学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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2週間ぶりの投稿、予定が安定しないのは本当辛い…
って愚痴は後にして今年初の本編です。どうぞ~

(最後にちょびっとお知らせがあります)





6-3:聖イシドロス大学

「ねーそんなに覗き込まれると私が見えないんだけど」

 

 ドローンのコントローラーを操作しつつ、何となく呆れたような声を上げる由紀。呆れられることは数あれど彼女がこのような声を出すことは珍しい。

 

「あっすいません」

「わりぃ由紀、ちょっと気になちゃってさ」

「すまん無意識だった」

 

 指摘を受けて美紀、胡桃、凪原がそれぞれ身を乗り出していたことに気付き体勢を元に戻す。それでも気になる気持ちは収まらないようで、彼女達の視線はコントローラーについたモニタに向けられたままだ。

 

モニタに映るのは何の変哲もない街並みだったが、画面奥には立ち並ぶ家々の中に高い塀で囲まれた広い敷地とその中に余裕をもって造られた建物が見えた。この様な特徴を持つ施設はそう多くない。学校、さらに開放的な雰囲気から大学のキャンパスであるとが推測される。

 

 凪原達が巡ヶ丘学院を出立した当初の目的地、聖イシドロス大学である。

 

 その大学を、凪原達4人は由紀の操縦するドローンで遠巻きに観察していた。

 彼等が乗るキャンピングカーは十分に離れた場所に停められ、大学からは見られないようになっている。そして、エンジンこそかかっていないが車はキャンパスとは逆向きになっており、いざという時には直ちに離脱できる状態だ。

 念の入れようとしては、偵察任務中といわれ想像するものに近い。

 

「まだ詳しい様子は見えないな。由紀、もう少しキャンパスによって高度を下げてくれ」

「はいはーい、でもどうしてわざわざこんなにめんどくさいことするの?直接門のところに行ってこんにちは~ってするのでいいんじゃない?」

 

 コントローラーを操作して凪原の指示に答えつつも由紀は疑問の声を上げる。

 予め大学の様子を調べるという説明を受けてドローンを飛ばしたものの、彼女にしてみればなぜこのような回りくどい方法を取るのかが分からなかった。様子を知りたいなら直接会って聞いてみるというのが彼女の考え方だ。

 

「もし誰か人がいたとして、相手が紳士的だったらそれが手っ取り早いんだけどな」

「そうでないときのための備え、ですか」

 

 答えた凪原の後に言葉を続けたのは美紀。聡明な彼女は凪原の言葉の意味するところが分かっているのだろう、その表情はわずかに歪んでいた。

 

「そういうこと、結構前に話した鞣河小の人達みたいに理性的だったらいいけど、最近は物騒な連中が多そうだからな」

「………。」

 

 ()()()()()、その言葉の意味を正確に理解している胡桃の顔に影が差す。

 同じ人間に銃を向けられ、薄汚い欲望を突き付けられた記憶。既にそれなりの日数は経っているがそれは薄れることなく胡桃の脳裏に残っていた。

 あの時の連中のような奴等がいるかもしれない、そう考えるとどうにも気分が上がらなかった。

 

「まあどんな相手がいるか分からないからこその偵察だ。会っても平気そうなら直接会って話すに越したことは無いし、ヤバそうならさっさと逃げて対応を考えればいいさ」

 

 胡桃の様子を察して努めて明るく話す凪原。だから、と言いながら由紀の頭に手を置く。

 

「ドローンのうまい操縦、期待してるぞ」

「それは責任重大だね、私に任せて!今なら宙返りでもできそうだよ!」

「それじゃ見えないからやめろ。っていうかドローンで宙返りをしようとするな、構造的に無理だ」

 

 由紀を張りきらせるのは時として危険かもしれない、そう思う凪原だった。

 

 

 

====================

 

 

 

「敷地内には奴等あんまりいないみたいだな。ちらほらとはいるが校舎周りは少なそうだ」

「周りの塀は所々補強されてますね。これなら相当数が集まらないと超えられることはなさそうです」

 

 それぞれ凪原と美紀の言葉である。

 由紀が操るドローンのカメラにはキャンパス内の様子が詳しく映し出されていた。校舎周りにいるゾンビは数えられるほどしかいない。端の方に目を向ければそれなりにいるようだが街中と比べればかなり少ないと言えるだろう。

 

「数が少ないってことはやっぱり誰かいるなこりゃ、正門側から飛ばさなくて正解だった」

「すぐに見つかって警戒されてしまいますからね」

 

 ゾンビの数には何かの要因がない限り偏りはほぼない。パンデミック当初は場所や時刻により違いがあったが、最近はそれも解消されてしまっている。つまり、ゾンビが少ないということはそれを減らしている何者かがいるということを意味していた。

 そしてその代わり、敷地内には街中ではあまり見かけないものがあった。

 

「うわ……、あいつ等の死体そのままになってる。住むとこくらいちゃんと片付けしとけよな」

 

 嫌そうな胡桃の言葉にある通り、キャンパスのそこかしこにゾンビの死体が転がっていた。どこかにまとめられるでもなく、恐らくは倒された時そのままに放置されていたのだ。

 腐敗した死体とは、保健的観点から言えば不衛生の塊である。元々腐っているため悪臭や病原菌の苗床となるうえ、確実にゾンビウイルスを保持している(マニュアルによるとウイルスではなく菌ベースのようだが、便宜上ウイルスと呼称している)。

 出先ならばともかく自らの拠点回りで死体を放置するなど百害あって一利なしである。凪原達も巡ヶ丘高校にいた頃は死体を校庭の一角にまとめ、定期的に燃やしていた。放送局では周辺の雑木林が自然の防壁となっているのか、現在のところ近くに寄り付かれていないのでこの手間はかかっていない。

 

「そこまで考えていないのかどうでもいいと思ってるのか、それとも人手が足りないか。少なくとも万全のコロニーてわけではなさそうだ」

 

 口の中で呟いた凪原は由紀に指示を出して正門の方へとドローンを飛ばしてもらう。現在のところ屋外に人影は見られないが、敷地の出入口あたりには見張りがいるのではないかという推測だ。

 

「あっなんか人がいたよ!1人、2人……ん?こっち見て、なんか向けて「由紀っ、すぐ高度上げろ!」うっうん」

 

 画面に人影が写ったのとほぼ同時、凪原は由紀の声にかぶせるようにして警告を発した。画面に映った2人のうち片方が手にしていた武器と思しきものをこちらへ向けてきたのである。

 それが銃に類する構えだったために反射的に声を出したのだが、それが結果的には良かったのだろう。数秒前までドローンがいたあたりの空間を棒状の何かが通過していった。

 

「危なかった、今感じだと撃ってきたのはボウガンか。今の高さなら早々当たらんだろうけど一応注意してな、軽く動いとけば大丈夫だろ」

「え?あ、う、うん分かった」

 

 なんでもなさそうな凪原の言葉に思わずといった感じで答えた由紀の目はしかし、大きく見開かれている。それは美紀も同じであり、自分達以外の生存者からの攻撃に驚き固まってしまっていた。

 あくまであいてが攻撃したのはドローンであり自分達に向けてではなかったが、攻撃されたという事実に思考が鈍くなっているようだ。

 

「………。」

 

 逆に攻撃された経験がある胡桃はわずかに顔をしかめてはいるものの冷静だった。

 薄汚れた悪意を直接向けられたことがある身にしてみれば画面越しの、しかも恐らくは警戒心から放たれた攻撃程度は思考を止めるには及ばない。

 

 攻撃から30秒程度、装填を終えたボウガン(動作から相手の持つ武器はボウガンで確定した)が再び向けられたところで凪原は由紀に指示を出してドローンを撤収させた。これ以上は相手を不必要に刺激するだけと判断したためである。

 

「さーって、そんじゃ行くか。装備は何がいいかねー」

 

 ドローンが戻ってくるまでの間、もう危険はないだろうとモニターから目を離した凪原はこの数日間自身の寝床としているベットに近づくと、その下の出収納スペースを開けて装備の物色を始めた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!もしかして大学に行く気なんですか!?」

「ん?そりゃそうだろ。ドローンで偵察するだけしてその後音沙汰なしじゃ、無駄に警戒心と不信感を与えることになるし」

「た、確かにそうかもしれませんけど……。でもいきなり攻撃してきた相手ですよ!」

 

 思わず声を上げるも、何言ってんだお前的なニュアンスで返されて思わず言葉に詰まる美紀。それでも心配なようで、さらに危険性を訴えてきた。

 もちろん彼女が言う危険性も事実ではあるが、必要以上の警戒心を持つのはそれはそれで問題である。

 

「あー…、美紀の心配も分かるんだけどな。ただマニュアルのことを考えるとここに居る連中とは話を付けておきたい。それにさっきのは正直威嚇射撃レベルだ、本気で落とす気だったのかも分からん。俺なら落としはしないまでももう2,3発は撃つ」

「それはそれでどうかと思いますけど」

「まあ、ナギならやるよな」

「ヘリコプターが来た時も戦う気だったもんね」

 

 凪原の宣言に呆れる美紀と納得の表情を浮かべる胡桃と由紀。

 そして美紀も凪原が合いに行くことに同意してくれた。

 

「それじゃあたしは何持ってこうかな、とりあえずシャベルかな」

「ある程度身軽にしとけよ。いざって時はダッシュで逃げることになるから」

「はいよー」

 

 手を振って装備を選び始めた胡桃に、凪原も改めて自分用の装備選びへと戻った。

 

 

 

「わぉ、凪さん銃はいつものヤツじゃないの?盾も持ってるしなんかいつもと感じが違うね」

 

 由紀の視線の先に立つ凪原の格好は見慣れないものとなっていた。

 プレートキャリアと腰回りのベルトポーチは変わらないものの、武器がいつものカービンとグロックではなく89式小銃と9ミリ拳銃という自衛隊装備。間合いが短いからと普段はあまり使わないナイフを目立つように身につけけ、左手には大型の防護盾を装備していた。

 通常よりも重装備であり、より兵士としてのイメージが強く出ている。

 

「今回は相手が違うからなー。いつも使ってるカービンはよく知らない人にはおもちゃに見えるかもしれないし、ぱっと見でこっちの武力が分かった方が交渉とかもやりやすいだろうし。ああ、もちろんいきなりブッ放す気は無いから安心してくれ」

「たしかに、こんな時代ですし分かりやすいというのは重要かもしれないですね」

「あれ、じゃああたしも武器そっちにした方がいい?」

 

 難しそうな顔の美紀の横で胡桃が首をかしげる。彼女はいつものようにカービンを得物として選択していたからである。

 なおトレードマークともいえるシャベルもスリングで背中に背負われている。どうやら凪原の極力身軽にという言葉は届かなかったようだ。

 

「いや、胡桃はそれでいい。89式は胡桃には大きいし、使い慣れてもないだろ?だったら手に馴染んでるいつものカービンの方がいいさ。あと相手と話すときは俺より前に出るなよ、戻る時も俺の陰から出ないように」

「はいはい、でも危ないから1人で逃げろとかは無しだからな」

「………、はいよ」

 

 続けて言おうとしていた事を先に封じられて思わず黙り込んだ凪原。改めて釘を刺そうにも胡桃の表情を見て議論しても無駄と悟り不承不承ながら了承し、それを見て胡桃は満足げに頷いた。

 

「それじゃ行くかっ」

「多分そんな掛からずに戻ると思うから気楽に待っててくれ」

「がんばってね、2人ならきっと大丈夫だよ」

「エンジンはかけておきます、最近の練習のおかげで走らせるぐらいならできますから」

 

 やや声の硬い美紀と笑顔で手を振る由紀に見送られ、凪原と胡桃はキャンピングカーから道路へと降り立った。

 

(マニュアル通りならインフラ設備と備蓄物資はあるし、前に出くわしたクズ共よりかはまともな連中だろ)

 

 

 

====================

 

 

 

「(なんだろうな、言葉は通じてるのに話が通じない感じだ)」

「(やめろってナギ、聞こえちゃったらどうすんだよ)」

 

 こっそりと呟いた凪原に慌てて注意する胡桃。凪原は完全に、胡桃もそれなりに表情を取り繕っているがどちらも内心では盛大にため息をついていた。

 車から出たのはこの2人だけであり、それが揃ってこの調子ということはその原因は外部にあるということに他ならない。現に彼等の前では頭痛の種がふりまかれている。

 

「だからっ、あいつ等は俺達に助けてもらいに来たんだからこれぐらい良いだろうが!態度がでかいのは追い詰められてるのの裏返しに決まってんだ、最初にどっちが上かを教えてやって何が悪いんだよ!」

「勝手に決めつけるな、第一あいつ等が感染してるかもしれないだろ!だったら中に入れるのは危険すぎるっ、話を聞く意味なんてない!」

 

 場所は聖イシドロス大学正門前、門を挟んで凪原達は同年代らしき男達の口論を見せられていた。

 

(なんで俺達そっちのけで言い争いしてるんだよ。対応を話し合うにしてもせめてこっちから見えないところでやれって。恐らく俺と同じで大学生だろうにこいつ等全員バカなのか?)

 

 そうぼやきたくなるほどに男達の態度はお粗末だった。

 門のところに着いた時は、ドローンで確認した2人に加えて増援と思しき3人が増えていたためある程度はしっかりとしたグループなのだろうと期待しただけに凪原の落胆はそこそこに大きかった。

 とはいえ落胆ばかりもしていられないため、改めて意識を言い争いしている男達の方に向ける。どうやら5人は2人と3人に分かれて議論しているようで、2人の方はドローンに向けてボウガンを撃ってきたやや小柄でニット帽と眼鏡が特徴の男、3人の方はその近くで槍を持っていた茶髪でロン毛の男がそれぞれ声を上げていた。

 

 ボウガンの方は凪原達が感染しているかもしれないからとにかく立ち去ってほしいという主張。話すら聞く気がないというのはどうかと思うがまあ理解できなくはない。

 一方で槍の方の主張は「身ぐるみ差し出せば仲間にしてやってもいい」という何様だと言いたくなるようなもの。切羽詰まって者に対してならその要求を出しても通るかもしれないがあいにくと凪原達はそこまでギリギリではない。

 どちらも状況把握が不十分であり、中途半端な対応策しか提案できていないということである。少し経てばまとまるかと思い待ってみたがそんなこともなさそうである。

 

「(こりゃ一旦出直した方がいいか?)」

「(うん、なんかこのまま待ってても何も決まらない気がする)」

 

 再びこそこそと言葉を交わす2人。そし普通に密談しているにもかかわらず一切それを気にする素振りのない面々に更なるため息がこみあげてくる。

 

「なぁ、こっちから来ておいてアレだけど帰っていいか?明日また来るからそれまでにまとめておいてくれ」

 

 そう凪原が声を掛ければ、言い争いをしていた男達もようやく顔をこちらへと向けた。

 

「ああ、帰ってもう来るな。あいつらになりかけかもしれない奴を入れる気はない」

「はぁ?何強がっちゃってんの?いいからさっさとその銃を渡して俺達に頭下げて、仲間に入れてください~って頼んでみろよ」

(………ニット帽の方が言ってることはまあ分かるとして、もしかしてこの茶髪は頭が悪いのか?)

 

 返された反応に思わず唖然とする凪原。

 銃を持っている相手に対して、その銃をよこせと上から目線で当然のように要求する。しかも自分が持っているのは銃ではなく白兵武器の槍で、さらに門がお互いの間を隔てているので仮に攻撃しようとしても届かないだろう。

 その状況でこれほど堂々と武器を渡すよう要求するなど、よく考えるまでもなく無謀である。

 

「あー…、さっき言ったこと聞いてたか?別に俺達は保護してもらいにじゃなくて情報交換に来たんだが」

「ハッ、んなこと信じられるわけねーだろ。(学内)ここは安全で(そっち)は危険、あいつ等がいる所で暮らすのは不可能。要するにお前らはここに助けを求めに来たに決まってんだよ」

 

 凪原の言葉を一蹴し、自身の的外れな予想を得意げに披露する茶髪。

 

「さぁ、ハッタリが通用しないって分かったらさっさと諦めろよ。今なら土下座して頼めば俺の子分にしてやるぜ?」

(うん、ただのバカだな。ほんとに大学生かコイツ、るーの方がよっぽど頭いいぞ)

 

 こちらの話を全く聞かない(というより自分に都合がいいように捻じ曲げる)茶髪ロン毛とそれに同調する彼に賛同していた残りの2名。ニット帽ともう1人は凪原達を帰らせたいようだが特に3人を止めるでもない。

 

 この状況をどう収めるか、想定外の難題に天を仰ぎたい衝動に駆られる凪原だった。






はい、ヘリコプターが高校に来てから1章以上、やっーと大学に到着しました。我ながらだいぶ回り道した感がありますが、書きたいことがたくさんあったから仕方ない(開き直り)。

ちなみに今回の大学行きのメンバーついてですが、別に放送局に残ったメンツがもう出ないということではありません。特に原作にいたりーさんとるーちゃん(の幻影)がフェードアウトするんじゃないかと心配してる人がいるかもしれませんが大丈夫です。今後もガンガン出てきます。


そんじゃ今日のノート、

ドローンによる先行偵察
原作では胡桃が双眼鏡で遠目に観察した後に学内に入っていますがより詳細な観察手法があるならそっち使いますよね。まあナギ自身が言ってたように相手によっては撃ち落とされますが、それはそれで相手の出方の判断や有している武器を判断する材料になります。

校門にいた面々
これが大学編における主な原作乖離「なんか大学にいる人数が多くね?」です。本来校門のところにはニット帽眼鏡しかいませんでしたが本作では異なっています。理由その他については今後明らかになっていく、予定。とりあえず今のところはちょいと人が多いって認識だけでオッケーです。


最後にこれからの投稿頻度についてです。
以前からお話ししているようにこの数ヶ月間メチャクチャ忙しい予定について、恐らく半年以内には落ち着くと思いますがそれまでは隔週で投稿できればいいかなぐらいのペースになります。
投稿時刻はなるべくこれまで通りとする予定ですが、あまりにも期間が空いたりしたら短ダムになるかもしれません。ときどき確認してみて更新されていたらラッキーくらいの気持ちでお読みいただけますようよろしくお願いします。
これも繰り返しになってしまうがネタ切れではありません。必ず続けていくつもりです。

長くなってしまいましたが今回はこれまでです。

それではまた次回!
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