ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

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少しずつ投稿ペースが戻ってきた気がします。
やっと折り返し……まだ半分!?


非日常編 3

 

勝卯木「ミンナが気になっているであろうあんなことやこんなこと、なんでも教えちゃうよっ!」

 

宮壁「何でも?どうして急に……。」

 

勝卯木「どうして話す気になったのかはミンナで考えてみてほしいなー……。まぁ、それくらいならすぐ分かるんじゃないかな?」

 

難波「……アンタももうすぐ死ぬから?」

 

勝卯木「そう!私はすずかちゃんのせいで毒にやられてるからね…もう時間が残されていないんだよ。その前にオシオキされるのも寂しいじゃん?だから、それまでの時間を使って皆と交流を深めようと思ってるんだよね。」

 

東城「……交流というより詰問の雰囲気だけれど、とりあえずこのコロシアイの目的について話してほしいな。」

 

勝卯木「コロシアイの目的、うんうん、これがメインテーマだよね。ミンナはどう思う?どうして私はわざわざこんな大がかりな事をしてるんだと思う?」

 

……何の情報もない。誰かが間違えた発言をしたからといって、今の俺に指摘できる根拠はない。大人しく黒幕の話を促していった方がよさそうだ。もしくは誰かに賛同していく形で議論を進めてみよう。

 

 

―議論開始―

 

 

篠田「コロシアイの目的。校則を振り返ってみると何か分かるかもしれない。」

 

東城「校則の欄には…

『~制偽学園課外授業用施設の校則~

1:生徒の皆さんはこの施設内で共同生活を送ります。期限はありません。

2:夜10時から朝7時を夜時間とします。夜時間は一部の部屋が立ち入り禁止になります。

3:施設内の探索は自由とします。行動制限はありません。

4:学園長ことモノパオへの暴力、監視カメラ等物の破壊を禁じます。

5:コロシアイは基本1人になるまで行われます。

6:ただし、超高校級の悪魔の死亡が確認された時点で人数に関係なくコロシアイは終了します。

7:なお、校則は増える可能性があります。

 学園長 モノパオ』

と書いてあるね。」

 

前木「校則…気になるのは【コロシアイは1人になるまで続く】事とか?」

 

難波「まぁ、それより前は別に疑問に思う事はないか。」

 

柳原「【悪魔の死亡でコロシアイが終わる】っていう校則なんて、特に意味深じゃないですか?」

 

 

誰に賛成するべきか……。証拠はないから俺の思想が混じるけど……。

 

▼[賛成]→【悪魔の死亡でコロシアイが終わる】

宮壁「俺もそう考えている。」

 

柳原「わぁ!やっぱりそうですよね!」

 

宮壁「この校則だけ、前木が触れた『1人になるまで続く』という校則と矛盾しているからな。悪魔がイレギュラーな存在なんじゃないかと思う。」

 

潛手「悪魔さんだけ特別扱いってことーですーよね…?どうしてなんでしょうかー…?」

 

勝卯木「超高校級の悪魔……改め、超高校級の説得力に関して分かっている事をまとめていけば分かるかもよ?情報はいろいろ配ったしね!」

 

大渡「……最初の動機の奴か。」

 

……ほんの少しだけ大渡の表情が陰った気がしたけど……見なかった事にしておこう。

校則のページを閉じ、今度は悪魔の情報についてのページを開く。

 

宮壁「説得力についての文章はまだ残っていたんだな。」

 

『【超高校級の悪魔とは?】

 あまり聞きなれないこの才能はあのお方がそう呼んでいるだけであり、正式には【超高校級の説得力】という才能である。その名の通りたぐい稀なる説得力を持ち、自分の意見を相手、あるいは周りにすぐさま納得させてしまう。その意見が正しくても、はたまた間違っていても。

あのお方によると一般人に殺人を行う事を提案し、殺人鬼を生み出した事もあるようだ。本人が実害を出している訳ではない上、殺人鬼になった者はまともな価値観と倫理観を失っていたため一般市民にはおろか、警察にも悪魔の情報は一切広まっていない。この人物を野放しにしていては平和で安全な生活を送ることは不可能であろう。一刻も早く処罰されるべき人物である。』

 

難波「自分の意見を押し通せるって事だよね。なんというかさ、アタシ、今回の事件に関与してんじゃないかって思うんだけど。」

 

前木「えっ!?でも、クロは決まったんだよ?黒幕が悪魔なんて事あるの?」

 

宮壁「難波、どういう事だ?」

 

難波「宮壁、アンタが会話してたモノパオと勝卯木、本当に同じ奴だったの?」

 

宮壁「喋り方とかは勝卯木が動かしている時のモノパオだった。勝卯木の声は間違いなく後ろから聞こえたし……少なくとも、俺に襲い掛かったのは勝卯木で間違いないはずだ。」

 

難波「アタシさ、やっぱ納得いってないわ。鈴華は自分から殺されに行くような奴じゃない。エレベーターが使えなかったからって厨房に逃げ込んだのも……納得はできなくないけど、変じゃね?」

 

東城「自暴自棄、あるいは混乱していた可能性もあるよね。」

 

難波「アタシと宮壁は、死ぬ少し前の鈴華と話してる。あの時の鈴華からは悪意や殺意なんて感じなかった。だからこそアタシは鈴華が扉を開けた理由を『宮壁が心配になったからだ』と思った。宮壁はどうなの?」

 

あの時の安鐘との会話……死ぬ覚悟はできていたのかもしれないけど、とても俺達に向けての敵意があるようには見えなかった。

だけど、安鐘は黒幕とはいえ殺人を計画し実行した事には変わりない。安鐘は決していい人でなかった、かといって悪い人だったとも言い切れない。彼女が本当に考えていた事は……今でも、俺には分からない。

 

宮壁「……無理のある推理かもしれないとは思ってた。だけどそう考えないと説明つかないだろ。」

 

難波「アタシは、まだ裏があるような気がする。最初の事件みたいにさ。蘭がどういう意図で裁判を延長してるのか知らないけど、ここから見えてくる真実があるのかもね。」

 

そう言って難波は困ったように肩をすくめた。

 

難波の言葉で最初の裁判を思い出す。

端部が桜井を椅子で殴って殺し、その後ハンマーで殴ったと言うのが俺達の推理で、実際端部もそう思っていた。だけど真実は少し違っていて、椅子で殴られた時の桜井はまだ死んでいなかった。俺達の推理では偽装の凶器であったはずのハンマーが、実際は本当の凶器として使われていたんだ。

そんな真実との食い違いが、この事件の推理でも起きているっていうのか…?

……どこでどう役に立つか分からないけどメモしておこう。

 

[情報②:(難波の発言)安鐘の精神状態から考えると、自分から危険な場所に行くとは思えない。何か別の理由があるのではないか…?]

 

潛手「えーっと、潛手めかぶはですーねー、ここに書かれている『あのお方』が誰なのかも気になりまーすー!この文章を書いたのは勝卯木さんなんですーか?」

 

勝卯木「うん、そうだよ!私が書きました!あのお方…まあ、なんて書けばいいか分かんなかったからそう書いたけど…中にはこれが誰なのか分かる人もいるんじゃないかな?」

 

黒幕である勝卯木が尊敬していて、かつ悪魔について知っている可能性の高い人物…?

そんな人いたっけ…。

 

柳原「悩んでいるようですね。ここはおれに任せてください、宮壁さん!」

 

丁度そんな俺の心を読んだかのように柳原が声をかけてくる。

 

宮壁「えっ、柳原は分かったのか?」

 

柳原「はい!さすがに確証はないですけど。」

 

前木「そうなの…!?すごいなぁ。柳原くん、話してくれる?」

 

柳原「はい!この制偽学園の学園長…モノパオじゃなくて本来の方ですけど…名前は『勝卯木市造』です。勝卯木さんが『あのお方』と呼ぶにふさわしい人物じゃないですか?」

 

勝卯木「えー!?りゅうやくん、そんな事までよく覚えてるね!誰も覚えてないと思ったよっ!まあ、大正解って訳じゃないけど正解にしてあげようかな。」

 

潛手「ほへ?そうでしたっけー…?」

 

難波「言われてみればそんな感じだった、かも?いや、覚えてねーわ……。」

 

宮壁「勝卯木の反応からして、それは正しい情報なのか?」

 

勝卯木「うん。勝卯木市造は、私のおじい様の名前だよ!実は勝卯木家は、ちゃんとこの制偽学園を動かしてるんだよねー。」

 

宮壁「……つまり、お前達は悪魔の正体を知っていて、敢えてこの制偽学園に入学させたというのか?」

 

潛手「危険人物を入学させたってことですーかー!?」

 

篠田「……答えろ、勝卯木。どうやって奴の正体に辿り着いた。」

 

篠田の殺気立った目に背中が寒気を覚える。どうして篠田があそこまでこの話題に反応しているんだ?

 

勝卯木「いやー…それは私の管轄外というか。おじい様だって確証はなかったよ。確証はないけれど、『悪魔のおおよその年齢』は予測が立てられていた。だから制偽学園で悪魔を捜索したんだよ。」

 

勝卯木「超高校級の説得力って言ってしまえば『チート』ってやつでしょ?だからおじい様は化け物みたいにすごい人材を集める事で、悪魔を確保しようとしていたの。」

 

東城「悪魔を『確保』?悪魔との関係については一切触れてこなかったけれど、その言い方だと味方ではなさそうだね。」

 

勝卯木「味方じゃないよ!というかそもそも、悪魔は人類の敵だと思うよ?こんな力を持った人が外をうろついてたら困るでしょ?気分次第で町中が殺人鬼に溢れちゃうなんて怖すぎるもん!」

 

勝卯木「だからおじい様は、警察ですら認識できていない悪魔の正体を突き止めて、拘束するつもりでいたの。いわば『この世界をこれ以上壊さないため』に、文字通り『正義』を執行していたってわけ!さすがおじい様!」

 

難波「まぁ、悪魔が危ないのはそうだけど。でも、アタシ達にこんな事させてるアンタ達だって悪魔と大差ない『敵』じゃねーの?」

 

勝卯木「おじい様はこのコロシアイについては干渉してないよ!これは私を含めたほんの数人しか関わってないの。」

 

潛手「お、おじいさんに無断でこんな大がかりなことをしてるのですーかー…?」

 

勝卯木「そうだよ。おじい様は『悪魔を厳重に拘束する事』を目的として悪魔と思われる高校生に特別学級への招待をしていたけど、そんな生ぬるい事するんじゃなくて、もっと利用した方がいいって考えた人がいたの。」

 

勝卯木「それが私の大好きな元『超高校級の生徒会長』、『蓮お兄様』!お兄様は『平和のため』に『悪魔を味方に引き入れる事』を目的にコロシアイをしてるんだよ。ちょっぴり過激派なところも痺れちゃうでしょ?」

 

篠田「……!!!勝卯木蓮が、このコロシアイも企てたというのか!?」

 

宮壁「ちょ、ちょっと待ってくれ!言いたい事がありすぎてさっぱり追いつかない!」

 

やっと言葉が出てきた。篠田だけ異様に話を理解できているみたいだけど俺には何の事やらだ。

 

前木「そうだよ!そもそも、特別学級の生徒は『悪魔の可能性がある生徒』なの?」

 

勝卯木「うん!特別学級に入るためにいろんな事をしてる人がいたけど、結局特別学級に入れるかどうかは『才能がある』事の他に、『悪魔の素質の有無』によって決まるから入れない人はどう頑張っても入れないの。私みたいにね。」

 

東城「そうか。才能がないからキミは特別学級の生徒ではないという話になる訳だ。」

 

勝卯木「そう!悲しいでしょ?特別扱いされてるミンナが羨ましかったから、せめてコロシアイ中だけでも私も超高校級の生徒になってみたくて嘘ついちゃった。ごめんね!」

 

大渡「悪魔の素質?あいにくそんな説得力を持って生まれた覚えはねぇが。」

 

勝卯木「きょうくんの疑問に答えたいけど、この説明をしようと思うと私だけじゃ説得力に欠けるなぁ。ほら、私って一般人だし。だから君に手伝ってほしいんだよね、ヒトミちゃん。」

 

篠田「……お前……!!」

 

前木「え、どういう事?なんで瞳ちゃんの話になるの?」

 

潛手「篠田さん……?」

 

篠田は潛手の不安そうな顔を見て焦っているようだった。

 

柳原「篠田さんが何故、プールに入らなかったのか。その理由を考えれば想像はつくかと思います。」

 

篠田「柳原は分かっているのか。いや、安鐘と高堂に手当された時にとっくにバレていたのだが……。」

 

そう言うと、篠田は自分の制服を脱ぎ始めた。

 

宮壁「し、篠田!?」

 

勝卯木「わっ!ひとみちゃんたら大胆!」

 

思わず顔が赤くなりかけた俺の目に映ったのは、体中に広がる真っ青な入れ墨だった。

おしゃれのレベルを超えているような、間違いなく普通の生活を送るには支障が出てしまう程の刺青をまとった篠田は観念したように話し始めた。

 

篠田「私は…篠田家に使われている『超高校級のスパイ』として、このコロシアイに巻き込まれた。そして、その前に、『別のコロシアイに潜入していた』。勝卯木蓮とはそこで出会ったのだ。」

 

難波「……スパイが、アンタの才能なの?」

 

篠田「ああ。今まで黙っていてすまない。」

 

宮壁「別のコロシアイってどういう事だ?」

 

篠田「篠田家は、勝卯木蓮と同じように、悪魔を自分達の傘下に入れる事を企んでいた。私は悪魔を見つけ次第連れ帰る事を目的として、制偽学園に潜入していたスパイという事だ。悪魔を炙り出すためにコロシアイが行われる事を聞きつけた篠田家は、数年前に私にコロシアイへの潜入を命令したのだ。」

 

東城「結果を聞いていいかな。」

 

篠田「……いろいろあった。何度も事件が起きた。だが……結局その中に悪魔などおらず、結果としては無駄な犠牲が出ただけだった。」

 

無駄な犠牲、そう涼しい顔で言ってのける篠田が只者じゃない事は直感で分かった。ずっと只者じゃないオーラは感じていたけど、スパイだったのなら納得だ。

 

東城「キミが参加していた方のコロシアイはどうして終わったのかな。今回との違いは何かある?」

 

篠田「あの時のコロシアイが終わったのは黒幕が解放したからだ。黒幕の存在すら出てこずに終わったが、今考えると勝卯木蓮だったという訳だな。そして、あのコロシアイも今回も、校則はほぼ同じだ。次に違う点。まず、前回は校則に『悪魔』という言葉は出てこなかった。そして、今回私は潜入している訳ではなく、皆と同じように巻き込まれている。特別学級の生徒としてな。」

 

前木「じゃあ、今回のコロシアイは瞳ちゃんにとっても想定外だったって事?」

 

篠田「ああ。だから余計に周りへの警戒を解く事ができなかった。このように強制的に話す事になるなら最初から言えばよかったがな……。」

 

東城「なるほど。スパイでその刺青、あの運動神経にも納得できるね。」

 

難波「……アンタ、涼しい顔でいろいろ言ってるけど、それも人の死には慣れてるからって事?」

 

篠田「好きなように考えればいい。だが……今回巻き込まれた時、あの時と同じようにはしないと思っていた。あのような事は繰り返させないと。その結果が今のこの状況だ。……難しいものだな。」

 

篠田があまり俺達と関わろうとしなかった理由、それは、篠田がコロシアイの経験者だったからだった。思えばそんなような発言はしていた気がするけど、正直全部覚えていられる訳ないんだよな。

 

勝卯木「話を戻そうよ!お兄様の話もしたいー!だって私が言う「あのお方」って、超正確にはお兄様の事だもん!ほらヒトミちゃん、その時の事教えてよっ!」

 

篠田「……前回のコロシアイで巻き込まれたのは私以外全員、勝卯木蓮のクラスメイトだ。あの時はどこにも悪魔の存在すらほのめかされていなかった。ただ私が秘密裏に調べていただけだったからな。そして、そのコロシアイは5回の事件を経て幕を閉じた。黒幕によれば『成果が得られなかった』らしいが、その意味は『この中に悪魔がいなかった』という事だろう。」

 

篠田「そして今回も、同じルールであれば、おそらく悪魔の可能性がある奴が全員いなくなるまで終わらない。勝卯木蘭が死んでもコロシアイが続行されるというのはそのためだ。このコロシアイの目的が前回と同じだとすればな。」

 

勝卯木「うんうん。大体合ってると思うよ!前回の感想とかがあれば聞かせて欲しいなー!」

 

篠田「……いいものな訳がないだろう。話すつもりはない。」

 

前木「ちょ、ちょっと待って?話がこんがらがってきちゃった。結局何が分かれば話が進むんだっけ……?」

 

難波「えっと……アタシも理解しきれてないけど、まず『前回も今回も、コロシアイの目的は悪魔の捜索である』事。次に、『蘭の兄貴の勝卯木蓮が首謀者である』事。『瞳は篠田家から派遣された、悪魔について調べるためのスパイだった』事。これで大丈夫そう?」

 

潛手「難波さんのおかげで分かりましたー!だけど、どうして、悪魔さんを探すのにわざわざコロシアイをする必要があるんですーかー?さっきも炙り出す、なんて言ってましーたーよね?」

 

勝卯木「それは私が言わないと分からないよね。『悪魔が潜在的な才能だから』だよ。」

 

柳原「潜在?」

 

勝卯木「本人も自覚してないってこと!」

 

難波「は?この文だと『殺人鬼を作った』とかなんとか書かれてるけど、これじゃ潜在的な才能とは言えなくね?」

 

勝卯木「それは怖くするための例だよ。まあ、殺人鬼は実際町中にたくさんいた訳だけど、それが悪魔のせいかは分かってないしね。」

 

前木「え?そ、そんなに治安悪かったかな……?」

 

なんか怪しいな。これもメモしておこう。

 

[情報③:(勝卯木の発言)現在、街中で殺人鬼による事件が多発している。]

 

難波「なんかさっきも平和のためとか言ってたっけ。殺人鬼とかよく分かんねーけど、まあ平和のためにこんな事できる奴がいる時点で治安は終わってんでしょ。」

 

篠田「……?お前達、何を言っているんだ。毎日のようにニュースになっていただろう?」

 

東城「いや、知らない事だけど。」

 

篠田「……まさか、私とお前達で、記憶を失っている時期が違うのか?」

 

記憶喪失の時期が違う?

俺が今まで失くしたと思っていた記憶は……。

 

 

 

A.特別学級にいた記憶

B.結婚した記憶

C.外の記憶

 

 

 

 

→A

 

 

宮壁「俺はたまに自分は特別学級で過ごした事があるんじゃないかと思う事があった。それだけじゃないっていうのか?」

 

皆も同様の反応をする。篠田と俺達は特にその差があるようだ。

 

篠田「ここ十数年での治安の悪化が著しい事は知っていた。篠田家の人間が急に増えた事もそれに由来しているのだろうが。何故誰もその事を覚えていない?私は全員が知っていると思ったから今まで特に触れてこなかったのだが。」

 

東城「……ここまでいろいろな記憶を失っているのに、ボク達は今まで何の違和感も持っていなかった。どう考えてもこれはただの記憶喪失じゃない。……ボク達は、記憶が改ざんだれているのかもしれない。」

 

前木「じゃ、じゃあ、今私達が知っている事や覚えている事は、全く事実じゃないかもしれないって事……?」

 

それが本当なら恐ろしい事になる。俺の常識が常識ではない可能性。俺の思う皆や俺が、正しい皆や俺ではない可能性がある……。

手から汗が出てくるのを感じる。

 

何故ここに立っているのか、何故こんな事件が起きているのか、じわじわと自信が無くなっていく。

 

宮壁「どうしてそんな事までする必要がある?」

 

勝卯木「詳しくは知らないよ。私より詳しい人に聞けばいいんじゃないかな?」

 

難波「はぁ?何それ。」

 

[情報④:記憶の改ざんが行われている可能性が非常に高い。この事については勝卯木よりも詳しい人物がいるらしい。]

 

柳原「皆さん。情報が無い今、これ以上その事について話しても仕方がないでしょう。」

 

東城「……そうだね、話を戻そうか。つまりキミ達は、コロシアイという場で悪魔の才能が発揮されるであろうと予測を立て、実際にコロシアイを行う事で実験している、という事かな。」

 

勝卯木「その通り!さすが実験の鬼、話が早いねっ!」

 

篠田「……!つまり、あのコロシアイが終わったのは、ただ悪魔の人物がいなくなったというよりは、『才能が発揮される可能性のある人物がいなくなった』から、だというのか?」

 

勝卯木「そうだよ。あのコロシアイの人達って、最後はミンナ『才能を捨てちゃった』でしょ?せっかく『成長して覚醒するための舞台』としてコロシアイという場を提供しても、そんな風に才能を諦められたらこちらとしても困る訳だよ。私達が必要としているのは、そういう極限状態における『目覚ましい成長や才能の覚醒』だからね!」

 

難波「……宮壁。アタシ達が前に話した事、覚えてる?」

 

……!なるほど、だからこんなものが用意されているんだ。

 

宮壁「ああ。難波が言っていた、『黒幕は学級裁判に意味を求めている』って話だな?」

 

難波「そ。これで分かった。こいつらは学級裁判でアタシ達が意見をぶつけ合う事でその果てにある誰かの成長を望んでいた。そんな漫画みたいな展開、そう簡単にあるはずないのにさ。」

 

勝卯木「簡単にあるはずないからやってるんだよー。」

 

宮壁「……俺達は十分苦しんだ。苦しんで苦しんで、ここにいる。それってつまり、お前が俺達に見切りをつければこのコロシアイは終わるって事だろ?」

 

勝卯木「まだいけるよ、ミンナなら。」

 

勝卯木「だってミンナ、まだ戦う意志を持ってるから。その火が消えない限り、ミンナはまだ苦しんだとは言えない。」

 

……それじゃあ俺達は、本当に校則通り、コロシアイを続けるしかないのか?

自分の持っている情報にも確証が持てない、それなのに黒幕からはまだ可能性を感じられてしまっている。

まさに八方塞がりとも言えるこの状況に、誰もが犯人を突き止めた時よりも暗い表情をしていた。

 

東城「とはいえ、キミ達のやっている事は犯罪だ。どうして前回のコロシアイが微塵も外に出回らなかったのか不思議でしょうがない。」

 

勝卯木「いやー、その事件は出回ったよ?『火災』としてね。」

 

東城「火災。……隠ぺいか。」

 

勝卯木「そう!しかも今のミンナの記憶からはその火災の情報すら綺麗に切り取ってるから、ミンナからすると何も知らない事になるね!まあ、治安が悪いおかげでコロシアイもなかった事にできたしそういう意味では劣悪環境バンザイ!って感じかな?」

 

難波「さっきから思ってたんだけど、その超技術は何?」

 

勝卯木「ふっふっふ。勝卯木家の財力と協力してくれた研究所があればそんな事は朝飯前なんだよ!細かい事は気にしない!」

 

見た事がないほど眉間にしわを寄せて東城が呟く。

 

東城「……研究所、ね。」

 

篠田「待て、あれほどの死者が出た事件を隠蔽できるほど悪化しているのか!?」

 

勝卯木「瞳ちゃんも知らない事は勿論あるからね。今ここに外の状況について詳しい人なんてほとんどいないんじゃないかな?」

 

篠田「……あの人達は、元気なのだろうな。」

 

勝卯木「うん?前回の生き残りの先輩方の事?……変な事件に巻き込まれていなければ元気なんじゃない?火災で片づけられたのを知った時は文句を言いに来てたけど、それ以降は関係ないから知らないしなぁ。ただの若者数人でこの悲しい世の中の情報は覆らないんだよ、しかも先輩方は才能もなくしちゃった、いわば私と同じ凡人だもん。」

 

篠田「……。」

 

俺達ががんばってどうにかしてコロシアイを終わらせたとして、もしこのコロシアイが前回のコロシアイのようになかった事にされたら。

……篠田の悔しそうな顔が目に映る。死んだ人達の事を無駄な犠牲だと言った篠田だけど、つらくない訳がないんだ。篠田がそういう人じゃない事は、今までの篠田の行動が証明している。

 

篠田「……話を戻そう。前回のコロシアイについては話が出回っていないらしい。これが何を意味するか分かるか?」

 

柳原「おれ達が参加しているこのコロシアイも同じように隠蔽する、という事ですね?」

 

前木「……!で、でも、いくら外の治安が悪いからって、こんな大々的な事件、何度も隠せる訳ないよ!……蘭ちゃん、私はそんな事させるつもりなんてないよ。」

 

前木に声をかけられ少し嬉しそうな顔をしたが、話の内容に不機嫌そうに返した。

 

勝卯木「私にもどうするのか分からないんだよね、実は。まあ私はこれから死んじゃう訳だし、知らなくても当然なんだけど……。」

 

宮壁「勝卯木、お前は黒幕なのにどうしてそこまで無頓着というか……あまり詳しくないんだ?自分がクロになってまでどうしてコロシアイに命を懸けられる?」

 

勝卯木「うーん、前半は聞き流すとして……お兄様が好きだからだよ?」

 

宮壁「それだけか?」

 

勝卯木「うん。」

 

目を見る。俺の方をまっすぐ見て、勝卯木はそう答えた。

……これが勝卯木蘭なのか。そう思った。

 

前木「お兄さんのためなら、私達を殺してもいいって事?」

 

前木がつらそうな顔で勝卯木に問いかける。勝卯木は……一瞬目が泳いだが、すぐに笑って頷いた。

 

勝卯木「私にとっては何よりも大事なお兄様のためだもん!私に与えてくれた役目はちゃんとこなさなくちゃね!」

 

前木「……。」

 

勝卯木「そろそろ裁判も締めたいなって思うけど、何かあったらなんでも聞いてね!いくらでも裁判を続けさせてあげる!」

 

柳原「おれはもう終わってもいいですけど……。ずっと立ちっぱなしで痛くなってきました。」

 

勝卯木「んー……。ミンナは?」

 

宮壁「まだ終わらせるつもりはない。いくらでも話す事はあるはずだ。」

 

柳原「え?そうなんですか?」

 

宮壁「まず最初に、どうして勝卯木は毒が入ったお菓子を食べた?」

 

勝卯木「これは……完全にミスというかなんというか、私は『知らされてなかった』んだよ。誰も教えてくれなかったの!私だって常に監視カメラで状況を把握してる訳じゃないんだからね!」

 

前木「じゃあ、そこは本当に事故なんだね。」

 

勝卯木「そうだよっ!ことなちゃんもかわいそうって思うでしょ?」

 

前木「……。」

 

宮壁「それが全てか?」

 

勝卯木「も~、さすがにフェアじゃないからね。そこは嘘つかないよ。私だけなんにも知らなかったの。いじめって言うんだよ、こういうの!」

 

宮壁「じゃあ次の話題に移ろう。どうすればコロシアイが終わるのか、解決策が何も浮かんでいない。皆にもそれについて聞いていきたいと思ってる。」

 

前木「えっと……『悪魔の捜索がコロシアイの目的』で、『私達の中の誰かが成長する』事を狙っているんだよね。コロシアイを終わらせる方法が『悪魔が死ぬ事』……なんだか、このまま終われそうにはない気がするね……。」

 

難波「てか瞳、さっき前回のコロシアイは『悪魔関連の校則はなかった』って言ってなかった?じゃあ、悪魔は実際にこの中にいるって事?つまり、アタシ達が外に出るには特定の奴が成長した後に死んでもらう必要がある訳?」

 

篠田「私はそう考えていた。」

 

勝卯木「そうだよ。この中に悪魔がいるのは確定してる。今回のコロシアイは特に重要って事だよ。」

 

篠田「やはりそうか。……だからこそ、『私個人』の目的を話そうと思う。」

 

潛手「目的……?篠田さんも組織の人と同じように、悪魔さんを捕まえることじゃないんですーかー?」

 

篠田「私は、勿論コロシアイを企てた奴を許すつもりはないが、誰よりも悪魔に対して怒りがわいている。悪魔が自覚もせずにこんなところに来たために何人の命が落とされたと思う?前回のコロシアイ、私を除き特別学級の人間で生き残ったのはたった5人だ。勝卯木蓮を除けば4人になる。」

 

宮壁「5人!?」

 

俺達が今9人。これから勝卯木がいなくなる事を踏まえると、この裁判を終えるのは8人だ。それよりもさらに犠牲者が出る……考えたくもないな。

 

篠田「そして今回のコロシアイですでに6人死んでいる。こんな人数の犠牲者を出しておいて、許さない方が無理だろう。篠田家は悪魔を勢力に取り込もうとして私を派遣した訳だが……」

 

篠田「今回の私は派遣された訳ではない。つまり、何も命令されていない、ただの1人の人間だ。私がどう動こうが誰にも関係ない。」

 

篠田「私は必ず『悪魔を殺す』。」

 

潛手「……!」

 

前木「瞳ちゃん……!」

 

篠田「無駄な犠牲だと言った。当たり前だ。何故死ぬ必要があった?こんな状況でもなければ、いくら世の中が廃れているとはいえ、全員生きていたはずだ。勿論、ここから出た後に制偽学園の隠蔽した事実を公表し、お前達の事も破滅させてやる。」

 

……本気で怒っていた。

 

俺が前木に襲撃された時に抱いた覚悟なんて比にならないくらいの、相当な覚悟。

悪魔が判明したら、皆で出るために殺す……そんな事を言いながら、俺は皆と仲良くなるにつれて徐々にその気持ちが薄れていた。

だけど篠田は違う。その気持ちを抱いていたから才能を隠し、無駄な犠牲を出したくないから東城を守り、人と距離をあけて観察していたり俺が記憶に対して違和感をもっていた時に真っ先に声をかけてきたり。今までの行動は全部、その為だったのだ。

だけど……人を殺すという事を2回の裁判を経て実感していた俺達にとって、篠田のあまりにも堂々とした『犯行予告』は、理解こそできても共感には及べなかった。

 

難波「瞳、落ち着きなよ。」

 

篠田「私はいたって冷静だ。今まで言わなかっただけでな。」

 

潛手「……。」

 

潛手が何か言いたそうな顔で篠田を見ている……が、やめてしまったようで何も言わなかった。

 

勝卯木「ひとみちゃん怖いよっ!でも……少しだけ、私と考えてる事が一緒で嬉しくなっちゃった。」

 

篠田「は?」

 

勝卯木「私もね、お兄様が悪魔についての情報を手に入れてから全然かまってくれなくなって寂しかったの。だから私は『悪魔の関係ない裁判を補助して、さっさと悪魔を殺してもらおう』と思ってたんだよっ!」

 

宮壁「それで今までクロがあまり有利にならないように立ち回っていたっていうのか!?」

 

篠田「お前と一緒にするな……!」

 

勝卯木「お兄様に初めて反抗している私と、組織に背いた行動をとっているひとみちゃん。やってる事も目的も一緒だなんて、やっぱり私、ひとみちゃんの事を手助けしてあげたら良かったな~!」

 

難波「……?」

 

柳原「もー!いつまでどうでもいい事話してるんですか!早くコロシアイを終わらせるための話し合いをしましょうよ!」

 

体力のない柳原は疲れたのかいよいよ証言台にもたれてぼーっとし始めてしまった。

 

篠田「だから話しているだろう。勝卯木、一緒にするのはもってのほかだが、お前と私の目的は一致している。悪魔についてのヒントくらいくれてもいいだろう。」

 

勝卯木「……ヒントかぁ。ヒント出すのうまくないし、バレちゃいそうだからな……。バレたら成長なんてできないよ?というか、殺されるために成長できるような人ならそもそも成長なんて必要ないもん。」

 

……悔しいけど勝卯木の言っている事は正論かもしれない。

 

勝卯木「今回は前回のひとみちゃんだけが巻き込まれていたコロシアイとは違う。さっきも言ったけど、確実にこの中に悪魔はいるってお兄様は言ってた。もし悪魔を狙って殺すつもりなら、この中の誰かに眠っているから、まずはそれを覚ましてあげないといけないって事だよっ!これだけでも十分ヒントにならないかな?」

 

東城「たしかに、これからの動きは変わってくるね。悪魔を割り出す方法が分かっただけでも前進かもしれない。」

 

潛手「この中って事は、悪魔さんはまだ生きているってことですーかー?」

 

勝卯木「それは保証するよ!さすがにこれで『実は成長する機会もないまま死んでました』なんて話になったらコロシアイの破綻に繋がるからね!あとこれも言っておこうかな。悪魔が覚醒しないまま死んだ場合でも、一応校則に則ってコロシアイは終わるから、そこは心配しなくていいよっ!」

 

皆不満そうに勝卯木を睨みつけるが、誰も発言はしなかった。

[情報➄:悪魔は確実に生存している。]

 

勝卯木「……このくらいかな?よーし、じゃあ裁判も終わりにしようかな!今回の投票は少し特殊だから、ルールを説明するよ。」

 

難波「特殊?ああ、クロが2人かもしれないってやつね。」

 

勝卯木「そう!今回はまず、とりあえずクロを1人決めて投票をした後にその結果発表をするよ。その正解発表の後オシオキやら諸々の処理をして……問題はその後!『まだ投票を続けるかどうか』を投票で決めてもらうよっ!」

 

篠田「二度投票を行うのだな。……無論、1度目の投票の結果にかかっているが。」

 

勝卯木「そうだね。でも、ミンナは投票をして、本当に聞きたい事を聞かなきゃいけない。ミンナはこの投票で失敗してられない。私もミンナに間違えてもらおうとは思ってない。」

 

いつもモノパオが言っていた事だ。モノパオは「クロに勝たせるつもりはない」と何度も口にしていた。それが、自分がクロである場合でも同じだっていうのか……?

 

宮壁「勝卯木の考えている事は分からないけど、たしかにお前がクロなら俺達はお前の動機を聞く必要がある。間違える訳にはいかない事くらい知ってるよ。」

 

潜手「そうですーよー!なんであの2人だったのか、まだ教えてもらってないーですからねー……。」

 

勝卯木「正解だったらね!正解じゃないと理由も動機もないからね!じゃあモノパオくん、進行よろしくねっ!」

 

モノパオ「長い!長すぎる裁判だったね!いつもの倍は時間かかってたんじゃない?オレくん半分は寝てたよ。」

 

難波「……ほんと嫌な奴。モノパオの中の人って皆こうな訳?」

 

勝卯木「実はこのモノパオは私よりも意地悪だから、ミンナ大変だろうけど相手がんばってね!」

 

モノパオ「逆にオマエラが今までのポンコツ版モノパオに慣れすぎなんだよ!オレくんはクロとシロで差別しないし、手を抜く事もしないだけで立派にモノパオやってるんだよ!」

 

宮壁「なんだそれ……。」

 

モノパオ「前置きはここまで。投票に入るよ。オマエラ!生徒手帳から投票アイコンを選んでひらいてごらん!」

 

勝卯木「うわーっ!ドキドキだね、これ!」

 

勝卯木は楽しそうに自分の生徒手帳を見せてきた。すでに勝卯木自身のところに投票されている。

 

前木「……なんで……。」

 

勝卯木「?どうしたの、ことなちゃん?」

 

前木「……。」

 

勝卯木「どうしちゃったんだろう。ミンナは誰に投票した?この時間って本当に緊張するよね!」

 

俺達は戸惑いながらも、おそるおそる、勝卯木に投票した。

 

モノパオ「はい!オマエラの投票を確認しました!はたして、正解なのかーーーっ!」

 

 

白黒のガチャガチャにコインが投入されひとりでに回る。

しばらくして盛大なファンファーレが鳴り響いたかと思うと、突如無音になり、玉が転がり落ちてきた。

紛れもなく、勝卯木のイラストが描かれていた。

 

 

 

―裁判 閉廷―

 

 

 

「おめでとう!とりあえず正解だよ!勝卯木サンはクロ。オマエラよかったね!そしてオレくんも暇な時間でニュースタイルに!いい感じでしょ?」

 

モノパオが拍手を送る。裁判に白熱しすぎて気づかなかったけれど、いつの間にかモノパオから出ていたピンクの綿はしまわれており、きちんと首もくっついていた。

 

「おめでとーっ!今回もシロのミンナが勝ってくれて嬉しいよ!私もちゃんと投票してよかった!」

 

「……何故、三笠達を殺した。」

 

「ひとみちゃんはその事ばっかり!もっと達成感を味わってからでも良くない?」

 

「説明しろと言っているのが聞こえないのか。」

 

勝卯木はお手上げといった感じで両手を上にあげる。

 

「……分かった。話すからそんなに怒らないで?私が2人を狙う計画を作ったのは単純な話で、『2人がいい人だったから』だよ。」

 

「は?」

 

思わず口から間抜けな声が漏れる。

 

「ん、え……?いい人だからって、どういう事ですーかー……?」

 

「そのままだよ。2人とも、とってもいい人でしょ?いつもミンナの事を考えて気にかけて、支えて、励まして……。そういう人達ってさ、いい人すぎて、『コロシアイの邪魔』なんだよね。そんないい人がいたら、ミンナ自分で考えて悩んで成長する事をやめてしまう。何かあったら2人に相談しようってなる。それじゃあコロシアイの意味がないもん。」

 

「そんな理由……冗談、だよね?」

 

「も~!冗談を言ってる顔に見えるの?ひどいよことなちゃん!黒幕として話してる今は嘘なんてつかないよ!」

 

「やっば。マジで言ってんの?」

 

「ここまで清々しいと制裁としてのオシオキも物足りなく感じてくるね。」

 

 

コロシアイの邪魔。

 

 

……そんな理由で、俺達の大切な仲間が殺された。

2人とも、いい人だけど完璧な人間って訳じゃなかった。

勝卯木を黒幕だと思って犯行に及んだ安鐘も、仲間を助けられなかった事を悔やんで嘆く三笠も、自分なりに必死だっただけなのに。決して悩みがない人達じゃなかったのに。2人と過ごした時間が脳裏によみがえる。

そんな2人がこれほど理不尽な理由で殺されたなんて、納得できなかった。

 

「……本当にその理由が正しいのか?それだけなのか?」

 

「ひとみちゃん、顔が本当に怖いよ!もう何も隠してません!たぶん!いや、言い方にも気をつけてるし、間違いは言ってないよ!それは誓うから許してっ!」

 

「許す訳がないだろう。お前がこれからオシオキされる予定じゃなければ私が代わりに殺してやってもよかったくらいだ。」

 

「ぶ、物騒すぎるよこのスパイ……!お願いスパイ様!命だけはご勘弁を!」

 

目を潤ませながら篠田の方を見て懇願する勝卯木。

どう見てもふざけているから余計に腹が立ったけど、これ以上情報がないなら聞いても仕方ないだろう。

 

「……待て。」

 

「え、わたりんどうしたの!?私に話しかけるなんて初めてだよね!?」

 

「その呼び方は二度とするんじゃねぇ。」

 

「大渡?」

 

「貴様が黒幕で、今までの事件の証言も信用ならなくなった訳だが……。あれは事実を言っていたのか?」

 

「は?それは証拠に説得力を持たせるために、クロに不利になるような発言をあえてしてたって話じゃねーの?」

 

「……実は事実は言ってないんだよね!いいじゃん、クロを正しく突き止めるために嘘ついてたってさ!私の証言もあって今までの裁判を勝ち抜けてるんだから、ミンナからすれば万々歳だよね?」

 

「なっ……!」

 

「貴様らは鈍いのか忘れてるのか知らねぇが、コイツがこうやってありもしない証言をしていた事を踏まえると、『あの行動』が偶然じゃねぇ事に気づくはずだ。」

 

「あの、行動?」

 

不安そうな前木を一瞥すると、大渡はとんでもない事を口にした。

 

「前回の事件。クワガタ頭が問い詰めた『事件の発端』。コイツが変態野郎に動機を返した事だっただろ。」

 

「………蘭、アンタ、あれもわざととか言わねーよな。」

 

「ちょ、ちょっときょうくん!それは最後まで内緒にしようと思ってたのになんで覚えてるの!ひどい!」

 

……今回の事件だけじゃない?

前回の事件も、勝卯木がわざとやったっていうのか?

 

「お前……!」

 

篠田もいよいよ眉がつり上がる。いつ掴みかかってもおかしくない状態の一同を止めたのはモノパオだった。

 

「ストップストップ!その辺にしてあげて!そんな事しなくてもコイツはもうすぐ死ぬから!ね!落ち着いて、深呼吸して……そう……。」

 

「なんでモノパオにたしなめられなきゃなんない訳?」

 

難波も不服そうだが、今ここで更なる事件を起こしてもどうにもならないから助かった……のかもしれない。

 

「えっと、オマエラのヘイトも高まってきたところでオシオキしちゃいますか!勝卯木サン、最後に言いたい事は?」

 

「最後にミンナに嫌われちゃったのが本当に悲しいよ。あんなに優しくしてくれたのに。」

 

「まー自業自得だよね!オマエラの方から勝卯木サンに言いたい事は?」

 

「……蘭ちゃん。」

 

「ことなちゃん!ことなちゃんはまだ私に話かけてくれるんだね!やっぱり私達はまだ……」

 

「ごめん。」

 

「え?」

 

「友達じゃ、いられない。」

 

前木は泣きながら、勝卯木が駈け寄ってくるのを拒んだ。

 

「ことなちゃん」

 

「蘭ちゃん。ごめん。私も許せないよ。」

 

「……そう、だよね。」

 

「次は、本当に友達になりたい。」

 

「……そっか。」

 

「うん。」

 

勝卯木は少し寂しそうな顔で、泣きすぎて顔をあげられなくなった前木を見つめる。

 

「……そっか……。」

 

そう呟く勝卯木は、誰がどう見ても、いつもの勝卯木蘭だった。

 

 

 

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

 

 

GAME OVER

 

カチウギさんがクロにきまりました。

オシオキを開始します。

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

●●●●●●●●●●●●●

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●●●●●●●●●●●●

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●●●●●●●●●●●

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●●●●●●●●●●

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●●●●●●●●●

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●●●●●●●●

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●●●●●●●

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●●●●●●

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●●●●●

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●●●●

 

 

 

―――――

オシオキ対象者の死亡を確認。

オシオキを停止します。

―――――

繰り返します。オシオキ対象者の死亡を確認…………

 

 

 

 

 

□□□

 

 

勝卯木は血を吐いて倒れていた。

その血さえなければ、眠っているのかと勘違いするほど、ごく自然に死んでいた。

 

許せない黒幕で、三笠と安鐘を殺した張本人で、意味の分からない行動原理で……。

だけど、それでも、今こうして目の前で動かなくなってしまった勝卯木を見ていると。

 

何故か泣きそうになった。

 

言葉が出せない俺達をよそ目に、モノパオが飛び出てくる。

 

 

「は?ちょっと待って、そんなプログラムになってるとか聞いてないんだけど……。うわ、面倒な仕組みだなぁ。」

 

慌てたようにカチャカチャと何かをいじっている。その数秒後、やっとオシオキ停止のアナウンスは鳴りやんだ。まだしばらくいじっているから次の投票までは少し時間がかかりそうだ。

 

「……黒幕の癖にオシオキも無しかよ。自分だけ楽に死にやがって。」

 

大渡がいつもの悪態をつくが、今回ばかりはそれに同調するような雰囲気が流れていた。

 

「……。」

 

「琴奈、大丈夫?」

 

「……ごめんね。もうちょっとだけ、大丈夫じゃないかも。」

 

「分かった。」

 

クロと黒幕が分かった。

犯行の内容も動機も分かった。

でも、何も分からなかった。

 

『俺達の成長の場としてコロシアイが用意されている』。

 

ここにいる誰かが悪魔の才能を自覚しない限り、悪魔が誰か確認するすべはない。不確かなまま誰かを殺すなんてできる訳もなく、かといってこのままではコロシアイも終わらない。

……そんな状況で、どうしろっていうんだろうか。

 

「俺達は、どうすればよかったんだろう。」

 

無意識に出ていた声は、もちろんこの静かな空間においては皆に聞こえていた。

 

「……成長、覚醒。そのための『危機』がこの裁判だった。今回の危機では、おそらく、『誰も成長していない』。この裁判は本当に意味の無いものになってしまった、という事だろうね。」

 

東城の言葉にますますやりきれない怒りがわいてくる。

 

「三笠は成長しようとしてたんだ。三笠は、ずっと自分の励ましが上手くいかなかったって後悔して、そこから立ち直る途中だったんだ。」

 

「だけど、前を向けるようになれば、成長すれば悪魔かどうか疑われるきっかけになる。アタシらは今まで裁判のたびにお互い励まし合って前を向いてきたけどさ……今となっては、その励ましすら怪しむ要素になって……。四面楚歌って感じだね。」

 

俺の言葉に難波がそう返す。

本当に、詰んでいるのではないかと思うくらい、ここからどうすればいいかの手立てが考えつかない。誰も前向きな言葉を口にできなかった。

 

前向きな言葉を口にしたら怪しまれるんじゃないか?

誰かの前向きな言葉で俺が勇気をもらったら、それは成長なのか?

 

前を向く事が、人を励ます事が、怖い。

 

「後は次の投票で裁判終了を選んで終わりですかね?まだ始まらないんですか?」

 

「もう少し待ってね!いろいろ面倒なんだよこれ。アイツがよく分かんない事にしてたからさ。」

 

次の投票で俺達はまだクロ投票を続けるか、裁判を終えるかを決める。

正直大した用もないのにここにとどまっているのが純粋に不快だった。

今はもう、誰かと一緒にいたくなかった。

 

「……篠田さん……。」

 

潛手の視線の先には肩を震わせたままの篠田がいた。

 

「私は、まだ勝卯木の動機に納得できない。そんな事で殺されてたまるか。……だが、無理矢理にでも納得しなければならない事なのだろうな。」

 

「篠田さん、大丈夫ですーかー……?」

 

「ああ。めかぶにも心配をかけたな。」

 

「いえ!あ、あの、でも……」

 

潛手は何かを言い淀んでいる。そういえばさっきから何か言いかけていたな。

 

「?」

 

「篠田さん、人を殺すなんて、言わないでくださいー……。」

 

「……!」

 

「た、たしかに、潛手めかぶ達は、悪魔さんのせいでこんな事になっているし、勝卯木さんのせいで今回の事件が起きてしまいましーたー……。でも、それで恨んだら、一緒だと思うんです。」

 

「……。」

 

 

『ふら、』

 

 

「潛手めかぶは優しい篠田さんが好きでーす!だ、だから、その、篠田さんに、そんな事を言ってほしくないんです……!」

 

「めかぶ……。」

 

「篠田さんの事、何も知らないです。でも、篠田さんが今まで潛手めかぶに優しくしてくれたのは、潛手めかぶが1番知っています。潛手めかぶの知っている篠田さんは、その篠田さんですー……!」

 

先ほどまで、前向きな言葉を口にするのをためらっていた俺に水をかけられたような気分だった。

 

「……私の覚悟を簡単に曲げるつもりはない。だが……」

 

「めかぶにそこまで言われて考え直さない程、私は愚かじゃない。お前達がこれを成長だと思うならそれでいい。私はめかぶを信じると決めた。」

 

ほんのわずかだが、篠田がやっと微笑んだ。

 

「篠田さん……!」

 

篠田に駆け寄る潛手を優しく受け止めた。嬉しそうに目を潤ませて、2人は抱きしめ合っていた。

 

「怖い思いをさせたな、めかぶ。」

 

「ふふー……!篠田さんならそう言うんじゃないかと思いましたーよー!」

 

 

『ふら、』

 

 

投票までのこの時間、先ほどまで笑顔のなかった場所に、少しずつ笑顔が戻ってくる。

 

「え、ウケる。超仲良しじゃん!琴奈、アタシらもぎゅーしちゃう?」

 

「ふふっ、紫織ちゃんたら。でも、うん。皆のいるところでは恥ずかしいけど、ちょっとだけ……。」

 

 

『ふら、』

 

 

「ハグか。確かに今この精神状態を緩和するにはちょうどいい行為かもしれないね。……大渡くん。」

 

「あ?きめぇ。来んな。」

 

たまたま近場にいた大渡に近寄るが東城は手を払いのけられてしまっている。まぁ、そりゃそうだろうな。俺でもちょっと嫌だし。

 

 

『ふら、』

 

 

柳原も周りの空気にのまれて「おれもやりたいです!」とか言うんじゃないかと思ったら、そんな事はお構いなしにモノパオの作業を覗き込んでいた。

 

「これ、何やってるんですか?」

 

「も~邪魔なんだけど!宮壁クン、コイツどこかに連れて行ってよ。ほら女子達みたいに抱きしめ合って百合の花でも咲かせていてくれないかな!?」

 

「はぁ?」

 

 

『ふら、』

 

 

「や、柳原。早く裁判終わらせたいんだろ?」

 

 

『ふら、』

 

 

「だってこれ、投票の事なんてやってないんですよ?」

 

 

『ふら……』

 

 

「……え?」

 

 

 

 

 

『ごふっ。』

 

 

 

 

 

音がした。

 

 

 

 

これは、血を吐く音だ。

 

 

 

直感で分かった。

今朝の三笠とさっきの勝卯木と同じように、これは、血を吐く音だ。

 

 

じゃあ、どこから?

自分の口を触る。何もついていない。俺じゃない。

 

 

「……は?」

 

 

「きゃあああああああああああ!!!!!」

 

前木の悲鳴に、やっと『誰の音か』理解する。

 

「…………。」

 

 

 

 

 

篠田の服が、真っ赤に染まっていた。

 

 

 

 

 

 

目を見開いて、篠田は立ち尽くしている。

 

微動だにしない彼女を抱えたまま。

 

 

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

「………………めか、ぶ?」

 

 

 

??

 

 

?????

 

 

 

何を言っているんだ?

 

 

 

脳が処理を受け入れていない事を自覚する事すら、まともにできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ!『モノパオファイルを作ってたら手間取っちゃった』!」

 

 

「裁判を続けるかやめるか、だっけ?そんな事聞かなくてもオマエラの意見は一致してるよね。」

 

 

 

 

 

「オマエラ、死体が発見されました!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、処理能力を失った俺の頭を、安鐘の言葉がよぎる。

 

『これは、たぶん、言ってはいけない事だと思いますが…どうか気をつけてくださいませ。裏切り者や黒幕…おそらく悪魔などよりも、ずっと質の悪い人が、あなた達を狙っていますから。わたくしが死んだ後も、くれぐれも気を抜かないで。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

CHAPTER3 『 I のままにワガママに』

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

超高校級のサバイバー 三笠壮太

【毒薬で死亡】

 

超高校級の茶道部 安鐘鈴華

【大量出血により死亡】

 

勝卯木蘭

【毒薬で死亡】

 

 

超高校級の海女 潛手めかぶ

【???により死亡】

 

 

残り生存者数 7人

 

 

 

 

 

 

 

 

▼[青いスカーフ]を手に入れた。

 

▼[高級な袱紗]を手に入れた。

 

▼[凡人のバッジ]を手に入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

NEXT →→→ CHAPTER???『私のままに我儘に』




ここまでの情報があれば次回作を読んでも基本困らないと思います。
ひとまず3章完結です。ありがとうございました。
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