ブリッジ・イン・ザ・セイバー   作:八堀 ユキ

2 / 12
デス・ストランディング発売記念。
もうすでにハマってるので発売日当日の更新を忘れてた、という。ウッカリを炸裂させてしまってますが、まぁね。皆で喜びましょうよ(話をそらしていく)

タイトルは滅茶苦茶なので突っ込まないでほしい。

さて、この連載は特殊ルールで進めようと思っています。後半に詳しく説明してますのでこの話の「続きが読みたい」「気になる」という人だけ目を通しておいてください。

それでは短いかもしれませんがよろしくお願いします。


再会

 暗闇の草原を駆け抜けるのは、自分を獣に。例えば高ぶる灰色狼になったような気分にさせる。

 視線は獲物を探して興奮を覚え、逆に自分の姿を捕らえようとしているかもしれない誰かの視線に恐怖でおびえる。

 

 だが妙に生暖かい風が今日はあった。こういうのは嫌いだ。

 嵐は去り。雨はなく、風も穏やかになったが。今夜の月は雲に隠れてまだ確認できない……。

 

 

 アウロア諸島、●月×日午後10:51――。

 俺、ノマドはただひとりのゴーストで、目的の場所から300メートルほど手前に到着した。

 

 簡単にここまでの事情を説明するとこうだ。

 今夜、島に何かが空から降ってきた。で、”仕方なく”ゴースト部隊の俺はただひとり。それが何かを確認するために落下物に近づいている。そこには俺と同じように、空から落ちてきたものに興味を持っている敵も集まっている可能性があった。

 

 数十分前、この方角からわずかの時間であったが戦闘音らしい騒ぎが間違いなくあったことに俺は気が付いていた。運のいい敵が俺より先に目標に近づいて、とても不幸なものに出会ってしまったのだろうと思う。

 敵が本当に運が良かったら今頃ここにはライトがあちこちに置かれ、ドローンが空を飛び回り。とてもここまでは近づけなかったはずだ。

 で、そんなトラブルがあった場所にこれから俺も奴らに続いて見に行かなくちゃならない。

 

「レッドホーン、こちらノマド。

 今、目標の300メートル手前に到着。少し前、この方角から戦闘音が聞こえたが……どうやらここでなにかがあったことは間違いないようだ」

 

 無線機の向こうでは息を殺してこの報告を聞いている仲間たちがいる。

 だが彼らからは返答はない。前もってそうするように俺が彼らに言い残してきたからだ。敵に聞かれたとしてもこちらの情報を少しでも与えたくない。

 

「では行ってくるぞ。詳しい報告は戻って……」

 

 最悪、俺がここで倒れれば彼らはここに危険なものがあるという情報を知ることが出来るというわけだ。

 だが俺としては生きて帰りたい。そのための努力は惜しまないつもりだ。

 

 

 とはいえ状況は良くないことは近づくにつれて理解する。

 本道から外れてやってきたと思われる戦闘車両は草原の中に3台、うち1台は煙を噴き、ひっくり返っている。

 草原の放つ自然の匂いの中に、焦げた鋼、火の熱、血と火薬の匂いが混ざってる。それなのに音がまったくないのは、ここに生きている奴は誰もいないって事だ。

 

 ナイト・スコープなどないから正しい数は数えられないが。

 ここにやってきた兵士は8人よりも少なかったとは思えない。それがあのわずかのあいだに沈黙した?

 どうやらただのトラブルじゃなかったのだろう。

 

「参ったね」

 

 停止した車両の影まで来て、思わず口に出してしまった。

 島に来るなり歓迎を受けてからまだ24時間もたっていないのに、ここまで最悪が続くと、1度くらいぼやかずにはやってられない。

 M4カービンからM1911ピストルに変えて車体から離れる。

 

 まず確認するのは落下物からだ。

 移動中、何度か足の裏に不愉快な感触があったが、踏まれた方からの反応はなにもない。こいつらが何と出会い、どうしやってこうなったのか。

 その疑問が俺をさらに緊張させていく――。

 

「着地に失敗した?いや、これは――グライダー?」

 

 落下物はいくつかにバラバラになって飛び散ってはいたものの。妙に”そうなるように”設計されたとしか思えない壊れ方を見た俺の感想だ。

 船体から”切り離された”かのような左の翼のそばにしゃがみこむと俺は手袋を脱いで素手でその表面をなでてみる。

 

(熱がない。普通の材質でもない。このグライダーで落下してきたというのか?どうしてこの島に?)

 

 ここはアウロア諸島、大海に囲まれた孤島だ。コロラドに広がる砂漠じゃない。

 動力のない飛行物体が飛ぶのに最適な場所では決してない。

 俺は自分で出した結論――というよりも最悪のジョークのようなそれにおかしくなってしまい。苦笑いを浮かべ――ながらクルリと体を入れ替えて真後ろにピストルをいきなり向ける。

 

 信じたくはなかったが、夜空を背に立ってこちらを見下ろす人の姿があった。

 

「誰だ!?」

「……」

「答えろ!こいつらをやったのはお前か?何者だ?」

 

 自分で口にしておきながら、しかしそのおかしさを、じわじわと感じる違和感に戸惑う。集中だ。相手を前に俺は何をやってるんだ、しっかりしろ!

 

「ダンマリか!?自己紹介は苦手らしいな」

「フッ。元気そうだ、ノマド」

 

――ウォーカー!

 

 名前を呼ばれ、反射的にその男の姿が脳裏に浮かんだ。が、俺はどうやら冷静ではなかったらしい。声も姿も明らかに別人だった。

 そもそもこんな暗がりで、ゴーストである俺ですら判別できない相手の顔を相手がなぜわかったのか。そこを見落としていた。

 

「落ち着け、ノマド。銃はおろせ、他人が構える銃口を見つめるのは好きじゃない」

「お前はッ!」

 

 誰だ、そう続くはずだった。

 ところが今日のお空は気分屋だ。怯える俺をとことんまでコケにしようというのだろうか、わざわざ隠していた月の光はこのタイミングで地上を照らし出して見せたのだ。

 

 これ以上、相手の正体を問う声は出せなかった。

 

 流れる銀髪、引き締まった体格。

 口元に浮かべる微笑は俺という男を知っている安心感なのか。

 戦場の闇の中でも容易にこちらを捉えるが、向こうは逆に理解を超える技術で翻弄してみせる。

 俺はその男の名前をすでに知っていた。

 

「雷電っ――!?」

「ああ……7年、いや6年ぶりだな。ノマド」

 

 コードネーム、雷電。

 現在、不正規作戦の世界で伝説となったフリーのサイボーグ傭兵。

 俺はこの最悪のアウロアの島で、この最悪の男と再会した。




(特殊ルール)
筆者には過去の連載からストーリー長い長い病の気があるようなので、今回は――。

筆者やる気+読者の反応+アクセス状況=連載を続ける

という方式をとろうと決めました。
まずは第5回までの反応を見てその後を決めようと思います。よろしくご理解の上、お付き合いしていただけると幸いです。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。