青年の異世界戦記〜ありふれた職業で世界最強〜   作:クロイツヴァルト

7 / 9
第六話

 

 

 「此処がハジメの拠点か。」

 

 「死に物狂いで錬成したただの穴蔵だけどよ、奥にとんでもないのがあるから驚くなよ?」

 

 ハジメに案内された場所は壁の近くに出来た横穴のような場所である。訝しげな表情の戒翔に悪戯をする子供の様な表情のハジメに益々訝しむが洞穴の奥に行くとその言葉の意味を知る。

 

 「これは……神結晶か!しかもこんなに巨大な物は地上でも知らないぞ…!?」

 

 「だろうな。俺も最初に気付いた時には驚いたさ。だけどこれで俺が此処を拠点にしている理由が分かったか?」

 

 「当たり前だ。これで分からんと言える訳がないだろう。貯蔵は出来るのか?」

 

 「一応アンプルの容器で保存しているよ。何かあったらすぐに飲める様にだけどな。」

 

 そう言ってハジメは腰にあるポーチから中身の液体薄く光る青い色に輝くアンプルを見せる。

 

 「……確かにそれならば大丈夫だろうな。それにハジメの無事とはいえないが生存も確認できたしもう少し準備したら移動を始めよう。ずっと此処にって訳にも行かんしな。」

 

 「あぁ、周辺を探しても上に行く為の階段は見つからないが下へ行く階段は見つかったんだ。」

 

 「なら十分に準備をしなければならんな。特にハジメだがな。」

 

 「確かにそうだが戒翔は大丈夫なのか?言っちゃなんだがここの階層ですら俺達のいた階層の魔物に比べて段違いの強さだぞ?」

 

 「……そういえばハジメには俺のステータスを見せていなかったな。」

 

 そう言って戒翔は隠蔽無しのプレートをハジメに渡す。ハジメもまたこの階層に落ちてから得た能力を記したプレートを戒翔に渡す。

 

 「…………ナニコレ」

 

 「ほぅ、かなり強くなったじゃないか。最初に見せてもらった時に比べて雲泥の差だな。」

 

 「なぁ、戒翔。俺の見間違いじゃ無ければスキルってこの世界に来てから発現する物なんだよな?天之河のステータスが可愛く見えるし、俺のステータスですら霞むぞ。」

 

 「当たり前だ。そもそもこんな物をそのまま見せれば問題にしかならんわ。だから速攻で隠蔽及び改竄したんだよ。」

 

 「マジかよ……。でもこれならある程度の安全の確保がしやすくなるな。」

 

 戒翔の言葉にハジメは呆れた表情をしつつも安堵する。

 

 「何を安心している。確かに二人で協力するのは当然だがおんぶに抱っこでは困るからな。ここから脱出する迄にある程度戦闘もこなせる様に訓練するぞ?ハジメの持つ銃は強力だがそれ以上に近接が弱いからな。ミッチリとやるからな。」

 

 「………マジ?」

 

 「当たり前だ。確かに俺が近接をやれば事が済むが俺は基本的に遠近中距離と選ばない戦いが出来るからな。出来ればハジメもそう言った戦いが出来るようになって欲しいが先ずは接近されない様に訓練だな。」

 

 ハジメの安堵の言葉に戒翔は呆れた表情のままにハジメに厳しいことを言う。

 

 「当たり前だ。先ずは相手の動き出しを見極める所からだな。その要がお前のスキルになった〝纏雷〟だな。」

 

 「なんで〝纏雷〟なんだ?」

 

 「気付かないのか?人間の反射神経ってのは体の微弱な電気信号なんだよ。なら字的に雷を纏うって事はそれに伴う行動に補正が入る筈だ。」

 

 「考えもしなかったな。戒翔、お前ってやっぱりすごいな。」

 

 「こんな事はある程度勉強をしていればわかる事だ。しかし雷を身に纏うなんて事は現実には起こり得ないから考えもしないだろうな。」

 

 戒翔の言葉にハジメは驚きのあまりに目を大きく開く。

 

 「まぁ、俺のスキルの〝雷化〟の場合はもっと反則だがな。」

 

 「どういう事だ?」

 

 「それはな、文字通りの事だよ。自身の体を雷そのものに変えるんだよ。」

 

 話をしながらも銃の整備及び錬成をしていたハジメは戒翔のその言葉に錬成の手を止めて戒翔の事をマジマジと見る。

 

 「……はい?」

 

 「んで、その状態だと雷と同じ速度で移動し、高速思考に反射神経や動体視力の超強化に加えて触れたものに雷に触れたのと同じ状態にしつつ物理攻撃は完全無効になる。」

 

 「……それってなんてチートだよ。」

 

 「速度なんかが上がる反面に一撃の威力が下がるがそこは工夫をすれば克服できるから問題ないが。つまりはそういうことだ。言い方は悪いが俺の〝雷化〟はハジメの〝纏雷〟の上位互換の様な物だ。」

 

 「つまりこのスキルを使い熟すことが出来れば」

 

 「大幅の戦力の幅が広がるって事だ。分かったら少し休んでから魔物で実戦訓練するからな。危ないと思ったら俺が助けるから安心しろ。」

 

 「安心しろって」

 

 「生きるか死ぬかの境目はしっかりと把握しているからな。」

 

 「それは安心できる要素が何一つ安心できねぇよ!」

 

 戒翔の言葉にハジメはこれから始まる地獄の様な訓練に悲鳴を上げる。

 

 「大丈夫だろ。実際にハジメは死ぬ思いでこの力を手に入れたんだ。それに元の世界いに帰りたいって思いがあるんだろ?人間ってのは想いが強ければ強い程強くなれる生き物だ。」

 

 戒翔の何処か重みのある言葉にハジメは知らず知らずのうちに真面目な表情になる。

 

 「分かった。戒翔の言う通りだな。俺ももっと強くなって無事に元の世界に帰りたいからな。」

 

 「ではでは、南雲ハジメの魔改造計画の始動だな!」

 

 「今の一言でメチャメチャ不安になってきたぞ……!?」

 

 戒翔の言葉にハジメが一気に青褪める。ハジメの明日はどうなる。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。