ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

23 / 46
?章です。
もうすぐ折り返しです。


Chapter???『私のままに我儘に』
「非」日常編 1


 

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「……………え?」

 

「きゃああああああああ!!!!!」

 

 

誰のかも分からない叫び声。

 

 

「めかぶ、めかぶ?大丈夫……?」

 

 

真っ青な顔で潜手に駈け寄る篠田にモノパオが冷たく言い放つ。

 

「あのさ、死んだって言ったじゃん。死体発見宣言、してあげたじゃん。聞こえてなかった?」

 

「お前に何が分かる!!そんな遠くから、勝手にめかぶの生死を決めつけるな!!!」

 

篠田の言葉、モノパオへの睨み。全てが殺気を帯びていた。

 

「めかぶ、何してるんだ、起きてくれ。体調が悪いのだろう。無理もない。ずっと捜査に裁判に、がんばっていたからな。休むといい。」

 

篠田が抱えても、潜手は目を開かないし、何の反応もしない。

 

「なあ、お願いだ。」

 

篠田は泣いていた。

 

「……嘘だろう?今は寝ているだけなんだろう?こんな血、本物な訳ないだろう?めかぶ、お願いだ、心臓の音を聞かせて。私を見て。お願い、お願い……………」

 

「え、え、嘘だよね、だって、さっきまで、ほんとにさっきまで、普通だったのに。めかぶちゃん、生きてたんだよ?」

 

俺にも、訳が分からない。

どういう事だ?勝卯木が犯人で、それで終わったんじゃなかったのか?

 

 

……この、事件は、

 

「終わっていない、むしろ、まだ続いている。」

 

「…東城。」

 

「そう考えなくてはいけない事態になってしまった。そういう事だよ。」

 

「えっと……じゃあ、また捜査を始めるんですか?おれ、もう帰りたいです……。」

 

「チッ、こっちの疲労なんてそっちのけっつー事かよ。胸糞悪ぃ。」

 

「もう嫌だよ、私……耐えられない…。」

 

前木も泣いていた。

 

「そんな事より、即席でモノパオファイルを作ってあげたからありがたく受け取ってね!全くもー、ほんと仕事増やすのだけは得意なんだからさ。」

 

モノパオからUSBを手渡される。

なんで、こんな事になってるんだ。もう何も考えたくないのに。それだけの出来事と遭遇したのに、まだ何をやらせようっていうんだ。

 

「……はぁ。アンタ達、やるよ。」

 

「紫織ちゃん…。」

 

「正直言ってきつ過ぎる。でも、やらなきゃ終わる。やるしか選択肢はない。」

 

難波も決して顔色がいいわけじゃない。この中に顔色のいい人なんて1人もいない。

でも、やるしかないのなら……。

 

「捜査しよう、皆。」

 

篠田の元に向かう。潛手をそっと床に寝かせ、おそらく携帯していたであろうハンカチで口元の血を拭っていた。

 

「篠田、捜査、できそうか。」

 

「……ああ、できる。」

 

「マジで言ってんの?そんな風に見えないけど。瞳は休んだ方が」

 

「やらせろ。クロは私が突き止める。私があの世へ送ってやる。」

 

篠田は恐ろしい形相で難波を振り切る。

 

「瞳、ちょっと!」

 

「私は元気だ。犯人を殺す邪魔をするな。」

 

「瞳ちゃん……?」

 

「直接手を下す訳じゃない。すぐに投票してオシオキを受けてもらうだけだ。冥途の土産も、遺言も、遺させてやるものか。私の友人達はそんな物何1つ遺せなかったのに。」

 

篠田の言葉を聞いて、篠田を止める権利は俺にはないと判断した。

 

潛手の言葉で前を向こうと、考え直すと言っていた篠田はもういなくなってしまった。

犯人が、潛手の篠田に向けた言葉を台無しにしたんだ。潛手の命だけじゃなくて、潛手の思いも消してしまった。

邪魔をしないように、そして、確実に突き止めてみせる。犯人を許さないという気持ちは俺だって同じだ。勿論、犯人が今も生きているかは分からないけど。

 

 

なんで、潜手だったんだ。何も、彼女は何もしてないじゃないか。

いつも皆のために、どんな時も周りの事を考えてくれて、篠田の事を1番気にかけていたのも潜手だ。さっきだって、篠田を元気づけようと必死に声をかけていた。そんな彼女が殺される理由なんて、全く思いつかない。

潜手の元に向かう。篠田が瞼を閉じていたからだろう、想像よりも安らかな顔をしていた。

心の整理がつくとかつかないとか、そういう問題じゃない。信じられなかった。そっと手を触ったが、まだぬくもりを感じた。意味が分からない、というのが正直な感想だ。

 

 

もう1つ、俺の心に確かに突き刺さっていたものがある。

それは、俺の判断が間違っていたという事。

難波の言う通り、この事件は終わりではなかった。俺が判断した真実は、おそらく事実じゃなかった。もう少しで俺と皆の命を失うところだったかもしれない。潛手が死ぬまで、俺達はこの事件は終わったと信じて疑わなかった。

 

俺が、皆を殺すところだった。

 

「……宮壁。」

 

「篠田。」

 

「何を考えているのか、想像はついている。お前は十分丁寧に推理していた。あのまま間違って裁判を終えていても、お前を恨む奴はいない。もしお前がどうしても自分を許せないのなら……」

 

「なんとしてでも、今度こそ事実を捉えるぞ。」

 

篠田の言葉が励ましではない事は目を見ればすぐに分かった。篠田は潛手を殺された事への殺意だけを胸に……つまり、これは捜査に身が入らない俺を叱責しているのと等しい。

 

「……ああ。勿論だ。」

 

「よし、じゃあ分担でもしよう。東城には検死を頼む事になるだろうし、大渡、アンタは見張りでもしていて。」

 

「……。」

 

不服そうだが大渡も黙って頷く。

 

「アタシと前木は保健室を調べる。3人はどうする?」

 

「おれは宮壁さんと一緒に捜査します!」

 

「私は食堂を調べ直したい。宮壁、ついてきてくれるか?」

 

「俺もそのつもりだ。」

 

俺と篠田と柳原か。……それにしても、決まるのが早い。もう7人だもんな。

 

「分かった。じゃあそれで。モノパオは捜査終了時に招集かけて。」

 

「難波サンが仕切ると話が進むね!勿論呼びますとも!あ、ちなみに、死体は片付けちゃってるからもう調べられないよ。じゃあ、適当な時間にまたお知らせするね!オマエラ、ぐっどらっく!」

 

 

 

 

―捜査開始―

 

 

 

 

「宮壁さんは何か気がかりな事はありますか?」

 

「まだ何も見当がつかないな。柳原はどうだ?」

 

「もしかして、おれの事、あてにしてます?」

 

「え、嫌だったか?協力していきたいし、他の人の観点がもらえるのはありがたいと思ってたんだが……。」

 

「いえ!おれも一人前になれたんだなぁと思って、嬉しくなっちゃいました!」

 

「ああ、なるほど。」

 

「おれはどこを調べるか迷っていたので、篠田さんがどうして食堂を調べようと言い出したのか気になります!」

 

「……安鐘の事件も、まだ謎が残っている気がしてな。それだけだ。三笠や潛手はおそらく毒によるものだが、安鐘だけは違うのも気になる。勝卯木が何故安鐘には毒を使わなかったのか、おかしいとは思わないか?」

 

「うーん、そもそも潛手さんがいつ毒を口にしたのかも不明ですよね。あ、つきましたよ!」

 

3人で食堂に入る。現場はそのままだが、安鐘の姿だけはどこにもなくなっていた。

先に倉庫に寄って持ってきていた長靴を履いて厨房へと足を踏み入れた。

 

「とは言っても、もう見たところだからな……。」

 

「感電装置に関しては解き明かされていそうだが……1つ疑問がある。」

 

「なんだ?」

 

「先ほどの推理では勝卯木が宮壁を襲った後、安鐘のドアを叩く前に厨房に戻って水を張ったり感電装置を仕掛けた訳だろう?その間に宮壁が起きるかもしれないとは思わなかったのだろうか?」

 

「でもモノパオも勝卯木さんの事はバカとかポンコツとか言ってましたよ?篠田さんとは違ってそこまで頭が回らないんじゃないですか?」

 

「柳原……。」

 

「まぁ、普通に考えるならそうだが。」

 

ちょっと、2人とも、さすがに死んだ人に対して辛辣すぎないか?いや、黒幕を擁護するのもおかしな話だけど……。

そう思いながら歩いていると、ぐしゃりと何かを踏んだ。見ると雑誌を踏みつけてしまっていたみたいだ。

 

「うわ、破れちゃったな。」

 

「乾かしたら読めますかね?」

 

「うーん、無理なんじゃないか?」

 

そこまで話してふと、水浸しの雑誌を手に取る。ぐっしょり濡れていて、ページをめくるのも難しい。

 

「宮壁さん?」

 

「……いや、水に濡れるんだな、と思って。」

 

「当たり前じゃないですか?紙ですよ?」

 

「つまり、足場として使える時間はかなり限られていたって事じゃないか?」

 

「……はっ、たしかに!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ更新「床の雑誌」

 

「話を戻そう。俺が起きるまでの時間か……結局長い間気絶していたけど、いつ起きるか何てそういうのに勝卯木が詳しいとは思えないな。」

 

「何も考えてないんじゃないですか?黒幕なのにあまり詳しくなさそうでしたし。今も裏切り者主体でコロシアイが回っている時点で察しがつきます。」

 

「だけど、1番最初は裏切り者なんていなかったんだろ?」

 

「それもそうですね……。なんであの人の事を考えて上げなくちゃいけないんですか!もう死んでるのに!」

 

不満そうに言うと食堂に戻ろうとしたが、篠田の鋭い視線を受けてすぐに立ち止まった。

今捜査を投げ出すような事があったら篠田に何されてもおかしくないからな……。柳原が少しでも空気を読めるようになってよかった。

ため息をついて篠田の方を振り返ると、何やら真剣な顔つきでしゃがんでいた。

 

「……。」

 

「篠田?」

 

「ああ、いや。この電子レンジが何故落ちたのか、あまり分からなかったものでな。安鐘は感電して倒れていたのだから、勝卯木と安鐘が揉めた訳ではないだろう?」

 

「それもそうだな……。」

 

「まぁ、雑誌の上に落ちているから勝卯木が犯行中にどこかをぶつけたのだろうな。」

 

すごく冷めた目をしている。……まぁ、想像したところで何にもならないしな……。

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ更新「壊れた電子レンジ」

 

その後も一通り厨房を捜査したが、以前調べたところから情報は増えそうになかった。

 

「あのさ、2人にも安鐘の言っていた事を共有しておこうと思うんだけどいいか?」

 

「そういえば宮壁と難波は1番最後に安鐘と会話したのだったな。話してくれ。」

 

「ああ。」

 

メモをとっておいてよかったな。該当のページを開いて2人に見せて説明した。

 

<メモ>

・動機→×

・毒の入手方法→×

・計画はいつから?→動機を見た時

・犯人を特定しやすい殺し方にした理由→?

・殺す相手として勝卯木を意図的に選んだ=黒幕だったから

・質の悪い人?

 

 

「……こう見ると情報としては少ないように感じるが。」

 

「ま、まあ、そうだな。何か理由があって話せなさそうな感じではあった。」

 

「毒の入手方法など、モノパオから貰った以外に無いだろう?何故ここも黙秘されているのだ。動機もだ。計画は立てていても動機がないなど、違和感しかない。」

 

「うーん……動機に関しては黒幕だから、じゃないでしょうか?黒幕だって事も秘密にしていたみたいですし、ここは解決しているような気もします。」

 

「なるほど。つまり不明点は毒の入手方法と殺害方法の理由か。この最後の文はなんだ?」

 

「……俺は、こいつが今回の事件に関わっている気がしている。裏切り者、黒幕、悪魔とは別人であるような言い方だったからな。」

 

「たしかに怪しいな。……まったく、黒幕は分かっているにも関わらず、まだこんなに怪しい奴がいるのか。」

 

「本当ですよね!7人のうち3人だなんて……。えっ!ほぼ半分じゃないですか!」

 

「……捜査しづらくなるからやめないか、この話。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ「安鐘の証言」

 

「あと、勝卯木の起こしたさっきの事件についてもまとめておきたい。」

 

「たしかに、そこと照らし合わせていくなら大事ですね!」

 

「粉末の毒を三笠に盛り、宮壁を襲った後安鐘にも襲いかかった。感電装置を用いて安鐘を気絶させ、そのまま殺した。時間をおいて三笠も死に……先ほど、クロである勝卯木も安鐘による毒で死んだ。簡単に言うとこのような感じか。」

 

篠田がかなり簡潔にまとめてくれた。ありがたい。

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ「勝卯木の計画」

 

「ああ。分かりやすくて助かる。」

 

「……そういえば宮壁さん、頭はもう大丈夫なんですか?」

 

「ん?いや、たんこぶくらいだからな。まあ、今のところ気分が悪くなる事もないし大丈夫だ。」

 

「そうですか!よかったです!」

 

「異変を感じたら言うようにしてくれ。」

 

「ありがとう。」

 

ひとまずメモを片付ける。

 

「整理しておくべき事もこのくらいか。別の場所も捜査してみないか?」

 

「そうだな。俺もいろいろと見ておきたいところはある。」

 

3人での話もまとまり、次の場所に移動しようと立ち上がった時だった。

 

「入れ違いにならなくてよかったわ。3人はもうここの捜査は終わった?」

 

「難波。」

 

「あのね、今から武器庫に行ってみようって話をしてたんだ。3人がまだなら一緒にどうかなと思って。」

 

「武器庫か……宮壁と柳原は先ほども捜査したのだったな。」

 

「いや、俺も行くならそこのつもりだったから大丈夫だ。柳原……柳原?どうしたんだ、調子悪いのか?」

 

さっきからずっと椅子に座りっぱなしの柳原に声をかける。

 

「え、あ、その……」

 

調子が悪い、という言葉に篠田がビクリと反応する。

 

「体調がすぐれないのはいつからだ?何かあってからでは遅い、心当たりは……!」

 

「あ、えっと、疲れただけなので……。」

 

柳原は申し訳なさそうに立ち上がる。

 

「今日は朝から立ちっぱなしだったので、脚が痛くなってきちゃって。本当に何でもないです!ごめんなさい!」

 

そう言われて初めて、今朝起きてからろくに食事も水分も摂っていない事を思い出した。

足にかなり疲れがたまっているのも感じる。裁判や捜査に必死で、気にもとめていなかったからな……。

 

「完全に忘れてた。……ちょっと休憩しよう。せめて水とか飲まないとまずい。」

 

「じゃあ、東城くんと大渡くんにも何か差し入れに行きたいんだけど……。」

 

「あ、それならいっその事、モノパオに頼んで休憩時間にしてもらう?頼んだらいけねーかな。」

 

「それがいいです!おれ、せっかくならちゃんとご飯も食べたいです!」

 

「では東城と大渡も呼ぶべきだな。」

 

『その必要はないよ!オレくんからアナウンスするからね!』

 

突如食堂のモニターが篠田の言葉に呼応する。どうやらこちらの動向をずっと見ていたらしい。

 

『えー、オマエラ、至急、食堂にお集まりください!ただいまより、オマエラの健康に配慮して食事休憩を取るよ!いつまでも死んだ奴触ってないで戻っておいで!』

 

「……。」

 

癇に障るアナウンスが鳴って数分後、大渡が食堂に顔をのぞかせた。

 

「東城はどうした?」

 

「個室に着替えに戻った。検死も粗方終わったところだから後で研究野郎が話す。」

 

「分かった。」

 

 

□□□□□

 

 

東城が戻ってくる頃には、机の上には人数分のペットボトルとレトルト食品が並んでいた。

 

「ポットとかも倉庫にあって助かったわ。お湯沸かすにしても鍋探すのも大変だしさ。」

 

「なんか戦時中って感じのご飯ですね。」

 

「……戦時中みたいなものだろう。」

 

「……。」

 

前木と目が合う。今の篠田の発言に何て返せばいいか分からないって顔だ。たぶん俺も同じ顔をしている。下を向いたままの難波の肩が少し揺れている気がするけど、笑うのもなんか違う気がするんだよな……。

 

「たしかにそうですね!」

 

「よかった……。」

 

「宮壁、何がいいのだ?」

 

「あ、い、いや、休憩取れてよかったなと思って。柳原が言わなきゃそのまま捜査を続けていたから。」

 

あ、危ない……ブラックジョークじゃなかったらしい。返事をしたのが柳原で良かった。本当に。

 

「頭を使う時は特に食事が大切だからね。……まあ、柳原くんは飛びぬけて疲れているだけだろうけど。」

 

「え、どうしてそう思ったんですか?」

 

「長距離歩いた後のような、長時間立つ事に慣れていないような歩き方をしていたからね。」

 

「おれ、普段家から出ないので……。」

 

「かくいうボクも実験中立っているだけで歩きはしないけれど。」

 

なるほど。このメンツだと意外と東城が喋ってくれるのか。端で黙々とレトルトカレーを食べ進めている大渡を見る。なんか、久しぶりに一緒の時間に食事をしている気がするな……。

 

「……。」

 

俺の視線に気がつくと食べ途中なのに席を立とうとしていたので慌てて目を逸らした。

 

「なんだか、どんな気持ちで食べようって思ってたけど、思ったより安心できるね。こうやって、皆でご飯食べるの。」

 

「だね。捜査中とはいえ、日常が戻ってきたって感じがする。てかこのうどん超うまいんだけど。」

 

「ね!私もこれにしてよかったー!瞳ちゃんはそんなに少なくていいの?」

 

「大丈夫だ。普段からそこまで食べる方ではないからな。」

 

「そっかぁ……じゃあ、デザートは食べようよ!」

 

「……ああ。」

 

まだまだ表情は固いものの、篠田も少しは落ち着いたようだ。……いや、落ち着いているふりをしてくれているだけだろうか。

その後デザートも食べてお腹を膨らませる。これからどうなるかまるで想像がつかないから、心の準備も兼ねてだ。

 

「ごちそうさまでした。紙皿だしこの袋にまとめておくよ。」

 

「お、宮壁にしては気が利くじゃん。どうも。」

 

「……褒め言葉だと思っておくぞ。」

 

「いや、褒め言葉じゃなかったら逆に何?」

 

「……。」

 

難波に一生口で勝てる気がしない。

 

 

□□□□□

 

 

そんな感じで、俺達は休憩を終えた。モノパオのアナウンスとかは無いみたいだけど、勝手に捜査の続きを始めてしまっていいだろう。

東城がバインダーを取り出すと、一気に食堂は静まり返った。

 

「まず、モノパオファイルの確認をしてもらう。まだ見ていない人は?」

 

俺と篠田、柳原が手を挙げる。難波と前木は保健室で見ていたらしい。

まだ見ていなかったモノパオファイル5を開く。

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ「モノパオファイル5」

 

「……待て、思い出したぞ。めかぶはこの時から体調不良を訴えていなかったか?」

 

「この時……さっきの捜査の事か?」

 

「ああ。」

 

 

♢♢

♢♢♢

3章 非日常編1

♢♢♢

 

 

「えっと…潜手めかぶ、見張りとして東城さんが来るまで残ってもいいですーかー…?」

 

「どうした?体調が悪いのか?」

 

「あ、えっと、はい……ごめんなさいー、お役に立てなくって……。」

 

「めかぶが気にする事じゃねーから。東城の事なら食堂で待っておけば?どうせ厨房から出る時に食堂は通る事になるんだし。」

 

「そうですーねー…!じゃあ、みなさんが出たら潜手めかぶは食堂の入り口で待っておきまーすー!」

 

 

♢♢♢

♢♢

 

「モノパオファイルを見た事がデジャヴとして記憶を刺激したのか。なるほど、有力な情報だね。毒を飲んだ形跡やタイミングについては今回もモノパオファイルはあてにはならないから。」

 

「そのようだな。」

 

時間と死因しか書かれていないモノパオファイルを閉じる。即席で作ったにしても……もう少し何かなかったのか。それも推理しろという事なんだろうけど。

 

「その後に何か食べた人はいないはずだから、症状は少しずつ出ていたのかもしれない。潛手さんは三笠くんの看病もしていなかったから詳しい症状は知らない。少々のふらつきは体調不良だと思っていたのだろうね。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ「潛手の症状」

 

「そして検死の結果だけれど、こちらも毒死で間違いない。そして三笠くんの時と非常によく似た検査結果も出ている。違うのは……ブルーライトで反応があった事。大渡くんの指も同じ反応があったから、こちらの毒が使われたと考えている。」

 

「なるほど、だとすると犯人はあの毒を使った勝卯木さんの可能性が高いって事じゃないですか?」

 

「そう考えるのが妥当だね。裁判で話し合う事も少ないように思える。」

 

まあ、断定するには早いと思うけど……一応その説が有力って事か。

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ「検死結果」

 

「ボクからは以上だよ。何か質問はある?」

 

そう言うと東城はバインダーをしまった。確かにこれ以上得られそうなものはないな……。

 

「いや、特に無いな。」

 

「分かった。キミ達はこれからどうするのかな。必要があればボク達もこちらの捜査に加わろうと思っているのだけれど。」

 

「私達は武器庫に行くつもりだったが。」

 

「あ、じゃあ私も行ってみようかな。紫織ちゃんは?」

 

「ん、あー……アタシはめかぶのとこ行くわ。宮壁、前木の事よろしく。」

 

「ああ。」

 

「行かねぇ。」

 

「ボクは行ってみようかな。毒薬をまだ確認していないからね。多少なら検査できるかもしれない。」

 

「分かった。柳原はどうする?」

 

「おれ、やっぱり先に裁判場に行ってますね!潛手さんもいつ片付けられちゃうか分かりませんし!」

 

「……。」

 

「柳原、余計な事言う前にアタシ等と行くよ。」

 

「えっ?あ、はい!」

 

……こうして前木、東城、篠田、俺で武器庫の確認をする事になった。

 

 

□□□□□

 

 

「えっと……あった。おい、モノパオ!ここを開けてくれないか!」

 

「はいはい!まったく、本当にゾウ使いが荒くて困っちゃうよ!」

 

「荒くはないよ。必要だから呼んでいるのだからね。」

 

「東城クンは相変わらず屁理屈小理屈うるさいなぁ。はい、どーぞ。例の瓶、2点セットで5万円になります。」

 

改めてラベルを調べる。

あっ、今の別に、ラップのリリックじゃないからな!

 

「やはり、液体の毒だけにブブルーライト反応があるみたいだ。」

 

そう言ってペン型のライトで瓶を見せてくれた。中の液体が青白く光っている。

 

「これ、遊園地の入場とかで使われるやつだよね?」

 

「そうだよ。勿論、遊園地で使われるものは無色透明なのに皮膚につくと黒くなる、なんて事はないから『特製の毒』と呼ぶにふさわしいものだけれど。」

 

……って、こんなものが遊園地で塗られてたまるか!

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ更新「特製の毒(液体)」

 

「なるほどね。こう見るとほとんど差はないようだけど、液体の毒について詳しく調べていなかったのはボクの捜査不足だ。……ごめんなさい。」

 

「東城!?」

 

「何?」

 

「おま、お前、今までどんな事言っても謝ってこなかったのに……!」

 

「そうだよ東城くん!すごいよ!どうしちゃったの!?」

 

「今までの発言はボクに非なんてないよね。」

 

「……ちょっとだけ、そう言うんじゃないかって気はしてた。あはは。」

 

前木が困ったように笑う。そのまま下を見て……

 

「あれ?ねえ、これ……床も黒っぽいから分かりにくいけど、染みができてるよ!」

 

「え?あ、本当だ。よく見ないと気づかないな……。」

 

「東城、この染みを調べる事はできるだろうか?もしかすると……」

 

篠田の言葉に頷くと、東城はその染みにブルーライトを当てる。

染みは青白く発光した。

 

「…………液体の毒の瓶はここで開封された、こぼれた。染みの形も何か妙だな。ここで何か起きたのかもしれないね。」

 

 

【挿絵表示】

 

 

・・・コトダマ「床の染み」

 

その後も他にも染みがあるんじゃないかと時間許す限り捜査を続けたが、ここ以外の染みは見当たらなかった。他に捜査できそうなところは……

 

 

『オマエラ、捜査もそろそろ終わりでいい?真相には近づけたかな?まあどちらにしろ、これ以上できる事もないだろうし終わりにするよ!ちなみに、裁判場は綺麗になったから安心して戻っておいで!』

 

終わりか。あの言い方からして、俺達が戻ればすぐに裁判を再開するのだろう。

4人で武器庫を後にする。

 

「瞳ちゃんは、行かなくてよかったの?……その……。」

 

「……ああ。」

 

「篠田……。」

 

「こう言うと酷いと思われるかもしれないが……私はもう、見たくない。」

 

「……。」

 

「どうしてこのような事になっているのか、まだ信じられない。捜査を真面目にやるだとか、めかぶの身に起きた事を突き止めるだとか、偉そうな事を言ったが……全部、現実逃避だ。私には、しばらく超えられそうにない。三笠とめかぶは、本当に、私などを気にかけてくれる素敵な人だったのだ。」

 

ずっと誰かが死んでも泣きもせず淡々と裁判をしてきた篠田だが、今日はずっと泣いてばかりいた。

 

「心の何処かで、2人は死なないと思い込んでいた。死ぬはずがないと勝手に思っていた。今日になって私はずっと……このコロシアイを他人事のように感じていたのだと、初めて気がついた。」

 

それがどうしても頼りなくて、弱弱しく見えた。

前木がそっと篠田の背中に触れ、ゆっくりと撫でる。

 

「……。」

 

前木は泣きそうな顔をしながら篠田の背中を撫でていた。何も言わなかった。

 

「……前回のコロシアイで、私は、人に怪我を負わせてしまった事がある。コロシアイの首謀者を突き止めるために動いていた私が襲われたところを庇って、片腕を失くした。スポーツ選手だったのに、その夢を潰してしまった。その人は私と共に生き残り、今は外で暮らしているが……あの時の光景が忘れられない。」

 

「私に優しくしてくれた人を、二度とあのような目に遭わせないと誓った。その結果が今だ。……自分の力を過信しすぎた。本当に馬鹿馬鹿しいな。」

 

「キミのせいではないのなら気にする事はない。」

 

「東城。」

 

「……むしろ、気にするべきは……」

 

東城は何かを言いかけて口を噤んだ。丁度到着したエレベーターに乗り込む。

そういえば、東城もさっきの裁判から少し様子が変だ。何かあったのか……?

 

ゆっくりとエレベーターが降下していく。篠田も深呼吸をしてだいぶ落ち着いたようだ。前木に礼を言い、その後はずっと黙っていた。

そして、地獄の扉は開く。

 

「随分な社長出勤だね!お?篠田サン、どうしたの?何かつらい事でもあった?」

 

「……あったが、お前は知らないのか。」

 

「わ、その程度でキレないでよ!ごめんごめん!じゃあ席について。ほら見てよこれ!オマエラがご飯食べている間に働き者のオレくんはせっせとこれを作っていたんだからね!」

 

モノパオの声に裁判席の方を見ると、勝卯木と潛手の遺影が増えていた。全く、こんな時にまで丁寧に悪趣味を貫くなんてどうかしているとしか思えない。

 

「という事で、オマエラ!さっき急遽中断したところから始めるよ!しばらく話し合ってもらった後、まだ他にクロがいると思ったら『投票を続行するかどうか』で『続行』を選んだあとにクロの指名をしてもらうよ。クロがいないという結論になったら『裁判閉廷』を選んでもらう。」

 

……俺達が2回捜査をしても、まだ犯人がいるかどうかすら分かっていない。

今までの事件とは話が違う。より一層気を引き締めなければ。

 

潛手めかぶ。彼女の雰囲気と性格にどれほど安心させられてきたか。

きっとその事を1番分かっているのは篠田だろう。だけど、俺だって潛手がいい人だった事は知っている。その死を無駄にする訳にはいかない。

 

安鐘鈴華、三笠壮太、そして……勝卯木蘭。

いろいろ抱えながら死んでしまった2人と、コロシアイを仕組んだ黒幕。

きっと全員、まだ明かされていない事がある。

黒幕なんて決して許さない存在だけど、それでも彼女の真実を掴めば、見えてくる景色があるかもしれない。

 

息を吸って、吐く。全てを知っているであろうモノパオを睨みつける。

 

 

 

 

「よーし!覚悟きまってきた顔が揃っているね!」

 

モノパオはにこにことした様子で木槌を振り上げ……

 

 

 

「裁判、再開!!!」

 

 

 

叩き落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■

 

 

 

 

 

 

 

「最悪……。」

 

 

最悪も最悪だ。もうちょっとで、あと少しで裁判が終わっていたのに。

再捜査、そして裁判の再開。意味が分からない。

どうしてこんな事になっているのか……。

このまま真実が暴かれるなんて、そんな事絶対にあってはならない。

 

そのために、どれだけ用意周到に動いたのか、モノパオも知らないはずがない。

 

 

正直、嫌な予感はしていた。

何故か『幸運が発動している』。おかしい。そんなはずはない。

だって今日は、

 

「今日は幸運も邪魔しないはず……。それとも、幸運が味方でいてくれていない?仲良くなったと思っていたのに……。」

 

 

 

絶対に真実を暴かれる訳にはいかない。絶対に。

何としてでも…………

 

 

 

 

「……最悪。」

 

 




閑話編も投稿しております。
今までの情報やコトダマを全てまとめていますので、よろしければ合わせてご覧ください。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。