鈴木善治の昔話   作:あずきシティ

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かぐや姫 Bパート

翌朝、いよいよかぐや姫が帰る日がやってきました。

「なぁ、帝がいたときも話してたが、かぐや姫は月に帰りたいのか?」

「正直、帝はまぁまぁ……なんですけど帰りたくないのは確かにありますね……」

「ならしょうがない。俺もとりあえず頑張ってみるかな」

 

そんな会話をしていると家のインターホンが鳴ります。

「いよいよ来ましたよ」

 

そう、このインターホンこそが月の役人みたいです。

「よし、ひとまずかぐや姫は押し入れに隠れておけ」

「え?」

「かぐや姫の代わりにこの等身大パネルを差し出す!」

「それは大事な嫁ですよね?」

「だから俺にその趣味は無いって。勝手に用意された等身大パネルくらいくれてやる!」

 

鈴木善治が等身大パネルを連れて玄関に向かう間もインターホンは鳴り続けます。玄関のドアを開けると黒いスーツ姿の人が数十人立っています。一番、前にいた偉そうな人物が鈴木善治に話しかけました。

 

「おはようございます。月署の者です。通称名 池谷かぐやさんいらっしゃいますよね?」

 

月の役人は何やら公印がつかれた難しそうな書類を鈴木善治に見せながら問いかけます。

 

「はい、います。」

「令状も出ています。池谷かぐやさんは強制送還しますので、身柄を引き渡してください。」

 

鈴木善治は促されるままにかぐや姫…、ではなく等身大パネルを取り出し、あたかもそれがかぐや姫のように扱いました。

 

「かぐや姫……向こうに行っても達者でな……。俺のこと、忘れないでいてくれよ。」

「……。」

 

当たり前ですが、等身大パネルが返事をすることはありません。

 

ですが、これに反応したのは月の役人でした。

 

「これはこれは……AKIBA'S TRIP-THE ANIMATION-の伝木凱にわかちゃんじゃん!にわかわいい!にわかわいい!」

「あっ……」

「こんなところでにわかちゃんに会えるなんて~……で、かぐや姫は?」

「ぢからこの子がかぐや姫……」

「いやいやそれは違いますよ。」

「じゃ……じゃあかぐや姫はウチにはいません!ウチにいるのはこの子だけです!」

「『この子』『この子』って……」

「なんだよ……」

「にわかちゃんを誰に断って『この子』呼ばわりしとるんじゃボケェ!!!」

 

月の役人は何かのスイッチが入ったのか、いきなりキレ始めました。そして……

 

「この家にいるのは分かってるんだ!!探せ!!!かぐや姫を確保しろ!!!ついでににわかちゃんの等身大パネルも差し押さえろ!!」

 

月の役人がそう号令すると後ろに控えていた手下っぽい大量の役人たちが鈴木善治の家に流れ込みました。等身大パネルは接収され、鈴木善治は人混みに揉まれながら抵抗を試みましたが、無駄でした。

 

かぐや姫が隠れた押し入れの方から月の役人たちの声が聞こえます。

「見つけたぞ!!!」

「確保!確保!!」

「午前8時5分確保!」

 

鈴木善治はその声を聞き、脱力してしまいました。そのまま人混みが家の外に流れ出る形になり鈴木善治も押し戻され、外へ。そしてかぐや姫も外に出されました。家の外にはいかにも空を飛べそうな車が数十台、待機しており、このまま月へ帰ってしまいそうでした。

 

「待ってくれ!かぐや姫は地球の暮らしを気に入っている!このまま残しておいてはもらえないだろうか!」

 

鈴木善治はそう叫び、月の役人に訴えかけましたが、その声は役人には届きませんでした。何故なら突然、大きな爆発音が聞こえ、迎えに来ていた月の車らしきものが爆破され始めたのです。

 

「な、なんだ!?」

 

月の役人もこれには慌てているようです。

 

「帝が邪魔をしにきたのかも……」

 

かぐや姫がそうポツリとつぶやくと、今度は月の役人めがけて大砲から発射されただろう大きな弾丸が飛んできました。

 

 

「伏せろ!!」

 

聞こえてきた声は帝でした。それに反応しかぐや姫と鈴木善治がうまく抜け出すと、弾丸は月の役人たちに直撃し大爆発しました。

抜け出して遠くを見ると、そこには戦車が大量にこちらへ攻撃しながら向かってきています。

 

抜け出した先には帝もいて、昨日以来の3人顔合わせとなりました。帝は昨日の丁寧な感じではなく、素のような感じで言います。

 

「月に帰るのを邪魔しに来た。あそこに来てるんは陸上自衛隊の戦車や。相手は月の役人やし地球の法律やら人権は関係ない。徹底的に叩きのめす!」

 

そんなカッコいいセリフを言ってるそばからバンバンと爆発が続きます。

 

「それだけやない!頭上を見ろ!」

 

帝に促され空を見上げると多数の戦闘機が来ています。

 

「航空自衛隊のE15戦闘機に在日米軍のメスプレイもお出ましや。四方八方から潰したんで」

 

なんということか地上からの攻撃に加え、上空からも攻撃され月の役人たちも手も足も出ないようでした。

 

大爆発が起き、これで月の勢力は一掃されたかに見えました。

 

 

 

「やったか……」

 

 

鈴木善治から自然とそんな声が漏れます。

 

 

が、その場で倒れていた月の役人たちぞろぞろと立ち上がります。

「この程度で倒したと思わないでください。」

強キャラ感ある月の役人に対して帝は言います。

「思ってないわ!上を見ろ!」

帝が上空を指さすと、空からミサイルが降ってきました。

そして戦闘機からの爆撃とともに大爆発を起こします。

「北から飛翔体も飛ばしてもろうた。」

 

帝の本気により、尋常じゃない爆発が起きましたが、それでも煙の中から平然と月の役人たちが出てきました。

 

 

「……汚い花火だ……」

月の役人は有名なセリフを何か間違った形で言いました。

「さて、そろそろ弾切れでしょう。池谷かぐやさんをこちらに渡してもらえますか。」

月の役人は冷徹に言います。鈴木善治はそれに対して

「おい!本人の意志は無視なのか!?」

と訴えましたが、月の役人は突き放します。

「これはもう決まってしまったことなのです。」

 

趣旨が趣旨だけに仕方ないと思いつつも鈴木善治はどうにかしようと思いましたが、ここで策が思いつかないのが、凡人らしいところです。

「嫌です。私、帰りません。」

かぐや姫も口頭で抵抗します。

「帰るまでが罰則です。必ず帰ってもらいます。」

「融通の効かないヘボ役人……」

 

 

月の役人はかぐや姫と距離を縮めてきます。ここで動いたのは絶対権力者の帝でした。

「遠距離からの爆撃や飛翔体が効かんなら、そこより近づけば斬る!」

帝はどこからともあれ日本刀を取り出し構えました。

「……困りましたね。」

月の役人は歩きを止めました。これでかぐや姫を守ったかと思いましたが……

「こうなれば、月の術を使うしか……」

月の役人はそんなことを言いながら、中二病全開なポーズを取りました。

「えっ、あっ……え?」

すると、かぐや姫が動揺し始めました。

帝と鈴木善治が確認すると、なんとかぐや姫が浮いています。

「はっ!!!」

月の役人が怪しげなポーズで月を指さすと、かぐや姫はなんと月まで飛ばされていき、その場から姿を消してしまいました。

 

 

「あっ……な……えぇ?」

鈴木善治はその事実を受け入れられず、その場に崩れ落ちてしまいました。

 

「おい!!そんな技使うなら最初から使えや!!!陸上自衛隊、航空自衛隊、在日米軍、北の飛翔体とか全部要らんかったやんけ!!!!」

 

帝はそんな風に叫びましたが、月の役人はガン無視しながら鈴木善治に近付いてきました。

 

「受刑者に対して管理、教育のご協力ありがとうございました。こちらは謝礼です。」

 

そういうと月の役人は鈴木善治に白い粉薬を渡しました。そしてここまでの冷徹っぷりが嘘のように

「今日の仕事は終わったぜ!!お疲れ~~!!!さぁ飲みに行こう!!!!」

と叫びながら、他の役人を引き連れ、月に帰って行きました。それも空を飛べそうな車を破壊されたのに、普通に飛んで帰ったのです。

 

 

 

後に残されたのは帝と鈴木善治だけでした。

 

茫然としながらも鈴木善治は聞きます。

「帝さん……この薬があれば月にいけたりするんですかね……」

「無理やろな。原作では不老不死の薬やけど、白い粉やからシャブちゃうか。かぐや姫を忘れさせる月の技術ってことやろ……」

「かぐや姫以外のものまで失いそうですね……。」

「ダメ絶対……また逮捕されるで」

「またって俺は一回も捕まってないし一回めキメてませんよ。別の人と勘違いしてるんじゃないですか?」

「それはそうと、俺謝らなあかんことがある」

「帝さん……が?」

「実はな……俺、既婚者や。」

「はい?」

「暇やからこの企画に参加しただけなんや。じゃあな」

そういうと帝は特に何事もなかったかのように帰ってしまいました。

 

 

 

 

後に残された鈴木善治が茫然と当たりを見渡すと、帝の活躍で家も仕事場だった野山も、焼け野原になっていました。

 

 

 

 

「……せめて、かぐや姫だけでも残っていてくれたらな……」

 

 

 

そう呟いた鈴木善治は、その時初めて、親子なのにかぐや姫に自分と別の名字をつけた意味に気づいたのでした。

 

 

 

 

 

めでたしめでたし。

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