ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

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裁判です。オシオキは少し間があくかもしれません。あと少しだけ、2章にお付き合いください。
今年中に3章入るのが目標です。


非日常編 2

 

裁判場が静まり返る。

その無音の空間を打ち破るようにモノパオは意気揚々と声をあげた。

 

「ではでは、もう分かってると思うけど、改めて学級裁判の説明をしておくパオ!この中にいる犯人…クロを当てられたらクロだけがオシオキ、間違えたらクロ以外のミンナがオシオキ。それだけのとっても簡単なルールパオ!」

 

オシオキ、なんて子どもみたいな言い方をしても実際に待ち受けているのは処刑…死だ。

下がっていく体温に気づかないふりをしながらどうにか口を開く。

 

「…まずは、状況の整理をしよう。」

 

 

 

 

 

□□□学級裁判 開廷!□□□

 

 

 

 

 

前木「状況…とりあえず、ファイルを確認すればいいんだよね。」

 

宮壁「ああ、発見当時の状況を振り返ってみよう。」

 

篠田「そうは言っても最初に牧野を見つけた東城と宮壁、2人の情報がほとんどのはずだ。説明してもらってもいいだろうか?」

 

横目で東城を見てみるけれど、同じように視線で返された。

 

宮壁「分かった。俺が説明する。」

 

 

 

―コトダマ提示―

 

 

 

 

 

▼[モノパオファイル2]

宮壁「これで説明させてもらう。」

 

 

 

宮壁「牧野はトラッシュルームにあるダストホールに転落した事で死んだ。ファイルにも書いてある通り、死亡時刻は俺達が見つけたのとほぼ同時だ。だから、その前まで牧野は生きていたんだと思う。」

 

…説明してしまえば淡々としたものだけど、やっぱり悔しい。

直前まで生きていたはずの牧野に気づかず、落ちてしまったのだとしたら…もしかしたら、いや、もしかしなくても救えていたのだろうから。

 

難波「アンタ達はなんでトラッシュルームに入ったんだっけ。」

 

潜手「たしかにー、東城さんなんて理科室と食堂以外ではめったに見ないですかーらねー!」

 

東城「どこへ行こうがボクの自由じゃないのかな。」

 

三笠「…お主の普段の言動のせいじゃないのか…?」

 

…話がずれてきている。とりあえず俺達が牧野を見つけた流れを説明していこう。

 

 

 

―議論開始―

 

 

 

宮壁「俺は大浴場に向かった時に東城にたまたま出くわしたんだ。」

 

柳原「え?宮壁さん、あの後大浴場に行っていたんですか?」

 

潜手「あの後…でーすかー…?」

 

柳原「はい!おれと宮壁さんはその前にお風呂に行こうとしていたんです!難波さん達が邪魔をしてきたせいで、結局宮壁さんは入れなかったんですけど…。」

 

難波「は?邪魔?」

 

柳原「邪魔してきたじゃないですか!」

 

難波「してねーし!むしろ邪魔してきたのはそっちなんだけど!」

 

まずい、そんな事言ってたらまた怒られるぞ…!

 

宮壁「と…とにかく!俺はあの後もう1度大浴場に向かったんだ。」

 

東城「ちなみにボクは入浴剤の実験をしようと思って大浴場に行ったよ。」

 

前木「な、なんだか、怪しい事しそうで怖いね…。」

 

三笠「うん?2人とも大浴場に入ったのか?だとしたら【牧野に気づくタイミングはない】のではないか…?」

 

途中話が脱線しまくっていたけれど、やっと議論が進みそうだ…!

 

 

 

 

 

▼[大きな音]→【牧野に気づくタイミングはない】

宮壁「いや、これがあったから気づけたんだ。」

 

 

 

三笠「音…?」

 

宮壁「ああ。俺達がお風呂に入ろうとしていたらトラッシュルームから何かが落ちるような音がしたんだ。それで何があったのかと思って急いで駆けつけたら…ああいう状況になっていた。」

 

三笠「なるほど。それなら納得だ。」

 

前木「えっと…落ちる音がしてすぐに駆けつけたんだよね?その時に犯人と会う事はなかったの?」

 

東城「犯人らしき人物はどこにもいなかったよ。トラッシュルームの中にもいなかった。」

 

前木「ど、どういう事…?犯人が牧野くんを落とした音かと思ったけど、そうじゃないのかな…?」

 

安鐘「もしくは…他に落ちたものがあったのでしょうか?」

 

宮壁「いや、あの音は牧野が落ちた音で間違いないはずだ。他に落ちたものであんなに大きな音がするものはないと思う。」

 

勝卯木「………不明……。」

 

難波「そもそも牧野がそう簡単に落とされたりする訳?柳原とかみたいに力がないなんて事もなかったし、急に突き落とされる事なんてあんの?」

 

…そうだな…牧野に何があったのか、次はそこから暴いていこう。

 

 

 

―議論開始―

 

 

 

宮壁「難波はどう考えているんだ?」

 

難波「うーん、落とされただけじゃなさそうだなって思って。」

 

潜手「どういう事ですーかー?」

 

難波「誰が牧野を落とすにしろ、よっぽど力がある奴に押し込まれて落とされたりしない限りはああいう微妙に狭いところから落ちたりしないでしょ。【事故で落ちた】訳でもなさそうだし。」

 

安鐘「そうですわね…。あ、これならどうでしょう?」

 

安鐘「トラッシュルームの床には血が広がっていましたし…【落ちる前に怪我を負っていた】のではないでしょうか?落とされる時、すでに牧野さんは弱っていたのかもしれませんもの!」

 

あの人がいい案を思いついてくれたな。そこに同意すれば話が進むはずだ…!

 

 

 

 

 

▼[腹部の傷]→【落ちる前に怪我を負っていた】

宮壁「その通りなんだ。」

 

 

 

安鐘「まあ、やっぱり、牧野さんは怪我をされていたのですか…?」

 

宮壁「ああ。お腹に何かで刺されたような傷ができていた。」

 

篠田「転落した後に刺す事は不可能だから、その前に刺されたので間違いないだろう。」

 

安鐘「そんな…わたくし自身が言った事ですけれど、その時はまだ死んでいなかったのですよね?とても…痛そうですわ…。」

 

潜手「ほわわー……、想像したくないですー…。」

 

難波「刺された…どんなものだったのか、どっかに落ちてねーの?」

 

 

―コトダマ提示―

 

 

 

 

 

▼[ダストホールの刃物]

宮壁「それならダストホールに落ちていた刃物がある。」

 

 

 

難波「刃物ってどんなやつ?」

 

東城「ナイフみたいなよくある物だったね。包丁のようにも見えたけれど。ちなみに今回は倉庫から持ち出されたものは何もないよ。物の数に変化はなかった。」

 

難波「ふーん?じゃあそれ包丁だと思うわ。」

 

宮壁「そういえば、包丁がなくなったって言っていたよな。」

 

難波「厨房のね。ちょっと小さ目の包丁がなくなってたから、倉庫の物が減ってないんだったらそれだと思うわ。」

 

そこについては誰も反論はなさそうだ。それにしても、どうして犯人は大きい包丁を持って行かなかったんだろうか…?

わざわざ密室状態を作り出しているのだから、最初から転落させる事が目的だったのかもしれない。でもそれなら尚更動けなくなるような深い傷を負わせた方が楽だと思うけれど…。犯人の目的が全く見えてこないな。

 

前木「とりあえず今分かっているのは、犯人は食堂から包丁を持って行って、トラッシュルームにいた牧野くんを刺したって事だよね…。それにしても、どうして牧野くんはトラッシュルームにいたんだろう?何か用事があったのかな?」

 

柳原「用事ならあの人に聞けば分かるはずです!」

 

柳原が言っている人…そうだな、あの人に話してもらおう。

 

 

 

―コトダマ提示―

 

 

 

 

 

▼[三笠の証言]

宮壁「三笠、説明してもらっていいか?」

 

 

 

三笠「ふむ、牧野はショーの片付けの後、1人でゴミ捨てにトラッシュルームに向かった。6時頃だった。」

 

前木「あれ…?でも、アナウンスが鳴ったのはそれから3時間も後だよね?牧野くんはその間ずっとトラッシュルームにいたの?」

 

三笠「いや…そこまで時間がかかるほどのゴミは持って行っていなかったはずだ。」

 

高堂「牧野がそれぞれの時間にどこにいたのか…順番に整理していくのがいいと思う。」

 

とは言え、目撃証言の数はかなり少ない…。皆の話をしっかり聞きながら情報を整理していこう。

 

 

 

―議論開始―

 

 

 

三笠「ショーの後、牧野が倒れたから保健室に運ばれた。その後6時までは自分達と片づけをしていたな。」

 

高堂「あたしと三笠はそこで牧野と別れた。1人でトラッシュルームに向かったらしいけど、そこからはあたしは見てない。」

 

篠田「そして牧野を見つけたのは東城と宮壁。時間は9時頃だったな。」

 

東城「その間…死ぬまで何をしていたのか、見つけた人はいないのかな?」

 

 

…あいつに聞けば、話してくれるだろうな。

 

 

 

 

 

―コトダマ提示―

 

▼[勝卯木の証言]

宮壁「勝卯木、お前は見たって言っていたよな。」

 

 

 

篠田「そうなのか?」

 

勝卯木は篠田の問いかけに無言でうなずいた。

 

勝卯木「…6時10分11秒。保健室、牧野、出てきた……。」

 

三笠「そうなのか?保健室に用事があるなど、一言も言っていなかったが…。」

 

高堂「何しに行ったか分かる?何か持っていたとか。」

 

勝卯木「……よく分からない…けど、持ってた…。」

 

宮壁「そうなのか!そんな事捜査では何も言ってなかったのに…。」

 

勝卯木「聞かれてない。」

 

俺が悪い事をしたつもりは全くなかったけれど睨まれて思わず肩をすくめてしまった。

 

宮壁「す、すみません…。ゴミ袋とかは持ってたか?」

 

勝卯木「ない…。」

 

…。それを踏まえると牧野はトラッシュルームに行った後、保健室に向かった事になる。

 

前木「忘れ物をしていたとか?ほら、ショーの時にも保健室に運ばれてたし。」

 

高堂「忘れ物は特になかったと思う。」

 

何をしに行ったのか気になるけれど、これ以上の目撃証言は誰も持ってないだろうし、また後で必要になった時に話す事にしよう。

 

大渡「…なんで誰も外に出てねぇんだよ。普通その時間ならもっと発見されていてもおかしくねぇだろ。」

 

難波「はぁ?引きこもりのアンタにだけは言われたくないんですけど。」

 

大渡「うるせぇ。」

 

前木「外に出ていなかったっていうより…アリバイがある人…誰かと一緒にいた人が多いからじゃないかな?」

 

潜手「そうでーすねー!潜手めかぶもみなさんと一緒に食堂にいた時間が長かったでーすー!」

 

話が進むか分からないけれど…今は皆のアリバイをまとめた方がよさそうだ。

 

 

―コトダマ提示―

Q全員のアリバイを説明できるコトダマを複数個提示せよ。

 

 

 

 

 

▼[高堂の証言][安鐘の証言]

宮壁「2人に説明してもらおう。」

 

 

 

宮壁「高堂、安鐘。2人に分かる範囲で自分と周りのアリバイについて説明してほしい。」

 

安鐘「捜査で話した事をもう一度説明すればよいのですね。分かりましたわ!」

 

高堂「…………。」

 

宮壁「高堂?」

 

高堂「あ、ごめん、ぼーっとしちゃって。アリバイね。分かった。」

 

安鐘「ではまずわたくしから説明させていただきますわね。わたくしと難波さんと前木さんはショーが終わった後、7時から8時半まで大浴場、その後は食堂にいましたわ。」

 

高堂「あたしとめかぶちゃんは7時半くらいからずっと食堂にいた。鈴華ちゃんの言ってる事も合ってる。」

 

東城「ボクと宮壁クンは9時前くらいから行動を共にしているよ。他にはあるのかな。」

 

柳原「おれと宮壁さんは8時から8時半くらいまで一緒にいました!その後は知りませんが…。」

 

三笠「ふむ…自分はアリバイはないぞ。」

 

篠田「私もだ。」

 

難波「この様子だと大渡もアリバイねーじゃん?人に言う前に自分が出歩けっつーの!」

 

大渡「出歩いてたせいで殺されている奴がいるのにも関わらず、か?」

 

……滅多に喋らない癖に大渡のせいで空気は最悪だ。とりあえず、忘れない内にアリバイをまとめてしまおう。

 

宮壁「前木、安鐘、難波は7時から。高堂と潜手は7時半から。正直俺と柳原、東城のアリバイは時間が短いから役に立つか分からないけれど…一応部分的にある。後の勝卯木、大渡、三笠、篠田はアリバイと呼べそうなものはないって事だな。」

 

東城「そうは言っても牧野くんを最後に見たのは6時すぎだ。7時までは誰もアリバイがないし、参考になるかは怪しいところだね。」

 

篠田「そろそろトリック…あの現場について話した方がよさそうだな。」

 

潜手「わ、分かりますかーねー…?すっごく、難しそうでしたー…。」

 

高堂「見つけなきゃ、いけないと思う。」

 

……。話すしか、ないんだろうな。

牧野を弔うのはその後だ。

 

 

 

―議論開始―

 

 

 

宮壁「まずはあの部屋の状態から話していきたいと思う。」

 

篠田「そうだな。今のところ分かっている事と言えば…音がした事くらいか。」

 

 

―コトダマ提示―

 

 

 

▼[鍵のかかった扉]

 

 

宮壁「ああ。実は、俺達が来た時はトラッシュルームには鍵がかかっていたんだ。」

 

安鐘「では、あそこは密室だったという事ですの…!?」

 

前木「宮壁くん達はどうやって入ったの?」

 

宮壁「モノパオに開けてもらった。」

 

潜手「犯人さんはー、【外から鍵をかけた】って事ですーかー?」

 

大渡「扉に【つっかえ棒】が立てかけてあった。あれじゃねぇのか?」

 

東城「いや、鍵はかかっていたけれど…。」

 

東城が言いたい事はおそらく「あの事」についてだろうな…。

 

 

 

 

 

▼[トラッシュルームの扉]→【外から鍵をかけた】

宮壁「知らない人もいるだろうから伝えておこう。」

 

 

 

宮壁「潜手、実はトラッシュルームの扉は内鍵なんだ。だから犯人が外側から鍵をかける事は出来なかったはずだ。内側のつまみを回す必要がある。」

 

東城「ちなみに、つっかえ棒もあったけれどほとんど意味はなかっただろうね。扉までの長さも合っていなかったようだから。」

 

潜手「そうなんですーねー…!じゃあ、犯人さんは内鍵をかけたって事ですーよねー?どうやってそんな事ができたんでしょうかー…?」

 

前木「次はそれについて話していけばいいんだよね…!あまり捜査してないところだから、皆の捜査の結果を教えてほしいな…!」

 

よし、次はその事について話し合っていこう…!

 

 

 

―議論開始―

 

 

 

安鐘「犯人はトラッシュルームの中にはいなかったのですよね?」

 

宮壁「ああ。どこにもいなかった。」

 

難波「という事は犯人は外から内側の鍵をかけて出て行ったんでしょ?」

 

三笠「そう言えば、扉の小窓が開いていたな。あそこから【何か長い物を使って】つまみに当てたのではないか?」

 

前木「トラッシュルームには物がいっぱいあったし、その内のどれかを【落とした】とか…?」

 

…うーん、どれも違う気がするけれど…。だけど、あの小窓を使ったのは間違いないはずだ。

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

『支援』

▼[フェルトの輪っか]

柳原「これが答えのはずです!」

 

 

 

篠田「トラッシュルームに落ちていたものだな。」

 

柳原「はい!おれの推測になりますが、犯人はこの輪っかの部分をつまみに引っかけて、先についている糸を小窓から外に出し、自身も部屋から出て扉を閉めた後、その糸を引っ張ったんだと思います!」

 

東城「なるほどね。筋は通っていると思う。それにしても変だね。」

 

柳原「何がですか?」

 

東城「キミはそこまで推理が得意ではなかったと思うのだけれど。」

 

柳原「勉強しましたからね!これからは任せてください!役に立ちます!」

 

東城「…ふうん。」

 

難波「小窓は何で割ったか、次はそれが分かればいいんじゃね?」

 

高堂「後は犯人が扉を閉めて出て行ったタイミング。犯人がいつ出て行ったかが分かれば、どのアリバイが成立するのかも分かるから犯人に近づけると思う。」

 

前木「そうだね!だんだん分かってきた気がする…!」

 

とりあえず、まずは小窓を割った物が何なのか…これを証明しよう。

 

 

―コトダマ提示―

 

 

 

 

 

▼[ダストホールの蓋]

宮壁「これじゃないか?」

 

 

 

宮壁「このダストホールの蓋、角に傷がついてるんだ。その傷がある部分には血がついていない。だから凶器として使った訳ではないはずだ、おそらく小窓を割るのに使われたんだと思う。」

 

難波「すっと思ってたけど、それ、なんで血がついてんの?」

 

前木「たしかに変だよね、血がかかったっていう感じじゃなくて、それって…手形みたいだもん。犯人が牧野くんを刺した時に手に血がついたとか…かな?」

 

三笠「もしくは…牧野が刺された部分をさらに蓋で殴られたというのはどうだろうか?」

 

篠田「それならば蓋にも傷がついていなければおかしいはずだ。何かにぶつけたような跡はその血のついていない角にしか存在していない。」

 

三笠「……なるほどな。」

 

三笠は何か気がかりな事があるのだろうか…?さっきから考え込んでいる事が多い気がする。

 

高堂「…小窓って、犯人が割ったの?」

 

宮壁「え?どういう事だ?」

 

高堂「あたしは、犯人がやった訳じゃないと思う。」

 

宮壁「なんでそう思うんだ…?」

 

高堂「そのダストホールの蓋についている血。牧野の手についているじゃないかと思って。」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

『支援』

▼[割られた小窓]

高堂「それに、これも証明の材料になると思う。」

 

 

 

 

 

前木「小窓…?でも、割られた以外に特徴なんてあったかな?」

 

高堂「あたしが言いたいのは破片が落ちている場所。廊下に破片が落ちているって事はトラッシュルームの中から割られた事になるよね。」

 

宮壁「それは犯人がやっても同じじゃないのか…?」

 

高堂「そもそも犯人ならダストホールの蓋なんかで割らなくても外からいくらでも物を準備してこれると思うんだけど…考えすぎかな。ごめん。」

 

柳原「いいえ、おれもそうだと思います!あれで割るのって難しいと思いませんか?棒状の…例えば工具とかで割った方が簡単だし危険じゃないはずです。だから…」

 

モノパオ「ぶえっっっくしょーーーーん!!!!」

 

…。

 

宮壁「急になんだよ!」

 

モノパオ「いやー張り切ってて偉いなって思って見ていたら結論を急ぎそうな人がいたからびっくりしすぎてくしゃみが出ちゃったっ!てへ!ごめんねっ!」

 

柳原「あ、えっと、みなさんごめんなさい…出しゃばりすぎました…。」

 

安鐘「謝る事なんてありませんわ。柳原さんはがんばってくださっているのですもの。」

 

柳原「安鐘さん…!ありがとうございます!」

 

安鐘「いえいえ。どういたしまして、ですわ。」

 

結論を急ぎすぎてはダメという事か?本当に、モノパオは俺達に何をさせたいんだ…。

 

柳原「そうだ、ずっと話そうとおもっていた事があるんです!裁縫セットについてなんですけど…。」

 

宮壁「ああ、そうだったな。」

 

東城「裁縫セット?今それが関係しているものなんてあるかな?」

 

柳原「さっき出ましたよ!フェルトです!」

 

三笠「ふむ、確かフェルトは糸で縫われていたと言っていたな。」

 

難波「あー…アタシは使った事ねーわ。まあ自己申告だったら誰も…あ、蘭は?前に使ってたよね。」

 

難波の一言で、場が静まり返った。

 

三笠「難波…実はほとんどの人から使っていないと確認も取れているのだ…。」

 

難波「え?マジで…?」

 

三笠「ほぼ全員に聞き取り調査を行っていたが、全員使った形跡はなかった。おそらく、勝卯木以外に裁縫セットを使った人はいないだろう。」

 

勝卯木「……私、使った……。でも、犯人、違う。」

 

前木「だ、だよね、だって、蘭ちゃんはアリバイ…は、ないんだっけ…えっと…。」

 

…確かに、ここにいる誰も勝卯木が犯人じゃない証明はできない。

だけど、犯人であるという証明もどこにもない。今断定してしまうのは絶対に間違っている。これくらいは判断力とか思考なんて関係なく言える事だ。

 

勝卯木「……証明、できない。……これから……する…。」

 

ここは勝卯木の強い意思を信じよう。

…前の裁判みたいに、1人を責めるような流れを作ってはいけない。

 

嫌な沈黙が続く事数十秒。その空気を破ったのは潜手だった。

 

潜手「あ、あのあーのー!」

 

三笠「どうした?」

 

潜手「話が進んでいるとは思うのですけーどー、1つ、気になる事があるんでーすよー!」

 

篠田「ふむ。潜手、ぜひ話してほしい。私もまだ謎に思っている事だらけだ。」

 

潜手「篠田さん…!わ、分かりまーした―!」

 

潜手の気になる事…?よし、とりあえず話を聞いてみよう。

 

 

 

―議論開始―

 

 

 

潜手「潜手めかぶ、やっぱり床の血が気になりまーすねー!今さっき、お腹を刺されたと言っていましたーがー…お腹を刺されただけで、あそこまで血が出るものなんでしょーかー?」

 

三笠「確かに…あの量はかなり異常な気がする。あそこまで血が出ていれば、普通ならば死因は転落死にはならないだろうな。」

 

前木「え?えっと…じゃああれは、【血じゃない】って事…?」

 

安鐘「血に代用できそうなもの…【血糊】などでしょうか?」

 

難波「いや、血の匂いはかなりしたと思う。あの匂いまで嘘っていうのは無理じゃね?」

 

篠田「…「血」ではあるのではないか?」

 

宮壁「どういう事だ?」

 

篠田「…【輸血用の血】の可能性はないだろうか?」

 

 

…あの人が正しい事を言っている気がする。

 

 

 

 

Q誰に賛同する?

 

A. 前木

B. 安鐘

C. 篠田

 

 

 

 

 

→ C

宮壁「これしか、考えられない…。」

 

 

 

前木「輸血…?そんな物、どこにあったの?」

 

柳原「保健室です。」

 

前木「…え?」

 

柳原「おれは捜査中、保健室に行きました!輸血パックがずらりと並んでいましたし、いくつかなくなっているようでした!」

 

宮壁「柳原、いつ保健室を捜査なんて…って、そうか、急に単独行動をした時か…。」

 

柳原「説明している間に捜査が終わってしまうかもしれないから、1人で行った方が早いと思ったので…。」

 

難波「待って。保健室に行った人って、牧野じゃね?…まあ、あの時間は誰もアリバイがないから断定はできねーと思うけど。」

 

宮壁「…牧野は輸血パックを持って行った。俺はそう考えてる。」

 

難波「なんか根拠があんの?」

 

根拠…これが何を示すのか、俺にはまだ判断できないけれど…。

 

 

 

―コトダマ提示―

 

 

 

 

 

▼[床の血痕]

宮壁「これだ!」

 

 

 

宮壁「この血痕は、机の脚があったところにはついていないんだ。ちょうど脚の形に跡ができている。」

 

柳原「つまり、机をこの位置に置いた後に血が床に流れた事になります。机は扉に寄せてありましたし、刺された後に机を移動したはずですから犯人がこの輸血パックを使う事はできなかったと思います。」

 

宮壁「俺も柳原と同じ意見だ。この輸血パックを誰が持ち出そうと、それを現場で使えたのは牧野だけなんだ。」

 

前木「なんで、牧野くんがそんな事をする必要があったの…?それじゃあまるで…」

 

前木は口をつぐんだ。言いたい事は皆同じだろう。

 

前木「牧野くんが犯人みたい…だよね。」

 

三笠「…!先ほど、今まで裁縫セットを使った事がある人は勝卯木以外にいないという話になっていたな。…牧野も犯人候補に挙がるのならば、裁縫セットを使った可能性のある奴は勝卯木だけではなくなるはずだ。」

 

…三笠の言っている事って、もしかして…!

 

 

―コトダマ提示―

 

 

 

 

▼[電子生徒手帳]

宮壁「そういう事か…!」

 

 

難波「は?その言い方だと、裁縫セットを使ったのも牧野って事になるけど。」

 

宮壁「その可能性が高い。実は玄関ホールにはクリアケースがあって、その中にある電子生徒手帳を使えばここにいない人の部屋に入る事ができるんだ。」

 

三笠「そして、桜井と端部の部屋を自分と大渡で見に行ったが使われた形跡はなかった。さらに重要なのが、そのクリアケースの中に牧野の電子生徒手帳は入っていなかったという事だ。」

 

大渡「…アイツの部屋には、アイツ以外には誰も入れなかったって事か。」

 

宮壁「ああ。後、フォローになるか分からないから言わなかったけれど…勝卯木は、裁縫が下手なんだ。」

 

勝卯木「……。」

 

凄い目で睨まれた…。仕方ない。これで勝卯木の疑いを晴らさなきゃいけないんだから我慢してもらおう。

 

宮壁「前に勝卯木が前木のスカートを縫っていた時、そのあまりの不器用さを見かねた牧野が代わりに縫っていた事があったんだ。」

 

前木「え!?あれ、蘭ちゃんじゃなかったの!?な、なんか変な気分だね…。」

 

……代わりに縫ってもらった事、言ってなかったのか…。

 

勝卯木「…縫い目……。」

 

難波「……あ!それだ!」

 

急に難波が大声をあげるから思わず肩がはねた。

 

宮壁「どうした急に…。」

 

難波「宮壁も思い出せるでしょ!牧野の縫い方!」

 

 

♢♢

♢♢♢

1章(非)日常編3

♢♢♢

 

 

痺れを切らしたのか、しばらくしてついに牧野が勝卯木に手を差し出す。勝卯木は観念したのか無言で手渡した。

牧野は思ったよりもスイスイと縫っていく。しばらく見守っていると縫い終わったのか勝卯木にスカートを返した。

 

「……縫い目、不思議…。」

 

「え?そう?」

 

確かに、牧野の縫い方変わってるな…なんというか、凝ってる。

 

「……変。」

 

「変でも縫えていればいいの!指血だらけにするよりマシ!」

 

「……刺してない。」

 

あああなんですぐ喧嘩腰になるんだ。たしかに牧野の縫い目は珍しいけど!

 

 

♢♢♢

♢♢

 

 

宮壁「…あの時の…!そうか、このフェルトの縫い目は、牧野ので間違いない!珍しい縫い方をするなと思ったんだ!」

 

柳原「もっと確実なのがあるんじゃないですか?」

 

宮壁「え?」

 

柳原「前木さんのスカートをここで見せてもらったらいいんです!」

 

前木「え、えっ?ぬ、脱げってこと?」

 

柳原「当たり前じゃないですか。真相を暴くためですよ!」

 

あ、難波にはたかれた。

 

難波「デリカシーなさすぎ。」

 

柳原「…おれは今どうして叩かれたんですか……?」

 

難波「それについても勉強してもらえると助かる。」

 

柳原「分かりました…?」

 

前木「……。」

 

隣で前木がしゃがんで自分のスカートを確認し始めたので俺は無言で天井を見る事にした。

 

前木「本当だ、フェルトのと同じ縫い目だよ。今日はたまたまそのスカートを穿いてたから焦っちゃった…。」

 

難波「フェルトも床の血も被害者である牧野自身が仕組んだもの…ねぇ。」

 

宮壁「…俺は、自殺じゃないと思っている。」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

三笠「その推理で果たして生き残れるか?」

 

 

宮壁「み、三笠…!?」

 

まさかここで反論がくるとは思わず、素っ頓狂な声をあげてしまった。

 

三笠「勿論お主の推理を全否定するつもりはない。ただ…ずっと気がかりな事があったのだが、話してもいいだろうか?」

 

宮壁「分かった。俺もまだ分からない事だらけだし、話し合ってみよう。」

 

 

 

♢反論ショーダウン♢

 

 

 

宮壁「三笠が気がかりに思っている事って一体何だ?」

 

三笠「ダストホールに落とした方法がいまだによく分からない。」

 

三笠「犯人は牧野よりも先にトラッシュルームに入り、準備しておかなければならないはずだ。牧野がトラッシュルームに行く事を知っていなければ準備すらできないだろう。」

 

…たしかに。

いや、納得してどうするんだ。この事を認めてしまったら今までの推理は間違っている事になる。

今まで出した結論は間違っていないはずだ。この疑問をどうにか解消しないと…!

 

宮壁「…牧野が犯人を呼び出していれば、状況は全く違ってくるはずだ。」

 

三笠「あくまで返り討ちされたと言いたいのか?」

 

宮壁「その可能性が高い…俺はそう思っている。」

 

三笠「あいつにそんな様子はなかったが?」

 

宮壁「牧野はメンタリストだ。自分の本心を隠す事くらい造作もないはずだ。」

 

三笠「…ふう。宮壁、何を急いでいる?」

 

宮壁「俺は何も急いでなんて…。」

 

三笠の眼光が鋭くなった。俺の推理に穴があったのか…!?

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

『反撃論破』

▼[遺体の様子]

三笠「宮壁、判断が鈍っておるぞ。」

 

 

 

三笠「牧野は犯人と揉めていない。失念していたか?」

 

宮壁「あ…!」

 

そうだ!なんで俺はそんな事を忘れて…いや、あまりにも話が見えてこなくて焦っているのかもしれない。

 

宮壁「皆、ごめん…。三笠、ありがとう。」

 

三笠「お安い御用だ。」

 

1度目を閉じて深呼吸する。

今は、この裁判が終わるまでは、本気にならなくちゃいけない。

 

死んだ皆の事も、今ここにいる皆の事も、全て考えるのは後だ。

今は目の前の事件の真実を暴く。

思考を邪魔する私情は捨てろ。

俺はただの裁判官だ。俺がこの事件に関わっている訳じゃない。

今はこの裁判の被告人を決める事に専念しよう。

 

宮壁「…俺はもう大丈夫だ。まずは皆の意見を聞きたい。今のやり取りで、牧野が誰かを殺そうと考えていた訳ではないという事はほぼ確定でいいと思っている。返り討ちにあったのに揉めた形跡がないのはあまりに不自然だからだ。」

 

三笠「ここからが自分が言いたい事だ。俺はやはり、牧野は自殺なのではないかと疑っている。」

 

宮壁「…そうか。」

 

難波「全然分かんねーわこれ。自殺って証拠もないけど自殺じゃない証拠もねーし。」

 

高堂「あたしは牧野は自殺なんかじゃないと思ってる。」

 

柳原「えっと…。他殺だとは思うんですけど、説明ができるかどうか…。」

 

潜手「わ、分からなくなってきちゃいまーしたー…自殺、なのでーしょーか…?」

 

モノパオ「もーしーかーしーてー、意見が割れた?バリッバリに、割りばしもびっくりなくらい綺麗に割れちゃった?」

 

宮壁「お前の意見は聞いてない。」

 

モノパオ「対立しちゃったなら、その対立が分かりやすいように席を組み替えてあげようじゃないの!もー、ボクくん説明書読みながらすっごいがんばったんだからね!使ってくれなきゃ一生ここでジタバタしてやる!」

 

安鐘「な、何をするつもりですの…?」

 

モノパオ「議論しやすい形に裁判場をいじってあげるって言ってるのっ!せっかくだし、どうせなら裁判だって楽しくやりたいでしょ?」

 

高堂「…余計なお世話だけどね。」

 

モノパオ「うるさーーーいっ!ほらっ!しっかり捕まっててよね!」

 

モノパオが何かのスイッチを押すと席が移動し始めた。なんだこれ…!?

 

意見が同じ人が横に並び、対立する人が向かい合うような向きに落ち着いた。ここにいない人の席は俺達の席の横に並んでいる。

こうやって向かい合うとまるで戦のような気分だ…こんなふうに席を移動して盛り上げようだなんて、完全に俺達で遊んでいるとしか思えない。本当にモノパオにとっては遊びでしかないのかと思うと怒りがわいてくるが、今は議論を進める事の方が先決だ。

 

俺と意見が違う人がここまでいると、俺だけで説得するのは難しい。ここは同じ意見の人達の力を借りよう。

 

宮壁「ここで引き下がる訳にはいかないんだ。きっと、ここの判断が裁判の結果を分けてくる…!」

 

 

 

Q牧野は自殺か?

 

『A.自殺だ!』

ミカサ

マエギ

カチウギ

モグリテ

トウジョウ

オオワタリ

 

『B.自殺じゃない!』

ミヤカベ

ヤナギハラ

タカドウ

ヤスガネ

ナニワ

シノダ

 

♢議論スクラム♢

 

前木「牧野くんがやったと考えたら辻褄は合うんだよね…?」

 

宮壁「安鐘!」

 

安鐘「辻褄は合いますが、それが正解とは限りませんわ。」

 

勝卯木「……輸血パック…撒いた………。」

 

宮壁「柳原!」

 

柳原「凄惨に殺されたと思わせ、真犯人を除外するための演出でしょうね。」

 

東城「お腹を刺す事は自分でもできる。傷の深さは分からないから浅い可能性もあるよ。」

 

宮壁「篠田!」

 

篠田「それだと転落する必要がないはずだ。」

 

大渡「自分でフェルトを縫う理由なんざ、犯人以外に考えられねぇだろ。」

 

宮壁「難波!」

 

難波「犯人が牧野に縫わせた、もしくは縫ってあげたのかもよ?」

 

潜手「縫ってあげる理由がないでーすよー!」

 

宮壁「高堂!」

 

高堂「別の理由をつければ縫ってもらえると思う。」

 

三笠「牧野は…自殺をしてもおかしくない精神状態だった…!」

 

宮壁「…俺が。」

 

宮壁「それなら、犯人に『殺してもらった』可能性も高くなるはずだ。」

 

 

「これが俺達の答えだ!」

 

 

三笠「そうか…自殺なのかと思ってしまったが、その可能性があるのか…。」

 

難波「ここから出たかった人からしたら恰好の的って訳か。…ってか、いよいよ犯人が分からなくなってきたわ。この事件って犯人が誰を殺すか選んだ訳じゃねーじゃん。」

 

…そうだ。自殺じゃない事は証明できても、肝心の犯人についてはここまでほとんど情報が出ていないじゃないか。

 

高堂「…見落としてる事があるのかもしれない。ここまで分かったんだからがんばろうよ。」

 

宮壁「高堂…。」

 

高堂「牧野がほとんど仕組んでいるなら、犯人がやった事は牧野を刺した事くらいだよね。…だから、犯人はその間にアリバイを作る事ができると思う。」

 

宮壁「なるほど…!逆にアリバイがある奴が犯人だって言いたい訳だな。」

 

よし、ここをどうにか証明できる物があれば…!

 

 

―コトダマ提示―

 

 

 

 

 

▼[発見当時の状況]

宮壁「これが助けになるはずだ…!」

 

 

宮壁「確かに、東城が大浴場に向かう前から扉は閉まっているって言ってたよな。あれって何時くらいだ?」

 

東城「かなり前だから…7時くらいだろうね。」

 

高堂「7時…じゃあ、ほとんどの人のアリバイは意味がなくなるんだね。」

 

宮壁「そうなるな。助言ありがとう。」

 

高堂「…あたしだって、暴きたいから。」

 

柳原「…?」

 

宮壁「柳原、何か困った事でもあるのか?」

 

柳原「いえ…おれが、勉強不足な気がしただけです。理解ができなくて。」

 

どういう事だ…?

さっきから柳原が何を言っているのか理解ができない。

 

三笠「ちょっと待ってくれ。牧野は、ただ殺されたかっただけではないのか?」

 

潜手「たしかーにー、これだと牧野さんは、犯人をかばっているようにしか見えないでーすー!」

 

難波「…自分を殺してもらう見返りとして犯人をここから出してあげようとしたって事?」

 

三笠「他の全員が犠牲になるのに、か…?いや、そうなってもおかしくはないのか…自分は何一つ牧野を説得できていなかったのだな…。」

 

重い空気が流れる。

俺達を元気づけようとショーをしてくれていた間も、アイツは俺達を犠牲にする計画を練っていたのか…?

 

前木「考えよう。まだトリックが全部暴かれている訳じゃないもん。」

 

高堂「何かまだ話していない情報はないの?」

 

宮壁「…そうだな、どうやって牧野は落ちたのかが分かっていない。これについて話してみよう。」

 

 

 

―議論開始―

 

 

 

難波「ここまできたら牧野は【自分で落ちた】んじゃねーの?」

 

東城「犯人がトラッシュルームから出て行った後に机を寄せて血を撒いたというのが正しい順番だとすると、犯人が牧野くんを落とす事はできなかったはずだよ。」

 

安鐘「で、ですが、それだとクロは牧野さんになってしまいますわ…!」

 

潜手「うーん…ファイルにはー、転落死って書いてありますーよねー。」

 

篠田「それこそ【事故】で落ちたのではないか?」

 

難波「え?最初の話題に戻る訳?」

 

三笠「蓋は現場の様子からしてずっと開いていただろうし、そうなってもおかしくないだろうな…。」

 

柳原「いえ。ここまでの裁判でほぼ結論は出ているはずです。犯行を不可解にするために【無意識で落ちた】のだと思いますよ。」

 

…!そういう、事なのか…?

 

 

 

 

 

▼[手形の血痕]→【無意識で落ちた】

宮壁「それに賛成する。」

 

 

柳原「わぁっ!やっぱりそうですよね、宮壁さん!」

 

前木「無意識で落ちるってどういう事…?そんな状況が作れるの?」

 

宮壁「あくまで俺の推測だけれど、あのダストホールの縁にあった手形ヒントになる。牧野は、意識を失うまであそこに捕まっていたんじゃないか?」

 

難波「はっ?いや、さすがにそんな何時間ももたないでしょ…。手だけであそこに捕まるとか、ボディービルダーとかじゃあるまいし。」

 

宮壁「確かに手だけなら無理だろうな。だけどダストホールに腰をかけた状態で手で捕まるようにしたらどうだ?人間は頭の方が重いから、きっと意識を手放せば頭の方から落ちていくはずだ。そうすれば、意識がない状態…つまり、牧野の故意ではない状態でダストホールに転落する事ができる。」

 

三笠「なるほど…。その場合は、やはりその腹部を傷つけた犯人の方がクロとして扱われるのだな?モノパオ、聞かせてもらおうか。」

 

モノパオ「ふあ……あれ?質問?えーっとねぇ……まあ、自分から落ちたんじゃないなら意識を失わせた人をクロ扱いする事になるかなっ!とは言え、そんな危ない方法を使うなんて怖いパオ!きっと普通じゃないんだねっ!その推理が合ってるかは言えないけど!」

 

安鐘「と、とにかく…その方法で牧野さんが転落したのであれば、牧野さんの自殺にはならないという事ですわね…?」

 

難波「意識がなくなるまでそこで耐えるとか…アタシじゃ考えられないわ。」

 

たしかに、この推理が仮に合っているとしても、かなり危ない話だ。よくこんな計画を練ったな…。

 

高堂「…そういえば柳原、裁判中、モノパオに何か話を遮られてたよね。そろそろ言ってもいいんじゃない?」

 

柳原「…?」

 

高堂「固まってどうしたの?言いたくないの?」

 

柳原「いえ、そういう訳ではないんですけど…そうですね…。…おれは、犯人ならとっくの昔から分かっています。」

 

前木「え!?」

 

大渡「チッ、なんで言わねぇんだよ。」

 

柳原「モノパオさんに口止めされてしまって…。」

 

難波「はぁ?口止めって…モノパオ、アンタ、まるで裁判に負けてほしいみたいな言い方じゃん。」

 

モノパオ「いやむしろ逆だよっ?だけどね、そんなウルトラスピードで判明してもミンナ納得しないだろうし、そもそもそんなつまらない裁判、おもしろくないでしょ?」

 

モノパオのふざけた言い方に難波は舌打ちした。

 

難波「趣味わっる。キレそう。」

 

宮壁「えっと…柳原はどこで分かったんだ?」

 

柳原「捜査で…『あれ』を見つけた時です。」

 

宮壁「あれ…?」

 

柳原「宮壁さんも絶対見てます!すぐに分かると思っていたのに、みなさんがあまりにも時間をかけているから驚きましたよ!慎重派なんですね!」

 

篠田「慎重というより…なかなか苦労していただけだがな…。」

 

柳原「…あ、そっか。えーと、そうですよね!難しかったですもんね!」

 

…相変わらずにこにこと笑顔で話す柳原を横目に見ながら、「あれ」について考えてみる事にしよう。犯人を示す決定的な物らしいけど…。そこまで考えて、ふと俺の脳裏に少し前のやり取りが浮かんできた。

 

♢♢

♢♢♢

2章非日常編1

♢♢♢

 

「あ。」

 

「柳原?どうした?」

 

柳原は扉の方を見て固まっていた。そのまま唸りながら何かを考えている。

 

「うーん…。」

 

「何か証拠があったのか?」

 

「………うーん、気のせいかもしれません!」

 

なんだ今の間は。絶対何かあっただろ…。

 

「なんで隠すんだよ…?」

 

「気のせいかもしれないからです!変な事を言って宮壁さんを困らせる訳にはいきません!」

 

「そうか…何かあったら教えてくれよ。俺は柳原の事も頼りにしてる。」

 

「へへ、ありがとうございます。おれもがんばります!」

 

♢♢♢

♢♢

 

…扉の方を見ていた…?

必死に記憶を遡る。扉付近にあったもので、犯人を示す証拠…。

 

 

 

♢怪しい部分を選択せよ♢

 

 

【挿絵表示】

 

 

ここに証拠があるんだ…!

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「………これだ。」

 

潜手「宮壁さんー?どうしましたーかー?」

 

 

 

 

…嘘だろ?

え、だって、あいつが犯人だなんて、有り得ない。

 

 

でも、あれは、確かに、ショーで使われていたものだ。

あの扉のつっかえ棒は、ショーの看板の一部として使われていたんだ。

 

 

 

そして、それを準備したのは………。

 

 

♢♢

♢♢♢

2章(非)日常編3

♢♢♢

 

「よし!全員集まったね!今日は皆にメンタリズムショーを見せてあげようと思います!立案者は我らが兄貴の三笠!この看板含めた道具は俺と高堂ちゃんで準備しました!素敵な助っ人に拍手!」

 

おお…こうやって喋ってる牧野は完全にテレビで見ている牧野いろはそのものだ。

映画の前みたいにどきどきしながら牧野のショーが始まった。

 

♢♢♢

♢♢

 

 

 

 

 

 

宮壁「高堂…犯人って、お前なのか?」

 

 

 

裁判場が凍りついた。

 

柳原「えっ?宮壁さんやっと気づいたんですか?宮壁さんの事だからてっきり、一瞬で分かってたけどあえて皆に合わせているのかと思っ…」

 

宮壁「高堂。」

 

柳原の話を遮ってでも、答えが知りたい。

できる事なら否定してほしい。

 

 

高堂「………。」

 

 

だけど、否定されたのは俺の言葉じゃなくて、

 

 

高堂「うん。」

 

 

俺の小さな希望だった。

 

 

 

 

前木「ま、待って、え?」

 

宮壁「トラッシュルームの中にあったつっかえ棒。あれは俺達が共通して使う部屋では見た事がない物だ。そして、ショーで使われていた物だ。」

 

潜手「ほ、ほへ…?」

 

宮壁「牧野はショーの時に『道具を準備したのは自分と高堂だ』と言っていた。そして片付けだって各自でやっている。あの棒を現場に置く事ができるのは高堂しかいない。」

 

高堂「…うん。」

 

…なんで否定してくれないんだ。そんな悲しそうな顔をするくらいなら、いっその事、怒ってでも反論してほしいのに。

 

難波「待てって!よりによって光な訳ねーじゃん!」

 

宮壁「…そもそも、牧野が自分を含め俺達全員を犠牲にしてでも外に出してあげたくなる相手なんて、高堂以外にいないはずなんだ。」

 

高堂「…宮壁から見ても、そうなんだ。」

 

宮壁「…。」

 

なんで反論しないんだ。

牧野はお前を出したがってたんだろ?

 

高堂「あたしは、牧野の期待に応えられるような神様じゃない。」

 

高堂は、よく分からない事を呟いた。

神様…?どういう事だ…?

 

東城「そんな事どうだっていいよ。犯人は分かった。いくら牧野くんが仕組んだ事だとしても、その要因も実行犯もキミだ。さっさと投票に移ろう。」

 

潜手「待ってくださーいー!潜手めかぶは、納得できませーん!」

 

宮壁「潜手…。」

 

潜手「ご、ごめんなさいー…分かってるんです、高堂さんにしか、できないってこと…。で、でも、嫌なんでーすー!牧野さんがその計画を立てていたこともー、高堂さんがその計画にのったことも…潜手めかぶは、信じたくないです…。」

 

潜手は悲しそうな顔をして俯いてしまった。

 

高堂「…宮壁。」

 

宮壁「な、なんだ…?」

 

高堂「ちゃんと、聞かせてくれるかな。あんたの推理。」

 

宮壁「……。」

 

高堂「反論なんてないよ。あたしは受け入れるから。」

 

前木「なんで…光ちゃん…。」

 

高堂「そんな悲しそうな顔しないでよ。じゃあ逆に聞くけど、あたし以外に誰がいるの?」

 

前木「それは…。」

 

高堂「…ここに立つのって、想像以上に怖いね。でもあたしは覚悟してる。宮壁、聞かせて。きっと、あんたの推理は合ってるから。」

 

…なんで、そんな他人事のように受けいれられるんだ。

それを認めてしまったら、お前は死んでしまうのに。

 

噛みしめていた唇を離し、俺は…この事件の全容を、伝える事にした。

 

 

―クライマックス推理―

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「今回はほとんどが被害者である牧野自身によって組まれた事件だ。どうしてこんな事を企んだのか、詳しくはもう聞けないから分からないけれど…順を追って説明していくぞ。牧野は今日自分が死ぬ事を想定して、まずは下準備から始めた。自分の裁縫セットを使ってフェルトで輪を作った。先に糸をつけて、犯人が扉を閉められる装置を作り出したんだ。」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「そして、ショーの片付けを終えた牧野は三笠や犯人と別れ、1人の時間を作った。この間に輸血パックを取りに保健室に向かったんだ。さっきの輪も含めて、おそらく牧野は『他殺を装った自殺』に見えるような工作をしていたんだろうな。犯人を自分だと思わせる事で犯人を勝たせようとしたんだ。仮に自殺じゃないと分かっても、凄惨に殺されていれば犯人はクロから除外される…そのつもりだったはずだ。こうして、一通り準備を終えた牧野は犯人をトラッシュルームに呼び出した。もしかしたら、ショーより前からこの時間に来るようにと伝えていたのかもしれない。呼び出された犯人は、牧野が前もって用意していたであろう厨房の包丁を使って…牧野を刺したんだ。」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「牧野を刺した後、牧野はダストホールの蓋を使って扉の小窓を破壊。蓋の血は刺された時に腹部を抑えてしまったものが付着したのかもしれないな。フェルトの輪を扉のつまみにかけて小窓から通し犯人をトラッシュルームから出した。犯人が外から糸を引いて鍵をかけたんだ。ここで輪を回収していればよかったのかもしれないけれど、運悪く輪が外れてトラッシュルームの中に落ちてしまったんだろうな。犯人は回収できないまま現場を後にしたんだ。」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「犯人はその後、牧野が発見されるまでの間のアリバイを作る事にしたんだろう。たまたま食堂にいた潜手と話をして過ごしていた。途中から前木や難波、安鐘も加わって、アナウンスが鳴るまで共にいる事でアリバイを作っていったんだ。…内心、牧野の計画がどうなっているのか気がかりだったに違いない。」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「ここからは牧野の計画の続きだ。犯人を無事に出せた牧野は、机や犯人の持ってきた物で念のために扉を塞ぐと、持ってきていた輸血パックを床に撒いて、あたかもここで完全に殺されたかのように見せかけようとしたんだ。そして自分に刺さった凶器をダストホールに投げ入れ、止血をせずにトラッシュルームの中で過ごす事にした。」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「そして、刺した時刻を検死などで悟られないようにするために、牧野は自分が転落して死ぬ事を考えていた。だけど犯人がいない状況で転落死でもしてしまうとクロが自分になってしまうかもしれない。それを危惧した牧野は、自分が意識を失うまでダストホールの入り口に座っている事にしたんだ。手形もこの時についたはずだ。そして、しばらく自分の体を支えていたけれど…ついに出血で意識を失い、ダストホールの底へと落ちてしまった。後はその転落した音で俺と東城が駆けつけ、アナウンスが鳴ったんだ…。」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「…こんなの、被害者にはメリットなんて1つもない、普通じゃ考えられないような計画だけれど、牧野にはそうしてでも…自分を含めて俺達全員の命を使ってでも…外に出してあげたい人がいた。それがこの事件の犯人なんだ。」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

宮壁「この犯行ができた人物は…牧野が自分の命を使ってでも外に出そうと思える人物は…。『超高校級の山岳部、高堂光』。お前しかいないんだ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宮壁「…。」

 

未だに信じられなかった。潜手や前木のすすり泣く声が聞こえる。

本当に良かったのか?

牧野の計画を捻り潰して、高堂をクロだと決め打つ事は、本当に正しい選択だったのだろうか。

 

 

高堂「そう。それが事件の全貌なんだね。」

 

 

宮壁「…え?どういう事だ?」

 

高堂「…そのままの意味だけど。」

 

柳原「あ、おれ、ずっと疑問だったんです。なんで高堂さんはあれほど裁判に積極的だったのですか?裁判を進めるような発言ばかりで…自分がクロだと当てられようとしているとしか思えませんでした。」

 

柳原の純粋な目とは裏腹に目を伏せる。

 

高堂「…知りたかったから。」

 

宮壁「待ってくれ。じゃあ、高堂は牧野の計画を知らなかったのか?」

 

俺の問いかけに高堂は無言で頷く。

 

高堂「全部は聞いてなかった。…だからあたしは、自分が牧野に何をさせてしまったのか知りたかった。」

 

 

 

モノパオ「じゃあ、お決まりのあれ、やっちゃおっか!ではでは、ミンナ電子生徒手帳の投票のところから、自分がクロだと思う人に投票してねっ!」

 

雰囲気をぶち壊すように楽しそうに笑うモノパオを睨みつけながら、こわばる手で高堂を選択する。

 

 

モノパオ「はい!ミンナの投票を確認しました!答え合わせの時間だね、はたして正解なるかーっ!?」

 

 

12枚のコインが、どこからともなく現れた白黒のガチャガチャに投入され、ひとりでに回る。しばらくして盛大なファンファーレとともに、小鳥のさえずりが聞こえ始めた。

 

 

ガチャガチャから出てきた玉には、紛れもなく、高堂のイラストが描かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

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