昔むかし、あるところに鈴木善治という人が住んでいました。
彼は水原ぽちという犬を飼っていました。どうやら鈴木善治のネーミングセンスは名字と名前の両方を付けたがる模様です。
ある日、彼らが散歩をしていると急に水原ぽちが立ち止まり、そしてクルクルとその場を回りながら言います。
「ここ掘れワンワン。ここ掘れワンマン。1人で掘るからワンマンワンワン」
水原ぽちは何やら訴えかけますが、普段から水原ぽちには虚言癖があるため、鈴木善治は無視しようとしました。しかしいつもと違い、水原ぽちはしつこかったのです。
「本当に何かあるのか?」
「あるんだワンワン。掘るんだワンマン。」
「そこまで言うなら自分で掘ったら良いだろ。」
「この犬の姿じゃスコップは持てないワンワン。」
「お前の『持てない』はモテないの方だろ。」
「それもあるけど、今回だけは信じて掘ってほしいワンワン」
「あーもう分かった分かった。分かったから大声で『掘る』『掘る』言うな。誤解されるだろ。」
ついに根負けした鈴木善治は近所の地下鉄建設現場からシールドマシンを借り、水原ぽちが言ったあたりを容赦なく掘りました。
すると掘ったところから神様が現れました。神様は神々しく輝きながら鈴木善治に話します。
「大きなイチモツを」
「いらねぇよ!!それじゃねぇよ!」
「えぇ……」
「とっとと金銀財宝よこせコラァ!」
こうして鈴木善治は水原ぽちのおかげで金銀財宝を手に入れることができました。
これを見ていたのが、近所に住む富士山というおじいさんです。富士山は名前が示すようにおおらかで、優しそうな顔をしたおじいさんでしたが、その本性はとても怖い人だったのです。
富士山は鈴木善治の家に来ました。
「こんにちは、鈴木さん」
「あ、どうも……」
「最近、運動不足でね~。運動ついでにお宅のワンちゃんのお散歩に行ってきますよ」
「ありがとうございます……」
とそれっぽいことを言いながら、鈴木善治から水原ぽちを預かりました。
「さぁ鳴け!!!」
「ポン!!チー!!」
「そっちの鳴くじゃない!!どこに財宝があるんだ!?」
「ひ、ひぇぇ……」
鈴木善治の家から少し離れた場所では、虐待のような光景が繰り広げられています。本性を現した富士山が水原ぽちを恫喝しているのです。
「ひぃ……こっここ掘れワソワソ!!」
気圧された水原ぽちは適当に地面を指差し、そこを掘るようにいいました。
「おっしゃ!ここやな!!!」
意気揚々と富士山はそこを掘りましたが、出てきたのは割れた食器やガラス片などのガラクタでした。
「おい!どういうことや!!○すぞ!!!」
富士山はまた水原ぽちを恐喝します。特に最後の一言が怖かった水原ぽちはなんと、まだ手を下されてもいないのに、ショックで死んでしまいました。
「申し訳ありませんでした。」
「いえいえ、富士山さんのせいじゃないですよ。アイツ日頃から不摂生してましたから。こちらこそ看取っていただきありがとうございます。」
「そう言っていただけると救われます。水原ぽちくんは偶然とは言え、大変ショックでした……。」
富士山は水原ぽちの亡骸を一応、連れて鈴木善治のもとに帰り、恐喝のショックで亡くなったのではなく、たまたま散歩中に急性心不全で亡くなったと説明し、鈴木善治からも納得をえました。
富士山が帰ったあと、鈴木善治は考えました。
「水原ぽちの骨を拾ってやる義理は無いしな……まっ、庭に埋めとくか。」
そうして行政への届け出やペット霊園への奉納などはされず、水原ぽちは鈴木善治の家の庭に埋められました。
数週間後、水原ぽちを埋めた庭には大きな木が生えていました。
「なんだこれ。いつ生えてきたんだよ……ってか日当たり悪くなるし最悪だな……」
洗濯物が乾きにくくなったのを嫌った鈴木善治はその大木を切り倒しました。
「回収もめんどくせぇなぁ……」
行政に引き取りに来てもらうのをめんどくさがった鈴木善治はこの切り倒した大木で臼を作りました。
その臼を使って鈴木善治が餅を作ったところ、餅から金銀財宝が出てきました。
「おぉ……こいつはやべぇ……俺、今回は大金持ちじゃん!」
気をよくした鈴木善治は、臼でしこたま餅をつきましたが、欲を出し過ぎたのか、そのうちに金銀財宝は出なくなりました。
しかし、この様子を富士山は覗き見していました。
富士山は思います。
「俺があの犬を殺したおかげで金銀財宝を手に入れられたのに、独り占めしやがって!」
どうやら金銀財宝を鈴木善治が独り占めしたことが気に食わなかったようです。
富士山は深夜の鈴木善治宅に忍び込み、例の臼に火をつけて燃やしてしまいました。
翌朝、鈴木善治が庭を見ると臼は灰となってしまっていました。
「まっ、もう金銀財宝も出なくなったしいいか。」
経済状況に余裕の出た鈴木善治は心にも余裕があり、臼が燃やされたことも、おおらかに受け入れました。さらにポジティブにとらえるようにしました。
「行政に引き上げに来てもらうことを考えたら、こうなった方が楽だな。灰になったわけだし、あとはどっかにばらまいて無かったことにしてしまおう。」
そう言って鈴木善治は灰のうち半分くらいを持って家を出ました。
すぐ近くの公園に枯れ木を見つけた彼は、その枯れ木に灰をかけることにしました。
「どっかで見た話にこんなのがあったなぁ……。枯れ木的なものに花的なものを咲かせましょう的な……」
そう言いながら、灰をかけると本当に枯れ木から桜が咲き始めました。
「おぉマジか……。」
鈴木善治はこの季節はずれの桜に大変、喜び写真を撮ってSNSにアップさせました。すると案の定、バズりましたが怖くなった鈴木善治はアカウントを消去しました。
しかし、この桜画像は大きな話題となり、ついには帝の耳にも届きました。帝はこの桜を咲かせた男を探すよう部下に指令しました。
「あの灰を手に入れれば……」
そう考えたのは事情を知る富士山でした。富士山はいつもの優しそうな顔で鈴木善治に接近します。
「おはよう。鈴木さん、この灰はゴミかい?」
「えぇ。ちょっとね」
「なんだったら僕が代わりに始末してあげようか?」
「いいんですか!ぜひお願いします!」
鈴木善治は普段、テレビを見ない上にSNSのアカウントを消去したため、例の灰がそこまでの話題になっているとは一切、知りませんでした。
灰を手に入れた富士山は意気揚々と帝のもとへ乗り込みました。
「ほ~桜を咲かせる魔術師は貴殿か」
「はい、お探しいただき光栄です。」
「じゃあ、早速見せてみぃ」
帝は富士山に枯れ木から桜を咲かせるよう指示し、富士山は枯れ木に灰をかけました。
が、もちろん桜は咲きません。焦った富士山は謝ります。
「あ……れ?………すいません!間違えました!」
「ハッハッハッ!!素直に過ちを認めるその心意気や良し!!」
打ち首を覚悟した富士山でしたが、なんと帝に気に入られるという超展開となりました。
そして……
「お主……他に何か面白い話はないか?」
帝と富士山はお友達になりました。
金銀財宝ざっくざくで悠々自適な生活を送っていた鈴木善治でしたが、ある日突然、スーツのヤバそうな集団が来訪しました。
「鈴木善治さんですね。あなたを脱税の容疑で逮捕します。」
「えっ!?」
鈴木善治は金銀財宝により得た利益などを一切、申告も納税もしておらず、脱税と見なされ逮捕されました。
裏で富士山が帝に密告したことから判明した脱税事件でしたが、鈴木善治は投獄され、その事実を知ることはありませんでした。
めでたしめでたし。