学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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2週間ぶり、6章第4話です。
今回は原作キャラが登場しますよ~


6-4:穏健派

「お2人とも、何か言いたいことはありますか?」

 

 彼女の代名詞ともいえるジト目を存分に発揮している美紀。腕組みをしながら話す姿はなかなか様になっており、伊達に今回の遠征班での常識人枠を任されているわけではないことがうかがえる。

 

「えっと、正直やりすぎたかなぁ、っとは思ってる」

 

 その迫力に押されたのか、正座しながら何ともばつの悪そうな顔で目をそらしつつ答える胡桃。彼女は美紀に対して頭が上がらないというか強く出られないというか、弱かった。別に苦手というわけではないので、性格的な相性というものだろう。

 ともかく、多少なりと反省の色を見せている胡桃と対照的なのが凪原だった。正座こそしているもののその表情はいつも通りである。色々規格外の彼を委縮させるには、残念ながら美紀では荷が重かった。

 

「弁護士を呼んでくれ」

「分かりました、めぐねえを呼びます」

「ちょっ!?」

 

 が、問題ない。美紀には切り札がある。途端に慌て始めた凪原に構うことなく美紀は無線機を手に取るとスイッチを入れた。

 

 ところで、彼女が持つ無線は業務用ではあるものの通常長くても2キロ程度しか電波が届かない。今いる聖イシドロス大学と拠点である放送局とは当然それ以上離れているため普通では通信ができないのだが、学園生活部はとある工夫によりその問題を克服していた。

 とはいってもそれほど特殊なことをしたわけではなく、手法としては最も一般的なものだ。電波中継器を一定の距離ごとに配置し、通信範囲を拡大しているのである。工夫した点といえば、中継器の電源を太陽光パネルの突いた自動販売機から拝借しているということくらいだ。

 どこか1箇所が壊れただけで不通となったり妨害や傍受への抵抗が0という問題があるが、現状長距離通信ができる唯一の方法なのでそこは割り切って使用していた。

 

 閑話休題。

 

『もしもし、こちらは放送局です』

「ああめぐねえ、ちょうどよかったです」

『ちょうどよかった?なにかあったんですか?』

 

 美紀にとって幸いなことに(凪原にとっては不幸なことに)無線機に出たのは慈だった。

 無線の向こうで首をかしげているであろう彼女に、美紀は正座中の凪原と胡桃にチラリと視線を向けてから口を開いた。

 

「先ほど聖イシドロス大学の近くに着いて、凪原先輩と胡桃先輩が交渉をしに行ったのですが―――

 

―――大学にいた人たちに向けて威嚇射撃。さらに防犯ブザーを投げ込んで周りにいた彼等を擦り付けた後、つられなかった個体相手に大立ち回りをしながら戻ってきました」

 

『2人とも正座です』

「待っためぐねえ話を聞いてくれ!美紀も誤解を与えるような言い方をするな!」

「そうだって、それだけじゃあたし達完全にヤバい人じゃん!」

『正座』

「「………はい」」

 

 美紀の報告に立ち上がって抗議する凪原と胡桃だったが、無線越しとは思えない程の圧力を伴った慈の言葉に静かに正座に戻った。

 恨みがましく美紀(とその後ろで頬を膨らませている由紀)を向けるも、「心配したんですよ(だよ)」と言われてしまえば何も言い返せない。

 

『それで、具体的にはどんな感じだったんですか?詳しく話してください』

「了解。えーっと――」

 

 とりあえず容疑者を正座させたことで落ち着いた慈に詳しい説明を求められたので、チラリと視線を交わ背手から代表として凪原が口を開く。

 ドローンで大学の様子を確認したところ生存者を発見したこと、実際に接触を試みたところとてもではないが友好的とは言えない対応をされたこと。

 無線機の向こうに集まっている拠点班からの質問を所々で遮られながらも、状況を説明していく。

 

「――というわけで、そのままいても埒が明かなそうだったんだ」

『なるほど。それはまたひどい人達ね』

 

 るーちゃんと一緒に残っていて正解だわ、と続ける悠里。彼女以外にも同意するような声が聞こえてきた。

 

『確かにそれはひどいとは思いますけど、それでも……』

『俺もめぐねえに同意だ。そこまでやっちまうと相手さん余計に頑なになっちまうんじゃないか?どうせ門は閉まってたみたいだしさっさと帰ってくることも出来ただろ?』

 

 それに対しやや否定的な反応の慈と照山。

 この常識枠(ただし一方は常識に従うとは限らない)2人の言葉にも一理ある。今後の付き合いを考えるならばいきなり強硬な手段に訴えるのは悪手かもしれない。

 しかし、凪原の話には続きがあった。

 

「ところが、あいつ等素直に帰すことすらもしてくれなかったんだわこれが。正直あそこまで馬鹿だとは思わなかった」

『ん?まだ何がかあったのか?』

 

 間の抜けた声を上げる照山。その顔を思い浮かべつつ、凪原はより詳しい説明をすることにした。

 

「いやね、あの連中こっちが本気で帰ろうとしてると分かった瞬間に持ってた槍で門をたたいて奴等をおびき寄せ始めたんよ」

『『『は?』』』

「そうなるだろ?おれもそうなった」

「あたしは腹が立ったよ。思い通りにならないのがそこまで嫌か、ってね」

 

 助けを求めに来たと信じて疑わない槍持ちの男とその一派にとって、凪原と胡桃の行動は小賢しい交渉に映ったようだ。少しでも自分達の立場を良くしようと策を弄す2人が気にくわず、辺りのゾンビを音で呼び寄せてけしかければすぐに音を上げると考えたのだろう。

 実際、手にした槍で門をたたく彼等はいつ凪原達の仮面が剥がれるかとニヤニヤしていた。

 

「だから舐められてると思ったから撃った。ああ、当たらないように気を付けたから怪我はしてないぞ、しりもちついた時に擦りむいたかどうかは知らないけど。大立ち回りは示威行為とこっちの体質がばれない様にってとこかな」

『なにそれっ!そんなふざけた相手だったら当てちゃっていいでしょ?腕や足くらいだったら死なないでしょうし』

『ついでにそいつ人質にして責任者呼べばよかったんじゃねぇの?お前と恵飛須沢さんだったら集まったあいつ等もどうにかできただろうし』

『はやちゃん、てる君、正座。はぁ…、まぁ分かりました。とにかく、なぎ君も胡桃さんも怪我はないんですね?』

 

 過激な意見を出した早川と照山(31代生徒会)に正座を申し渡し、慈はため息交じりに話の筋を元に戻した。怒っているとはいえ教え子の安否は気になるのだろう。

 

「それは全く」

「あたしもナギもピンピンしてるよ」

『それならよかったです。それで、この後はどうするんですか?大学にいる方たちがそうだとなると話し合うのは難しいような気がしますけど』

『避難生活続くと結構荒れる人もいるからね~、場合によっては諦めたほうが安全かもよ?』

 

 心配する慈に同意するように口を挟んできた葵。それなりの期間寄せ集めの避難所で過ごし、その崩壊とともに逃げ出してきた彼女は人の心がどのように荒んでいくのかをよく知っていた。

 

「うーん、まだ諦めるほどではないかな。バカは論外としても話が通じそうな奴もいるにはいたし」

 

 それに凪原は校門でのことを思い出しながら答える。けしかけてきた連中は話し合いたいとも思わないが、ニット帽に眼鏡をかけていた男は非友好的で合ったものの、少なくとも話は通じていた。拒んでいた理由も凪原達が感染しているかもしれない、というまあ納得できるものだった。

 数日通って無事な姿を見せれば態度も変わるかもしれない。

 

「とりあえずもういい時間だし今日は放置かな、明日以降は様子を見つつまた接触してみよ―――」

 

 言いかけた凪原の言葉が途中で止まる。それまで明瞭だった無線に突然ノイズが混ざり始めたのだ。

 声を出しかけた由紀達を静かに、と制する凪原。放送局の方では照山も同様に周りに指示を出していた。

 ノイズが入る原因は十中八九混線である。電波が飛んでいない現在で混線するするということは、最悪の場合盗聴されている可能性もあった。不用意に会話して情報を与える必要はない。

 

(こりゃ早急に安全な通信を確立した方がいいかもな)

 

 これまで物理的なセキュリティーに重きを置いてきたが、今後は通信にも気を配るべきかもしれない。そのような考えが凪原の頭をよぎるのとほぼ同時、無線から仲間以外の声が聞こえてきた。

 

『おーい、さっき門のところで大立ち回りしてた彼と彼女、聞こえてる~?』

 

 こちらの不安とは対照的な、かなり能天気な声だった。内容からして凪原達に対して呼びかけているのだろう。

 

『もし聞こえてたら裏門まで来てくれない?待ってるよ、歓迎させてもらうからさ』

 

 そこまで言うと、顔の見えない相手は再度同じ内容を繰り返し始めた。

 

(声の質的に若い女性、恐らく同年代だな。裏門ってことは大学内の勢力だろうけど、さっきのとは別口か?)

 

 顎に手を当ててしばしうつむく凪原。得られた情報を基に想定されるケースを組み立てようとするが、いかんせん情報が少なすぎる。

 軽く無線機をいじってみたところ、この呼びかけが全周波数に向けて行われているようだ。であれば個別の周波数での会話はまだ傍受される可能性は低いだろう、そう判断して再び放送局との周波数に戻す。

 

「おいテル、どう思う?」

『丸投げすんな、俺だって分からんわ』

『何悩んでんの、来いって言ってんだから行けばいいのよっ。ナギもくーちゃんもいるんだからなんかあっても全部ぶっ壊しちゃいなさい!』

「『脳筋は黙ってろ』」

『相変わらず失礼ねあんたらは!?』

 

 阿吽の呼吸で脳筋(早川)を黙らせた凪原と照山だったが、実際彼女が言ったことくらいしか対応策がないのも事実だった。

 これが普通学校などであれば放置でもいい(以前の野盗のように積極的にこちらを害そうとしてはいないため)。しかしここ、聖イシドロス大学は普通の学校ではなく、このパンデミックの原因と目されるランダルコーポレーションの手が入っていることがほぼ確定している。

 巡ヶ丘学院の地下倉庫のことを考えれば、ここにも銃器などが隠されている可能性が高かった。であるならば早期に介入、それが無理でも情報収集くらいはしておきたいというのが凪原達の考えである。

 

「やっぱ行くしかないか」

『だろうな。まぁこっちはしっかり維持しとくから、気楽に行ってこい』

「他人事だな、こっち来てもいいんだぞ」

『はっはっは、断る』(ブツッ)

「あっおいっ………あんにゃろう、切やがった」

 

 無線機に向けて悪態をついたところで振り返り胡桃達へと顔を向ける凪原。

 

「つーことで、とりあえず行ってみようかと思うんだけど、よい?」

 

 その口調は勝手に話を進めてしまったことに対する引け目からか微妙に歯切れが悪いものとなっていたが、車内にそれを責めるような雰囲気は全くなかった。

 

「いいっていいって、あたしは賛成だよ。ハヤ先輩じゃないけどあたしとナギがいればだいたいのことはどうにかなると思うし」

「そうそう、それにせっかく高校を卒業したんだからちゃんと大学いかないと。ここで帰ったら浪人になっちゃうよ!」

「由紀先輩のはなんか違うと思いますけど……。私も異論有りません、情報収集は大事だと思いますし」

 

 胡桃は軽く伸びをしながら笑って、由紀はグッと手を握り、美紀は由紀に呆れながら、と態度はそれぞれ様々だったが全員が同意してくれた。

 そんな3人に凪原も笑って頷くと、運転席に移動し差しっぱなしにしていた鍵を回した。大型車特有の低く大きいエンジン音が辺りに響くも、一帯のゾンビは皆校門の方へ集まっているため寄ってくる個体はいない。

 

「そんじゃ行くとすっか。校門は迂回するからちょっと回り道だが、そこまで遅くはならないだろ」

 

 

 

====================

 

 

 

「うぅ…せっかく新しい生存者を歓迎しようと思ったのにまさか会長だったなんて、ボクの意気込みを返してほしいよ」

「まぁ悪かった…けど俺は面白かったからヨシ」

「そりゃ会長はそうだろうね!?思いっきり笑ってたしっ」

 

 時は進んで数時間後、既に深夜と言って差し支えない時刻。聖イシドロス大学本校舎の一室で凪原は酒を片手に笑っていた。

 そしてその近くにいるのはここまでの一緒にやって来た学園生活部の面々、ではなく彼と同い年の女性である。

 

 出口桐子(でぐちとうこ)、丸眼鏡でボブカット風の髪型に左側の髪を長い三つ編みにして垂らしている彼女は、言ってしまえば凪原の同期(31期生)だった。

 パンデミック以降では早川と照山に続いて3人目となる元同胞との邂逅は、凪原にとっては愉悦を桐子にとっては周知を多分に含んだものとなった。

 

「にしても、人間ってあれだけ綺麗にドヤ顔から驚愕に表情切り替えられるんだな。勉強になったぞ」

「ええい、掘り返すなっ」

「えーっと『ようこそ聖イシドロス大学へ、ボク達穏健派は君達を歓迎す――かいちょぉぉおおおおっっ!!?』だったか?感情がこもったいい叫びだったぞ」

「だったか?じゃないよばっちり覚えてるじゃん!」

「あ~やっぱ、お前イジんの楽しいわ。変わってないな」

「それを言うなら会長の性格の悪さもね。も~、こんなことならかっこつけるんじゃなかったよ」

 

 いわゆる人をダメにするクッションに飛び込んで足をばたつかせる桐子に笑い声をあげる凪原。その後もてきとうに桐子をからかっていると、部屋のドアがノックされた。

 

「よっ、って会長さんじゃん。来てたんだ、しかも酒飲んでるし」

 

 角瓶と紙コップを持って入ってきたのは光里晶(ひかりざとあき)、ギャル風の見た目とそれに合った口調の彼女は、部屋に凪原がいることに少し驚いたように目を丸くしていた。初めに顔を合わせた時にしていたポニーテールが解かれているため、茶髪と染めた後に伸びたであろう黒髪のコントラストがプリンに見えるがそこはあえて指摘しない凪原。もしかしたらファッションの可能性もある。

 

「……もう寝てるかと思ってた」

 

 晶の後ろから入ってきたのは喜来比嘉子(きらいひかこ)、ショートの黒髪とおっとりした感じのたれ目が特徴的な彼女は物静かな性格らしい。おつまみのパックを抱え、こちらも驚きの表情を浮かべているがその声は小さかった。

 

「ああお邪魔してる、とはちょい違うか?」

「まぁね、この部屋はリビングみたいなもんだし。でも何してんの?見た感じあたし等が来るとは思ってなかったみたいだけど、もしかして酒の勢いでトーコを落とす気とか?」

「俺が桐子(コイツ)を?ないない」

「ボクがこんな奴なんかに落とされてたまるか~」

 

 晶の冗談交じりの言葉に、凪原も軽く手を振って答える。面白い奴ではあるが恋愛的にどうこうなんて気は毛ほどもないので当然だ。

 それは桐子も同じようで腕を振り上げながら否定していた。

 

「こんな奴とはひどいな、だれが電子遊戯部の件で動いてやったと思ってんだ?」

「その節は大変お世話になりました。おかげで高3の時は楽しかったです」

「よし」

 

 ハハーッ、と振り上げていた両手をそのまま前に倒して五体投地の体勢で凪原を拝む桐子と、それに鷹揚に頷く凪原。

 

「電子遊戯部?」

「難しく言ってるけど要するにゲーム部。学校でゲームがしたいって部活の設立希望を出してきたからその申請書と予算をちょっと融通したんだ」

 

 首をかしげる比嘉子にざっくりと答える凪原。なんでもなさそうに言っているが新規の部、それもゲーム部などというふざけたものの設立など相当な強権でもない限り不可能である。巡ヶ丘学院生徒会の権限の強さを示すいい例だろう。ついでに言えばゲーム部というものもなかなかにぶっ飛んでいる、漫画やアニメの世界でもあるまいし。

 案の定というべきか、その説明に比嘉子も晶も呆れた表情になった。

 

「そっか、高校でそんな部を立ち上げたりしてたから今回も自堕落同好会なんてのを思いついたんだね」

「というかそんな部の設立申請を通せるって会長さんどんな権限持ってたの?それにまず通そうと思う時点で普通じゃないと思うんだけど」

「「いや~それほどでも」」

「「いや、ほめてないよ(から)」」

 

 照れる凪原と桐子にツッコミが入れられる、やはり巡ヶ丘学院の31期生はどこかズレているだった。




は~い、無事に学園生活部が穏健派と合流しましたー。


Tips

正座
他の座り方よりも立ち上がるのに時間が掛かるうえ、時間が経てばたつほど対象の行動能力を低下させられる。お説教を始める時はまずこの形に持ちむのがめぐねえ流。

電子遊戯部
巡ヶ丘学院の不思議な部活の一つ。生徒会の権限が強く部活動設立の条件も緩いためにこのような変な部活がいくつかある。ちなみに『年越し』にて由紀とるーちゃんがプレイしていたゲームはこの部の備品。


めちゃ短いですが今回の後書きはおしまいです

それではまた次回!
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