全員が席について一呼吸おくと、すぐにモノパオは意気揚々と裁判の説明を始めた。
モノパオ「さっきも言ったけど、今回はクロの人数も正確に当てなきゃいけないパオ!いつもより難しいからミンナがんばってねっ!」
難波「モノパオ、1つ質問があるんだけど…クロは実行犯なんでしょ?例えば、数人が一緒に1人に致命傷を負わせた場合はクロは何人の扱いになるの?」
モノパオ「うーん、これは答えてあげなきゃ決まらないだろうね。結論、最後に致命傷を負わせた人がクロになるよ!そもそも、1秒の誤差も許さないから1人の被害者に対してクロが複数人になる事はないと思ってくれていいよ。」
難波「…だってさ。他に事前に確認しておきたい事とかある?」
柳原「おれはないです!かなり厄介な事だけ分かりました!」
前木「…えっと、1ついいかな?」
モノパオ「前木サンどうぞー!」
前木「えっと、例えば、の話なんだけど…。犯人がもう死んでいる場合はどうなるの…?クロの人数に数えるのかな?」
モノパオ「なるほどね!前木サンは犯人が安鐘サンだと思ってるんだ!」
前木「ち、違……」
モノパオ「隠さなくていいよー、好きな人を殺されてその相手を許せない気持ち、オレくんも分かるもん。えっとね、人数には含めます!クロの人数に生死は問わないよ!」
前木「違う、違うの……ごめんなさい…。」
難波「琴奈、謝らなくていいから。」
モノパオ「まあその前木サンの気持ちが最後まで続くかどうかが見物という事で。もう質問はないかな?では、オマエラ大好きの学級裁判、はじまりはじまりー!」
□□学級裁判 開廷□□
東城「さて、とりあえず状況を整理していこうか。どちらの事件から話すのかな?」
潜手「先に起きた事件は安鐘さんの方でーすしー、潜手めかぶはそちらについて話したいですー。潜手めかぶも役に立てる発言ができると思うのでー!」
東城「異論はないみたいだし、まずは厨房にいた『あれ』……安鐘鈴華の話をしよう。あの人の様子をしっかり見た人は少ないだろうから、ボクが話すよ。」
とんでもなく失礼な事を言いかけて…いや、もう言ってたけど、とりあえず東城のおかげでスムーズに議論になりそうだ。
その言い回しに慣れてきてしまった事が癪だけど…何か気になるところがあったら積極的に指摘していこう。
―議論開始―
東城「彼女は【厨房で首を切られて殺されていた】。首はかろうじてつながっていたけど、かなり傷は深かったよ。」
篠田「一体何で切りつけたらそのような事になるのだ…?」
東城「それは分からない。明らかに凶器と分かる物は落ちていなかったからね。」
前木「うーん…じゃあ、凶器は別のところにあるかもしれないって事?」
難波「別のところ…じゃあ刺された場所も厨房じゃない可能性もある訳?」
潜手「ほわ!そういえば、廊下に少し血が落ちていましたーしー、もしかするとー、安鐘さんは【個室にいるところを襲われてしまった】のですかーねー!?」
うん、あの発言に切り込めるはずだ…!
▼[モノパオファイル3]→【個室にいるところを襲われてしまった】
宮壁「潜手、それは違う。」
宮壁「モノパオファイルをよく見ると、「殺害場所」と書かれている。安鐘が厨房で死んだのは事実なんだと思う。」
潜手「はわわ、そうだったんですーねー!ちゃんと見てませんでしーたー…。」
宮壁「いや、1つずつ確認するのが何よりも大事だから大丈夫だ。」
前木「じゃあ、なんで凶器らしい凶器が近くにないんだろう?」
大渡「……現場は厨房で、水も十分にあった。包丁でやったとしても血くらい流せんだろ。」
難波「ねえ、アンタ何で包丁って言い切ってんの?」
大渡「チッ、厨房にある物で思いつく凶器なんざ包丁ぐらいだろ。一々突っ込むんじゃねぇよ。」
柳原「いえ、大渡さんは怪しい人物である事は間違いないですから、疑われても仕方ないと思います。」
大渡「……は?」
宮壁「柳原、何か分かったのか?」
柳原「……えっと…そもそも、犯人が安鐘さんを殺すためには、最初に見張りだった宮壁さんをどうにかしなくてはいけなかったはずです。つまり、犯人は不意打ちで宮壁さんを殴る事のできる位置にいた人に限られるんですよ。」
俺を殴る事ができる位置にいた人物…?
ふと思い出して、生徒手帳のマップを開く。
宮壁「……!」
だから柳原は捜査の時、俺が「どの方向を向いてモノパオと話していたのか」を気にしていたんだ……!
篠田「マップに答えがあるのか?」
前木「あ!私、分かったかもしれない!宮壁くんは鈴華ちゃんの部屋の前で見張りをしていたんだから、例えば犯人が鈴華ちゃんの近くの部屋から出てきて宮壁くんを殴ろうとしたら、殴る前に見つかっちゃうんだ!」
篠田「なるほど。宮壁、お前は自分を殴った奴の顔は一度も見ていなかったのか?」
宮壁「ああ、俺はモノパオが出てきてから「廊下の反対側を見て」会話していたんだ。それで不意打ちで誰かに後ろから殴られた訳だから…。」
宮壁「俺に見つからずに俺を後ろから殴る事ができたのは、大渡、勝卯木、潜手の3人しかいない。」
勝卯木「…!」
大渡「チッ…。」
潜手「はえ…。」
殴られる時に聞こえた声。あれを考えたらもっと絞れそうだけど、モノパオみたいにボイスチェンジャーを使っている可能性もないとは言い切れないから、まだ黙っておいた方がいいだろうな…。
宮壁「潜手と大渡は力もある。勝卯木はどうか分からないけど、3人とも疑わない理由は今のところない、はずだ。」
全員の視線が名前を出された3人に集まる。
難波「でも宮壁を殴った奴がそのまま犯人かどうかは別の話じゃね?」
柳原「おれは犯人が誰かと協力する利点なんてないと思うんですけど。」
難波「まあそれは後で話す事になると思うし…とりあえず怪しいって事だけ頭において、次の話題に移った方がいいと思う。」
前木「そうだよね。次は…鈴華ちゃんを殺した方法について話せばいいのかな。」
安鐘の殺害方法……正直凶器もよく分かっていないけど、厨房にはたくさんの証拠があった。あれから安鐘の身に何が起きたのかある程度分かるかもしれない。
篠田「安鐘がどうやって殺されたか、それは首を切られたという事で片付いているのではないか?疑問点があるとすれば、どうして外に出たのか、くらいか……。」
潜手「そうでーすねー…だけど、凶器が何かも分かっていないならもっと深く考えた方がいいですー!」
前木「東城くんなら凶器の形状とか、想像つかないかな?」
東城「あいにく傷口が深い上に酷いから、何で切られたかはおろか、犯人の利き手すらも分からないよ。」
前木「そっか…。」
柳原「結局凶器は分からずじまいって事ですかね?うーん……。」
大渡「キショ学者、貴様は和服女の体には他に外傷があったっつってただろ、あれの説明でもしたらどうだ。」
東城「……。」
大渡「おい、貴様に言ってんだが。」
東城「いや、ボクはそのような名前ではないけれど。」
宮壁「えっと……。」
大渡が言えばいいのに…いや、今あいつが証言したとしてもろくに信用されないか……。
あいつには今までの行いを反省してもらうとして、俺が証拠を出しておこう。
―コトダマ提示―
▼[安鐘の傷]
宮壁「東城、この話の事だ。」
東城「ああ、膝にできていた打撲痕の事だね。あの人の両膝には打撲痕があった。何かにつまずいて倒れたのかもしれないね。」
難波「つまずいた?じゃあ、次は何につまずいたのかを考えればいいんじゃね?」
前木「そうだね、そこからトリックが分かっていくかも……。」
よし、じゃあ次は安鐘が膝を打った理由について話し合っていこう。
―議論開始―
柳原「厨房には水が溜まっていました。つまずいたのではなく、水に気づかずに【足を滑らせた】のでは?」
前木「それだけのために水を溜めるなんて大がかりな事するかな…?」
勝卯木「【雑誌】……あった……あれは?」
篠田「雑誌は流石に避けられるのではないか……?」
東城「正直どれが正解か、なんて分かりようがないよね。こける理由が多すぎる。」
難波「たしかに……どれも理由になりそうだし、【こけたのはたまたまだった】んじゃね?」
あれ?こけた理由って、今の時点だとは分かっていないんじゃないか…?
この状態だと何も論破できない。
……よし、今から推理を組み立ててみよう。あの現場は事件が起きる前はどうなっていたのか、今ある情報から考えるぞ。
―論問論答 開始―
Qこけた理由は?
A. 水で滑った
B. 何かにつまずいた
C. 犯人の意図ではない
→ B
Qつまずいた痕跡のある証拠は?
A. 切れたコード
B. 壊れた電子レンジ
C. 床の雑誌
→ A
Qコードが張られていた事を示す証拠は?
A. 空になった棚
B. テーブルの脚
C. 水浸しの厨房
→ B
▼『テーブルの脚についていた切れたコードにつまづいた』→【足を滑らせた】【雑誌】【こけたのはたまたまだった】
宮壁「よし、これで説明できるはずだ。」
宮壁「分かったぞ。安鐘はコードに足を引っかけて転んだんだ。」
前木「コード?そんなもの、床に落ちてたかな?」
宮壁「棚の支柱に結ばれていたコードがある。あのコードの途中が擦れていたんだ。だから俺はこう考えている。」
宮壁「そのコードは元々張られていて、安鐘はそれに足を引っかけて転んだ。」
篠田「コードなら転ぶのも頷ける。しかし、なぜ転ばせる必要があったのだ?」
前木「コードを張っていたって事は、犯人は、あえて鈴華ちゃんを転ばせたんだよね?もしかして、水浸しの床と関係があるのかな?」
難波「そうだ、床が水浸しになってたのはめかぶが見つけた時からそうだったの?」
潜手「はいー!最初は水浸しになっている事に気づかなくて、潜手めかぶの足も濡れてしまったのでーすよー…。」
難波「あらら。じゃあ、あの水が事件に関係あるのは間違いないって訳ね。」
勝卯木「水……浸す…方法……何……?」
大渡「棚の横板が抜かれていた。シンクからあれに水を伝わらせたんじゃねぇのか。」
柳原「あ!おれも大渡さんと同じ事を考えていました!あとは厨房ならお皿もいっぱいありますから、それで汲んだのかもしれません!」
うん……水を張るのは横板や容器を使う方法で間違いないんだろうな。面倒そうだけどホースみたいなものがあった訳でもないし。
東城「後は、どうして犯人は床を水浸しにしたのかを解明すればいいのかな。」
前木「転ばせるのはコードの役目だから、それは違うんだよね。」
篠田「とは言えそのコード自体、まだ謎がありそうな気はするが…。」
皆の発言をヒントに、あの厨房の水が何のためにはられた物だったのか、説明できる証拠を複数提示しよう。
―コトダマ提示―
▼[切れたコード][テーブルの脚]
宮壁「これなら説明ができそうだ。」
宮壁「篠田の言う通り、コードに仕組みがあると思う。」
篠田「やはりそうか。」
宮壁「まずは切れているコードについて。このコードは俺達が厨房に集まった時は電子レンジとかが置かれている棚の支柱に結ばれていたんだ。」
宮壁「次にテーブルの脚。このテーブルはその棚から少し離れたところに設置されているけど、その脚にテープをはがしたような跡が残っていた。さっき言いそびれたけど、コードはここにつけられていたんだと思う。」
前木「ちょっと待って!」
宮壁「前木?」
何かおかしな事を言っていたか…?
前木「疑問点というか、納得できない部分があるの。聞いてもいいかな?」
宮壁「ああ。言ってみてくれ。」
♢反論ショーダウン♢
前木「その説明だと、鈴華ちゃんが足をかけても転ばないんじゃないかな。だって、テープが剥がれたって事は、コードの張りもなくなったんだよね?」
宮壁「そうだな。」
前木「つまずく事はあるかもしれないけど、東城くんの言うような膝に痣が残るほどの怪我にはならないと思うよ。」
宮壁「……。」
前木「じゃあ、鈴華ちゃんにはどうして痣ができていたの?テープなんて剝がれやすいもので【コードを張る意味なんてあるとは思えない】よ!」
なるほど……たしかに、前木の言う事はもっともだ。俺の意見も少し変えなきゃいけないな。
安鐘の膝の痣は『コードにつまずいたからではない』。そして、おそらく『テープは剥がれなくてはいけなかった』。
コードのもう一方の先にあった物と床の状況を考えれば、犯人の目的が見えてくるはずだ……!
▼[切れたコード]→【コードを張る意味なんてあるとは思えない】
宮壁「それは違う!」
宮壁「ごめん。さっきの俺の発言だけど、少し訂正させてもらう。安鐘はつまずいて転んだ訳じゃないんだ。コードの切れていない方の先を見てほしい。」
前木「コードの先…あっ、コンセントに繋がってる!じゃあ、鈴華ちゃんは転んだ訳じゃなくて……」
宮壁「そう、安鐘がコンセントに繋がったままのコードに足を引っかけた拍子にテープが剥がれた。そのままコードは水浸しの床に落ちる。……安鐘は感電したんだ。」
前木「そっか。鈴華ちゃんは転んだんじゃなくて、感電のせいで倒れちゃったんだね……。」
前木は悲しそうに目を伏せた。
東城「急に倒れたのであれば、膝にこけたのと似たような痣ができるのも納得できるね。」
篠田「感電……。つまり、首を切られたのはその後、という事か。」
勝卯木「首……何故……?感電……足りない?」
篠田「……犯人も分からなかったのではないか?あのコンセントのワット数が分からない上に、人が死ぬ電力量も知らなかったのだと思うが……。」
宮壁「俺もそんな事は知らないし、犯人も同じだったんじゃないかと思う。だからこそ、念のために首も切ったんじゃないか。」
うん、ここまではたぶん合っているはずだ…。皆も反論はないみたいだし、そろそろ次の話題に進んでみよう。
宮壁「次は、どうして安鐘が厨房に……」
柳原「じゃあ次は、犯人がどうやって安鐘さんに近づいて首を切ったのか話していきませんか?そのまま厨房に入れば犯人も感電してしまうと思うんです!」
宮壁「あっ……」
難波「たしかに。どうして犯人は感電せずに済んだのか……まあ、それはすぐ分かるような気がするけど。」
宮壁「……。」
潜手「み、宮壁さんー…。次は、大きーい声で言いましょーねー…!」
宮壁「ありがとう…。」
隣の潜手には聞こえていたみたいで憐れむような目を向けられてしまった…。
難波の言う通り思い当たる物はあるし、早く終わらせるか。
―コトダマ提示―
▼[床の雑誌]
宮壁「これを使えばいい。」
勝卯木「雑誌……。」
宮壁「食堂にあったものだし、積まれた高さも水深より高かった。足場にしたと考えて間違いないと思う。踏まれたような跡もあるしな。」
柳原「たしかにそうですね!さすが宮壁さんです!」
宮壁「あはは……。えっと、次は安鐘がどうして厨房に行ったのかについて話したい。」
潜手「どうして……えっと、犯人さんが宮壁さんを叩いた後にー、何があったのかって事ですーよねー?」
宮壁「その通りだ。犯人と安鐘の間に何があったのかを考えよう。」
―議論開始―
前木「宮壁くんが殴られて、その後…犯人は鈴華ちゃんを狙ったんだね…。」
大渡「そこでソイツが死なずに済んだ理由が分からねぇな。普通死ぬだろ。」
柳原「もー!宮壁さんに向かってなんて事言うんですか!」
潜手「あ、あわわ……2人とも落ち着いてくださいー…!」
篠田「しかし、何故安鐘は扉を開けたのだ?まあ、【安鐘自身に何か用事ができた】と考えるのは自然な気もするが。」
難波「いや…アタシが見張ってた時も鈴華は1回も出てこなかったけど…どうなんだろ。これって結論が出る話題?」
東城「あの人が扉を開けた理由…【トイレに行こうとした】くらいしか思いつかないけれど。」
前木「もしかして、あの【扉の傷が関係してる】のかな…?」
あの人の発言は正しい気がする…!
▼[安鐘の個室のドア]→【扉の傷が関係してる】
宮壁「前木、俺もそれに賛成だ。」
前木「あっ、本当?」
宮壁「ああ。俺もそう思う。そもそも俺が殴られた時、相手は外したりしていない。あの扉の傷は『俺を殴る時にできた傷じゃない』。」
難波「ん?じゃあなんで犯人は扉を殴った訳?」
宮壁「ちょっと無理矢理かもしれないけど…俺が襲われた事を知らせようとしたんだと思ってる。」
東城「その考察、僕には理解できないかな。」
宮壁「東城……。」
♢反論ショーダウン♢
東城「そもそも、あの人は殺人犯だ。あの人が外にいる宮壁くんを心配する訳ないだろう。」
宮壁「……。」
東城「それに、扉が殴られた時点で出て行ったところで、今度は自分が狙われると思うのが普通じゃないかな。」
宮壁「……。」
東城「外に危険人物がいるのに無防備で廊下に出る勇気なんて、ボクにもないけれど。」
安鐘とのやり取りを思い出す。俺は……。
東城「ねえ、聞いているのかな?」
安鐘を信じようとするのは、安鐘が俺に何かあったと思って扉を開けたのだと思うのは、俺の無理矢理な妄想なのだろうか。
きっとそうだと思い込んでいるのは、俺の方なのだろうか……。
『反撃論破』
東城「憶測で物事を語るのはやめてもらえるかな。それも殺人犯の肩を持つなんてキミらしくない。」
前木「宮壁くん……?」
柳原「宮壁さん、どうしちゃったんですか?ずっと黙ったままですけど。」
宮壁「……。ごめん、根拠は、ないんだ。」
東城は「は?」とでも言いたげな顔でこっちを見る。勿論、東城だけじゃないけど…。
宮壁「確証がない。だけど、俺は安鐘に何の忠告もしなかった。見張りがいるとはいえ、夜の間は扉を開けないように言ってもよかったはずなんだけどな。だから……」
篠田「宮壁、すまないが、それは苦しいのではないか……。」
宮壁「……俺もそう思う。」
この意見を取り下げようと思ったその時、1人が声をあげた。
柳原「いえ!おれは宮壁さんを信じます!どうして安鐘さんが扉を開けたのかは謎ですが、『何故犯人が安鐘さんの扉を殴ったのか』を考えるとそれくらいしか理由がないじゃないですか。」
宮壁「柳原……。」
前木「そっか。逆に考えてみると、たしかに変だよね。犯人はどうして宮壁くんを殴った後に鈴華ちゃんに気づかれるような事をしたんだろう?」
柳原「夜中に急に自分の扉が叩かれる。個室は防音ですが、扉の振動は簡単に伝わるんじゃないですかね?そうだとすれば、すぐに外に出るのはたしかに怖いです。だけど、例えば……『扉が叩かれてからしばらく経った状態』であればどうでしょう?」
宮壁「……!」
難波「そういう事ね。アタシ達はすぐに外に出たとばっかり思ってたけど…うん、しばらく様子を見て、それこそ扉を薄く開けて外の様子や物音を確認して、誰もいなかったらアタシは外に出る気がする。何が起きたのか気にはなるしね。」
篠田「なるほどな。中にいた安鐘は『扉を叩かれたのは宮壁が襲われている最中』だと思ってしまう。まさか犯人が宮壁を襲った後に扉を叩いたなど、普通は考えないだろう。だからこそ、時間をあけてから廊下に出るのも自然な行動と言える訳だな。」
前木「すごい…!柳原くん、お手柄だよ…!」
宮壁「ありがとう柳原、それなら俺の無理矢理も筋が通る。」
柳原「やったー!困った時はおれに任せてください!東城さん、これで説明できた事にはなりませんか?」
東城「……うん。それなら一理あると考えられるかな。」
柳原「でしょう!宮壁さんの言う事に間違いはないんですよ!」
宮壁「いや、間違える事はあるから信用しすぎないでくれよ……。」
柳原「ここからはおれの考えになりますが、安鐘さんは外の様子が気になって扉を開け、倒れている宮壁さんを発見しました。そして、宮壁さんに駆け寄った時に初めて、犯人がまだそこにいる事に気づいたんです。みなさんならこの後どうしますか?」
勝卯木「……逃げる…。」
柳原「そうです。個室に戻るのが一番だと思いますが、そこは犯人との攻防があり、安鐘さんはそのまま食堂に逃げこんだ。こんな感じかな、と思っているのですがどうでしょう?」
宮壁「ああ、俺も賛成だ……だけど、なぜ食堂に逃げ込んだのか。それに、どうして食堂に逃げ込む事が分かっていたかのように感電装置を準備できていたのかが謎だな。」
東城「そこがこの事件の最大の謎と言っても過言ではないよ。食堂の他にも逃げ込める場所はたくさんある。その中で食堂……しかも厨房。自分から逃げ場のないところに向かっているのは不自然だね。」
前木「どうして食堂に行ったのか……うん、話が進んできたね。考えてみよう!」
―議論開始―
篠田「食堂はたしかに逃げる先としてはおかしいな。」
勝卯木「慌ててた……?」
難波「まあそれもあるだろうけど、逃げるならもっと適当な場所があるじゃん?」
勝卯木「…広いところ……。」
前木「広くて、逃げ隠れしやすいところと言えば…。」
東城「うん、逃げ回るなら【温室】がうってつけだと思うのだけれど。」
皆が思い浮かべている場所は同じだろうな。だけどそれは違う…!
▼[潛手の証言]→【温室】
宮壁「そこには行けないな。」
宮壁「潛手、温室に行けなかった理由、もう1度話してもらっていいか?」
潛手「あ、はいー!えっとですね、朝潛手めかぶが温室にお散歩しに行こうとした時―、エレベーターが動かなかったんでーすー。温室に行くにはあのエレベーターを使わないとですーしー、行けなかったと思いますー!」
東城「あの人が逃げていた時にもエレベーターが動かなかった証拠はないのかな。」
潛手「それはー…ない、ですーねー…。でもでもー、捜査の時には動いていましたーしー、モノパオさんも何も言わなかったので、故障ではないはずですー!」
東城「…ここはモノパオに聞いた方が早そうだね。モノパオ、質問するよ。」
モノパオ「ええっ!?オレくんに聞くの?」
難波「他に聞く相手いねーし。で?夜中も動いてなかったの?そもそもなんでエレベーターが動かなかった訳?」
モノパオ「そこは不確定要素として進めてほしいところだけど…。うん、夜中くらいに動かなくなってたはずだよ!なんでかは秘密!」
勝卯木「けち。」
モノパオ「というか、理由なんてオマエラが推理するところだからね!?オレくんになんでも聞こうとしない!はい議論に戻った戻った!」
宮壁「……えっと、安鐘を襲った人がエレベーターを閉めるように頼んだんだと思うけど…。」
前木「う、うん、私もそう思う。」
篠田「頼まれもしないのにエレベーターを封鎖するとは思えないしな。」
柳原「……でも…。」
難波「ん?柳原、なんか気になる事でもある?」
柳原「お願いしたからって、封鎖してもらえるものなんでしょうか?なんだかこの事件、モノパオが犯人側に肩入れしているように感じるのですが…。」
大渡「……何が言いたい?」
柳原「この事件、モノパオが関わっているんじゃないですか?」
宮壁「!!!」
前木「え!?そ、そんなのってありなの!?」
難波「いや、でも…鈴華もアタシ達と同じ考えで温室に向かっていたとしたら、それを封鎖して食堂に追いつめた事になる。犯人が頼んだからかもしれないけど、今までのモノパオの動きと少し違うような気もする。」
モノパオが事件に直接関与する…。ありえない話じゃない。それに、もし本当に関係しているなら、『あの違和感』についても説明できるんじゃないか?
―コトダマ提示―
▼[アナウンスのタイミング]
宮壁「これだ……!」
宮壁「皆、思い出してほしい事がある。安鐘が発見された時のアナウンスについてだ。」
潛手「アナウンスは…鳴ってましたーよねー?」
宮壁「ああ。だけど、アナウンスが鳴ったのはいつだった?」
柳原「潛手さんやおれが駆けつけた時はまだ鳴っていませんでしたね。」
東城「決まりとしては、アナウンスが鳴るタイミングは『全員が集まるのに時間がかかる場合』に『誰かが発見した直後』だったね。今回のタイミングは後者に矛盾している。」
宮壁「じゃあどうしてアナウンスはすぐに鳴らなかったのか。これも、モノパオ自身が犯行に関わっていたとすれば…。」
勝卯木「……無理矢理…。」
宮壁「それはそうなんだけど…。モノパオ、どうしてアナウンスが鳴らなかったのか説明してはくれないのか?」
モノパオ「ん?アナウンスねぇ…。三笠クンも死んじゃいそうだったからモノパオファイルを作る時間が必要だったからだよ!」
宮壁「…いや、それは関係ないはずだ。」
だって、モノパオは2匹いるんだから。1匹ならその理屈も通るけど、2匹いてそこまでアナウンスが遅れる事はないだろう。……言えないのが歯痒い。
宮壁「本当にそれだけなのか?」
モノパオ「……ま、こっちの不備だしちょっとは認めてあげちゃおっかな!『モノパオ』は本当に忙しかったの!それこそ、『アナウンスより優先する事があった』くらいにはね!」
前木「この言い方、じゃあ本当にモノパオが事件に関与してるって事…!?」
篠田「おい。そんな事ルール上ありなのか?」
モノパオ「ありだよ!だって校則にそんな事書いてないもん!モノパオだって心があるのです。シロとかクロとかさせてくれよ、オレくんだってコロシアイに参加してるんだからさ……。」
勝卯木「自白…。」
モノパオ「ちーがーう!「とか」って言ってるでしょ!」
宮壁「あともう1つ。エレベーターは頼まれたら封鎖する事があるのか?」
モノパオ「うーん、今までそんな事頼まれなかったからしてこなかったけど、理由がコロシアイなら封鎖してあげるよ!裁判ではシロが有利になるようにこうやって情報提供をしている訳だし、他のところではクロにもはたらきかけてあげないとね!」
宮壁「……だそうだ。モノパオが直接殺人に関わっているかはともかく、今回の事件の犯人はモノパオと『協力関係』にあったと言っていいと思うぞ。」
柳原「うわー!さすがです宮壁さん!宮壁さんはやっぱり正しいって事が証明された訳ですけど…次何を話したらいいんですかね?ここから犯人を絞っていっていいんですかね?」
潛手「今までの話だと、結局犯行ができる人は減ってない気がしまーすねー…。」
宮壁「ああ。俺は…安鐘の事件から犯人を絞るのは無理だと思う。」
難波「とりあえず今分かっている事を整理しよっか。まず、犯人は鈴華の個室の見張りをしている宮壁を襲った後、鈴華の個室のドアを叩く。警戒していた鈴華も、さすがに時間が経った事で宮壁の安否を確認するために外に出た。」
柳原「しかし、犯人はまだ待機していたんです。今度は安鐘さんに襲い掛かったのでもちろん彼女は逃げました。安鐘さんは温室に逃げようと思いいたりますが、犯人はそれを見越してモノパオにエレベーターの封鎖を頼んでおいたんですね。その結果安鐘さんは近くにあった食堂に逃げる事になったんです。」
難波「で、厨房まで入ったところでコードに足を引っかける。テープで固定されていたコードは床に落ち、そこに溜まっていた水に電気が流れ、感電してしまった。追いついた犯人に首を切られ殺された…。えっと、ちなみに水とか準備したのっていつ?」
柳原「宮壁さんを襲った後じゃないですか?その辺りくらいしか準備時間はないですよね。」
難波「たしかに柳原ので筋は通る。やっぱり、一旦鈴華の事件の概要は解けたようなもんだね。最初挙がっていた蘭、めかぶ、大渡の3人から犯人を絞るのは無理そうだわ。」
篠田「では次は、三笠の事件に移る訳だな。三笠の死因は毒。その薬の正体が分かれば、犯人につながると思うが…。」
三笠の死因となった毒が一体どれなのか…。皆の話を聞きながら考えていこう。
―議論開始―
柳原「おれ達が捜査中に見つけた、使用済みの毒は【2種類】ありました!」
柳原「武器庫に置かれていた【特製の毒】です。液体のものと粉末のものが減っていました。」
東城「三笠くんの主な症状は【吐血】だった。症状が当てはまるのはどっちかな。」
大渡「どっちも大差ねぇよ。粉末の方が高熱の症状もあったがそれ以外は一緒だ。」
前木「高熱…蘭ちゃんに出ていた症状だ…。じゃあ、蘭ちゃんに使われた毒は粉末の方なんだね。」
柳原「他に違いはないので、【特定はほぼ不可能】って事ですね!」
……あの発言、俺の考えと矛盾しているな。ここは逃さず指摘しよう。
▼[特製の毒(液体)]→【特定はほぼ不可能】
宮壁「待ってくれ、柳原。」
柳原「あれ?何か変な事言ってましたか?」
宮壁「大渡の言う通り、症状には違いがないけど、液体の他の特徴。柳原は捜査でこの話をしている時全然違うものを見ていたから知らなかったのかもしれないが…大渡、皆に指を見せてやれ。」
柳原「指?」
当の本人はめちゃくちゃ嫌そうな顔をしてるけどそんなの気にかけている場合じゃない。
宮壁「ほら大渡、何渋ってるんだよ。いつまでも渋ってたらクロにするぞ。」
大渡「……。」
珍しくポカンとした顔で一瞬こっちを見た後、大渡は皆に見えるように親指を向けた。というか俺の方に向けて親指を下にしている。コイツ……。
難波「ウケる。黒いんですけど。」
大渡「チッ、液体の方は原液に触れると皮膚が黒くなるらしい。どのくらい薄めたら黒ずまなくなるのかは知らねぇが。そこのクワガタ頭が言いたい特徴ってのがこれの事だ。」
宮壁「く、クワガタ頭……。」
思わず自分のくせ毛を手でつぶす。
柳原「…………。そうだったんですね。おれ、知りませんでした。やっぱりまだまだです!」
宮壁「まあ、俺達が騒いでたからな。柳原は見てなかったし。」
大渡「ちなみに水で軽く流しても落ちねぇよ。毒殺に使うのには向かないと思うが。」
潛手「ではー、三笠さんに使われた毒ーも、勝卯木さんに使われた粉末タイプの方ってことーですかー?」
前木「そう考えていいと思うな…。」
篠田「犯人とて黒くなる危険性を考えれば使いづらいだろうな。」
難波「……でもさ、勝卯木と三笠が同じ毒を使われたなら、三笠を殺した犯人って…。」
潛手「ほひゃー、安鐘さん、になってしまいまーすねー……?」
沈黙。それを確かめる相手はもういない。
大渡「あ?容疑者が絞れてねぇけど。」
東城「このまま状況が覆らないなら、3人に対して尋問でもした方が早いと思うけれど。」
いや……。まだ、安鐘が三笠を殺した犯人だと分かる証拠なんてない…。ただ毒が同じなだけだ。
宮壁「尋問なんて必要ない。まだ三笠の事件でわかっていない事がある。」
潛手「は!たしかにー、勝卯木さんのように、『いつ毒を飲んだのか』が分かってないーですーねー!」
宮壁「そうだ。むしろ、安鐘に話を聞けない分、そっちの方が犯人に繋がる手掛かりが見えてくると思う。」
難波「オッケー。三笠がここ数日に摂取したご飯と飲み物を整理していく訳だ。毒の効果的に、3日前とかは流石に考えなくてもいいはずだから、この2日間のを整理しよう。」
―議論開始―
宮壁「順番に、一昨日から何を飲んだり食べたりしたか言ってほしい。」
前木「朝は【めかぶちゃん達が作ったホットサンド】を食べたよね。」
篠田「昼は三笠が作っていたから省略していいだろう。」
潛手「プールの時にー、【東城さんの作ったスポーツドリンク】を飲みまーしたねー!」
柳原「夜は【安鐘さんと篠田さんで作っていました】!安鐘さんは不安ですけど……。」
前木「えっと、昨日の朝と昼は各自だったから関係なさそうだね。」
難波「【鈴華の作った和菓子】…三笠は食べていないから違うか。」
篠田「晩はめかぶ、三笠、私で夕食を作ったが……。」
自分で切り出しておいてなんというか、状況が変わった感じはしないな。
特に矛盾になりそうなものもないぞ……。
『支援』
▼[???]→【東城さんの作ったスポーツドリンク】
東城「ちょっと待ってくれるかな。」
宮壁「え?何か変なところがあったか?」
東城「今の、潛手さんの発言。もう1度聞きたいな。」
潛手「うぇ?えーっと……みなさんとプールで遊んだ時に、東城さんが用意してくださったと勝卯木さんが言ってたスポーツドリンクを皆で飲みましたーっていう、それだーけの話でーすよー?」
東城「………。」
潛手「東城さんー…?」
東城「何それ。」
宮壁「は?」
前木「え、な、何それって、どういう事?」
東城「知らないよ、そんな話。ボクはスポーツドリンクなんて作ってないけれど。」
難波「……マジで言ってる?」
東城「大体、ボクは無駄な遊びは反対だって言っていたよね。そういうコロシアイの抑止力にもならない事をしたって無駄だ、とね。そう言うボクが皆のために作ると思う方が不自然ではないかな。」
柳原「そっか、東城さんってみんなでわいわいするのが嫌なんでしたね!」
………。考えればそうだ。東城がわざわざそんな事する理由がない。それなのに、そこに違和感を覚えていたのに……。
♢
♢♢
♢♢♢
3章 (非)日常編2
♢♢♢
「三笠……東城、から、これ……。」
勝卯木が三笠にスポーツドリンクを渡している。
「うん?自分だけか?」
「全員分、ある……。」
勝卯木はその後全員にスポーツドリンクを配っていった。東城が勝卯木に頼むなんて珍しいなと思いながら俺も勝卯木から受け取る。
♢♢♢
♢♢
♢
宮壁「なぁ、勝卯木…お前、なんであんな嘘をついたんだ……?しかも、最初に三笠に渡して…。いつもの勝卯木なら、仲の良い前木に最初に渡しそうなものだけど。」
勝卯木は喋らない。この話題になってから、一度も。
前木「蘭ちゃん、何か言ってくれないと、分かんないよ?あの時は言い間違えただけだよね?」
勝卯木「……。」
柳原「勝卯木さんは怪しい3人の中にも含まれています。これがどういう事か、宮壁さんなら分かるんじゃないですか?ね、勝卯木さん?」
勝卯木「…………。」
……勝卯木は相変わらず無表情だ。だけどその顔は下を向いている。
そもそも俺は、襲われたときに『モノパオの声を聞いている』。
つまり、勝卯木は、そういう事だ。
でもそういう事だと分かっているのは俺だけだ。これじゃあ証拠にはならない。
なんてのは建前で、本当は信じられないんだ。
勝卯木が『そう』である事を信じたくない。怖いんだ。
モノパオの言っていた事は事実だと認めたくないけど、俺の持っている情報はそれが事実だと明確にしている。
だから俺は…私情を捨てる。
庇いたいだとか、犯人であってほしくないだとか、そういう感情はもういらない。
どこまでも冷静に、冷酷に、無慈悲に、ならなければ。
誰かがその役目をやらないと、きっと皆はこの結論に納得はしてくれないだろう。
俺には超高校級の判断力という才能がある。
この判断は間違っていない事……ここにいる全員に認めさせてみせる!
宮壁「……勝卯木、分かった。話さなくていい。」
宮壁「お前が話さないなら、俺がこの前提で推理を進めるだけだ。いいな。」
前木「宮壁くん!待ってよ!」
宮壁「待たない。勝卯木本人から反論がない限り、俺は待ってやらないぞ。」
潛手「み、宮壁さん……?どう、したのでーすかー…?」
宮壁「結論から言おう。俺は、勝卯木がクロだと思っている。そして同時に……」
宮壁「勝卯木蘭は、このコロシアイの黒幕だ。」
前木「……へ?」
難波「は……?」
大渡「貴様、正気か?」
東城「随分と言い切るね。そう言うからには根拠があると思っていいのかな。」
宮壁「今から順番に説明していく。そもそも、勝卯木がスポーツドリンクを東城が作ったと言って三笠に渡した理由、東城は何か心当たりがあるか?」
東城「いや、ないよ。」
宮壁「聞き方を変えよう。東城は三笠に何か薬を処方した事はあるか?」
東城「……なるほどね。宮壁くんが言いたい事、少しだけ理解できたよ。うん、ボクは三笠くんに『睡眠薬を処方していた』。」
宮壁「やっぱりそうか。」
篠田「三笠が睡眠薬を?それはそれとしても、一体これのどこが理由になるのだ?」
東城「ボクからのスポーツドリンクだと言えば、『普通のスポーツドリンクと味が違っても』違和感を持たれない。三笠くんがボクの処方した薬を信用していれば尚更だ。」
宮壁「ちなみに、三笠は普通のスポーツドリンクを飲んだ事もあるから、味が違う事には気づいていたはずだ。だけど東城から渡されたと言われてしまえば多少味が違っていても疑問を持たない。この事は東城と三笠しか知らないはずだけど、黒幕なら監視カメラで見る事ができたから東城からだと偽ったんだ。」
勝卯木「違う……!」
宮壁「分かった、じゃあ反論してくれ。」
勝卯木「えっ……あ……うん…。」
宮壁「その代わり、ちゃんと根拠があるんだろ?」
前木「ねえ宮壁くん、さっきから変だよ!」
宮壁「……変じゃない。」
冷たい態度だとは思っている。だけど、相手はおそらく黒幕なんだ。
優しくできる訳、ないじゃないか……!
♢反論ショーダウン♢
勝卯木「三笠の毒……スポーツドリンク…原因……未確定…。」
宮壁「三笠が毒を摂取したのは別の時だって言いたいのか?」
勝卯木「……うん。」
宮壁「勝卯木はいつだと思う?」
勝卯木「…私達、知らない間……犯人と、2人きり……。」
宮壁「犯人がその事を隠してるって言いたいのか?」
勝卯木「そう……!スポーツドリンクだけ、怪しい……違う…!」
宮壁「じゃあ、そもそも東城が作ったと嘘をついたのはどうしてなんだ?」
勝卯木「……それは…。」
宮壁「毒を混ぜたスポーツドリンクの味に違和感を持たれないようにするため。違うか?」
勝卯木「【あの毒、甘い】……!スポーツドリンク、違和感、ない……。」
……焦って墓穴を掘ったな。そんなところまでモノパオそっくりじゃないか。
▼[特製の毒(粉末)]→【あの毒、甘い】
宮壁「言い逃れもそこまでだ。」
宮壁「本当は他にも深堀りするところはあったけど、勝卯木からボロを出してくれるなら話が早い。」
難波「ボロ……?」
宮壁「勝卯木、どうしてお前が毒の味を知っているんだ?」
勝卯木「……!」
宮壁「お前の言う通り、粉末タイプの毒は砂糖に混ぜて使えるような甘い味らしいけど、それは俺と一緒に捜査をしていた柳原と大渡にしか伝わっていない情報だ。それに、『あの毒』なんて言い方、前から知っているみたいに聞こえるぞ。」
勝卯木「そ、れは………、私、食べた毒……甘かった、から……。」
柳原「いいえ、その理屈は通りません。あなたが三笠さんにスポーツドリンクを渡したのは、あなたが毒を口にする前ですよ。」
勝卯木「……。」
宮壁「そして、東城が三笠に薬を処方したいた事を知っているのは東城以外にはその様子を見ていた人しか知らない。これこそ黒幕である事の証明になるんじゃないか?」
東城「……まあ、怪しむには十分すぎると思うけれど、確定するには少し早計ではないかな。」
潛手「そ、そうでーすねー…?まだ、それだけだと言い切るのは難しいと思いますー…。」
宮壁「それなら他の根拠を言えばいいだろ?勿論、これだけじゃない。安鐘が勝卯木を狙った理由も、勝卯木が黒幕だと思ったからだ。そこについて説明するぞ。」
前木「……宮壁くん…。」
不安そうな前木と目が合う。
……何を不安がっているんだ。前木が疑われている訳ではないのに。
あ、そうか、前木は勝卯木と仲が良かったから………いや、今そんな事を考えちゃいけない。俺はここで失敗する訳にはいかないんだ。
宮壁「難波、思い出してほしい事があるんだ。」
難波「アタシ?…あ、もしかして、鈴華が言ってた話の事?」
宮壁「その通り。あの話も、勝卯木が黒幕であるという証明になっていたんだ。」
♢
♢♢
♢♢♢
3章 (非)日常編3
♢♢♢
「難波さんは知らないなら知らないままでもいいと思いますが…そうですわね、わたくしの事を理解してほしいとは思ってはいませんが、同じ疑問を抱いてもらいましょうか。難波さん、勝卯木さんは腕時計なんて持っていませんよね?そして、この建物には秒針のある時計がありません。廊下に至っては時計すらありませんわ。」
「はぁ?」
「え、安鐘、何言ってるんだ?」
「は?宮壁は分かってたんじゃなかったの?」
「い、いや、ちょっとそれは俺も知らなくて…。」
「まぁ、宮壁さんもでしたの。……とにかく、これを理解すればお二人もある可能性に行きつく事ができますわ。そして、これこそが、わたくしが勝卯木さんを選んだ理由です。」
♢♢♢
♢♢
♢
柳原「……安鐘さんがそんな事を?」
宮壁「ああ。安鐘が誰よりも早くそれに気づくなんて少し意外だけど、この話が最大の根拠だ。」
篠田「時計がない…。たしかにそうだが、それと勝卯木が黒幕という事と何が関係するというのだ。」
宮壁「勝卯木が今までの裁判でしていた証言。あれと矛盾するんだ。」
Q勝卯木の証言の違和感は?
A. 毎回証言をしていた
B. 時間を秒単位で答えていた
C. 目撃証言しかない
→B
宮壁「これだ。」
♢
♢♢
♢♢♢
1章 非日常編1
♢♢♢
「え、ええっと、具体的に何時なんだ?」
「…10時57分32秒開始、11時8分45秒終了。…人……遭遇、なし…。」
「こ、細かいな…。」
さすがの記憶力。というか1つ1つの行動がいつの事かを覚えてるのか?恐ろしいな…。
♢♢♢
2章 非日常編1
♢♢♢
「保健室……牧野…出てきた……。」
「え?いつくらいの事だ?」
「6時10分11秒……。」
「相変わらず細かいな…。」
「すごいね…蘭ちゃん…!」
「……ピース。」
「よくそんなに覚えていられますね!すごいです!かっこいいです!」
♢♢♢
♢♢
♢
前木「……そうだ。蘭ちゃん、なんで、『何時何分何秒まで言える』の?他の人達は誰も秒数までは言ってなかったのに。」
勝卯木「え……………。」
宮壁「勝卯木、お前は腕時計をしている訳でもない。じゃあ何を見て証言していたのか。答えは明白だ。」
篠田「……!まさか……。」
この様子だと、篠田も気づいたみたいだな。
篠田「監視カメラか…!」
裁判が終わった後にモノパオに見せられた監視カメラの映像。そこにはきちんと秒数まで表記されていた。
宮壁「そもそも勝卯木の証言はどれも始まりの時間や終わりの時間まであまりにも正確だった。そして…柳原、あの動機の話をしてほしい。」
柳原「分かりました!おれに配られた秘密は勝卯木さんのだったんですけど、それには『勝卯木蘭には才能がない』と書いてありました。記憶力がないとすれば、どうしてあのように細かく覚えておられたのか謎だったんですけど…黒幕として監視カメラの映像を見て覚えていたのであれば、それにも説明がつきますね!」
大渡「監視カメラは裁判で散々見た通り録画もできる。映像であればメモに取る事もできるし何度も確認できる。あの証言をするのに突出した記憶力は必要ねぇって事か。」
宮壁「という訳だ。勝卯木、反論はあるか?」
勝卯木「……。」
宮壁「これは言うか迷っていたけど、俺は襲われる直前にモノパオの声を聞いている。声も似ていた上に一人称は『私』だった。俺を襲う事ができた3人の中に一人称が私なのは勝卯木だけだ。」
難波「はぁ!?それはさっさと言えばよくね?」
柳原「宮壁さんの話は、自分以外に証人がいないから話さなかったんじゃないですか?」
宮壁「ごめん。理由は、柳原の言う通りだ。」
柳原「ほらやっぱり!宮壁さんはとっても賢いんですよ!」
難波「まあ、言いたい事は分かった。……で、蘭はどうなの?文句でも反論でもあるなら言った方がいいと思うけど。」
勝卯木「……。」
勝卯木「……………………。」
潛手「勝卯木さん…。」
勝卯木「……かく。」
宮壁「え?」
勝卯木が何を言ったのか分からなかった。そのまま手で三角形を作る。
勝卯木「さんかく。」
前木「さんかくって…少しは合ってるって事…?」
勝卯木「だから……だから……」
勝卯木「『黒幕の私』が、ちゃんと解答してあげるねっ♡」
………勝卯木はそう言って満面の笑みで、俺達に喋りかけた。
前木「あ、え……?」
勝卯木「ことなちゃん、私ね、ずっとずーっと、こうやってことなちゃんと普通にお喋りしたかったの!だから今とっても嬉しいな!」
潛手「勝卯木さん、え、えっと、」
勝卯木「めかぶちゃんのご飯、本当においしくて大好き!いつもありがとうねっ!」
難波「は?」
勝卯木「しおりちゃんもいつも気にかけてくれて嬉しかったな~!でも今の顔、ちょっと怖いよ?」
大渡「……い、今までのは全部演技だったっつー事かよ。」
勝卯木「おっ!さすがのきょうくんも驚いちゃった?顔が鳩みたいだよっ!」
東城「どうしてそのような事をしていたのかな。」
勝卯木「うーん、ゆうまくんには分からないだろうけど、無口キャラは疲れるんだよね。」
柳原「勝卯木さん、普通にしている方が話しやすくていいですね!」
勝卯木「りゅうやくん1人だけ頭がお花畑だねっ!ありがとう♡」
篠田「……さんかく、の意味を教えてもらおうか。」
勝卯木「も~!ひとみちゃんたらせっかちなんだから!もうちょっとお喋りしようよ~!」
……。これが勝卯木か。黒幕と認めた以上、突き止められるところまで行くしかない。
宮壁「余談はいらない。どこに反論があるのか言ってくれ。」
勝卯木「…だいきくんは真面目モードかぁ。けち~!サービスしてよ!せっかくこうして話せるのに。」
宮壁「事件についてならいくらでも話していいって言ってるんだ。」
勝卯木「仕方ないなぁだいきくんは!じゃあ、早速。黒幕だって事が分かったし、それならそうたくんにスポーツドリンクを飲ませた時の口実にも納得がいくと思うけど…。スポーツドリンクに毒が入っていた証拠なんて誰も持ってないよね?それじゃあただの憶測だよ?」
勝卯木「それに、使われた毒が粉末タイプだとして、液体の毒は何に使われたのかな?なんで無くなってるんだと思う?」
思ったより真面目な反論が来たな。スポーツドリンク以外にも毒が混入していたものがあるっていうのか…?
勝卯木「よーし!じゃあ液体の毒の行方について話していこう!」
―議論開始―
勝卯木「どうして液体の毒が減っていたのか、予想がつく人はいるかな~?」
篠田「三笠の口内は特に黒ずんでいなかった。やはり【三笠に使われたとは考えられない】。」
潛手「安鐘さんは毒殺ではないのでー、【安鐘さんにも使われてはいない】ですー!」
前木「でも、誰かが取って使わないと、中の毒が減る訳ないよね…。」
東城「元々瓶に少ない量しか入っていなかった、という可能性は?」
大渡「明らかに残っていない程に減っていた。【誰かが使用した】のは間違いねぇよ。」
東城「たしかに、薬品は瓶の大きさに準じた量を入れているから有り得ない話かもね。」
勝卯木「別に100%黒ずむ訳じゃないし、【そうたくんに使った】とも考えられるよっ!」
宮壁「まるで使った事があるような言い方だな。」
勝卯木「あーっ!そうやってすぐ揚げ足取るんだから!黒幕として【いろいろ試した時に知った】だけだもーん!」
……あいつの発言、いくつか俺が捜査した事と矛盾している。ここでこの情報を使うといろいろとおかしな話になるけど、言うしかない!
▼[モノパオの証言]→【そうたくんに使った】【いろいろ試した時に知った】
宮壁「……お前の発言には、矛盾がある。」
潛手「…矛盾?どういう事でーすかー?」
宮壁「柳原と大渡と毒について捜査している時モノパオが出てきて、『この毒は替えがない』と言っていたんだ。だから、どこまで薄めれば黒くなくなるかを試したりすれば、ただでさえ小さい瓶だ、人を殺すために使う量なんて残らない。」
前木「えっと、じゃあ三笠くんには使われていないって事?」
宮壁「前木の言う通りだとしても疑問が残る。モノパオは『替えがきかないのに無駄使いされた』と言っていたんだ。じゃあ何かしらで使われた事は確実で…。」
難波「ん?つまり何かに無駄使いしただけで三笠には使ってないって事?」
宮壁「そうなると思う。他にも根拠はある。」
―コトダマ提示―
▼[三笠の症状]
宮壁「これだ。」
宮壁「さっきも言った通り、三笠の症状は吐血だ。だから液体の毒の可能性があった訳だけど…皆は、三笠が安鐘の犯行に気づいた時の様子を覚えているか?」
♢
♢♢
♢♢♢
3章 (非)日常編2
♢♢♢
その時だった。
ドンッ!
床に何かが倒れる音がする。
「…食べていないな?」
三笠が和菓子のお盆を全て床に投げ捨て、その反動で片膝をついていた。
「誰も食べていないだろうな?」
今まで見た事がないような顔で辺りを見渡す。
♢♢♢
♢♢
♢
難波「なんか、やけにオーバーに止めてた気がする…?」
前木「言われてみれば、和菓子の入ったトレイをひっくり返すくらいの勢いではねのけてたよね。」
潛手「あの時の足のつき方、なんだかおかしな感じだったかもしれないでーすねー…?」
宮壁「俺達はあの時、その後の三笠の発言で驚いていたから何も思わなかったけど、あれが『毒による症状』だとしたら?」
前木「…!粉末の毒の症状に、倦怠感があったんだよね!?それの事…?」
宮壁「ああ。東城、三笠がお前を訪ねた時、だるそうにはしていなかったのか?」
東城「……。特に様子が変には思えなかったけれど、彼の普段の身体能力を考えたらあからさまに症状として出なかったのも頷けるね。」
大渡「その症状があれば、奴が飲んだ毒は粉末ので間違いねぇって事か?」
宮壁「そういう事だ。…どうだ、勝卯木は何か言いたい事はあるか?」
勝卯木「いや~、それ教えたら答えになっちゃうっていうか。まあこれだけは教えてあげちゃおうかな。『液体の毒は私しか使ってない』よっ!というか、無駄使いもしたけど『それだけじゃない』し~!」
篠田「解答が質問と違う気がするが、まあいい。」
……教えてくれるって事はこの話は何かに使えるかもしれないな。俺はメモを取る事にした。
情報①[液体の毒を使ったのは勝卯木だけである。用途は不明。]
潛手「う、うーん?えっと、結局、液体の毒は何に使われたのか分からないって事ですーかー?」
篠田「勝卯木、少し聞きたい事があるのだが。」
勝卯木「おっ!なんだかんだでひとみちゃんが一番私の事見てくれるんだね!嬉しい♡」
篠田「モノパオが言ってた、という宮壁の発言。モノパオはお前だろう、何故そこで矛盾が生じるのだ?」
勝卯木「あ、えっとねー、モノパオは2匹いるの!だいきくん達が捜査でお世話になったのはもう1匹の方なんだよっ!」
篠田「2匹?…裏切り者が操作しているのか。」
勝卯木「さすがひとみちゃん、鋭~い!」
篠田「……」
勝卯木「も~!睨むなんてひどいよっ!そもそも、黒幕なのは認めたけどクロとは認めてないんだからね!?」
潛手「か、勝卯木さん……クロじゃないなら、なんで手伝うような事をするんでーすかー?宮壁さんは、襲われる時に聞いた声が勝卯木さんのものだって言ってーましーた。宮壁さんを叩いたのは勝卯木さんだったはずですー!」
宮壁「そうだ。俺を襲ったのは勝卯木、お前で間違いない。」
俺達の議論を静かに聞いていた難波が、ふいに声をあげた。
難波「そうだ。何か変だと思ってた。」
前木「紫織ちゃん?」
難波「しかもアンタ、宮壁を襲った時は毒で弱ってたんじゃなかった?そんな状態で他の奴の殺人を手伝うなんて考えられない。何より、共犯がいたとしてその相手に弱っているアンタを選ぶとは考えにくくね?」
勝卯木「まだ分からないと思うけど~?」
難波「…共犯の可能性を潰さないと納得してくれない訳?」
前木「アリバイ、かな?何時のアリバイがあれば共犯はないって言えるんだろう。」
宮壁「それは……。」
仕方ない、納得させるためにも話を広げてみよう。
―コトダマ提示―
Q事件が終わって間もない時間がいつか分かる証拠は?
▼[篠田の証言]
宮壁「篠田、話してもらえるか?」
篠田「晩の事だな。まず、宮壁が夜時間を過ぎたあたりから三笠と交代して見張りを始めた。私が見張りを交代する予定だった時刻は3時。簡単に言うとその間のアリバイが必要になる。宮壁は襲われた時刻は言えるのか?」
宮壁「体感の話になるけど、俺が見張りを始めてからモノパオが来るまでかなり時間があった。夜中の12時前くらいだと思う。その後しばらく話してから殴られたから、大体12時だと思っていいはずだ。」
潛手「その時間帯にアリバイ…ですーかー…。なかなか難しいですねー?」
勝卯木「でもでも、2人だけ完全にアリバイある人がいるんでしょ?ずるーい!私もアリバイ欲しいな~。」
宮壁「……。」
―コトダマ提示―
Qアリバイがある人を示す証拠は?
▼[難波の証言]
宮壁「難波と前木の事だな。」
難波「ん、そうだね。アタシと琴奈は一緒に部屋で一晩中喋ってたからアリバイがある。」
前木「朝6時くらいかな。紫織ちゃんと出た時に廊下に血が落ちているのを見つけて、保健室にいる皆に合流したから、ほぼ完璧なアリバイだと思う。」
宮壁「ああ。2人は間違いないと思う。で、他の人達なんだけど…。」
篠田「アリバイとは言えないが、宮壁を保健室に運んでしばらくして三笠と東城が来た。」
潜手「柳原さん、大渡さん、勝卯木さんと潛手めかぶは朝まで個室ですーねー。アリバイはないーですー…。」
勝卯木「ほら!誰でも共犯になれるよっ!」
難波「だから、普通黒幕でも弱ってる奴を共犯にするとは思えないって言ってんだけど。」
……まずい。勝卯木が犯人だと思うのに、決定的な証拠が見つからない。
何か、この状況を打開できる話題を見つけないと…!
そう俺が意気込むのと同時に口を開いたのは柳原だった。
柳原「いい加減に認めてくださいよ、勝卯木さん。そもそも、どうしてスポーツドリンクがここまで怪しまれているのか分かっていますか?」
勝卯木「りゅうやくん言い方が嫌―い。もっと優しく言ってよね!」
柳原「仮にあなたが善意でスポーツドリンクを渡したとしても東城さんが作ったと言う理由はありません。この時点で十分怪しいですが、それ以上におかしい点があります。あのプールの出来事は『動機が配られる前に起きている』んですよ?前回の動機はおれの手に渡っていたからあなたは見ていないはずです。特に理由がないのに不可解な行動に出たのは何故ですか?」
勝卯木「………!」
東城「うん。ボク達の中に特に理由もなく殺人を犯そうとする人はいないだろう。なぜならここには学級裁判というルールが存在するから。例え快楽殺人犯でもこの状況で自分の命まで賭けて殺人をする事は考えられないね。」
勝卯木がその理由を話してくれたらきっとボロが出る。
だけど話さないなら強制的に認めさせるしかない。何の話題がいいんだ…?
柳原「宮壁さん、この2つの事件で考えがまとまらないなら、もう1つ残っている事件について考えてみるのはどうでしょう?」
宮壁「もう1つ……。そうか!柳原、ありがとう。」
柳原「いいえ!どういたしまして!」
・・・コトダマ「???」
前木「宮壁くん、何か分かったの…?」
宮壁「……ああ。」
これについて質問を繰り返していけば、きっとボロが出る。もう終わりにしてみせる……!
♢詰問イグザミネーション♢
宮壁「勝卯木、黒幕のお前に聞きたい事がある。」
勝卯木「な~に?」
宮壁「安鐘がお前に使った毒は粉末タイプだったよな。」
勝卯木「そうだね。それがどうかしたの?」
『偽証』
▼[最初の量が不明の毒]⇒[最初は瓶いっぱいだった毒]
宮壁「あの【瓶いっぱいに入っていた毒】を安鐘が使った。そこはモノパオに頼んだんだろう。」
勝卯木「うんうん、モノパオに頼まないと使えないもんね!」
宮壁「ところで、あの毒には致死量がラベルにかかれていたんだが、何グラムだったか覚えてるか?」
勝卯木「え?えーっと…ごめんね?覚えてないよ。」
宮壁「そうか。じゃあ安鐘が使った量でいい、教えてくれないか?」
勝卯木「グラムなんて知らないよ?」
宮壁「監視カメラでお前は安鐘がどのくらいの毒を使ったか見ていたんだよな。大体でいいから。」
勝卯木「えっとね~。すずかちゃんが使ってた毒は、【瓶の4分の1】くらいだったよっ!」
……かかったな。
▼[???]→【瓶の4分の1】
宮壁「これで終わりだ!」
宮壁「安鐘が瓶の4分の1.間違いないんだな?」
勝卯木「監視カメラで見てたもん。間違えないよ。」
宮壁「安鐘がお前に毒を盛った後に俺と柳原でその瓶を調べ時、『瓶の中身は半分程度』になっていたぞ。」
勝卯木「……え。」
宮壁「じゃあその前に4分の1使ったのは誰なんだ?安鐘の部屋から毒はもう見つからなかった。お前じゃないのか。」
勝卯木「ま、まだ、他の人が隠してるのかもしれないじゃん!」
宮壁「じゃあ早く説明してくれ。スポーツドリンクの件で嘘をついたのは何故か。俺を襲った理由は?」
勝卯木「……。」
宮壁「答えられないんだろう。それが何よりの答えだ。勝卯木、認めろ。」
勝卯木「……………………………。」
勝卯木「……まあ、往生際悪いのもここまで、だよね。」
……勝卯木はいまだに何か言いたそうだったが、ようやく罪を認めた。
宮壁「……終わりにしよう。今から俺が事件の内容をはじめから説明する。それで誰からも反論がなければ……」
前木「宮壁くん。」
宮壁「…?どうした?」
前木「私は、まだ納得できてない。」
宮壁「……。」
前木「だから、納得したい。私に説明させてほしいです。」
宮壁「前木…。」
前木「蘭ちゃん。私、ずっと考えてた。蘭ちゃんは無実で、黒幕でもなくてクロでもない可能性があるんじゃないかって。」
勝卯木「ことなちゃ……。」
難波「……琴奈。」
前木「自分の信じたいものばかり見て、いつも皆に頼ってばかりだった。それはもう、終わりにしたい。蘭ちゃんのやった事を、私が、認めたいの。」
宮壁「……分かった。前木、よろしく。」
前木はありがとうと言って頷くと、ゆっくり深呼吸をする。
ずっと手にしていたメモ帳を開くと、この裁判の締めくくりに取り掛かった。
♢♢クライマックス推理♢♢
前木「今回の事件は、犯人が自分にできる事をフル活用した事件だった。最初に犯人は三笠くんを殺す事を企てていたんだ。犯人は粉末の特製の毒をスポーツドリンクに混ぜる事で三笠くんを狙って毒殺しようと考えた。三笠くんが東城くんに薬を処方してもらっていた事を知っていた犯人は、東城くんの名前を出せば違和感なく受け取ってもらえると考えたんだね。」
前木「こうして、表向きには何事もなく1日が終わったんだけど、次の日、犯人が黒幕である事を見抜いていた鈴華ちゃんが、犯人を毒殺しようと動いた。犯人はその罠にかかってしまって致死量の毒を摂取する事になったんだ。その毒も、犯人が三笠くんに使った物と同じ物だよ。犯人はその夜は周りの看病を受けて1日を過ごす事になって、鈴華ちゃんは個室前に見張りをつけられる事になった。」
前木「そして、事件当日の晩。夜時間を回ってから宮壁くんが見張りをしていたところをモノパオで気を引いて、犯人がその後ろから襲いかかった…!宮壁くんが私達からフライパンをもらっていた事も犯人は知っていただろうから、この準備はしていないんだろうね。宮壁くんが気絶したのを確認した犯人は、急いで現場作りに厨房へ向かった。」
前木「まず、厨房にある電子レンジのコードを、コンセントにささった状態で切断した。そのコードの先をテーブルの脚にテープで軽く止めて、簡単にコードが落ちるようにした。そして、食器棚の横板を外すとそれを伝わせる形で水を厨房の床に浸していった。こうして、コードを落とした人が感電してしまう装置を作ったんだよ。いつ宮壁くんが目を覚ますか分からないから慌てていたと思うし、それで電子レンジが落ちたりしたのかもしれないね。」
前木「後、犯人は自分が黒幕である事を利用して温室に続くエレベーターを封鎖した。1番逃げやすいところだからね。もしかしたら、食堂に逃げようと思わせるために食堂の電気をつけたいた可能性もあるよね。そうやって準備を終えた犯人は、鈴華ちゃんのドアをフライパンで思い切り叩いた。個室の防音も振動には効果がないから、宮壁くんが襲われた事を鈴華ちゃんに知らせようとしたんだね。そして、鈴華ちゃんが出てくるのをじっと待つ事にした。」
前木「鈴華ちゃんは、さすがに宮壁くんが心配になったんだろうね…しばらくして廊下に出てきてしまった。そこを、犯人が襲い掛かった。鈴華ちゃんは必死で逃げる事になって…どのくらい追いかけていたのか分からないけど、鈴華ちゃんは犯人の思惑通り、厨房に逃げ込み、犯人の仕掛けた感電装置にかかってしまったんだ。」
前木「その後犯人は食堂にあるレシピ本を足場に、倒れている鈴華ちゃんに近づいた。床のコンセントを回収して棚の脚に結び直したのもこの時じゃないかな。鈴華ちゃんが感電によって気絶したのかすでに死んでいたのかは分からないけど、それは犯人にとっても同じだったはずだよ。だから犯人は確実に殺そうと近くにあったお皿で鈴華ちゃんの首を切り裂いた。凶器と断定はできないし、どうしてあんなに痛ましい傷をつけたのか分からないけど、自分に毒を盛った鈴華ちゃんへの復讐の意味も込められていたのかも…。」
前木「犯人が犯行を終えて部屋に戻ってしばらくして、瞳ちゃんは見張り交代の為に廊下に出て、倒れている宮壁くんを見つけた。それとほぼ同時に自分の身に危険が迫っていると確信した三笠くんが東城くんを訪ねた。そこから4人は保健室にいて、早朝に紫織ちゃんと私が廊下の様子を見て保健室に駆けこんだ。…皆で三笠くんと宮壁くんの看病をしていたけど、致死量の毒を摂取していた三笠くんは看病でもどうしようもなくて、しばらくして息をひきとった…。」
前木「……やっぱり、そう考えたら辻褄は合うよ。そもそも黒幕にしかできない事がこの事件には多すぎる。今までの事件から考えても、黒幕がここまで犯人の世話をするとは思えないよ。だったら、黒幕が犯人だと考えるのが普通だよね。そして、自分を黒幕と認めた人が今ここにいる……。」
前木「超高校級の記憶力……ううん、それすらも嘘だった『このコロシアイ生活の黒幕』、『勝卯木蘭』ちゃんが犯人だよ。私はそう断言するよ!」
泣きながら勝卯木を糾弾した前木を見つめ、勝卯木はにこやかに微笑んだ。
勝卯木「ふふ、ことなちゃん、かっこいいね。大好きなことなちゃんに言われたら認めるしかないかな。うん、私はクロだよ。」
前木「……そっか。」
勝卯木「残念?」
前木「すごく、残念だよ。許せないし、めちゃくちゃ怒ってるよ。でも、何より、」
前木「……悲しいよ…。」
勝卯木は笑うだけだ。
潛手「本当に、勝卯木さん、が……黒幕で、犯人なんですーねー…?」
柳原「宮壁さんも前木さんもお見事です!さすがです!黒幕を追いつめるなんて!」
宮壁「……ああ。柳原もありがとう。」
柳原「やったー!」
笑顔で万歳をする柳原をよそに、泣きながら裁判席の手すりを掴んでいる前木を見る。
俺は前木のように泣けないよ。
だって勝卯木は黒幕じゃないか。勝卯木のせいでこんな事をやらされてるんだ。
勝卯木が黒幕だと分かって、クロが黒幕だと考えた時から、俺はずっと嫌な予感がしていた。
宮壁「勝卯木、なんで殺したんだ。」
勝卯木「うーん、なんでだと思う?」
宮壁「……邪魔だったから。違うか?お前にモノパオが配る動機なんてあってないようなものだ。なら、そんなもの関係ない、もっと身勝手な理由に決まってる。」
俺の返答を聞いた瞬間、勝卯木の様子が一変した。
勝卯木「そんな事はどうでもいいんだよ、だいきくん。そんな事より、すずかちゃんについて話さない?」
柳原「え?安鐘さんの…?」
勝卯木「すずかちゃんが私を手にかけたのは、私が黒幕だったから。あははっ!ミンナ私の事ばっかり心配して、ミンナのために殺人を犯したすずかちゃんは信用を失って見張りつけられて……どんどんやつれちゃってさ!見ててほんとにかわいそうだったよ!」
勝卯木「ねぇ、ミンナはさ、ミンナのためにバレバレの殺人をしてくれたすずかちゃんに対してどんな対応してたっけ?すずかちゃんは誰にも何も言わなかったみたいだけど…強いよね~すずかちゃん!」
コイツ……!思わず怒りで言葉がつまる。
難波「……アタシ、鈴華にマジで失礼な態度して、酷い事言った。」
潛手「潛手めかぶも、もっと話を聞けばよかったーですー……。」
東城「たとえそうだとしても殺人の必要はなかった事には変わりないよ。黒幕が分かったなら大人しくボク達に共有するなり、他にもいくらでも方法があったはずだ。バレバレの殺人というけれど、三笠くんが指摘しなければ死ぬのが黒幕だけにとどまらなかった可能性がある。間違いなくあの人も犯罪者だ。庇う必要はない。」
潛手「それは、そう、ですーけどー…。でも、潛手めかぶは、安鐘さんの事を怖がってしまいましたー…。安鐘さんが何も言ってくれなくても、潛手めかぶ達が諦めてはいけない事だったはずーでーす……。」
東城「そういう態度だから黒幕に言われ放題になっているのだと思うよ。」
勝卯木「あははっ!でねでね、毒殺にしたのは、ゆうまくんへの当てつけ!毒が人を殺すの、ゆうまくんは死んでも見たくないもんね!」
東城「……本当に救いようがない犯罪者だよ。」
難波「アンタ、さっきからマジで言ってんの?」
勝卯木「大マジだよっ!しおりちゃんへの当てつけにそうたくんから何か盗めばよかったかな?」
難波「……最低。」
勝卯木「そうだ、長話するつもりはないんだけど、ここで1つ聞きたい事があるんだよね。」
宮壁「……なんの話だ。」
黒幕はばっちりとウインクを決めて俺達を見据えた。
勝卯木「投票する前に話したい事、ない?黒幕がせっかくいるんだから…『このコロシアイについての情報』、欲しいよねっ!」