先となった慈は立ち上がってこちらへと向き直ると猛然と反論し始めた。

 

「なぎ君、はやちゃん、てる君!あなた達に私がどれだけ振り回されたと思ってるんですか!ほんとに大変だったんですよ!?」

 

 両手を振り上げて「も~!」と叫ぶ慈の姿は――本人的にはいたって不本意かもしれないが―――何ともほほえましく、怒られているはずの凪原達は和んでしまう。彼女の後ろで由紀と瑠優(るーちゃん)が同じポーズをしていれば尚更だ。

 

「聞いてますかっ?」

「聞いてるからそんな怒んないでよ、なんだかんだでめぐねえもノリノリで協力してくれたじゃない」

「それとこれとは話が別ですっ、というか離してください!」

「だーめ、1年以上ぶりにメグミン補給してるんだからジッとしてて」

「何度も言ってますけど私からそんな物質は発生していません!」

 

 慈に抱き着いた咲はそのまま謎栄養素の吸収を始め、慈の注意がそれたのでこれ幸いと由紀達の方へと移動する凪原と照山。

 

「何飲む?メジャーなモンなら大体あるぞ」

「んじゃコーラ頼む、冷えてるやつは長らく飲めてねえからな」

「あいよ、他に飲みたい人は?」

「あっ、じゃああたしも飲む」

 

 照山と胡桃以外にも手が上がったので結局全員分をコップに注ぐ。各自が思い思いの場所に座って一口飲んだところで改めて自己紹介、とはならなかった。

 

「それで、西の方はどうだった?これだけかかったんだ、色々寄り道してたんだろ?」

「いやもうひっでぇもんだ。どこもかしこも荒れ放題でまさに世紀末って感じだ」

 

 何の気負いや感慨もなく、世間話でもするかのように話し出した2人。とてもではないがパンデミック以降始めて顔を合わせたようには見えない。せいぜい1,2週間ぶりにあったから近況報告でもしようや、というノリに近い。

 

「でも所々には安全圏っぽい(・・・)のがあったりしたぜ。仕切ってる奴によっちゃヤバいかもしれないから詳しくは見てないけどな」

「そんで正解だろうな、もしスタンフォードとかだったら目も当てられないし。よし、ちょっと地図持ってくるからその仮称安全圏の場所について――「ちょっ、ちょっと待ってもらっていいかな!」――ん?なんだ圭」

 

 そのまま本格的な情報共有を始めそうになった凪原達に慌ててストップをかける圭。そして彼女の行動に周りで聞いていた人の内心は、「よく言った」ということで一致していた。

 なんせ彼女等にしてみれば、凪原と胡桃が帰って来たと思ったら見覚えのない男女が付いてきた形である。驚くなという方が無理な話だった。

 

 それでも、凪原が連れてきたということで2人が信用できる人間か否かという点については心配していない。とはいえ、名前と凪原の同期だったということだけ聞いても何が何だか分からないというのが正直なところだ。

 

「なんだじゃないよ凪先輩っ、あとそっちの照山さんもだよ!正直さっきの自己紹介だけじゃチンプンカンプンだから色々説明してほしんだけど。というか2人にしたって久しぶりに会ったんだよね!?なんでそんな自然に話し始めてんのさ!?」

 

 バンバンと机を叩きながら主張する圭の言葉に凪原と照山は一瞬きょとんとした表情になったが、数秒ののち納がいったというように手を打った。

 

「そういえばパンデミックの後に会うのは初だったな」

「俺も普通に合流した感じだったから忘れてたわ」

 

 その言葉には聞いていた面々も驚くを通り越して呆れてしまう。この2人はこのパンデミック下において知人同士が無事に巡り合うというのがどれだけ幸運な事かが分かっていないのだろうか、と。

 

「2人とも当たり前のような顔をしてますけど、再会できて嬉しいとか相手が生きていてくれて嬉しいとかそういう気持ちはないんですか?」

 

 問いかける美紀の表情には困惑の色が強い。彼女と圭はパンデミック後に思いの行き違いから分かれてしまい、再会の望みが立たれてしまった期間があった。

 その時の絶望が深かったからこそ、再会を果たせた時の喜びは言葉にできないほど大きかった。それこそ思わず抱き合ってしばらく離れなかったほどに。

 

 だからこそ彼女にしてみれば凪原達の様子が淡泊すぎるように感じられたのだ。

 美紀の言葉に凪原と照山は一瞬を顔を見合わせるとそろって肩をすくめた。そして順番に口を開く。

 

「確かにナギと再会できたのは嬉しいけど、なぁ?」

「ああ、そこは俺も嬉しいんだが、まあそれだけだ。生きてたってことに関しては特に思うところは無いな、なんせ――」

 

「「「こいつ等(ナギ)がこの程度で死ぬとは思えなかったし」」」

 

 そう言った凪原と照山、そして一瞬でこちらに移動してきて後ろから2人の首を抱え込むように乗り出してきた咲の顔は、不敵な笑みというものを具現化したかのようなものだった。

 放たれた言葉とその口調、表情には絶対の自信が現われており、彼等が本気でそう思っていることがうかがえた。

 

「「「えぇ……そういうものなの?」」」

 

 3人の全盛期(生徒会時代)を直接知らない美紀、圭、葵は何とも言えない表情だ。凪原個人の凄さについては良く知っているものの、それがさらに2人というのがいまいち想像できないのだろう。ちなみに瑠優(るーちゃん)は彼女たちと違って幼い分素直なのだろう、「3人ともすごいの!」と目を輝かせている。

 

 その一方で納得の表情を浮かべる残りの面々。確かに生徒会時代の凪原達を見た身としては、彼等ならば文明の1つや2つが滅んだところでそう簡単に死ぬとは考えられなかった。

 

 冷静に考えてみれば当時の凪原達は高校生。いくら学内で好き勝手にハチャメチャやっていたとしても、それだけで文明崩壊後に生きられるだろうとは普通は考えない。

 しかし、実際にそう考えさせるだけのなにか、言ってみれば規格外としての片鱗を凪原達は有していた。

 

 そしてその片鱗を、高校に入学して1年目の重要な時期に間近で見せられたのが胡桃達第33代である。であるがゆえ、照山と咲が生きて合流してきたことに驚きはすれどそれと同じくらいの納得の感情を抱くのは無理からぬことであった。

 

「まあ、凪原さん達だものね」

「何やっても不思議じゃない感があるよな」

「そもそも同じ人間か分からなかったもんね~」

 

 口々に言いながら頷く由紀達。一応この3人、咲と照山と話すのは初めてなのだがいろいろと遠慮がない。

 1年間とはいえ凪原達と同時に巡ヶ丘学院に在籍していたこと、そしてパンデミックから半年以上凪原と共に過ごしてきたこと、この2つが合わさったからこその反応なのだろう。

 

「おっ、なかなか言ってくれるじゃないか」

「下の学年でうちら相手にここまで言えるなんてなかなかないもんね。ナギもいい子達育ててるじゃない」

 

 人間扱いされていないにも関わらず咲と照山は怒るどころか上機嫌だ。

 由紀達から掛けられた言葉に悪意がないことはよく分かる。そうであるならば多少のからかいなどは迷惑どころかむしろドンと来いといった気持である。

 

「別に俺の子ってわけじゃないが、――まぁ、自慢の仲間達だよ」

 

 そう答えた凪原の顔には、苦笑と共に確かに誇らしげな色が浮かんでいた。

 

 

 

====================

 

 

 

「んで、どうしたんだ胡桃?」

「え、えーっと、その…」

 

 その日の夜、凪原は胡桃に呼び出されて放送局の屋上へと出てきていた。

 既に夕食と入浴は済ませており、皆が思い思いに過ごしそろそろ就寝する者が出始める時間である。

 

 初日にして皆に馴染んだ咲と照山も、今は階下で体を休めている頃だろう。

 聞いたところによると2人はパンデミックからこちら、拠点を作ることもなく移動を続けていたらしい。巡ヶ丘に来れば凪原と合流できるのではないかと思ったとのことだったが、その程度の考えで地方をまたいで移動するなど普通に考えれば正気の沙汰ではない。

 そもそも、咲と照山もそれぞれ違う大学に進学していたはずなのにあっさり合流しているあたり、やはりこの2人も凪原と同じく生命力と行動力が頭おかしい部類に入るのだろう。

 

 

 閑話休題。

 

 

「あー…」

 

 呼び出したもののなんとも歯切れが悪い様子の胡桃を前に、凪原は自分から口を開くことにした。幸いとは言いたくないが、彼女が何を考えているのかおおよそ検討が付いているためだ。

 

「今日の昼のこと、か?」

「………」(ビクッ)

 

 質問ではなく確認するかようにそう問えば、胡桃の肩小さく跳ねた。

 

「やっぱりか、戻って来てからなんか変な感じだったからそうだろうと思った」

「別に変ってわけじゃ……いや確かにちょっと変だったかも、色々考えてちゃってたし」

 

 一瞬否定しかけた胡桃だったがすぐに自分でそれ取り消した。

 

「まあ、あんなことがあればそれが当然だろうな。皆だって何となくは察してるっぽいし」

 

 あんなこと、昼間に野盗に襲われ、それを凪原がほぼ全員殺害という形で撃退したことだ。

 直後に咲と照山と合流したことでその場ではうやむやとなったものの、起こった事実は変わらない。悪党とはいえ目の前で2桁にも及ぶ人が死んだのだ、関わった者に影響を与えないわけがなかった。

 

 なお、今回の件について凪原達は留守番組の皆には何も言っていない。特に示し合わせたわけではないが結果として誰も話さなかったのだ。

 しかし、何も言わなくても伝わることもある。

 現に由紀や慈などは帰って来た2人の顔を見た途端に何かを感じ取ったようで、わずかに表情を変えた。他のメンバーにしても、凪原が咲達と合流した際の様子についてほとんど話さなかったことでうっすらとは察したようだった。

 それでも彼女達が何も言ってこないのは、関わりたくないというのではなくそっとしておいてくれているということだろう。凪原達なら大丈夫だろうという信頼も含まれているのかもしれない。

 

 とはいえ、その信頼が当てはまるのは凪原に関してのみだろう。

 

 皆も前でこそ普通に見えるようにふるまっていたが、こうして2人になって見ると胡桃の様子はいつも通りというには無理がある。

 どこか落ち着きがなく、居心地が悪そうにソワソワとしている。

 

(いや、こりゃ居心地が悪いというより――)

 

 胡桃の様子から、何かを思いついた凪原が口を開く。

 

「―――俺が怖くなったんじゃないか?、胡桃」

「なっ、違う!」

「別に気を使わなくていいさ。悪党が相手で、もしものための覚悟を決めたからといって、人を10人殺しといてこんな風に平然としてる奴なんか怖く感じて当然だ」

 

 即座に否定の言葉が返されるが構わずに先を続ける凪原。

 活発で男勝りなところがあるとはいえ、胡桃の本質は心優しい少女だ。恐怖の感情を抱いてしまったとしても、それが自身が思いを寄せている相手となれば相手を気遣ってその気持ちを抱え込んでしまうだろう。

 そのようなことをすれば胡桃は精神に大きな負担受けることとなってしまう。

 

 それを防ぎたいなら、凪原がすべきことは決まっている。

 すなわち、彼女から距離を取ることだ。状況が状況なので住む場所を離すわけにはいかないが、日常の中で極力関わらないようにすることは可能である。

 

「少しでも怖いって感じてるなら、俺から距離を取ってくれて構わない。安全のためにとはいえ、あれだけ簡単に人に向けて引き金が引ける奴なんて胡桃の近くにはいない方が――

 

 そう提案する言葉は最後まで続かなかった。

 言い切る前に胡桃が凪原の頬を力いっぱい張り飛ばしたのだ。

 

「違うって言ってんじゃんか!自分から引こうとしやがってっ、いつもの凪はどこ行ったんだよ!?」

 

 そう叫んだ胡桃の目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 

「あたしが変だったのはなぁっ、あの時あいつ等を撃つのにためらった自分に怒ってたからだ!」

 

 勢いそのままにバッと片腕を広げ、もう一方の手を自らの胸に当てながら続ける。

 

「あたしだってナギのことを守りたいんだっ、守ってもらうだけなんてのは嫌なんだよ!今度同じようなことがあったらあたしも戦うからっ」

 

 目の端から涙が零れ落ち、それと同時に胡桃の雰囲気が一気に弱々しいものへと変わる。

 

「だから…、離れるなんてこと言うなよ。あたしをナギの、ゆうとの隣に居させてくれよ…」

 

 歩み寄って服を掴み、額を凪原の胸に押し付けて肩を震わせる胡桃。彼女の体温を感じながら、凪原は自分の浅はかさを思い知らされていた。ここまで思ってくれる彼女に自分は何ということを提案したのだ、と。

 そう思ったら考えるより先に腕が動き、凪原は目の前にある胡桃の身体を抱きしめていた。

 顔を上げた胡桃を至近距離で見つめながら言葉を紡ぐ。

 

「悪かった。もう離れようなんて言わないし、なにがあっても胡桃の隣にいる」

 

 それは決意であると同時に、これから先の障害でずっと隣に居続けるという宣言だった。

 意味を理解した胡桃の目が喜びから潤む。

 

「本当に?」

「ああ本当だ」

「じゃあ…誓って」

 

 そう言ってゆっくり瞼を下ろす胡桃。そして月と星だけが見守る中、凪原はそっと彼女に口付けを落とした。

 

 

 

====================

 

 

 

「は~い、おかえり2人とも」

「ハヤに、テルもか。なんだよ、寝る場所ならさっき言った通りだぞ」

 

 屋内に戻った凪原と胡桃を出迎えたのは、生徒会仲間の咲と照山だった。

 

「ふーん……」

「なんだよ?」

 

 梯子を降りてきた2人を見て何か言いたげな様子の咲に凪原が問いかけると、彼女の唇の端が吊り上がった。

 

「おめでとうお幸せに、って言った方がいい感じ?」

「なぁあっ!??」

「ああくそ、何でいきなりバレるんだよ」

 

 不意打ちに弱い胡桃の声が裏返り、次いで言い訳を諦めた凪原が左手で前髪をかき上げながら天を仰ぐ。

 

「ふっふっふ、この咲様に隠し事なんて100年早いわ」

「一応言っとくが覗いたりはしてねえぞ、……ちゃんと止めたからな」

 

 勝ち誇る咲の後ろで疲れたように話す照山。現役時代から咲のストッパー的立ち位置だったがそれは今でも変わっていないようだ。

 先程のやり取りを直接聞かれてはいないことに胡桃はひとまず安堵した。

 

「ナイスだテル」

「貸し1つだからな」

 

 照山の言葉に「あいよ」と頷いた凪原は、咳ばらいを1つしてから口を開く。

 

「それで本題は?ただからかいに来たってわけじゃないだろうに」

「あ、やっぱ分かる?実はちょ~っと話したいというか確認しておきたいことがあるのよね」

「しかもナギだけじゃなくてそっちの恵飛須沢さんにも関係ありでな」

「えっあたしも?」

「何なんだ一体」

 

 戸惑う2人を回れ右させ、4人は梯子を上っていった。

 

 

 

「されそれじゃあテル、説明よろしく~」

「へいへい」

 

 屋上に出て、中に音が聞こえないようにハッチを閉めたところで咲が照山に説明を丸投げした。とはいえ投げられた照山の方もだいぶなげやりな態度だ。

 

「あー全部説明するとめんどくさいからとりあえず、おいナギ」

「おう」

「俺の手を握ってくr「嫌だよ気色悪りぃ」……いいから握りやがれっ」

 

 要請を1秒で切って捨てられた照山は一瞬黙った後に掴みかかり、凪原もそれに応じる形でそのまま取っ組み合いに移行した。

 「俺には胡桃がいるんだっ」「んなこたぁ今聞いてねぇ!」などと叫び合っている。

 

「あーあーじゃれあっちゃってまあ、でもあんなふうに言ってもらって嬉しいんじゃない?」

「いっいや、あたしは別に」///

 

 水を向けられて思わずそっぽを向いて口ごもる胡桃にほほえましいものを感じる咲だったが、表情をまじめなものに切り替えると胡桃に手を差し出した。

 

「それじゃ胡桃ちゃん、さっきのテルじゃないけどうちの手を握ってくれない?変な意味は無くて純粋に必要なの」

「あ、ああ―――ってあれ?」

 

 咲の言葉に戸惑いながらも彼女の手を取った胡桃はすぐに疑問の声を上げる。

 

やっぱり ねえ、触ってみて感じたことはない?」

「えっと、すごく熱っつい。もしかして咲さん体調が悪い?絶対熱あるってこれ!」

 

 焦ったように言う胡桃に、咲は首を振ると真実を告げる。

 

「いいえ、うちが熱いんじゃなくて()()()()()()()()()の」

「そんなはずないって!さっきナギ触ったけど暖かかったもん!」

「残念ながらホントよ。ほらナギもっ、さっさとテルのどっか触ってみて!」

 

 咲の言葉にようやく男2人は動きを止めた。

 

「は?――ってなんだテルお前めちゃくちゃ熱いじゃねえか!熱か!?」

「ちげぇっつのっ、お前が冷たいんだよ!」

「なわけねぇだろ!さっき触った胡桃は普通だったぞ!」

 

 揃って同じような反応をした凪原と胡桃に咲から体温計が手渡される。とにかく測ってみろと言う咲達に、2人は怪訝そうにしながらも手に取ったそれを脇の下に挟む。

 十数秒後、測定完了の電子音を聞いて体温計の液晶を確認した2人の動きが固まった。

 

「何度だった?」

「………29度8分なに、これ…」

「俺は30度2分、どうなってんだこりゃ…」

 

 咲の問いかけに答える声がかすれている。

 胡桃だけでなく、多少のことでは動じることの無い凪原も動揺を隠しきれていない。

 その一方、咲と照山はある程度想定していたようで互いに頷き合っていた。

 

「さっきうちがナギに触った時すごく冷たく感じたのよね」

「なのに恵飛須沢さんとは触れ合ってても何もないみたいだからな、変だと思って確認することにしたんだ」

 

 凪原達の方に向き直った2人は順番に口を開く。

 

「体温30度なんてどう考えても普通じゃない。とっくの昔に低体温症を発症して錯乱するか意識を失っててもおかしくないわ」

「となると自動的になんか普通じゃないことが起きてるってことになる」

「でも人が低体温でも生きられるようになった、なんて発明を聞いた覚えはないのよね」

 

 凪原の脳が警鐘を鳴らし始める。やめろ、その先を聞くんじゃない、とまるでこの話がどこに収束するのかを分かっているかのように。

 

「ところで、この数ヶ月ですっかりおなじみになっちまったやばいモンがあるよな。そのせいで世界が現在進行形でぶっ壊れてるわけなんだが……知ってるか?()()ってめっちゃ()()()んだわ」

「「………。」」

 

 照山の問いかけに沈黙で持って返す凪原と胡桃。しかしそれは彼の言葉の示す意味を理解したが故のものだった。

 

「もう薄々感づいてると思うけどはっきり言わせもらうわね」

 

 一拍、その次に咲が話す言葉ははっきりと予想できた。

 

 

 

「ナギ、それに胡桃ちゃん。あなた達2人は、()()()()()

 

 

 

 




正直1話に色々詰め込み過ぎたとは思っている、だが反省はしていない(キリッ)。怒涛の展開というのをやってみたかったんです(できたとは言っていない)。


今回の解説ですが、語りたいことを全部書くと後書きだけで1話分いきそうなので思い切り短くします。

第31代生徒会
新キャラ2人の名前が出てきましたね。ちなみに31代生徒会は凪原とこの2人の3人だけなのでこれで全員集合、なお全員が規格外の模様。

凪原と胡桃
なんか執筆してたらキャラが勝手に動き出して誓いのキスをしてた、なんでこうなったのかは知らん。

衝撃の真実
今明かされる衝撃の事実

以上、語れなかった分はメタ回にでも回そうかなと考えています。


そして、これにて第5章:転換期編は終了です。
この章では学園生活部を取り巻く環境が一気に変化するとともに、原作との大幅な乖離が発生しました。難産な回が多かったのですが、少しでも読者の皆様が楽しんでいただけたのでしたら、筆者としてこれに勝る喜びはありません。どうかこれからも本作品をよろしくお願いします。

さて今後の予定についてですが、来週は毎章恒例の閑話、その次はメタ回にしようかなと考えています。が、年末が近づきスケジュールが詰まってきたのでどうなるかは分かりません。大幅に遅れるようなことがあれば活動報告を上げると思いますが、そうならないように頑張ります。

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それではまた次回!
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