バイオコラボ8話目、
基本的に趣味回、タイトルだけで元ネタが分かった人は筆者と映画の趣味が合いそう
いや、改めて説明って言われても話した通りだって。──はいはい分かった話す、話すって!だから組み付いてくんなチェン、さっきから胡桃の視線が怖いんだよッ。
えーっと…まずそもそも今回遠足に行った理由だけど、ちょっとハーブを取りに行ってたんだ。グリーンとレッドが大量、苦労したけどブルーもそこそこ手に入ったぞ。いくつか試作品も作ったから後で本職のチェンに見てもらいたい、ってそれは後でいいか。
まあそんなわけでこの2日間はアークレイ山地でハーブ探しをしてたんだ。ただあそこ結構ヤバいことになってるぞ。魑魅魍魎っつーかなんというか、まあこれも後回しだな。
で、今日になってある程度のハーブが集まったからこっちに戻ってきたところで起きたのが今回のアクシデント。
暗くなるまで待ってから屋上を伝って──もちろん中心街は通ってねえぞ?、流石にバレるからな──やっとダウンタウンの方まで来たところで悲鳴が響いてきたんだ。ただのイザコザなら正直スルーしてたけど、女の子の声でゾンビのうめき声も聞こえてきたら無視するわけにはいかないよな?
すぐ傍の路地裏からだったからそのまま飛び降りてギリギリ間に合ったよ。
それで救助できたのがこちらのエマ・ケンドちゃんです。一応注意して狩ったから血とかはかぶっていないと思う、家に戻ってすぐシャワーも浴びてもらったし多分大丈夫だろ。
まあここまでだったらめでたしめでたし、で終わるとこなんだけどそうはならなかったから今の状況になっているわけだ。
エマちゃんに怪我とかないか確認してたらロバートお父さんショットガントイッショが登場してきてな。
うん、俺も胡桃も初見じゃ明らかにヤバい見た目だから襲ってると勘違いされて、危うく撃たれるところだった。
──ああいや謝らなくていいって。客観的に見てバケモノなのは自覚してるし、なんなら問答無用で撃たれなかっただけで十分ありがたいよ、俺が逆の立場なら間違いなく撃ってるし。
そういやエマちゃんは何であんな時間に外に出てたんだ?小学生、エレメンタリーの子が出歩くにしては遅い時間だったけど。
うんうん。夏休みだから普段より夜更かしすることが増えて、それと宿題にまだあまり手を出してないことをお父さんに言われて、皆もそうだって言ったら喧嘩になっちゃったわけか。
うーん……、確かに気持ちはホントよく分かる、実際夏休みの宿題なんて本腰入れれば絶対終わらせられるし。
ただ分かるんだけど、お父さんも心配しての言葉だったってのも理解できるだろ?うん、じゃあどうする?
──よーしちゃんと「ごめんなさい」できたな、いい子だ。頭撫でてもいい?
ありがとう。ヨーシヨシヨシヨシ、ヨシャシャシャシャシャ───ってお父さんごめんなさい別にふざけてるわけじゃないです。つい無意識で────あっやめて肩掴まないでえ?「話をしよう」?いや今のあなたとは話したくないです。ほんと謝るんで勘弁してください!
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──8月15日 23:21 ガンショップケンド──
「以上、これまでの真面目な説明でした。おーけぃ?」
「最後のところがなければ普通に見直したとこだけど、アンタ定期的にふざけないといけない呪いにでも掛かってるの?」
「あながち間違っちゃいないな。それで?とりあえずのところは理解してもらえたか?」
「ええ………ロバートご夫妻、この度は娘さんを危険に晒してしまい本当に申し訳ありませんでした。すべてはR.P.D.、そしてこの状況を予測し対策を取らせることができなかったS.T.A.R.S.が原因です、一員として心より謝罪します」
沈痛な面持ちで深く頭を下げたレベッカだったがしかし、それに対するケンドの反応は予想外に軽いものだった。
「いや流石にしょうがないだろ、レベッカ達は悪くない。これで実害が出ていたら話は違うがそうはならなかったしな」
正史においては銃砲店を訪れたレオンに対し警察への怒りをぶつけていたケンド。しかしパンデミックの最中で妻を失い、娘も感染しじわじわと感染の兆候が表れてきていたとすれば普段どれだけ冷静な人でもそうもなるだろう。
もともとのケンドは聡明な人物だ。直接の被害がなく、落ち着いて事情を把握しさえすれば理性的な判断を下せることは想像に難くない。
その後、簡単に理解を示され納得できず押し問答をすることになったレベッカ。数分したところで渋々ながら受け入れることになった。
責任感と正義感の強い彼女からすればなかなか飲み込むのが難しいことだったようだ。
2日間ぶっ通しで行われたという連続司法解剖のこともあり、だいぶ疲れが溜まっている様子の彼女を見かねた胡桃が声をかけた。
「レベッカ大丈夫?ブルーハーブティー飲む?」
「有事でもないのに飲まないわよそんなの!──ってすごくいい香りね、やっぱりちょうだい」
「私も!」
「俺ももらえるか?」
「私ももらえるかしら。これまで嗅いだことは無いけれど、とても落ち着く香りね」
ケンド一家も所望したため、急遽人間4人+人外2人のティータイムが行われることになった。
ゲームにおいては毒状態を解消するだけだったブルーハーブ。この世界においては疲労やストレスなどの精神状態全般に対する効能を有していた。
負傷を癒すグリーンハーブや効果増幅のレッドハーブも含め、もしアンブレラが本気で製品づくりをすれば兵器なんぞなくともこれらだけで真っ当に世界が狙えるだろうと凪原は思う。
もっとも、それができないからこそのバイオハザード世界だという事なのだろう。
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──8月15日 23:52 ガンショップケンド──
「さてだいたいの事情も分かったことだし、俺も何か協力しよう。できるのは武器の提供くらいだがこれでもこの街一の銃砲店を自負しているんだ、必要な物があれば何でも言ってくれ。もちろんお代はとらないぜ」
特製ハーブティーを飲んで一息つき、夜も遅いからということで母親のサラに寝室へ連れていかれたエマを見送ってからしばらくしてのケンドの言葉である。
「ならグロック17あるか?俺と胡桃で2つずつ、合わせて4丁欲しい。この手じゃリロードがスムーズにできるとは思えないし」
「あたしは利き手が変わっちゃったから練習スペースも欲しい」
そしてそれぞれ申し出を受けた凪原と胡桃の答え、どちらも現実的かつ効果の見込める内容だ。
「それくらいはお安い御用だが、そんなもんでいいのか?この街の為なうえ娘の命の恩人なんだ、遠慮は不要だぜ」
「じゃあ──射程距離400、可変式プラズマライフル」
「ここにあるもんにしてくれ」
「「………。」」
沈黙し、ガッとアームレスリング式握手を交わす凪原とロバート。映画の趣味が合ったことで友情が形成された。ホームシアターでポップコーン片手に映画を楽しむB.O.W.が見られるのも近いかもしれない。
「「この映画馬鹿...」」
そしてそれをジト目で見やる女性陣2人。
実に単純な男達の友情に、女性が呆れに似た感情を抱くのは日本もアメリカも違いはなかったようだ。
向けられた視線に気づいて手を放すとともに咳払いでごまかし──ごまかせていないが──、凪原は表情を改め手ごろな武器について真面目に考え始めた。
前世で使い込んだグロック17があれば近・中距離はある程度対応できる。至近距離では手持ちのハルバードに勝るものはないだろう、今の膂力なら群れたゾンビでもまとめて薙ぎ払えるはずだ。
となると必要なのは打撃力のある遠距離武器だろう。バイオシリーズには近づかずに倒したいタイプの敵がごまんといる。
数秒で考えをまとめ、真剣な表情で顔を上げた凪原。
「そうだな、
前言撤回、真剣にふざけることにしたようだ。
もっともこちらのネタは年代的にまだこの世に存在していない。ゆえに完全に凪原の自己満足だったのだが、なんとすぐ横から完璧な続きが聞こえてきた。
「じゃああたしは、
「ゴツくて正確にデカくて大胆、だな。ちょうどピッタリのもんがある、きっと気に入るぞ」
少し待っていてくれ、と店舗部分につながるドアへ消えたロバートを見送りながら、凪原はチラリと傍らの胡桃を見やる。そして不自然に逆方向を向いている彼女にだけ聞こえる声量で囁いた。
『おい、人のこと言えんのかよ今のオーダー』
『ナンノコトヤラ』
どうやら胡桃も愛犬を殺されて現役復帰した伝説の殺し屋のファンだったらしい。凪原としては恋人が鉛筆1本で3人を制圧するようなババヤガにならないことを祈るばかりである。
ともあれ、他に理解する人がいないのでネタのコンボも終了だろう。
言い回しはふざけたとはいえ要望自体は真面目なものだ。あとは優秀なガンスミスたるロバートが何を持ってくるかを期待して待つことにする。
そう考えていた凪原と胡桃の思いは、ものの見事に裏切られることになった。
「待たせたな!」
『まさかのパーフェクトな回答だと!?』
ロバートはどこぞの眼帯を思わせるセリフと共に2丁の銃を持って戻ってきた。凪原の言葉はそれを見て思わず漏れたものだ。
今更ではあるが、凪原と胡桃はB.O.W.として目覚めた時点でネイティブレベルで英語が使えるようになっている.ゆえに内緒話のような周りに聞かせたくない会話のとき以外は基本英語なのだが、今回は素で驚いたため精神的母語が飛び出してきた形だった。
『この人もしかしてソムリエだったりする?』
「なんて言ってるのか分からんが、とりあえず俺はソムリエじゃないぞ?」
日系とはいえ日本語が理解できないため、ロバートは首を傾げながらも銃の説明を始める。
「まずこれが、ユート用のアーマライト・ライフルだ。銃身は11.5インチ、ボルトキャリアはアイアンボンドで強化済み。スコープもトリジコンの良い奴を載せてある」
「お、おう...」
「んでこっちのは嬢ちゃん向けなんだがこいつはすごいぞ。ベネリのM4、この夏前にできたばかりの試作品を流してもらった。そこからさらに内部パーツをカスタムしてある。イタリア製の傑作だ」
「あ、ありがと...ねえナギ、あたしもうなんか怖いよ』
『俺もだ。これが真の恐怖ってやつか』
「なんで銃の話聞きながらがっつり抱き合ってんのよアンタ達は?」
「「しょうがいないだろ(でしょ)これは!」」
呆れて、というより訳が分からずに眉を寄せるレベッカに逆ギレ気味に返す凪原と胡桃。実際2人の気持ちも分からないでもない。
ネタというのはお互いが分かっている状態で使うから面白いのだ。何も知らない──そもそも年代的にネタが存在していない──人がドンピシャで当ててきたら驚きを通り越して恐怖を感じたとしても不思議ではないだろう。
「まあ怖がってても仕方ない。ケンドがソムリエなら俺と胡桃は実質ジョナサンだ、ゲン担ぎと考えりゃ悪くない」
「たしかにそれなら何が相手でも勝てそうだけどさぁ…」
「だから俺はソムリエじゃねえっての。何に悩んでんだよ」
「いや、何でもないから気にしないでくれ………持ってみても?」
「ああもちろん、ただ弾は込めないでくれよ?」
「当然」
背筋に感じる大いなる意思を加護と割り切ることにして、凪原はロバートが用意してくれた銃を手に取る。ズシリ、と変位した腕であってもそれなりの重量が感じられた。
無論、普段使いしているハルバードの方がよっぽど重い。しかし感覚というのはえてして数字では計れないものだ。プロの手によって組み上げられた逸品には、懸けられた手間に応じた存在感が宿る。
凪原に釣られるようにして胡桃も自身の銃に手を伸ばした。
用意されたベネリM4はガス圧利用式のセミオートショットガンである。ナンバリングが若いものと比べると動作の確実性が向上しており、近い将来には世界各国の軍や警察に採用されることになる。正真正銘の銘銃といえるだろう。
「ん~、ちょっと長いけどまあ問題ないかな。ねぇ、これグリップをストック一体型のにできる?これだとパッと構えるのが少しやりづらいからさ。あとトリガーガードはもっと大きいのあるかな。
「あ?そりゃできるがライフルグリップじゃ反動が──って嬢ちゃん達には関係なかったな。了解だ、トリガーガードもたしか在庫があったはずだから交換しておこう」
「ありがと」
この種の銃を触るのは前世含めて初めての体験である胡桃だが、銃把を握る手とその口から出る要望に迷いはない。
もともとその手のコンテンツが好きだったことと凪原からそれなりにレクチャーを受けていたこと、そして何より文字通り命を預ける道具として銃を扱っていた経験が彼女に銃の何たるかを刻み込んでいた。
人間は自身が置かれた環境に急速に適応する。胡桃の場合はそれが銃と戦闘技術だっただけのことである。
年頃の乙女としてどうかと思う向きもあるだろう。
ただ彼女自身、経緯はともかくとして現状をそこまで苦にしていない。どころかそれなりに楽しんでいる。
本人がそうである以上周りがとやかく言うのはお門違いというものかもしれない。
──カチャンッ
一瞬生まれた沈黙を破ったのは凪原が銃の点検を終えた音だった。
「歪みもガタつきもない、パーツの噛み合いもタイトだ。にわか者に言われても嬉しくないかもしれないけど,いい銃だな」
「なぁに、自分が手を入れた銃を褒められて喜ばないガンスミスはいないさ。それに、お前さんそれなりに詳しいそうだ、気付いたろ?」
実戦経験の土台に体系だった知識があると、銃への理解もより深いものになる。胡桃が重量バランスや軽い動作点検しかしていなかったのに対し、凪原はフィールドストリッピングを行い内部のメカまで確認していた。
必要に駆られてではなく自ら望んで得た知見は定着の度合いが違う。ミリオタというのもそうそう捨てたものではない。
そしてどうやらそのレベルはロバートの目にも十分なものだったらしい。髭の生えた顔に愉し気な笑みが浮かぶ。
「ああ。AR系列は触ってなかったからすぐには分からなかったが、これ5.56じゃないな?」
「その通り、7.62のNATO弾仕様だ。中身もそれに応じた強度にしてある」
凪原の手にある銃は一見AR-15のようだ。
軽量化のためか必要な箇所以外のピカティーニレールを廃したハンドガードに細身のスケルトンストック、特徴的な三角サイトとキャリングハンドルは撤廃されフリップアップサイトが搭載されている。
とても90年代とは思えないセットアップだ。
だがオリジナルとの最も大きな違いは、使用弾薬が5.56×45mm弾から7.62×51mm弾に変更されている点だろう。
よく見ればバレルが太く、マガジン挿入口もやや縦長になっている。
「最近の防弾装備の機能向上は凄まじいからな。交戦距離も長くなる傾向があるし、射程と打撃力を考えるなら大口径が一番だ。今はまだ5.56が全盛だが、そのうち7.62への回帰が始まるだろうさ」
「なるほどな…」
口では平静を装って返事をした凪原だったが内心ではかなり驚いていた。
今ロバートが言ったことはそのままマークスマンライフルの設計思想そのものである。どうやら彼は想像以上に銃への造詣が深かったらしい。
「ところで名前は?」
「うん?」
「この銃の名前だよ、これだけ手を入れてるならもはや別物だろ。S.T.A.R.S.のベレッタにはサムライエッジって名付けたらしいじゃないか、なんかかっこいい名前はないのか?」
「そうだな──ならさしずめAR-17mだな。愛称はムラマサだ」
「7.62㎜の
「決まってんじゃねえか」
ロバートの顔が今日一番の笑みを形作る。
「強くてかっこよさそうだろ?」
「気に入った」
それではまた次回!