今となっては昔のこと、竹を取って色々なものを作り、それで生計を立てているジジイがいました。
「ジジイじゃねぇ!まだ好青年って年齢だ!」
えぇ……。彼の名は鈴木善治。これといった特徴は無い竹を取る男でした。
「ったく……体力使う仕事なのにジジイじゃ務まらんだろ。」
普通の天気の普通の日、今日も彼は竹を取りに野山に向かいます。
野山に分け入って、しばらく作業をしていると、金色に光る竹を見つけました。
「うわぁ……ベタなの出てきたよ……」
彼は困惑しました。切ったらどんな展開になるかを知っていたから、ではなく
「これ、竹をうまく切らないと中の人を切ったりしてお蔵になっちゃうよな……。」
そう、中の人を傷付けず竹を切るには相当な技術が必要で、彼にはうまくやれる自信がなかったのです。とは言っても、このままではらちがあかないため、鈴木善治は前回に取得した金の斧を取り出しました。
「万一に万一のことがあっても、この金の斧なら供養にもなるだろう。あーあ……こんなことならセラミックの斧も追加でもらっとけば良かったな。」
セラミックの斧が果たしてちゃんと切れるのか甚だ疑問ですが、それを言い出すと金の斧も疑問です。ただ今回はうまくいきました。
パカッと竹は割れて中からそれはそれは美少女が出てきました。
「おはようございます。」
竹から出てきた美少女は礼儀正しく鈴木善治に挨拶しました。
「おぉ……ネタ的にゲテモノでも出てくるかと思ったら、普通に綺麗な人が出てきたな……」
「とりあえず見ての通り、帰る家とか無いので連れて帰ってください。」
「お、おう……」
竹から出てきた美少女の意外に鋭い眼光に鈴木善治はついお持ち帰りすることにしてしまいました。
「ただいまー」
「おじゃましまーす……って、誰もいないじゃないですか。なんで『ただいまー』って挨拶したんですか」
「ん?一応、妻がいるんだよ」
鈴木善治はそういうと秋葉原にありそうな等身大パネルをタンスから出しました。
「えっ?二次嫁?そういうタイプの人に私は誘拐されたんですか?ロリコンですか?」
「ちげぇよ。一応、話の展開上はジジイとババアの2人が必要だろ。でも俺は独身だからって言ったらこれ渡されたんだよ。邪魔になってしょうがないけど捨てるのも人目にはばかるからタンスに入れてんだよ」
鈴木善治は私の用意した許嫁は気に入らなかったようです。
「で、私の名前はなんですか?」
「おぉ……いつまでも竹から出てきた女とは呼べないしな……うーん……俺、竹で家具作って売ってる家具屋だから、『かぐや姫』なんてどうだ?」
「もうちょっとマシな名前無いんですか?家具屋って……IKEAみたいにオシャレでもないのに……」
「IKEAみたいなのが良かったのか?じゃあ『池谷 かぐや』で通称『かぐや姫』だな」
「……まぁいいですよ。どうせこの名前、あんまり使いませんし」
かぐや姫が呆れ顔になる鈴木善治のネーミングセンスが露呈しました。
さて、そんなかぐや姫は既に結婚できる年齢くらいには成長していたこと、昔話ということで昔の世界で今より結婚年齢が若いこともあり、すぐに街で噂になりました。
そして求婚に来た男性とお見合いをすることになりましたが……
「自己PRと志望動機をどうぞ」
「えっ……あっ……がっ……学生時代にぼっ、ボランティアかっ活動に……」
「はい、もう結構です(営業スマイル)」
「……あっ……」
「次の方ー。3分したらノックして入ってきてください。」
「って面接じゃねぇか!?」
「こういうのやってみたかったんですよ」
「はぁ……相手方の男性が気の毒だなぁ……」
「鈴木さん……実はそんなこと思ってないでしょ?」
「バレてたか……」
こんな風にかぐや姫に求婚に来た男性は大概、軽くあしらわれていき、かぐや姫と鈴木善治は2人でそれなりに面白おかしく暮らしていたのでした。
求婚に来た男性はろくなのがいなかったということもあり、毎日適当にあしらっては楽しく過ごしていたかぐや姫と鈴木善治でしたが、ある日、やってきた男性はこれまでの貴公子(笑)な男性たちとは異なるものでした。
「失礼します!」
そのハキハキした第一声に2人は察しました。この求婚者、ただ者ではない。というか、どっかで見たことがあるような気がしています。
「とりあえず自己紹介をお願いします……」
「はい、私は○○××(個人情報保護のため伏せ字にしております)と申します!職業は帝を少々……、貴女を宮中に迎え入れたく、馳せ参じました。」
「えっ……?……帝!?!?」
そう、やってきたのは帝でした。圧倒的な上級感にかぐや姫は急に色気づいたかのようになりました。
「なぜ、帝様が私なんかに……。」
「かぐや様、噂通りの美しいお方だ。」
なんとなく会話が成り立っていないような感じもありますが、鈴木善治もこの縁談が成り立てば相当の地位や富を得られると思うと、そんなことは気にもなりません。
「今すぐにでも!決めましょう!」
かぐや姫はお金に釣られたのか何に釣られたのか、即決即断でゼクシィと婚姻届を取り出しました。
「うん!これが一番幸せだ!これで行こう!」
鈴木善治も正常な判断力を失っている上に、本人が良いなら良いかとオールOKみたいです。
「お気持ちは嬉しいのですが、まずは初顔合わせということで、ひとまず結婚を前提としたお付き合いをさせていただければ……」
意気揚々とやってきた帝は、逆に何故か及び腰です。この3人が3人ともにホントの愛はあるのでしょうか……。
「♪ピロン」
その時、かぐや姫のスマホからSNSの着信音が鳴りました。縁談がうまくいって欲しい鈴木善治が咎めますが、何か変です。
「おいおい、マナーモードにしとけ……ってアレ?LIMEなんてやってたのか?」
「えっ……やってたけどこっちの人と交換した記憶が無い……」
何やら不思議な事態が起こっているようです。
「僕は構いませんので、どうぞ」
帝にそう促されLIMEを確認することになりました。
そのLIMEのメッセージを読んだかぐや姫はみるみるうちに青ざめていきました。そしてかぐや姫の告白は始まります。
「……実は言わなければならないことがあります。私はこの地球の人間ではありません。実は月からやってきたのです。」
「えっ!?」
2人が首を傾げる中、かぐや姫は告白します。
「月の世界から来ました。というか、来させられました。」
「色々聞きたいことはあるが『来させられた』って?」
「はい……お恥ずかしながら、月の世界で多少悪いことをしまして、無期限で地球に送られることになりました。こちらで言うところの無期懲役っていうのですね。」
帝はドン引きするわけでもなく話を聞きます。
「無期……つまりある程度の条件を満たしたから、もうええわ、ってことで帰ってこい、と?」
「はい……」
「戻りたいんか?」
「いえ、こんないい玉の輿……じゃなくて男性と出会えたのに、この縁を切りたくはありません。」
「……分かった。俺はなんとかして月に帰るのを邪魔する。詳しい日取りが分かったら教えてくれ」
帝はそう言うと一礼して足早に去っていきました。
帝が帰るといつもの鈴木善治とかぐや姫の2人ですが、いつものような面白おかしい雰囲気ではありませんでした。
「なぁ……月で無期懲役って何やったんだ……?」
「えーと……器物破損・公務執行妨害・住居不法侵入・詐欺・私文書偽造・業務上横領……」
「もういい。」
「そうですか。」
「で、その島流しで地球か……」
「さっき無期懲役とは言いましたけど、地球とはちょっと概念が違うんですよね。なんというか罰でというよりは、社会奉仕活動的な?勉強してこい的な側面が強いんですよね。で、月の役人がアイツは十分だって思ったら連れ戻されるみたいな?」
「そんな多分極秘情報バラして良いのかよ。」
「宇宙人系の話にありがちな記憶消されるタイプなんでいろんな意味で大丈夫ですよ」
「お、おう……それでそのお迎えとやらはいつ来るんだ?」
「明日です。」
「急だな!?」
「はい、何がもういいと思われたんでしょうね」
「さぁな……」
鈴木善治はこう言いながら、うっすらと月の役人がこのタイミングで呼んだ意味に気付いたみたいです。しかしそれは口には出さず、心に留めとこうとしました。
ただ、それでは心理描写がろくにされない今作では読者に伝わらないため、ナレーターの私が勝手に説明します。
鈴木善治が思うに、月の役人はかぐや姫に傷つくとはどういうことか教えたかったのでしょう。金に目がくらんだとはいえ、帝というすばらしい相手にもめぐり逢い、まさしくこんなタイミングです。理不尽な力による別れ……そんな心の傷から人の痛みや悲しみをわかってほしい。そう思って期限を切らず、このような形を取ったのだろう。鈴木善治はそんな風に考えました。
が、答えは出ませんよ。月の役人が何を考えているかなんて誰にも分かりません。ただ確実なのは、明日にはもうかぐや姫は月に帰ってしまうということでした。
Bパートに続く!!