ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

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裁判がある程度できたら投稿しよう…と思っていたらいつの間にか三か月経っていました。
時の流れが速すぎる。
考える事が多くて書いてて頭が混乱していました。
ろくなトリックになっているのか不安しかないです。短いです。対戦よろしくお願いします。


非日常編 1

 

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「……。」

 

俺達の中の誰かが言葉を発する前に、アイツが出てきた。

 

「やあやあやあ!オマエラ全員お揃いで何よりだよ!まあ、数人は来ていないみたいだけど……これ、オレくんからのプレゼント!先に渡しちゃうね!」

 

モノパオ…裏切り者の方は、早速難波にモノパオファイルを渡す。

 

「USBが2本……ね。三笠も、だめだったって事か。」

 

「そう!察しがいいねー!」

 

「なんだよ、これ。」

 

俺達の目の前で厨房を真っ赤に染め上げている安鐘と、先ほど保健室のベッドで息を引き取った三笠。急にこんな状況に放り込まれても訳が分からない。

 

「何って、死んだんだよ、三笠クンと安鐘サンが。宮壁クンはどっちも見たでしょ?」

 

「え!?待ってください、三笠さんも死んじゃったんですか?どこで?」

 

「あれ、柳原は知らないのか?」

 

「あ、えっと…おれは潜手さんにインターホンを鳴らされてすぐにここに来たので。たぶん、大渡さんと勝卯木さんもそうだと思います。」

 

「そうなのか…。」

 

頭がガンガンと痛む。昨日殴られたところが痛いのもそうだけど、この状況を受け入れなければいけない事が何よりも頭を痛ませていた。そして……。

 

「捜査、しなきゃいけないのですーねー…。」

 

そうだ。捜査だ。クロは分からない。勝卯木の事もあるのに、こんなにいろいろな事が重なって押しつぶされてしまいそうだ。

 

「……するしか、ないんだな…。」

 

まだ安鐘をちゃんと見た訳じゃない。でも、今回は……桜井のように比較的綺麗だったという事も、牧野のように死体と離れていたという事もなかった。

一言で言うと、悲惨だった。

厨房の床に倒れている安鐘。首の骨が見えているほどの深い傷がつけられた彼女を、誰が悲惨だと思わずにいられるだろうか。

 

安鐘が悪い事をしたのは事実だ。彼女は許されない。だけど……こんな風に痛めつけられて殺される必要はあったのだろうか。

何が起きたのか、突き止めなければいけない。その義務がある。生きるための義務が。

 

俺は心臓を落ち着かせるために深呼吸をする。

むせかえるような血の匂いは、決して俺の気分を切り替えてくれるようなものではなかったけれど……現実を叩き込むには十分だった。

 

 

 

―捜査開始―

 

 

 

まずはモノパオファイルの確認だ。

2つのUSBをダウンロードして、とりあえず安鐘の方を開く。

 

『被害者は安鐘鈴華。死亡時刻は夜時間中。発見場所は食堂の厨房。首を切られており、大量の出血が見られる。毒を摂取した形跡はない。』

 

……。

 

「何これ。夜時間中って幅広すぎじゃね?」

 

「しかも、出血が見られるってだけでそれが死因とは書かれていないのも不審です。このファイル、不備があるんじゃないですか?」

 

「こら!オレくんだって忙しかったんだからそのくらい許してよね!それに死因とか、しっかり見なきゃはっきりとは分かんないじゃん!オレくんそういう作業嫌なんだよね!まあ分かる人で勝手に見てよ。じゃあね!」

 

モノパオはそのまま不貞腐れたように消えてしまった。どう考えても不備じゃないか…。

 

 

 

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・・・コトダマ「モノパオファイル3」

 

「えっと…潜手めかぶ、見張りとして東城さんが来るまで残ってもいいですーかー…?」

 

「どうした?体調が悪いのか?」

 

「あ、えっと、はい……ごめんなさいー、お役に立てなくって……。」

 

「めかぶが気にする事じゃねーから。東城の事なら食堂で待っておけば?どうせ厨房から出る時に食堂は通る事になるんだし。」

 

「そうですーねー…!じゃあ、みなさんが出たら潜手めかぶは食堂の入り口で待っておきまーすー!」

 

潜手は少し安心した様子だ。無理もない。正直…俺もできれば近くでは見ていたくない。そのくらい酷い有様だからだ。

 

「宮壁さん!今回はバラバラで捜査するんですか?今までみたいに2人組以上になった方がいいと思うんですけど。」

 

「!そ、そうだな。……潜手、東城が来たら誰かについてもらうから、潜手は篠田のところに行ってくれないか?」

 

「篠田さん……!分かりましたー!潜手めかぶは、捜査なんて得意じゃないのでー、篠田さんの事はお任せくだーさいー!」

 

「あ、アタシは琴奈と行くわ。琴奈も心配だからさ。」

 

「東城……私、いる。私、動き回る、今、不得意……。」

 

「そうか、2人とも助かる。勝卯木も無理しないようにな。後は……。」

 

「……チッ。」

 

「……あ。」

 

……男3人、余り者同士か。

余計にテンションが下がってしまったけど四の五のなんて言っていられない。

 

「よし、大渡、柳原、行くぞ。まずはこの厨房をしっかり見てみよう。」

 

「はい!」

 

「こんな水浸しのところに足入れたくねぇんだが。」

 

確かに……と思ったところでふと思考が止まる。

なんで厨房が水浸しになっているんだ?それも、何かを溢したとかいうレベルじゃない。2センチ近くも水が溜まっているのは明らかにおかしい…。

 

 

 

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・・・コトダマ「水浸しの厨房」

 

「あ、宮壁さん、床に雑誌が積まれていますよ。犯人はこれを足場にして水を避けていたんですかね?」

 

「なるほど…。これはレシピ本か。食堂にたくさんあったし、あそこから持ってきたんだろうな。」

 

 

 

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・・・コトダマ「床の雑誌」

 

嫌だけどとっくに厨房の奥に歩を進めている柳原に続いて厨房に足を入れる。

 

「うわ!危ないな、これ……って、電子レンジ!?」

 

厨房の床に電子レンジが転がっている。異様な光景だ。

 

「好き放題しやがって…うぜぇな。」

 

大渡が電子レンジを端に寄せようと足で蹴り転がす。ひっくり返った電子レンジをよく見ると、どうやらコードが切られているようだ。

 

「これ…わざと切ったような切り口だ。」

 

 

 

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・・・コトダマ「壊れた電子レンジ」

 

「……切れたって事はどこかにもう片方があると思うんだけど。」

 

しばらくその周辺をごそごそと探していると、電子レンジの置かれていたであろう棚の支柱に切れたコードが巻きついているのに気づいた。

 

「これ、コンセントに刺さったままだ。危ないな…。」

 

一応事故防止のためにコードはコンセントから抜いておく。

しばらく観察していると、コードの途中が擦れたようになっているのに気づいた。

 

「……何かで擦れたみたいだな。コード自体結構長いし、何かに使われたのか…?」

 

 

 

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・・・コトダマ「切れたコード」

 

「あ!宮壁さん!また見つけちゃいましたよ!この食器棚が空になっています。」

 

「え?本当だ、中の板も取られてるな…。」

 

…ふと思った事があったので食器棚の中に入ってみる。

 

「何やってるんですか?」

 

「いや、犯人が隠れていた可能性もあるよな、と思って。」

 

少しきついけど入る事はできそうだ。扉もなんとか自分で閉められるから隠れる場所としては問題ないだろう。

 

 

 

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・・・コトダマ「空になった棚」

 

「あの!大渡さんは何か見つけてるんですか?さっきからおれと宮壁さんしか捜査してないんですけど。」

 

「……うるせぇ。」

 

「文句言うのは何か見つけてからにしてくださいよ!」

 

「……。」

 

コイツ邪魔、とでも言いたげな目で俺に目配せしてくるけど自業自得なんだよな…どうしようもない。

 

「疑問ならある。死体発見アナウンスについてだ。」

 

「アナウンス…?ちゃんと鳴ったよな?」

 

「違ぇよ。鳴ったタイミングだ。海鮮女が俺とそいつと無口女を呼んでここに来た後、ギャル女が来るまでしばらく誰も来なかったが鳴らなかった。…変じゃねえか?」

 

「……。あ、えっと、鳴るまでどのくらい経ってるんだ?」

 

「おれの見ていた範囲だと15分は経っていると思います!おれがもう一度ここに来ていなかったみなさんの個室のインターホンを押して回ったんですけど、誰もいなくて…。別のところを探すのも手間なのでとりあえず戻ったんです。」

 

「そうか…。」

 

一瞬大渡のあだ名のせいで誰が誰だか分からなかったけど、たしかに変だ。

前回の事件で死体発見アナウンスが鳴るのは、「誰かが死体を見つけてからしばらく動かなかった時」のはず。ショックで第一発見者が固まってしまった時の対処法って事だろうな。

今回は潜手が見つけてから3人を呼びに行ったから鳴らなかったのか?

それでも、最初の事件でアナウンスが鳴らなかったのは「全員がすぐに集まったから」だと言っていた。しかも今回は遅れたにしろアナウンスがちゃんと鳴っている。

 

…何か、しばらくアナウンスを鳴らせない理由があったのか…?

 

 

 

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・・・コトダマ「アナウンスのタイミング」

 

とりあえずはこんなものだろうか。一旦厨房から出ようとすると東城がやってきた。

 

「遅れたけれど、現場はそのままになっているのかな。」

 

「東城。特に荒らしたりはしていないから大丈夫だ。」

 

「……。」

 

後ろには無言のままの篠田もいた。

 

「篠田さんー…あの、大丈夫でーすかー…?」

 

「……ああ、大丈夫だ。」

 

「…えっと、篠田さんについていきまーす―!潜手めかぶ、ちょっと捜査するには元気が足りないのでー…。」

 

「そうか…分かった。」

 

篠田…明らかに元気がないな。三笠と仲良かったのは篠田と潛手だし、当然だろう。

 

「うん、かなり酷い状態だね。検死はボクがしておくから見張りは…。」

 

「あ、勝卯木がするって言ってたぞ。」

 

「分かった。じゃあそこで見ていてくれるかな。」

 

勝卯木は頷くと微動だにしなくなった。

 

「うーん、もう少し何かないか探してみるか。」

 

全く状況が浮かんでこないのでもう少し厨房を捜査してみる事にした。

 

「…これ…!」

 

安鐘が寝転がっている机の脚のうち1本に、テープをはがしたような跡がついているのに気がついた。他の脚には何もついていないし、きっと何かの手掛かりになるに違いない。

 

 

 

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コトダマ「テーブルの脚」

 

ふと隣を見ると、柳原が俺と同じようにしゃがんだままじっとしていた。

 

「柳原?どうかしたのか?」

 

「あ、いえ……特に、大した事じゃないです。」

 

またそれか……。しかし、柳原の近くをよく見ても変わったところはなさそうだ。

 

「宮壁さん、そろそろ別のところも見た方がいいと思うんですけど…。今回は事件が2つある訳ですし。」

 

「そうだな。三笠は保健室にいるから急ぐぞ。」

 

保健室と、武器庫も見ておいた方がいいだろう。とりあえず保健室の捜査に向かう事にした。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

「宮壁さん達…、捜査しまーすよねー。潜手めかぶ達、お邪魔だったら出て行きますー…。」

 

保健室に入ると泣いている潜手と篠田がいた。

 

「ごめん、俺はそのままでも大丈夫だから気にしないでくれ。」

 

「…ありがとう。」

 

篠田の返事を聞いてから、改めて三笠の様子を見る。

口から出ていた血はもう誰かが拭いたのだろう、こう見ると寝ているようにしか見えないけど…胸が上下する事はない。とりあえずモノパオファイルを確認しておくか。

 

『被害者は三笠壮太。ついさっき、保健室で死んだ。毒を摂取した形跡あり。』

 

うん、こっちも大した情報はないな。後で東城にまとめて聞きに行った方が良さそうだ。

 

 

 

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コトダマ「モノパオファイル4」

 

「なんで三笠さんが…。昨日の夜に何があったんですか?宮壁さんは見張りだった訳ですし、篠田さんと交代の約束もしていましたよね?」

 

「私は交代の時間より少し前に起きて廊下に出たら、宮壁が倒れているのを見つけてそのまま保健室に運んだんだ。その後少ししてから三笠と東城が保健室に来て…という感じだな。」

 

「篠田が運んでくれたのか、ありがとう。」

 

「当然の事だ。それよりも、交代時間ぴったりに向かうものではなかったと反省している。宮壁を1人にしていなければ状況は変わっていたはずだからな。」

 

「篠田さんー…。」

 

篠田には感謝しないと。あのまま、例えば、犯人が部屋に戻るタイミングで俺が起きていたら……考えただけで寒気がする。

 

 

 

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コトダマ「篠田の証言」

 

状況を整理するために俺も覚えている事を話しておこう。

 

「俺がいつ殴られたのか、時間は近くに時計がなかったから分からないけど、俺が殴られる直前まで、モノパオと話していたんだ。もっと言うなら…俺を殴ったのはモノパオだと思ってる。」

 

「モノパオが…?事件に関与する事があるのか?」

 

「だけど、モノパオが突然ちょっかいをかけてきて、その話の最中で後ろから殴られたのは本当なんだ。」

 

「うーん、宮壁さん、どこを向いて話していたんですか?」

 

「どこって…えっと安鐘の部屋の前で、廊下と反対側を向いていたはずだ。」

 

「なるほど…。」

 

柳原は何度か頷くと何事もなかったかのように話を促してきたので続ける。

 

「他に…例えば、個室に戻っていない人とかはいないんですか?」

 

「えっと…。勝卯木はずっと個室にいたし、俺が潜手と勝卯木の部屋に行く時に東城は出て行って…いや、東城は個室に入ったかどうかは見てないな。その後は難波と前木、篠田、潜手、三笠、柳原の順で戻って行ったな。大渡は一度も見てない。」

 

「うわ!大渡さん、捜査で役に立たないといよいよ怪しいですよ!」

 

「チッ、俺が殺人なんかして何の得があるんだ。」

 

「そんなの知りませんよ!」

 

「糞ガキが…。」

 

……と、とりあえず俺の覚えている情報も役に立つだろうからメモしておくか。

 

 

 

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コトダマ「宮壁の証言」

 

「あとは…潜手は何か知らないか?第一発見者は潜手みたいだけど…。」

 

「何か…えっとーですーねー……食堂に来た人の順番とかでいいですかねー?」

 

「ああ、よろしく。」

 

「最初に安鐘さんを見つけて、その後あわててみなさんのお部屋をピンポンして回ったんですー!その時に来てくれたのは柳原さん、大渡さん、勝卯木さんの3人だけで、他の方はいないみたいでしーたー…。」

 

うん、柳原がさっき言ってた事と同じみたいだな。

 

 

 

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コトダマ「食堂に来たメンバー」

 

「潜手さんは昨日、勝卯木さんの部屋に寄っていたんですか?何の用事が?」

 

「潜手めかぶは勝卯木さんのお見舞いに行ってたーのですー。」

 

「お見舞い?それにしては宮壁さんよりも長くいたみたいですけど。」

 

「あっ、それはですねー、潜手めかぶ、あの後勝卯木さんと一緒に少しご飯を食べてましたー!」

 

「そうなのか?」

 

それで余計に出てくるのが遅かったのか。

 

「はいー!勝卯木さんが一緒にって言ってたのでー。」

 

「そっか……。」

 

勝卯木としても潜手がいてくれて嬉しかっただろうな。何かが変わる訳じゃないけど、それでもいるといないとじゃ大違いだろう。

 

「あ!あと大事なことを思い出しましーたー!言おうと思って忘れてたんでーすけどー、朝、エレベーターが動かなかったんですー!」

 

「エレベーターって、生活棟のですか?」

 

「はいー!潜手めかぶ、朝に気分転換でみなさんが来る前に温室をお散歩することがあるんでーすけど、今日はそれができなくて……。」

 

「エレベーターが使えないって…今は使えるのか?」

 

「それは篠田さんとここに来る前にしておきまーしたー!今は使えそうでしたよー!」

 

一時的に使えない事なんてあるのか?それもモノパオから何の知らせもなく…。

 

 

 

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コトダマ「潜手の証言」

 

よし、保健室は現場という訳ではないしこんなものだろう。

 

「そろそろ行くか。」

 

「次はどこに行くんですか?」

 

「物置かな。三笠が毒を飲んだのならどれが使われたのか調べなきゃいけないし。」

 

「……さっさと行くぞ。こんなとこいたくねぇ。」

 

「大渡っ!」

 

「……。」

 

睨んだら舌打ちをして先に行ってしまったので慌てて追いかける。

なんで毎回そういう言い方しかできないんだこいつ…!

 

階段に向かっていたところで声をかけられる。

 

「宮壁達、今から2階?」

 

「難波。そのつもりだけど、どうかしたのか?」

 

「ん、ちょっと見てほしいものがあって。…でもまあ、同じ場所に人数割いてもあれだし、とりあえずアタシらで見ておくわ。もし時間あったら後で皆の個室のとこに来て。」

 

「ああ、分かった。」

 

まだ東城の検死についても聞いていないし、時間的にかなり急がないとまずいかもしれない。俺達は気持ち足早に階段を上った。

 

 

3階まで上がって物置の武器庫を覗く。

 

「えっと、たしかこの辺りが毒の場所だったよな…。」

 

ガラスケース越しに瓶を見つける。

 

「これは安鐘が持ってた毒だよな。前来た時に減った量を測らせてもらってないからあれから減ったかどうか微妙だけど…。」

 

「でも、あんまり変わってない気がしますね。」

 

「取る事はできねぇのか?おい、象、見てんじゃねぇのか。」

 

「見るって、ラベルを?」

 

「うわっ!急に出てこないでくださいよ!」

 

「呼んだのはそっちじゃん…。」

 

呆れたように突然出てきたモノパオはため息をつく。

 

「それでモノパオ、取ってくれるのか?」

 

「うん、まあいいよ。捜査だもんね。」

 

「捜査以外の目的では取ってくれないんですか?」

 

「毒殺予定だって言ってくれたら取るけど?」

 

「嫌な奴だな、ほんと。」

 

「まあ、嫌な奴じゃなきゃこんな事やってられないでしょ。」

 

「何言ってるんですか?」

 

「柳原、そんな必要以上にモノパオに絡まなくていいんじゃないか…?」

 

「はーい!」

 

「宮壁クンも園児達を引き連れて捜査なんて大変だねー。これでいいんだっけ?」

 

モノパオに同情なんてされたくないので無視して受け取る。

 

「おい、あの茶色の瓶も取れ。減ってんだろ。」

 

「大渡クンも目ざといね!はい!」

 

「…チッ、んだこれ、ラベルの情報なんてほとんど無いのと同じじゃねぇか。」

 

「ほんとだ!それも減ってますね!…減ってるというか、ほとんど無くなってます!」

 

大渡の毒も気になるけどまずは俺がもらった毒…安鐘が使っていたやつの説明を見よう。

 

『特製の毒A

白い粉末で水に溶ける。

味は少し甘く、料理に混ぜても分かりにくいので砂糖の代わりに使おう!

致死量を摂取した場合は治療できず、大体2日後に死ぬ。

摂取量によっては死ぬまでの時間が前後する。

症状は主に高熱とふらつき。場合によっては吐血。』

 

高熱は勝卯木に出ていた症状で、吐血は…三笠のか?断定するには早いかもしれないが。

 

 

 

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コトダマ「特製の毒(粉末)」

 

「大渡、そっちの毒は何が書いてあるんだ?」

 

特に説明もなく無言で渡されたのでとりあえず読む。

 

『特製の毒B

無色無臭な液体。

水の代わりにできるので飲み物に混ぜて使おう!

致死量を摂取した場合は治療できず、大体半日~1日後に死ぬ。

症状はふらつきと吐血。場合によっては体調不良が続く事もある。』

 

「うーん、症状もかなり似てますね…。飲み物なんて基本みなさんが自由に飲んでいますから、誰かに飲み物をもらう事なんて………あ。」

 

「なんだ、柳原、何か分かったのか?」

 

「いえ、自信はないのでまだ言わないです!」

 

「そ、そうか…。」

 

それにしても本当に似てるな、何か違いがあるといいんだけど…。

 

「んだこれ…チッ。」

 

舌打ちが聞こえた方を見ると大渡の指先が黒くなっていた。

 

「大渡、それどうしたんだ!?」

 

「あ?その瓶触っただけだ。うるせぇ。」

 

「皮膚につくと黒くなるのか。」

 

これも何かに使えるかもしれない…。

 

 

 

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コトダマ「特製の毒(液体)」

 

「はい、終わったなら元に戻すから返してね!」

 

大人しくモノパオに渡すと、モノパオはそのままガラスケースに毒瓶をしまってしまった。

 

「あれ?その毒は替えがないんですか?」

 

「ないよ!すっごい高級なんだから!もー、Bの方なんてもうないじゃん!無駄使いばっかりされると参っちゃうよね。」

 

「無駄使い…?」

 

気になる事を言ってるけど詳細は教えてくれないようなので、俺達は足早に難波達に呼ばれていたところ……皆の個室に向かう事にした。

一応モノパオの言っていた情報もメモしておくか。

 

 

 

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コトダマ「モノパオの証言」

 

 

□□□□□

 

 

 

「あ、来た来た。」

 

「ここなんだけど…。」

 

前木が指さしたのは安鐘の部屋だ。見るとドアが少しへこんでいるような気がする。

 

「俺が見張りをしていた時はこんなへこみはなかったな…。」

 

「宮壁くんを襲った後についたって事…?」

 

「これ、何で殴ったんでしょうか?」

 

「難波宮壁を殴った物と一緒だと思うけど…そういえばフライパンが無くなってるしそれなんじゃね?」

 

フライパンも本気を出せば相当怖いな…。

 

 

 

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コトダマ「安鐘の個室のドア」

 

「あ、そうだ。後は2人が昨日何をしてたか教えてほしいんだけど…。」

 

「昨日はあのまま結局寝てないよ、アタシら2人とも。」

 

「そうだね。紫織ちゃんが深夜に1回トイレに行ったけどすぐ戻ってきたし、怪しい事はないと思う!」

 

「なんでそう言い切れるんですか?」

 

「え、えっと…ほら!紫織ちゃんは手ぶらだったから!鈴華ちゃんのモノパオファイルも見たんだけど、あれだけ傷つけたら返り血も相当だと思うんだよね。着替えを持っていく様子もなかったし、5分程度だから大丈夫かなって。」

 

「なるほど、ありがとうございます!」

 

柳原のおかげで難波の容疑も薄くなったし後もう1つ聞いておくか。

 

「2人はどうして潜手が呼びに来る前に保健室にいたんだ?」

 

「あー、ちょっとあそこ見てよ。明け方トイレに行こうと思ってあれに気づいて。」

 

難波が指さしたのは東城の個室の前。

わずかではあるが血が落ちていた。そのまま点々と保健室の方に続いている。

 

「向き的に保健室にいるのかなと思ってそっち行って、そしたら三笠と宮壁が寝てるし、東城と瞳が看病してるし。マジでびっくりした。」

 

「なるほど、これ気づいたから2人は食堂に行かなかったんだな。」

 

「そういう事。アタシが説明できるのはこのくらいだと思うわ。」

 

 

 

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コトダマ「難波の証言」

 

「分かった。ありがとう。」

 

後は東城にいろいろ話を聞くくらいだろうか。一通り道中で捜査できるところはしているけど、他に役に立ちそうな情報は出てこなかった。

 

「うーん、それにしても難しいですね。」

 

「ん?柳原もそう思うか?」

 

「目星はつきますけど、そもそも2人を殺した人が同じかどうかから考えなくてはいけませんし、裁判のルールがどうなるかによっても左右されるかと。」

 

「たしかに…。」

 

不安を募らせながら食堂に戻ると勝卯木が東城を呼んできてくれた。

 

「………宮壁達、来た。」

 

東城は厨房から出てくると血だらけになった自分の服を見つめる。

 

「これはさすがによくないな。勝卯木さん、誰かと一緒にボクの服の替えを取ってきてくれないかな。」

 

「………宮壁…。」

 

「あ、えっと、俺は東城の話を聞きたいから…ごめん。」

 

「……。」

 

柳原と大渡を見比べながらすごく嫌そうな顔をして柳原の裾を掴んだ。

 

「えーっ!嫌です!おれも聞きたいです、東城さんの話!」

 

「……。」

 

不服そうな顔をしながらも勝卯木が離れないのを見て、渋々といった感じで食堂を出て行った。

 

「一応ここに来た人に同じ情報は出しているから説明も手短にいくよ。」

 

「分かった。」

 

「まずはこの人の状態だけれど、正直、ここから凶器を特定するのは不可能だね。あまりにも傷が酷い。首を何度も切りつけているから難しいよ。」

 

首を何度も…どれだけ痛かったのだろうか。想像するだけで気分が悪くなる。

最初見た時に見開かれていた安鐘の目は、今は閉ざされていた。

 

「他に気になったのは膝の打ち身。転んだような跡ができている。服の膝のあたりも湿っていたし、時間的に犯行時刻にできたものだと考えていい。」

 

 

 

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コトダマ「安鐘の傷」

 

「転んだところを狙われたのか…。」

 

「その可能性が高いね。とりあえず、この人についてはこのくらい。」

 

「…東城、その、「この人」って言い方はなんなんだ?」

 

「そりゃあ、犯罪者の1人だからね。名前なんて呼びたくなくなるじゃないか。」

 

「……きっしょ。」

 

大渡のドストレートは暴言を無視すると、東城は俺から生徒手帳を奪うとモノパオファイルを開いた。自分のは柳原達に渡したからだろうけど少し嫌な気分だ。

 

「三笠くんの話に移ろう。彼は朝の3時すぎにボクの部屋に来て、そのまま保健室に運んだ。ボクの部屋に来た時点でかなり危ない状態だったからね。最初のうちは三笠くんとも会話ができていたけれど、彼にも誰が犯人か分からない様子だった。」

 

「…そうか。」

 

もしかしたら三笠の事件は裁判の前に解決するのかもしれない、という淡い期待は簡単に打ち破られてしまった。安鐘の毒殺計画を見抜けるような三笠にも分からないタイミングで毒を飲んだって事なのか…?

 

 

 

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コトダマ「東城の証言」

 

「あと、これが今回使われていた可能性が高い毒なんだけど、どっちか分かりそうか?」

 

「……三笠くんの症状、基本的に吐血が多い印象だった。症状の断定はできないね。理科室にもろくな器具がないのだから保健室でどうにかできるものでもなかった。勝卯木さんはボクが摂取直後から看病したから症状の悪化はかなり抑えられているけど、三笠くんはそういう訳にもいかないからね。2人の症状が同じかも分からない。」

 

…やっぱり駄目か。そもそもラベルに成分表示などはなかったし、解析させるつもりなんて微塵もないのだろう。

 

 

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コトダマ「三笠の症状」

 

そんな感じで大体を話し終えた頃、柳原と勝卯木が帰ってきた。

 

「東城さん、持ってきましたよ!こちらは生徒手帳です。」

 

「ありがとう。」

 

東城が着替え終わり、皆食堂から出て行こうとした時だった。

 

 

『はーい!もう十分できたよね?捜査終了パオ!ミンナ、生活棟のエレベーターへレッツゴー!』

 

モノパオの不快なアナウンスを聞くやいなや、大渡はさっさと保健室から出て行ってしまった。

 

「……もう終わりですか…。」

 

「……。」

 

「ここにいる理由はないしさっさと向かおうか。」

 

皆が出て行ってしまったけど、俺はおそるおそる厨房を覗いた。

安鐘はある程度服が直されていたものの、血が拭き取られたせいかさっきよりはマシに見える。

 

こんなにも痛めつけられる必要があったのだろうか。

見るだけで痛くなってきて、思わず自分の首を撫でる。

 

安鐘の口から、できればちゃんと勝卯木に謝ってほしかったし説明してほしかった。

話す事も動く事もできなくなった彼女にもきっと無念がある。言いたかった事だってあるはずだ。

……俺が気を失っていなければ、安鐘は死なずにすんだ。

1人になって、改めて彼女を見て、その後悔が押し寄せてくる。

 

「……ごめんなさい。」

 

頭を下げる。こんなの自己満足以外の何物でもないけど、そうでもしないと、俺は…。

 

「絶対、ここに帰ってくるから、待っててくれ。もう一度、謝りに来る。」

 

三笠のところまで行くには時間がない。

保健室がある方にも頭を下げ、俺はエレベーターに向かった。

 

 

 

□□□□□

 

 

 

全員がエレベーターに乗ると、ゆっくりと降下していく。

 

誰も笑顔なんて浮かべていなかった。

 

「ピンポンピンポン!」

 

エレベーターに反響するモノパオの機械声に顔をしかめる。

 

「ミンナに今回の裁判の追加情報について、ここで伝えておくねっ!今回は2つ事件が起きちゃった訳だけど…基本的には事件のクロを突き止めてくれたら大丈夫だよ!ただし、2人指名して実は犯人が1人だった~とか、1人指名したけど実は2人だった~とかだったらクロの勝ちっていう扱いになるから注意してねっ!」

 

説明が終わると同時に扉が開く。

 

 

皆無言で自分の場所に立ち、お互いの顔を見合わせる。

 

この中に犯人がいる。

あんなにも優しくて頼りになった三笠と安鐘を殺した人が。

 

殺害方法はなんとなく分かっても、肝心の犯人については全く見当がつかない。

不安そうな人も怒ったような人も様々だ。

 

安鐘に謝って、三笠に感謝を伝えると決めたんだ。ここで死ぬ訳にはいかない。

今回は皆から見ても俺は犯人にはあまり見えないはずだ。そこを利用して俺が皆を引っ張って行かなきゃいけないんだ。

 

 

深呼吸をして呑気にくつろいでいるモノパオを睨みつける。

 

「学級裁判、開廷パオ!」

 

 




閑話は数日後にあげます。
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