青年の異世界戦記〜ありふれた職業で世界最強〜   作:クロイツヴァルト

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第一話

 

 クラスメイト達はイシュタル先導の下で本山を出る正面の門は荘厳な造りをしており皆がその凱旋門もかくやと言った門をくぐりながら外に出ると目の前に広がる雲海、そしてその上を照らす太陽の光に反射してその雲海がキラキラと輝く。その光景にもまたため息を吐きたくなるほどに幻想的であった。

 

 そして歩いた先にあったの柵に囲まれた巨大な円形の白い台座であり彼らが召喚された時にあった物よりもなお大きく、その台座には同じく巨大な魔法陣が刻まれていた。その中で生徒達はその台座に乗るが柵の向こう側は一面が雲海の為にもしもの為に中央に寄り集まる。それを見たイシュタルは何やら唱えはじめるのである。

 

 「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれんーー〝天道〟」

 

 その瞬間、足下の魔法陣が光り輝きだしそのまま台座がまるでロープウェイの様に滑り出し、地上に向けて斜めに下っていく。

 

 「行き先は先ほど言っていたハイリヒ王国だったか…さてさて何があるやら」

 

 周りが初めて見る魔法に騒ぐ中で雲海に入れば更に騒ぎ出す。

 

 やがて雲海を抜けると目の前には地上が見えてきた街に、いや国が見える。山肌から迫り出す様に作られた国はそのまま城に始まりそのまま放射状に城下町が作られている。これが先ほど説明があり戒翔達が今から赴くハイリヒ王国なのである。そして戒翔達が乗る台座は王国の城の宮殿の中で一際高い塔と山の教会を繋ぐ空中回廊でその塔に繋がっているのである。

 

 「…下らんな、教会の威光を保つ為の演出か。」

 

 その情景を見て戒翔はそう断じた。 あからさまなその演出は他の生徒は感動している中で戒翔の様な感想を持つ者は皆無であった。

 

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 王宮に着くと、すぐに戒翔達生徒と担任の愛子は玉座の間に通されるのであった。

 

 道中では騎士らしき者やメイド達とすれ違うが、彼らの目は一様に期待や或いは畏敬の念が篭った目で一同を見ているのであった。 城の者達は彼らが何者なのかをある程度知っているのだろう。 一部の生徒は居心地の悪そうな表情をする中で天之河等は得意げに先頭を歩いている。ハジメは目立たない様に最後尾におり戒翔はそんなハジメの横に並んで歩いていた。

 

 そして案内された先には美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に二人の門番であろう兵士がイシュタル並びに勇者一行が到着した事を大声で告げて、中の返事も待たずにそのまま扉を開く。

 

 そして始まる国王の紹介から始まり重鎮達の紹介も始まる。国王の名はエリヒドと

言い、王妃はルルアリアである。 そして王子の名はランデル、王女のリリアーナと呼ばれた。

 

 そして自己紹介が終わるとそのまま晩餐会の流れとなり戒翔達はその異世界の料理に舌鼓を打つのである。時折出てくる異色のソースや飲み物はその見た目に反して中々の美味であり戒翔の中ではかなりの衝撃であった様である。

 

 そして、晩餐会が終わり解散となるがここでも皆が驚いたのは各々に個室が与えられる事でこれには女子のメンバーがとても喜んでいたのはやはり年頃なこともあるのだろう。そんな中で戒翔は早速部屋に戻ると胸元から龍の意匠がされたペンダントを取り出し備え付けの机に置きそこに向けて話しかけるのであった。まるでそこに誰かがいるかの様に。

 

 「無事にあの場所から出たのは良いがどうもまだ先が見えんな。」

 

 「今回は休暇も兼ねての世界移動だったから誰も知らないから助っ人も 期待出来ないしね?」

 

 机に置いたペンダントの龍の眼の部分に当たる藍色の宝石が明滅しながらそう答える。その声は少年の様であり青年の様にも聞こえた。。

 

 「現状は様子見のままで行くしかあるまい。この世界は俺も知らん事が多過ぎるし無闇に動いて何か起きては後手に回る事があるかも知れん。」

 

 「そうだね、確かに現状では出来る事は無いからそれしか無いけどどうするの?」

 

 「それを決めるのは明日行われる事次第だな。彼らに力があると言われているし明日はその力の確認だろうからそれ次第かな?じゃ、俺はもう休む。ナハトも周囲の警戒もしても良いが極力バレない様にしろよ?」

 

 「そっか、まぁ戒翔の場合はまた規格外な内容だろうけどね。お休み、マスター。」

 

 戒翔の言葉にそう楽しげに返すナハトと呼ばれた存在はそのまま眠る戒翔を見守る様に静かに明滅するのであった。そして翌日……

 

 訓練と座学が始まりそれにあたって生徒達及び愛子にはやや小さめのカードの様な物が渡される。それを不思議そうに見る生徒達に騎士団長であるメルド・ロギンスが直々に説明を始めるのである。

 

 それを見て戒翔は雑事に団長が来ても大丈夫なのか思ったのだがそれを他の生徒が聞いたが本人は気にした風もなく面倒事は副団長に押し付けもとい任せる事が出来ると豪快に笑いながら言っている位である。それを聞いて

 

 (副長は苦労人か、団長は豪放磊落といった感じの人間の様だし副長も大変だなぁ)

 

 そんな事を戒翔は考えている様だが彼が引き起こした面倒事もまた周りの者達の尽力もあり解決しているので彼も人の事は言えないのである。

 

 「よし、皆に配ったこのプレートはステータスプレートと呼ばれている。これは文字通り自身のステータスを数値化して見る為のであり身分を証明する為の物でもある。決してなくすんじゃ無いぞ?」

 

 やたらとフレンドリーな喋り方をする団長だがこれから一緒に戦う仲なのだから他人行儀な話し方など出来るかと言い他の団員にも普通に接する様にするほどであり、彼の人望が伺える一面であった。

 

 「プレートの一面には魔法陣が刻まれていてな、先程一緒に渡した針で指に傷を作り血を一滴、魔法陣に垂らせばそのプレートは君達の物と認識される。そして〝ステータスオープン〟と唱えれば表の面に自身のステータスが現れる筈だ。原理とか聞かれても分からんから聞くなよ?原理とかそんな物は知らんからな。神代の頃からあるアーティファクトの類だからな。」

 

 「様はマジックアイテムの部類か」

 

 メルドの説明に戒翔はそう呟き自身の血をそのプレートに垂らし浮かび上がってくる文字を見てやっぱりかと言うくらいに苦笑する。そこに記されていたのは

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 御坂戒翔 17歳 男 レベル ???

 

 天職 練装士

 筋力 error

 体力 error

 耐性 error

 敏捷 error

 魔力 error

 魔耐 error

 技能 宝具生成+真名開放・荒神化+部分変化・複合魔法・錬成・対魔力・魔力操作 ・自在法・言語理解・龍化+部分変化・換装魔法+装備登録・自己再生・不老不死・神霊召喚・聖霊魔法・雷化・炎化・合成魔法・感化法・空想具現化・複合型魔眼(直死・龍・解析・改変・歪曲・威圧・未来視)王の財宝・闇の魔法

 

 (これでも結構簡略化されている訳だが、不味い技能が目白押しだな。)

 

 そう判断した戒翔は苦笑を零し他の生徒を見る。様々な表情の中でこの世界に来てから何かと親交のあるハジメが浮かない顔をしている事に気づくと直ぐに移動を始める。その中でメルドが全員に聞こえる様に話し始める。

 

 「全員見れたか?説明を始めるぞ?先ず、最初にレベルがあるだろ?それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりそれはその人間の限界を示す。つまりレベルはその人間が到達出来る領域の現在値を示しレベル100と言うのは人間とししての潜在能力の全てを発揮した極地ということだ。ま、そんな奴は早々いないがな。」

 

 そう言ってメルドは笑う。

 

 「ステータスは日々の鍛錬で当然だが上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることも出来る。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる傾向にある。これは詳しい事が分かっていないが、魔力が保持者本人が無意識に補助しているのでは無いかと考えられている。それとお前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけよ!なんせ救国の勇者一行だからな。国の宝物庫大開放だぞ!」

 

 メルド団長の話を聞いて魔物等を倒して成長するのがまるでゲームの様だと戒翔は感じていた。

 

 「次に〝天職〟についてだが、それは言うなれば〝才能〟だ。末尾にある〝技能〟と連動していてな?その天職の領分であれば無類の才能を発揮する。天職持ち少ない戦闘系天職と非戦闘系天職の二つに分類されるんだが、戦闘系は千人に一人の割合だ。でだ、非戦闘系も少ないは少ないが……百人に一人の割合だ。十人に一人という珍しくもないものも結構多くある。生産職は持っている奴が多いな。」

 

 そこで戒翔は再びステータスプレートに視線を移せばそこには練装士と記されておりどう見ても生産職では無かった。が、練装士とは何だろうと考える。

 

 「後は参考までに言っておくが、大体がレベル1の平均は10くらいだな。まぁ、勇者一行であるお前達ならその数倍や数十倍はいってるだろうががな!全く羨ましい限りだ!あ、ステータスプレートの内容は報告してくれよ?今後の訓練の為の参考にしなければならんからな。」

 

 メルドの言葉に戒翔は自身のステータスをどうしたものかと思案していたが不意にどうにか操作出来るのが分かった途端に色々と修正を始める。…そして

 

 「こんな物かな?」

 

 そう言う戒翔のステータスは以下の通りである。

 

 御坂戒翔 17歳 男 レベル1

 天職練装士

 筋力100

 体力150

 耐性100

 敏捷200

 魔力200

 魔耐100

 技能 言語理解・複合魔法・錬成・換装魔法+装備登録・雷化・自己再生・感化法・歪曲の魔眼・闇の魔法

 

 色々と弄った結果がこの通りである。 一応これを記録しておき、信頼出来る者には正式なものを見せてそれ以外には偽の情報を公開する事に決めた戒翔であった。その間に他の生徒達のステータス確認が終わり残すは戒翔とハジメの二人だけとなる。

 

 「後はお前達二人だけだな。先ずはそっちの背の高い坊主からだ。」

 

 そう言ってメルドは戒翔を呼ぶ。戒翔はとりあえずこのステータスで大丈夫だと思いそのままメルドに差し出す。

 

 「練装士?見たことも聞いた事も無い職業だな。未発見の新職なのかも知れんな。さて、ステータスがは……なんともはや一部は勇者に優っている上で俺の知らない技能もあるし魔眼持ちか。どんな魔眼なんだ?」

 

 「歪曲とある通り何かを歪めたりするのに使うのでしょう。」

 

 「なるほど、他にも聞きたい事があるが…また機会があれば聞きたいな。………教えていない改竄もしている様だからな。」

 

 「えぇ、それはもう是非。」

 

 そう言ってメルドは戒翔にプレートを手渡し戒翔も真剣な表情でそう答える。改竄した事には流石は騎士団長というだけあり直ぐに気付くが察してなのかその場では言わずに戒翔を生徒達の下へと帰す。

 

 そして戒翔が周囲の観察をしていると戒翔の下に凛とした雰囲気のポニーテールの少女が近づいて来る。

 

 「戒翔、どうだったの?」

 

 「雫か、なに。団長殿も知らない職業の様だから時間が出来れば書物庫に行って調べようと思うがもしなければ手探りで鍛錬方法を模索しなければならないな。それよりもハジメの事だから大丈夫だと思うが、あの檜山には気を付けておいた方が良い。ああ言う輩は力を持った瞬間には何をしでかすか分からん。イジメがさらに過激になる恐れもある。まぁ、そこは俺も監視するから雫はあの無自覚ナルシストのストッパー役は頼むぞ。」

 

 「おいおい、南雲。もしかして非戦闘職か?鍛治職でどうやって戦うんだよ?」

 

 雫と呼ばれた女生徒と話をしている時に檜山が声をわざと大きく聞こえる様に声を張りあげる。それを聞いて戒翔はため息を吐き

 

 「雫、少しあの阿呆を止めて来る。」

 

 「あ、戒翔」

 

 雫が止める隙も無く戒翔は檜山の首に手刀を打ち込み意識を刈り取りその足で取り巻きをしている男子生徒が持っている南雲のプレートを取り上げる。

 

 「あ、何すん……」

 

 不満の声をあげようとした男子は戒翔の睨みつける様な目を見て言葉が出ずに後退りする。そしてその一部始終を見ていたメルドも戒翔の動きに目を見張る。召喚されたばかりの人間の動きでは無く無駄が一切無く他の生徒達には一瞬のことで何が起きたか認識すら出来ていなかった。

 

 「貴様等は阿呆か、こんな所まで来て他人をそれも気が弱い者を標的に選び蔑むなど程度が知れるわ!文句があるのならこの俺にも同じ事をしてみろ」

 

 笑って見ていた生徒をぐるりと見渡して戒翔は怒気を抑える事もせずにそう叫ぶ。するとバツが悪い様に笑っていた生徒…主に男子だが戒翔の目を見ないように一様に逸らすのを見て戒翔はアホらしかったのかため息を吐き

 

 「睨み返すくらいも出来ないくせにみみっちい事をしおってからに…おい、そこのバカの取り巻き一号」

 

 「い、一号って俺のことか!?」

 

 「それ以外に誰がいる?」

 

 「俺には斎藤って名前があるんだ!一号って名前じゃ無い!」

 

 「あのバカに同調してイジメをしている時点で俺は貴様の名を呼ぶ気はさらさら無いわ。呼んで欲しければ自身でどうすれば良いのか振り返るのだな。それとそこでのびてるバカを連れて行くんだな。」

 

 「くっ、お前達行くぞ!」

 

 そう言って斎藤は他の取り巻きに声を掛けて檜山の肩を両方から支えて一番後ろの方まで下がり戒翔の視界に入らないように消える。

 

 「ほれ、ハジメ。お前のプレートなんだから簡単に取られてどうする。」

 

 「あはは、戒翔ありがとう。だけど僕はああいった連中って苦手で」

 

 「それもそろそろ改善せんといかんぞ。もう俺達の常識で考えていては足下を救われるばかりか下手をすれば死ぬ事も有り得るのだからな」

 

 ハジメの言葉に戒翔は厳しい表情で厳しいことをハジメに告げる。

 

 「そもそも後方支援だからと安易に考えているのなら改めろ。戦争ではむしろその後方支援の部隊から叩かれるのは定石なのだからな。お前の好きなゲームでもそうであろう?」

 

 「確かに…でもどうすれば良いの?」

 

 「それはこれから話があるだろう。その為にあの男が説明をしているのだからな。基本的に素人のお前達ではどう逆立ちしてもいきなり戦争してくれと言われてはい分かりましたといかんだろう。」

 

 「そうだね。」

 

 「なに、安心しろ。いざとなれば俺が貴様に死なない程度には戦闘技術を叩き込んでやる。こう見えて俺はそれなりの場数を踏んでいるからなぁ。」

 

 そう言って獲物を見る様な戒翔の視線を受けてハジメはこの世界に来て初めて不安を覚えるのであった。

 


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