ブリッジ・イン・ザ・セイバー   作:八堀 ユキ

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ゴースト部隊の2人はウルブスに発見され、追撃を受ける――。

次回より当連載は不定期更新となります。
ご協力ありがとうございました。


回転

 3:2の追跡は長くは続かなかった。

 

 追い立てられ続けた獲物は本人が思っている以上にボロボロにされていて、再び距離をとりたいのにそれが出来なくなっていたからだ。2人に出来る事と言えば距離が縮まるのをどれだけ遅らせられるのか……終わりは見えていた。

 

 後方から飛んでくる火線は私に集中していた。

 屈辱と怒りから下唇を噛むが、だからって取り乱したりはしない。私にはわかっている、あいつらの考えは”まったく正しい”のだから。

 

 逃げている女だから、弱いから狙っているわけじゃない。

 片方が大きな体の男で、もうひとりが小さいというただそれだけの理由なのだ。

 ウルブスにとって――あいつらにとってヴァシリーはもう仕留めたも同然で、元気な私が逃げられないようにすることを考えているから、撃ってくるに違いないのだ。

 

 そうしていれば必ず彼らの前に――。

 

 自分のそばをヒュンヒュンと弾丸がかすめて飛んでくる恐怖、精神的な重圧。それらに潰されまいと必死になるのに、どうしても「ぐっ」「うっ」と口から小さくても声が漏れ出てしまう。荒い息にそれが混ざってしまうのだ。

 血が出るほど噛みたくても、長くは出来ない。死が迫っている、それどころじゃないんだ!

 

 私は決して弱くはない。厳しい訓練と実戦も経験した。

 今の相棒も、ヴァシリーだってそれは理解している。私に女としての気づかいはいらない。

 だが”私達”のような兵士は簡単に決めてしまうことが出来る。仲間のため、任務のために。それがもしかしたら希望となるかもしれない、と。

 巨体を小さくしながら足を引きずっている彼が、私の後ろにつく体制にはいると。そこから徐々にその体が浮き上がっていく。

 

 それを見た狼たちの牙が鋭さを増す。

 もういい頃合いだ、仕留めるのに十分だ。必死に逃げていた私は気が付けなかった。

 

 ひとりのウルブスが明らかに異常な加速を始めた。

 捕食動物が時折、獲物を使って遊んで見せる残虐性があるように。ウルブスたちの動きに変化が生まれた。

 

 グングンと距離を詰めてくるとそれに気が付いたヴァシリーはたまらず足を止め振り返ろうとした。バランスを崩しながらの疾走中では銃の引き金に力を、もう彼は込める力が残っていなかった。

 

「畜生!くらえよっ」

 

 最後だと向けようとした銃口は、火を噴くことはなかった。後ろから追ってきたウルヴス達の正確な射撃が始まってヴァシリーはついに呻きながら膝をついたからだ。その横を突出したウルブスは通り過ぎると、ようやく後方の異変に気が付いた私の足下にとびつき、転がしてきた。

 

 私は転がりながらナイフを抜くが、立ち上がった時にはもう3人に囲まれて――。

 

 

 にらみ合いは短く、冷静になった私はすぐに降参した。他にできることはなかった。

 ナイフで決着付けようと飛び掛かってもまだ2人残ってる。いまの私とヴァシリーに格闘して3人を殺す力はない。

 

「――班です、ゴースト残党らしき2名を確保。指示を」

『本当にゴーストか?』

「部隊章がバラバラですが、連携はしっかりしてた。間違いないです」

『わかった。すぐに処分しろ――遊ぶなよ?仕事はまだ残ってる』

「残念、でも了解」

 

 私たちの運命はすぐに決まった。

 

「よーし、でかいの。最後は仲良く並んで終わらせてやる。立てよ、頑張りな。お嬢様のいるあっちまでな」

「……人質にもとらないとはな。お前ら、アメリカ軍を相手にするなんてな。正気か?」

「俺達が仕留めたのは弱くて役立たずのゴースト(幽霊)だ。誰も気にしやしないさ」

「そんな理屈――」

「いいから立て!歩けよ!」

(ヴァシリー!?)

「生憎とボロボロでね、もう動けない。肩を貸してくれないか?」

「……ふざけてんのか?」

 

 あがくにしたってこれは最悪だ。ギャングの私刑じゃないんだ。

 背中を向けて膝をつき、手を頭の後ろにやっていた私にはごねる相棒の顔も姿も見えなかった。

 

「もういい」

 

 BANG!BANG!

 唐突な終わりは何が起きたたのか。後ろを向いて確かめようとする私を、敵のひとりは許さなかった。

 

「おい!なんでいきなりヤったんだよォ」

「遊ぶな、と指示を受けてる。ゴーストはこいつらだけじゃない、島にはまだ数人くらいコソコソやってるんだ。ここでノロノロやってたら。戻ってウォーカーにどやされる。俺は御免だからな」

「チッ、つまらねぇの」

 

 私は小さく息を吐いた。恐怖で喉を締め上げられている感覚だ。

 アウロア諸島のポニーとクライドは。オリジナルと似た最期を迎えそうだった。

 

 ポニー&クライドか……。

 彼らは逃げようとして追ってきたテキサスレンジャー4名と警官の銃火にさらされた。

 追ってきた方は犯人を生かすつもりは最初からなくて、戦争を始める気で武装していた。マシンガンやライフルが並び。そこから150発以上が2人に発射され、半分以上の弾丸が2人の身体を引き裂いた――ああ、こっちは恐らくそれよりも少ない弾数で決着するだろうけど。

 

「女もやるのか?」

「違う!そいつは女じゃない、ゴーストだ。つまらないことを考え――」

 

――遅かったか

 

 音もなく雷が太陽に下にある草原の中を走り。誰か、男の声が聞こえた気がした。

 自分を迎えに来た死神にしては、随分といい男だった。新しい登場人物、彼を見た最初の感想。

 

 銀髪で、線が細い――でもどこにでもいるようなイイ男。

 なぜか彼の周りでパリパリとしびれるような音と、光が――電気が走っているように見えた。幻覚だろうか?

 

 でもここになぜいるのかがわからない。

 なぜこの死神は平然と、それも「遅かった」なんて口にしたのか?それはわからなかった。

 

「――撃てっ!」

 

 ウルブス3人が素早く動きを見せたが、銀髪男の動きの方が速くて――まさに雷だった。

 聞いたことのない空気が避ける音。空間に走る、幾条もの銀線。いつのまにか彼の姿勢は変わり、その手には日本の侍ブレードのような武器が握られていた。

 

 映画でも見ているのだろうか?

 サムライマスターがそうしたと演出があるように、わずかな静寂と間に刺激的な匂いが漂う。

 それが血の匂いだと理解した時。勝者と敗者がはっきりと表れる。

 

 相棒は死に、私は助かった。

 そして銀髪の死神は狼たちの躯の前で笑顔を浮かべて立っていた……。

 

 

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 エイホンへ戻るとマッズが待っていて、俺に聞いてきた「で、次はどうする?」と。

 もう、仲間を探しに行くなどと答えるわけにはいかない。俺は未練を断ち切るため、はっきりと口に出していった。

 

「新しい情報が手に入った。俺はこれからジェイス・スケルを追う。話によると奴はセンティネルに追われて――」

「ちょっと待ってくれ!

 まさかとは思うが、君たちはこの騒ぎがジェイスの責任だと、そう考えているって言うのかい!?」

 

 いきなり脇から声がして驚いた。

 みれば浜辺で救った親子――オヤジのほうのフォックスが声を上げていた。

 思わずマッズに(彼は何故ここに?)とジェスチャーで問うが。よくわからないというような首を振るだけの返事が返ってくる。

 

「違う、違うんだよ。彼は良い奴なんだ、悪者なんかじゃない。

 島を乗っ取ったのはセンティネル。あとウォーカーという男がやったんだ。その証拠もある、見ればわかる。いや、ぜひ見てほしい」

 

 やはり齟齬(そご)がまだあるというのか。

 この混乱の中では正確な情報はのぞめないのだろうが、それでも動くなら出来る限り確実な線で動かないと余計な仕事を増やすことになる。フォックスは興奮したまま勢いよく「来てくれ」とだけ言い残して立ち去っていってしまう。

 こっちはまだ話し終わってないんだが。

 

「あんたはこのままあれを追いたいんだろうが、もう少し待って――」

 

 マッズがそう言いかけると入り口の方が騒がしくなった。会話をまたも切り上げてマッズとノマドは並んで入り口に向かう。

 そこでは雷電が喜びと悲しみを携えて立っていた……。

 

「くそっ、雷電め。なんだよ、ヴァイパー!それにそいつはヴァシリーか?」

「ノマド……みんな」

 

 エイホンで仲間に迎えられたヴァイパー達の様子はひどいものだった。

 あの夜からずっと逃げ回っていたのだろう。ボロボロになった姿が痛々しい。だが――。

 

「おい、ヴァシリーは?そいつはなんで……」

「残念だ、ノマド。助けられなかった」

 

 答える雷電の肩に担がれ、物言わぬ死体となったヴァシリーがそこにいた。

 

「よし、もういいだろう。みんな、戻ってくれ!――ノマド、彼らはとりあえず医務室へ。騒ぎを鎮めたい。それと、話しはまだ残ってる」

「ああ」

 

 雷電の担ぐヴァシリーは留守番組に後を頼み、ヴァイパーと共に医務室へと向かってもらう。心が揺れる、まだあんな仲間が島にいるかもしれない。感情を殺す、そうしなければならない。そもそも出来る事がないのだから。

 

 そして俺は雷電とマッズの元に向かった。

 

「よし、話は逸れたが――とりあえずお前の仲間については残念だったと思う」

「ありがとう」

「だが、言わなくちゃならない。はっきりとな。

 死体はここには置けない。保管できる環境ではそもそもないし、子供や老人だっている。衛生に気を付けないわけにはいかないんだ。早急に遺体は何とかしてもらわなきゃならん」

「俺も仲間をあのままにはしたくない。できればアンタの方で――」

「いや、それは断る」「なに?」「あんたとあんたの部隊は追われてる。これでハッキリしたんだ。だとすれば気軽に引き受けられる問題じゃない」思考が停止した。感情が爆発しそうで、どうしたらいいのかわからなくなりそうだった。

 

 そこに雷電が割って入ってくる。

 

「落ち着け、ノマド。ここは俺が代わりに話そう」

「雷電――」

「なァ、シュルツ代表。あんたの言いたいことはこっちもだいたいわかってる。だが彼の仲間だった兵士だ、ここで殺された。任務中の死亡とはいえ、多くは望めないとしても。それが他人の手でもせめて尊厳をもって――」

「サイボーグ野郎、俺だって元兵士だ。そんなことは言われなくてもわかって言ってるんだ!

 

 冷酷だと罵りたいのか?好きにしろ、だが感情だけではダメなんだ!

 ここにいるのは、大半が俺のように地元にいてセンティネルに目をつけられた奴。それにスケルテックの研究者とその家族達だ。奴らは言いなりになれと家族を使う。それを守るためにここに逃げてきているんだぞ!

 

 でもまだ全員じゃない。

 今も奴らにとってどうでもいい住人達は自分のいるべき場所にとどまっていられるが。それは見張られてもいるってことだ。そこでいきなり葬式なんてやってみろ、誰が死んだのかと聞きに来るぞ。死体が本物かを調べだってするかもしれない。アンタらの仲間だとばれたらそいつらはどうなると思う?

 そうなったらアンタら、必ず救出してやるから大丈夫だとでも言うつもりか!?」

「――いや、出来ない」

「なら理解してくれ。俺はもう十分に出来る事はしてやってる。それ以上は求めるな」

「じゃ、知恵を貸してほしい。

 センティネルに気づかれず遺体を埋葬できる方法を」

「それについちゃ、聞く相手を間違ってるかもしれないぞ。

 ノマド、お前がさっき言ってたろ。ジェイス・スケルを追うって。奴に聞くといい考えがあるかもしれない」

「ジェイス・スケル?なんのことだ」「マッズ、奴は何を知ってる?」雷電の疑問をノマドは無視する。

「スケルの連中はこの島にハイテク施設をいくつも建てたんだ。色々なところに施設を作ったから、島のどこなら施設を占拠したセンティネルの目が届かないのか。それこそ地元の住人よりもくわしく知っているんじゃないか?」

 

 会話はもう十分だった。ノマドは黙ったままフォックスのところへ向かう。

 ジェイスは確かに誰にとっても必要だ。それも今、すぐにでも!

 

 

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 フォックスの前に立ち、ノマドは「それで?」とだけ問う。

 てっきりついてきてくれると思ったら間を外されてしまい、さらにあらわれたと思ったらさっきとは逆に意気込む兵士にフォックスは困惑と弱気でタジタジとなっていた。

 

「えっと、とにかくジェイスじゃないんだよ。証明する証拠がある。内通者、だと思う。島内の回線を使って情報を発信している人がいるんだけど。これはその映像のひとつだよ。

 そこにセンティネルのトップが映って、信じられないことを言っているんだ」

 

 そういうと目の前の端末を操作した。

 

 

 映像は数分のもので、確かにスケルテック社内での映像のようだった。

 

 トレイ・ストーン。

 センティネル社CEOは、自分の部下に今後の島内での方針を命じていた。先程見せたマッツズの危機感はオーバーなものではないようだ。

 彼らは攻撃の対象を目障りになりつつある無害なはずの島民にまで拡大しようとし。その方法では収容所など作るつもりはないと、平然と言い放っている。

 

 つまり虐殺がお望みというわけだ。

 ノマドは状況がさらに深刻になっていくのを知って喉の奥で唸り声のようなうめきをあげてしまう。

 

「どうだい?ひどいだろ?こんなこと。だから絶対にジェイスの訳がないんだって」

 

 フォックスの言い分もわかるような気がする。

 自分の会社に集めた天才たちと住人を攻撃するようなこの指示は理性的とは言えない。ハリウッドのアクション映画のようなボス気取りが世紀の天才などとよばれるだろうか?現実味がない。

 

 とはいえノマド――いや、ゴーストにも言い分はあった。

 

「……いいか?あんたはそう言うが、俺は奴が事件に関与したと示す証拠を見てる。ジェイスは米軍の輸送艦を沈めた、他にも聞きたいことは山ほどある。あんたが保証すると言っても、簡単には信じられない」

「こんな状況になるまで放っておいた。そのことだけでも彼には責められる責任があるはずだ。ノマドが言うようにそれを無視はできないんじゃないか?」

「君達は――それじゃ約束してくれるだけでいい。せめて彼の話も、ちゃんと聞いてやるって」

 

 本当は会うなり殴り倒して引きずり回し、血を吐く想いをさせた後でたっぷり話を聞いてやりたかったが。

 フォックスがここまで擁護する相手となれば、こっちのやり方を譲歩した方がいいのだろう。

 

「わかった約束する。その代わり情報をくれ。彼はセンティネルからも逃げていると聞いている」

「それじゃ、彼の家に行ってみたらいいと思う。ここからだと丘の向こうにあるよ。彼なら誰かに知らせようとそこに手掛かりを残していると思うんだ。

 セキュリティは生きているから解除コードも教えるよ。利用してくれ」

「よし、それで手を打とう」

 

 フォックスに背を向けると目の前に雷電が立っていた。

 奴は何も言わず「いくぞ、ノマド」と言っているようにみえた。まるであの時の、俺達のように――。

 

 

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 カタリス26、我らの予備戦力は囚われていたリーダー復活と共にキングスレイヤー作戦は開始された。

 雷電の存在は当初こそ問題になるように思えたが、そんなことはなかった。

 

 指揮系統はボウマン、俺達、雷電の順であると明言され、本人もそれを了承していると口にしたからだ。

 そして実際、奴は飼われた犬のようにこちらの考えに特には意見を口にすることはなかった。

 

 だが安心はできなかった。作戦中、奴が何を考えているのかわからない。時に暴走したかのような態度をとると。信じられない曲芸をやって見せ、俺の考えた以上の結果を導き出すことが何度もあった。自分は飼い犬とは違う、そんな緊張感はいつもあったと思う。

 

 あれはボウマンの指示で奴らのプロパガンダ部門を攻撃した時のことだ。

 

 スエ―ニョは自身と自身の組織の悪評をとにかく嫌っていた。

 そこで自分が望む情報(英雄と讃えられる)を発信するため、多くの方法を持っていたが。その中で特に重要だったのが彼らカルテルが信仰する新興宗教である。

 

 ボウマンとノマドは当然これも叩き潰すことは決めていた。

 目を付けたのはセイントメーカーと呼ばれた女だった。

 

 彼女の役目は教会に属するカルテルのメンバーの憧れとして、組織に縛り付けるための忠誠心を植え付けさせることにあったと考えられていた。だが所詮はカルテルに雇われ、ボスであるスエ―ニョと同じく麻薬の金で作られたヒロインに過ぎない。彼女の説教から良く使われる単語として金に関係するワードをボウマンが見つけ出してきた。

 

 ノマドはカタリスの情報で金の関係する取引を中心に襲撃を繰り返した。

 組織が攻撃されていることを知っていたスエ―ニョはこれに期待通り敏感に反応する。組織への憎悪、とくにセイントメーカーに向けたと思われるこの一連の攻撃から。スエ―ニョは彼女に責任を取らせることを要求した、予想通りに。

 だがそれは無駄な事だ。なにせその時の彼女はすでにゴースト達によって丸裸の状態にされ、妄想にすがるただの無力な女性になっていたのだから。問題を解決できないと知って怒れるボスが、無能な部下を粛正するのは避けられない状況へと追い込まれていく。。

 

 だがここで内部で意見が分かれる――。

 ノマドはこのままスエ―ニョの手でセイントメーカーを殺させようと主張したが。CIAのボウマンは強くこれに抵抗し。最終的に上官の立場からゴーストと雷電に命令は下された。処刑されるセイントメーカーを確保せよ、と。CIAは彼女を組織壊滅の情報屋として使うつもりなのだ。

 

 

 しかしここにひとつ誤算が生まれていた。

 雷電が作戦が下される直前に別のファイルに目を通していたことを誰も知らなかったこと――。それは政府の内部文書であり、作戦に携わるものなら全員が目を通していたものの。ただひとり部外者の立場(よそもの)だった雷電だけは知らなかった。ただそれだけの、はずだった。

 

『スエ―ニョの犯罪記録:殺人7.000件、行方不明17.000件、誘拐 及び 児童誘拐……12.000件』

 

 ぼそり、感情の消滅した声で雷電は呟く「児童誘拐、だと?」と。機械の体の奥底で燃え上がる真っ赤な炎が生まれた瞬間だった。

  

 戦場では時折、そこに白髪の夜叉があらわれると兵士達は噂している。夜叉とは悪魔とは違うのだそうだ。

 それは(デーモン)でもあるが、(ゴッド)でもある。よくわからない存在。

 

 だが俺達はこの白夜叉が誰かは知っている。そいつは間違いなく怒り狂っていた。

 続く任務で、俺達はそれを目の当たりにした。太陽の下だろうと、闇の中であろうとそれは関係なかった。血の雨が降り続け、なのにジャングルの草木が哀れなシカリオ達の躯を覆い隠してしまった。


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