学園生活部にOBが参加しました!   作:逢魔ヶ時

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サブタイ考えるのが今まで一番難しかったのでてきとうです。




6-9:嘘と真

「とまあ、かくかくしかじか」

「まるまるうまうま」

「「ってなかんじで武闘派とは話を付けてきたから」」

 

 比嘉子が用意してくれていた朝食をほおばりつつ、いい笑顔でサムズアップする凪原と桐子。

 しかしこれだけで通じるのはたとえ変人ぞろいの31期生の中でも、よく訓練された一部の者に限られる。普通なら困惑するしかない状況だが、幸運なことにこの場には『よく訓練された31期生を相手にすること』をよく訓練された人間がいた。

 

「はいはい。それじゃ足りないからちゃんと説明してくれるよな、ナギ?」

「桐子さんもです。凪原先輩とは同期だって聞きましたし、わざと変な話し方をするのはやめてください」

 

 ヒラヒラと手を振る胡桃に、腕組みとセットのジト目を披露する美紀。どちらも凪原の、内容の9割以上を削った話し方には慣れているので適切な対応をしてみせた。

 すなわち、相手にせずに正論で殴る、である。

 

「うーん、こうもバッサリやられるとなかなかクるね」

「ほんと色んな方面で成長しちまって、頼もしいことだよ」

「母校の後輩に軽くあしらわれるようなことしてるんじゃないよアンタたち」

「「うぐ…」」

 

 冷静にスルーされて凹む2人に晶の呆れるような視線が突き刺さる。一連の流れに比嘉子はどう反応していいのか分からず戸惑っていたが、由紀はいつものことと判断して気にも留めていない。笑顔で朝食の缶詰パンをパクついている。

 彼女らの様子にこれ以上落ち込んでみせていても話が進まないと判断し、凪原と桐子は普通に話すことにした。

 

「つってもな 一昨日の門でのごたごたと、昨日の夜…いや今日の朝か?の件で武闘派がグダグダ言ってきたから一喝して、ついでに軽く脅してきただけだぞ」

「あとは、会長達と僕達穏健派が無関係だって彼が勘違いするように仕向けたってとこかな」

 

 要点をかいつまんで説明した2人、まだ端折られているがそれでもだいたいのことは察することができる。

 

「昨日?…ああ、さっき胡桃先輩が話してくれたことですね。聞いたところ正当防衛みたいな感じでしたけど、何か問題でもあったんですか?」

「問題というより言い掛かりとか自作自演の類だな、程度としてはお粗末だったけど」

 

 朝食の最後の一口を飲み込んだところで、凪原は詳しい経緯の説明を始めた。

 

 

 

====================

 

 

 

「なにそれっ、全部嘘じゃん!噓つきは良くないんだよ!」

 

 説明を聞いた由紀の第一声である。両手をグーにして振り回す様子が彼女の内心をよく表している。彼女ほどではないものの、胡桃や美紀、比嘉子も顔をしかめている。

 

「嘘っつーか情報の切り貼りだな、一部は事実だから完全な嘘よりも質が悪い。なんともめんどくさい手段に出てきたもんだ」

「会長にとっては言うほど面倒ではないでしょ。動かぬ証拠と威圧で黙らせてたし」

「茶化さないの代表、実際アタシ達だけだったらどうしようもなかったじゃん」

 

 ふざける桐子にツッコミを入れる晶。

 その横では美紀と比嘉子が難しそうな顔で顎に手を当てている。

 

「たしかに、完全に嘘だと言いきれないことだと否定するのが大変」

「凪原先輩なら無理やり黙らせることもできるでしょうけど…ヒカ先輩達だったり私達だけだったりしたら、難しいですね」

「あいつらこっちのことなめてるみたいだからなー。やりあえばあたしは勝てると思うけど、抑止力って意味じゃナギには全然敵わないし」

 

 美紀達の言葉に胡桃も頭の後ろで手を組んで背もたれに寄りかかりながら応じる。口に出すのは武闘派のメンバーと実際に相対した経験を踏まえての感想だ。

 今回の小競り合いで彼女は武闘派の大体の強さを把握できていた。もしまた何かあっても問題なく、2人相手くらいまでなら余裕で制圧できると判断していた。

 しかしこれは武闘派よりもレベルが上の胡桃だから判断できたことであり、彼等の側は全くそうは思っていないだろう。

 武闘派は基本的に自分達以外を根拠もなく見下している。一見しただけでは可愛らしい少女でしかない胡桃が自分達より強いなど、たとえ一度膝を屈していたとしてもそうそう信じられないだろう。どうせ「不意をつかれたことと、偶然にも武器を落されてしまったために不覚を取っただけであり、次にやりあえば当然自分達が勝つ」とでも思っているに違いないのだ。

 

「まあ胡桃の言う通りだろうな。本気で威圧したから俺に対しては相当警戒してるだろうけど、それだけだろう。」

「だからこそ、会長達とボクらは無関係って思わせておきたいんだよね」

「それがさっき言ってたフリがどうこうってやつ?ご飯も終わったみたいだしそろそろ説明してほしいんだけど」

「そういうこt「そういうことだねっ」」

 

 思い出したように質問してきた晶に頷き口を開いた凪原だが、それを桐子が豪快に遮る。というより、彼女は凪原が答えようとしたことに気付いてないのだろう、クイッと眼鏡を持ち上げて自信満々で話し始めた。

 

「まず、これは推測を交えた武闘派の現状なんだけど、あいつら結構ジリ貧なんだよね。物資はまだあるけど校外遠征には行ってないから減る一方だし、遠征に移行にも足も武器も十分なものがない」

 

 武闘派の現況について簡単に説明する桐子。学園生活部の面々もある程度予想していたように、やはり彼等の内情は良いとは言えないもののようだ。人員、装備、練度がすべて足りていない状況、仮に軍隊であれば崩壊待ったなしである。

 

「だからこそ、色々武器を持ってて遠征に最適なキャンピングカーでやって来た会長達は彼等の目にはいい獲物に映ったんだろうね。これ幸いとちょっかいをかけてきたみたいだけど、それは会長と胡桃ちゃんに見事に阻止された」

 

 チラリ、と桐子はクッションによりかかる凪原とちゃっかりそのすぐ横に座る胡桃に目を向けて話を続ける。

 

「と思ったら今度はボクたちの方に圧力をかけて物資を取り上げようとしてきたし、どうやらよっぽど会長達の物資が欲しいんだろうね。ただまあそれも逆に圧力かけられちゃったわけで、さあこの場合次はどんな方法で来ると思う?―――じゃあ由紀ちゃんっ」

「えっ私!?」

 

 突然指名されて声を裏返らせる由紀、がすぐに笑顔を浮かべると手を上げて答える。

 

「仲直りして凪さんに手伝ってもらう!」

「素晴らしいっ!でもそれはプライドが邪魔してできないと思うな。それじゃ次はみーくんっ、君に決めた!」

 

 実に由紀らしい、平和的な予想だが恐らくそんな簡単な話ではないだろう。そのようなことができるなら最初から友好的に近づいてきているはずである。

 

「みーくんじゃないですけど…………人質を取っていうことを聞かせる、とかでしょうか?」

「ま~そんなところだろうね」

 

 少し考え、言い辛そうに答えた美紀に桐子はあっけらかんと頷いてみせた。

 

「アイツらは会長の強さは身に染みただろうけどあくまでそれは会長に対してだけなんだよね。会長でだめなら~、って考えてもおかしくないと思う。それなら誰を狙うかって話なんだけど、胡桃ちゃんは微妙としても由紀ちゃんと美紀ちゃんは全く脅威としてみられてないだろうね。そしてボクらについては言わずもがな、なんせ一回武闘派を追い出されてるからね」

 

 一息、

 

「んで、みーくん達はなんか会長が鍛えてるみたいだから何とかなるのかもしれないけど、ボクらのほうは腕っぷしに自信がないことに自信があるからね。会長に対して人質になり得ると判断されたら3秒で捕まる自信があるよ!」

「そこで自信満々なのもどうかと思うけどな、まぁ戦えるから偉いってわけでもないからいいんだけどよ」

 

 やや呆れた表情を浮かべながらも凪原が引き継ぐ。このような時代だ、多少は腕っぷしも鍛えた方がいいと個人的には思わないでもない。

 しかし、どのように考えて行動するかは各個人の自由であり権利でもある。頼まれれば鍛えるが、こちらからそれを強要するつもりは一切なかった。

 

「そんな感じで、基本的には桐子が今言った通り。こっちに遠征に来てるメンバーはあいつ等レベルなら対処可能なくらいには鍛えてるつもりだし、基本的には俺が即応可能な範囲にいる。だけどそっち(穏健派)はそうじゃないからな、下手に俺等とつながりがあるって思われたら今度はちょっかいじゃ済まないだろうし」

 

 桐子達の身柄を抑え、「返してほしければ銃と車を渡せ」と要求する。繋がりがあると思われたところで、武闘派が実際にこの手段に訴えるかは分からないがやらないとも言い切れない。

 不安の芽があるなら事前に潰しておいて悪いことはないのだ。

 

「『仲間内でやれ』って会長が言ったのはあいつ等への牽制であると同時にボクへの合図だね。あの場面で会長がボクらを庇うようなことをしちゃうとそれこそ繋がりを悟られちゃうから」

 

 これこそが先ほどの晶の疑問に対する直接の回答だった。

 その後も「もともと会長達とは無関係って立ち位置を示しといたし、あのやり取りでダメ押しになったんじゃないかな」「そいつは上々」などと会話する凪原と桐子(巡ヶ丘第31期生)

 そんな彼等に向けられる視線の種類は大きく2つに分けられた。

 

「なんで事前の打ち合わせなしにそんな連携ができんのよ……」

「アキ先輩、あまり深く考えない方がいいですよ」

「そうそう、ナギ達の代の先輩はすごくおかしな人ばっかりだったから」

 

 一つは呆れ。

 困惑気味の晶の肩に手を置いて諭す美紀と胡桃の声には諦めが多く含まれている。

 

「あんなに色々考えて動けるなんて、凪原君ってすごいんだね」

「そうっ凪さんすごいんだよ!でもトーコ先輩もすごいよねっ」

 

 もう一つは純粋な感心。

 比嘉子と由紀は素直に尊敬のまなざしを2人に送ってた。実際には学生時代によく悪だくみをしていた仲のために連携ができただけなのだが、純粋な2人にはそこまでは分からなかった。

 

 

 

====================

 

 

 

「にしてさー、なんで武闘派はそんなに強引なの?外に行かないとジリ貧だってのは分かったけどまだ余裕はあるんだろ?――5」

「それは私も思いました、すぐにどうこうというわけではないならもう少し落ち着けばいいのに――6です」

 

 食事を終え、何とも中途半端な時刻だったために暇つぶしがてら始めたダウトの最中に胡桃が口を開く。

 武闘派の行動に疑問を感じての胡桃のの言葉に美紀が同意の意を示す。以前ショッピングモールにて籠城の道を選んだ彼女にしてみれば、ここまで性急に動く理由が分からなかった。

 

「その辺は人によるんじゃないか?実際俺は最低限の情報収集をした後はすぐに家を出たし――7」

「それはナギが早すぎるだけだと思うけど、というかその7ホントか?なーんか怪しいんだけど」

 

 凪原の発言に胡桃が一応ツッコミを入れるが、どちらかと言えば彼女の興味は彼が出したカードの真偽に向けられていた。

 

「そう思うならダウトしてみろよ、愉しいことになるぞ」

「なんか漢字が違う気がするわね。凪原全然表情が変わらないから分かりにくいし」

「そりゃそういうゲームだからな。そら由紀、8だぞ?」

 

 むむむ、といった表情の晶に平然と返し、凪原は何食わぬ顔で次の番の由紀を急かす。

 

「えっ?うん8―――ああっ」

 

 虚をつかれてよく考えもせずにカードを出してしまった由紀だが、すぐに何かに気付いたように大声をあげた。

 

「おいナギ、お前やっぱやってただろ!?」

「ハテサテ、ナンノコトヤラ」

「これ以上ないくらい露骨な誤魔化し方ですね」

「相変わらず会長はこういうのうまいよねー」

 

 何を言われようが既に凪原の番は終わっている以上どうしようもなかった。それが分かっているからこそ分かりやすくしらばっくれる彼には文句を言う面々。ケラケラ笑いながら話す桐子の言葉に引き下がるしかない。

 

「9、………そもそもあの人達がああなったのは備蓄が結構あるって分かる前だったしね」

「「「あー、なるほど(そういえばそっか)」」」

 

 カードを出しながら比嘉子がポツリと放った言葉に納得の声を上げる一同。

 そもそもの武闘派は、備蓄庫の存在がまだ分かっていない状態で、手持ちの物資が底をつきそうになった折に計画された遠征が失敗したことが原因で生まれた派閥である。

 当時の状況を考えれば多少強引であろうと力で解決するという考え方が生まれるのも無理はないことなのかもしれない。

 

「でもそれならさぁ、今は余裕もあるんだかし武闘派のみんなもまったりすればいいんじゃない?」

 

 ある意味当然とも思える疑問をこぼす由紀だったが、残念ながら人の心と言うのはそう単純なものではない。

 

「そうなんだけどね……、一度始めちゃったやり方って変えるのがすっごく難しいのよ――10」

「ま。いろんなやつがいるさ、大学だからね。――っと11」

 

 苦笑しながら話す晶と桐子がそれっぽいことを言いながらフッ、と笑った桐子、2人の様子に場の空気が少ししんみりした。

 しかし、そんな空気は長くは続かない。

 

 

「カッコつけて言ったとこ悪いが桐子、その11ダウトな」

「グハァァアアァ!!!?」

 

 確信をもって告げられた凪原の宣告に桐子が押しつぶされたような叫び声を上げた。

 震える彼女の手で表向きにされたカードの数字は8、ダウト成功である。場に溜まっていたカードは、めでたくすべて桐子の手札となった。

 

「なぜバレた!?」

「いやなんか急に変なこと言い出したから嘘ついてるなってピンときた。なんだよ「フッ」って、キャラ似合わなすぎだろ」

「も~~~っ」

 

 バンバンとちゃぶ台を叩きながら悔しがる桐子によって場の空気は見事に弛緩し、そこからは雑談交じりの会話が続くようになった。

 

 

 

====================

 

 

 

「残念、本当に8だぜ。 はい、俺の勝ち。何で負けたか明日まで考えといてください」

「ぐぬぬぬ……」

 

 煽る凪原と、唸る桐子。

 最後の一枚を出した凪原にリベンジだとダウトを宣告するも、彼が出していたのは宣言通りの8。先ほどから少しだけ減った桐子の手札は再び増加し、今にも手から零れ落ちそうになっている。

 桐子の以外にも、ダウトを宣告しようとしていた胡桃や晶などは「危なかった…」と胸をなでおろしていた。

 

「さすが凪さんっ、嘘つくのもうまいんだね!」

「あのさ由紀、その評価は普通に傷つくからやめてくんない?」

 

 屈託のない笑みでそう言ってくる由紀に凪原は何とも言えない表情で返した。裏があるわけではないのは分かっているが、正面から嘘がうまいと言われて素直に喜ぶのはなかなか難しいものがある。

 

「――っと、そろそろいい時間か。ちょっと出かけてくる」

「ん?なんか用事でもあるの?」

「ああちょっとな」

 

 かるく伸びをしていた凪原だったが、ふと時計に目をやるとおもむろに立ち上がった。そのまま部屋の隅に置いている装備のうち、いわゆるファーストラインに分類される物のみを身につける。

 ファーストラインとは自分の身を守るのに最低限必要な装備をまとめたもので、基本的にすべての機能がベルト周りに集約される。軽装備もいいところなので安全地帯で行動する時のための装備だ。

 

 それが分かっているからこそ質問した胡桃にもそこまで緊張感はない。当然ながら返答する凪原の声ものんびりとしたものだった。

 

「俺の威圧でビビらない奴が桐子以外に1人いたから会ってくる」





考察及び会話回、つなぎの部分を書いているうちに内容が膨らんで1話分になったので投稿しました。基本的に本文中に書いた通りなので本日は付け足しとかは特にありませんです、はい。

………………正直に言うと投稿10分前まで執筆してたので前書きと後書き各時間がありませんでした。

ちなみにサブタイの嘘と真とはまんまダウトのことです。
次の話もシンプルに書くの大変そうだから頑張らないとなぁー。


それではまた次回!
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