ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

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捜査です。

実は挿絵の容量が限界に近づいてきました。この章で限界突破しそうです。これでも途中からかなり挿絵を減らしたつもりだったのですが…。
どうにか、どうにか入れたい。入れ続けて完結までいきたい。何を間引くか、どう解決すべきか、挿絵をやめたらいいのか、昔のを削除するか、画質をぼやける寸前まで落とすか。
何も分からないので、とりあえず今日もこつこつ挿絵を描こうと思います。初めて自我を丸出しにした前書きがこれでよかったのでしょうか。それも分かりません。




非日常編 1

 

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「……モノパオ、見てるんだろ。アナウンスを鳴らしてくれ。」

 

かろうじて漏れ出た声は掠れていたが、俺はそんな事お構いなしに声を張り上げていた。

 

「鳴らせよ!!!」

 

『まったくもう、うるさいなぁ宮壁クンは。』

 

モノパオがモニター越しに返事をする。

 

 

 

『ピンポンパンポーン』

 

『えー、死体が発見されました!オマエラ、お手すきになられましたら3階の防音室までお越しください。』

 

 

これで皆もここに来るだろう。

とりあえず、俺は東城の瞼を下ろしておいた。

そういえば白衣を着ていないな。計画の最中だった事を考えると寝る前でもあるまいし、どこかにあるはずだけど……そう思いながら何気なく東城の衣服を調べていると、腹部に違和感を感じた。おそるおそる服をめくる。

 

「……なんだこれ、なんで…………。」

 

 

 

 

 

「宮壁!」

 

難波の声がしてはっと振り返る。難波、前木、大渡の3人が驚いた顔でこちらを見ていた。

 

「ね、ねえ、これってどういう事……?隣に、瞳ちゃんも……」

 

「……篠田は生きている。東城が被害者だ。」

 

「……。」

 

「やあやあオマエラ、お集まりかな?オレくんからのいつものファイル……の前に!今日はオマエラにプレゼントがあります!」

 

プレゼント……?

 

「はぁ?余計なもの押しつけんならいらねーけど。」

 

「悲しい事に、オマエラも残り5人になってしまいました。篠田サンが眠りこけてるから、現在動く事ができるのは、な、なんと、たったの4人!捜査の人手もかなり不足している事でしょう。そこで!オレくんは考えつきました!オマエラが1人で捜査がこなせるようになればいいのではないか、と!」

 

「1人で捜査……?」

 

モノパオがどこかから取り出したのは、探検家が頭につけるような……なんだ?

 

「これはパオパオカメラ!頭につけておいて、捜査中のオマエラの視界を完全に記録してくれる優れ物!」

 

「これで記録をしておけば単独での捜査が可能になるって事か。」

 

「そうそう!オレくんってば優し」

 

俺はモノパオからカメラを奪い取ると全員に配っていった。篠田の分だけはモノパオに持たせたままにしておいた。

 

「ちょっと!人の……じゃなくて、ゾウの話を遮ってまで奪い取るなんてサイテー!」

 

モノパオがぎゃーぎゃーわめいているけど知らないふりだ。

 

「まぁ、それでも?オレくんは親切だから?ファイルも寄越してあげますけど?篠田サンが起きたらカメラも渡しておいてあげちゃいますけど?オレくんは優しいからね!本当はオマエラに優しくなんてしたくないんだから感謝してよね!」

 

これ以上怒らせない方がいい気がしたので軽く相槌を打つと、モノパオは満足そうに腰に手をやっていた。

その数秒後、全員の電子生徒手帳が鳴る。

 

「今回からは機械も最低限扱えるオレくんがちゃあんと準備したから、モノパオファイルのダウンロードの手間も省けたよ!やったね!という事でオレくんは消えるよ、どろろろろろん…………。」

 

モノパオが消えてから自分の電子生徒手帳を確認すると、『ファイルが送信されました』というメッセージと、新しいファイルが追加されていた。

とまあ、あしらってはみたものの、よく考えるとカメラがあるのはかなりありがたいな。検死役も必要だから、このままだと残り3人で一緒に捜査をするしかなくなっていたはずだ。

そこまで考えて、はたと歩みを止めた。

 

「……そういえば、東城くんと瞳ちゃんが捜査できないなら、誰が検死するの?」

 

俺と同じ思考に行きついたのか、ほぼ同時に前木の声が聞こえた。

 

「アタシは未経験だから、ファイル以上の事は分かんねーわ。」

 

「俺もだ。事件資料でしか見た事ないから……。」

 

「……チッ。」

 

舌打ちの音と共に大渡が前へと歩み出た。

 

「俺がやる。隣の部屋にいるスパイはここに持ってきておけば放置でいいだろ。貴様らはさっさと証拠でも漁ってこいよ。」

 

「え?お前、検死なんてできるのかよ!?」

 

「白衣野郎やスパイ程の物は期待するな。自分の為にやるだけだ。」

 

「大渡、アンタ………」

 

難波は何かを言いかけたが口を噤んだ。

大渡がどうして検死ができるのかも謎だし、一向に起きない篠田も心配だけれど、今はそれより事件の証拠集めが優先だ。

 

東城を殺した犯人、そいつを突き止めなければ。

今までのように誰かと捜査もできないから、前回の事件のような見落としは許されない。

 

俺達はカメラを装着し終えると、各自気になるところに向かった。

 

 

 

 

 

―捜査開始―

 

 

 

 

 

まずはモノパオファイルの確認から始めよう。

 

『被害者は東城優馬。死亡時刻は深夜1時頃。発見場所は防音室。腹部と心臓の2箇所を銃で撃たれている。』

 

2発……。そうだ、俺が最初に見つけた東城の腹部のアレを確認しなければ。大渡の検死が終わり次第ここに戻った方がいいだろうな。

 

 

 

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・・・コトダマ【モノパオファイル6】

 

 

「なあ、大渡。」

 

ちょうど篠田を担いで防音室に戻ってきていた大渡に声をかける。

 

「……。」

 

ため息をついて篠田を床に転がしたのを見て、慌てて篠田を担ぎ椅子に座らせた。

 

「おい。」

 

「寝てる奴を座らせようとしたら無駄に体力使うだろうが。」

 

「お前なぁ。」

 

「……。」

 

言いたい事だけ言って後は黙るスタンスらしい、いつもの事だ。俺の呼びかけに反応しなくなったのを確認して、俺は今度こそ周辺の様子を見て回る事にした。

 

しばらく大渡の周りをうろうろしていると、東城のいた最後尾の席の通路だけやけにべたついている事に気づいた。

 

「なんだ、これ……?」

 

ティッシュ越しに触ってみると若干ぬるぬるしている。

……あ!思い出した、数日前に篠田の髪を難波が切ってあげたって言ってたな。ちょうど難波が通りかかり声をかけてきた。

 

「宮壁、ごめん。それアタシ達がやってたやつだわ。モノパオの奴、あんま掃除してくれなかったみたいでさ。数日経ってんのにまだべたついてんの。」

 

「難波。やっぱりそうだよな、ぼんやり思い出してたところだ。」

 

「髪用のオイルだったんだけどちょっとこぼしちゃってさ。転びやすくなってるから気をつけな。」

 

「この列だけなんだよな?」

 

「そう。疑わしかったら後で瞳に聞いて。」

 

「分かった、ありがとう。」

 

 

 

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・・・コトダマ【防音室のオイル】

 

 

防音室の床はカーペットだから余計にオイルが取れないんだな。幸いオイルのところは色が変わっているから踏まずに済みそうだ。

 

「……ん?」

 

ようはこの防音室、映画館のような造りになっており、東城は最後尾のやや入り口に近い席に座っているのだが、そこから逆、つまり列の中央の席に向かってオイルが不自然に伸びていたのだ。

試しに違う方向に指をなぞらせてみると、少し染みが広がった。

何かが擦られたのか?俺の足幅くらいの幅だ。一体何の跡か分からないが、難波も何も言ってなかった事を踏まえると、これが事件に関係しているのは間違いないだろうな。

 

 

 

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・・・コトダマ【オイル跡の違和感】

 

 

他にもいろいろ落ちてるな。どれどれ……。

 

「……あ、これ、注射器か。東城が篠田に襲われた時の抵抗で筋弛緩剤を使うっていう話だったな。というか、本当に使われたのか。中身が空だ。」

 

そこまで納得したけど、おかしいな。

東城は防音室で死んでいて、注射器もここに落ちているのに、篠田は本来の襲撃場所である教室6で倒れていた。東城と篠田の間に何があったんだ……?

 

 

 

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・・・コトダマ【注射器】

 

 

あと、注射器に入っていた薬が筋弛緩剤だったな。東城が改良を加えたおかげというべきか、かなり即効性が強く、クマでもゾウでも倒れるらしい。東城いわく。

 

 

 

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・・・コトダマ【筋弛緩剤】

 

 

「大渡、何か言いたい事とかないか?」

 

「あ?捜査の邪魔をしに来たなら貴様をクロ判定してやってもいいんだが。」

 

「……俺は寝てたんだ。」

 

「知るか。全てを偽ってでも貴様だと言ってやる。」

 

最低だ。

 

「分かった、聞き方を変える。夕食の後、東城と篠田の事見てないか?」

 

「…………見てねぇよ。」

 

「本当か?」

 

大渡にしては、何というか……。

 

「寝ていたのに何を当たり前な事を聞きやがる。誰に聞いててもこう返すだろうと呆れていただけだ。」

 

「はいはい。」

 

 

 

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・・・コトダマ【大渡の証言】

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

次に向かったのは教室6だ。中では前木がいろいろと見回っていた。

 

「あ、宮壁くん。」

 

「前木、何か見つかったか?」

 

「うーん、それが……ここは特に何もなさそうなんだよね。」

 

「何もない?」

 

「えっとね、瞳ちゃんの様子を見てないから何とも言えないんだけど、ここで事件が起きたとは思えないなぁって。」

 

「ここが架空の事件の現場だったのに、か?」

 

「瞳ちゃんと東城くん、ここで争ったんじゃなくて、隣の防音室で争ったんじゃないかな。」

 

「何で2人が隣の部屋に行ったんだ?」

 

「そ、それは分かんないよ。だけど……そもそも、瞳ちゃんと東城くんが争って2人とも倒れるなんておかしいと思う。瞳ちゃんの運動神経の良さは、皆知ってるもん。いくらなんでも東城くんと戦って倒れる事はないんじゃないかな。」

 

「たしかに。」

 

「だけど、瞳ちゃんはここで倒れていたんだし、机とかも荒らされてるんだよね。うーん……訳が分からなくなってきたよ。」

 

モノパオいわくクロは確実に存在するんだよな。だとすれば、一体ここで何をしたのか。分からない事ばかりだ。

 

しらばく2人で捜索してみたが、本当に何も落ちていないようだ。

 

「……やっぱり2人ともここに来なかったのかな。」

 

「そう考えた方が自然だよな。」

 

「宮壁くん、あと一つ、聞きたい事があるんだけどいい?」

 

「ん?」

 

「どうして、クロは今回の事件を起こしたんだと思う?」

 

「それは、動機とか、外に出る為とか。」

 

「……でもクロは、今日私が幸運だってことを知ってるんだよ。」

 

「……!」

 

「もし本当にクロの計画が完璧だったとしても、クロなら私が不運の時に事件を起こした方が有利なんだよ?自分から不利な状況を作るなんて、まるで……。」

 

クロの動機。

モノパオの言っていた事を思い出す。

俺達は、クロのおかげで事件発生前の睡眠を黙認されたのだと。

 

……もし、クロの動機がそれだとすれば?東城が殺された理由も、見えてくるかもしれない。クロと東城の目的が一致しているのだから。

 

 

 

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・・・コトダマ【前木の才能】

 

 

「ごめんね、こんな話しちゃって。宮壁くんも分からないよね。」

 

「いや……。そうだ、前木は篠田や難波と夕飯の準備をしていたよな。睡眠薬の入ったコップの数とか、誰かが飲んでないとか、そういう間違いはなかったか?」

 

「うん。こっそり見たけど、瞳ちゃんは東城くんと瞳ちゃん自身のコップ以外にはちゃんと薬を入れてたよ。私の知る範囲では全員にちゃんと渡ったし、コップに入った水を飲まなかった人もいないよ。」

 

「そうか、ありがとう。」

 

うん、やっぱり途中までは計画通りに進んでいたんだろう。そうだとすれば、計画が狂ったのは皆が解散した後なのかもしれない。

 

 

 

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・・・コトダマ【前木の証言】

 

 

「あ、いたいた。2人して何してんの?」

 

「紫織ちゃん!」

 

「2人に朗報。瞳が目覚ました。」

 

「!」

 

俺達は急いで防音室に戻った。

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

「……。」

 

「篠田、」

 

「…………またか。また私は何もできず、こうなった訳だ。」

 

「……。」

 

「……ふふ、笑えてくるな。それに、この様子ではきっと……」

 

何かを諦めたかのような表情で、篠田はゆっくりと立ち上がった。いつの間にか、手にはカメラを携えていた。

 

「瞳ちゃん、何も痛いところはない?大丈夫?」

 

「ああ。しかし筋弛緩剤の影響か動きがまだ鈍い。捜査も力になれるか怪しいが。」

 

「ううん、気にしないで……。」

 

篠田は筋弛緩剤を打たれたのか。

その後前木と難波は別のところに向かった。大渡の検死もまだ続いているようだし、他の部屋に行ってみるか。

その前に何があったのか、篠田に聞けることは聞いてしまわないと。

 

「大事に至らなくてよかった。少し質問してもいいか?」

 

「ああ。」

 

「……まず、篠田は理科室に行ったのか?」

 

「行ったが、東城はいなかった。そこで私は東城を探す事にしたのだ。先に教室にいるのかと思えばそこにもいない。結果、防音室で見つけた訳だ。」

 

なるほど、どうやら架空の事件通りに動かなかったのは東城のようだ。何か考えがあっての事だとは思うけど……。

 

架空の事件では理科室にいる東城に篠田が声をかけ、教室6に連れた後で篠田が銃で東城を襲うが狙いを外す。反撃に東城が筋弛緩剤を打つ……まあ、仮に篠田が本気で事件を起こそうとしていたら、こんな計画、運動能力から考えて上手くいく訳がないんだけど。意外と東城も穴のある計画にしたよなとは思う。

 

「それからの事を聞いてもいいか?」

 

「私が計画通り、東城に銃を向けた時だ。何かが飛んできて……咄嗟にはたき落としたのだ。防音室の扉はすぐに閉まったため、相手の顔は分からなかった。もちろんすぐに追いかけようとした。…………宮壁、お前は私の話を信じられるか?」

 

不安そうな篠田の顔を見て、俺は頷いた。

 

「公平な判断をするって誓うよ。」

 

篠田も俺の目を見て頷くと、信じられないような事を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

「……追いかけようとした時、東城が筋弛緩剤を打ってきた。」

 

 

 

 

 

「え?」

 

 

「ちょうど、私が銃を握っていた手を狙ってだ。私は銃を取り落として、思わず倒れこんでしまった。」

 

 

「……私は、意味が分からなくて、とりあえず東城に銃を奪われないようにするべきだと思ったのだが、銃がオイルで滑って…そのまま、東城に発砲してしまった。」

 

 

 

 

 

「……。」

 

「もしかしたら、クロは私かもしれない。誤射だが、事件は事件だ。」

 

「そんな……。」

 

「……私はその後、強烈な眠気に襲われて意識を失った。東城も最後まで何も言わなかった。私には、それ以上の事は何も分からない。」

 

何と返せばいいのだろう。東城と誰かが篠田を襲ったのなら、その誰かがクロなのだろうか。それとも、篠田の誤射が東城の致命傷になっているのか。

捜査を終えてみないと何も言えないな……。

 

「ありがとう。だけど、俺の推理だと篠田はクロじゃない。信じてほしい。」

 

「……そう、か。」

 

 

 

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・・・コトダマ【篠田の証言】

 

 

話をしながら理科室に着いた。

きっとここにも何かヒントがあるだろう。

 

「……そうだ、東城を訪ねようと理科室に行った時にこれを見つけて回収していたのだが、見てもらってもいいか?」

 

「何だこれ、リストか?」

 

タイトルを見てぎょっとした。

 

 

『付属メモ

倉骨研究所 ××期被験者死亡リスト』

 

 

「……これ……。」

 

「倉骨研究所の事は、私のいた組織でも耳にしていた。それだけ権力のある研究所であり、……こういう事を黙認されるような地位にいた、という事だ。」

 

「東城いわく、実験に利用された人は全員犯罪者らしいけど、それだと東城の動機にならないんだよな。」

 

「そうだな。動機は『自分の知らない自分の秘密』。東城が知らなかった事とは一体何だったのだ?」

 

そもそも東城の動機に何が書かれていたのか、見てみない事には判断しようがないな。

そう結論づけ、目線を下に移す。

 

 

 

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リストの一覧に目を通すとたくさんの名前が載っていた。しかし何よりも目を引いたのは、このリストの下の方が破られて読めなくなっていた事だ。まだリストは続いているような雰囲気だし、きっとまだ下にも被験者の名前が書かれていたのではないだろうか。

 

「この下も同じように名前があったのか?」

 

「私もそう考えている。」

 

もしかすると、ここに誰かの関係者の名前が載っていたんじゃないか?

それに、ここにある名前は全員犯した犯罪が載っている。東城の知らない秘密には繋がらない気がするけど……。

東城の動機のメモだとすれば、他にこのリストの事を知っている人なんていないよな。何かの拍子に誰かに見られて千切られたと見るのが妥当だろう。

 

 

 

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・・・コトダマ【破れたリスト】

 

 

「じゃあ少し手分けして見てみるか。」

 

「ああ。……。」

 

篠田は早速何かを見つけたのか、俺への返事も曖昧なまま机の方に歩いていった。

俺も別の机を探してみよう。

 

「ん、これ……東城が作っていたエナジードリンクか。この効果もしっかり見ておこう。」

 

茶色い瓶の中に液体が入っており、何かメモも貼られていた。

 

『目覚ましドリンクについて

飲んでから30分以内で効果が現れ、3時間は眠気を妨げる事ができる。

身体への影響は保証済み。』

 

結局、俺はまだ飲んでいないけど、これは全員が持っているはずだ。

誰が飲んで誰が飲んでいないのか確認した方がいいか?まぁ、いつでもここから補給できたし確かめても意味なんてないか……。

 

 

 

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・・・コトダマ【目覚ましドリンク】

 

 

「……宮壁、お前は人道光望夢受信教を知っているか?」

 

「じん……?」

 

「じんどう、こうぼう、むじゅ、しんきょう。」

 

「助かる。」

 

「その様子だと知らないと見ていいだろうな。まぁいい、これを見てくれないか。そこの机の下に落ちていた。」

 

「なんだこれ、宗教のパンフレットか?」

 

怪しいロゴが表紙を陣取っており、聖書を気取った不気味なパンフレットだった。名前も聞いた事なんて…………。

 

「あ!人夢信教って略されているやつか!叔父さんが取り扱っていた事件の中に名前だけは見た事がある気がする。」

 

「……宮壁の叔父は、警察なのか?」

 

「いや、裁判官だよ。俺自身は人夢信教の名前しか聞いた事ないけど、叔父さんはその信者の関わった事件の裁判に参加した事があるはずだ。」

 

とはいえ、その事件に関係していた信者は随分下の位だったそうだし、叔父さんも何も知らないと思うけど。

 

「そうなのか。少しでも知っているなら話が速い。これは、そうだな……倉骨研究所と同等には扱いに困る組織だ。倉骨と違うのは、人夢信教の信者は皆相応に手練れで、とてつもない信仰心を持っているという点。『邪を清め、正しく信ずる』をモットーに活動している……つまり、関わらない方がいい連中という事だ。」

 

篠田がそう断言するって事は、本当にヤバいところなんだろうな……。

 

「じゃあ、どうしてそのパンフレットがここに?図書室にあったとか?」

 

「いや。私は図書室を一通り調べているからその可能性はない。このコロシアイについて探るために、こういうゴシップや宗教に関するものは特に慎重に捜索していたからな。それに、仮に図書室にあったとして、何故このタイミングで理科室にあると思う?事件に関係あると考えるのが筋だろう。」

 

「たしかに。……そうだ、昨日東城と大渡の実験を手伝うために理科室に入ったけど、こんなものは無かったぞ。篠田の言う通りだ。」

 

「やはりか。クロと関係するかは謎だが、覚えておいて損はないと思う。」

 

「ああ。ありがとう。」

 

 

 

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・・・コトダマ【人道光望夢受信教】

 

 

この後、篠田に難波がこぼしたオイルの証言を取った。難波の言っている事は間違いないみたいだ。もちろん疑ってはいなかったけど……。

 

「……なぁ、篠田にずっと聞きたかったんだけど……。」

 

「?……ああ、足の事か。」

 

そう、いつもなら黒いタイツを履いているはずだが、今の篠田は素足なのだ。

 

頷き返すと少し顔を歪める。

 

「……そうだな、防音室で説明させてほしい。」

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

防音室に戻った俺達を出迎えてくれたのは検死を終えた大渡だった。尤も、向こうは出迎えなんて態度とは程遠く、椅子にふんぞり返っておにぎりを食べていた。そういえば起きてから何も食べてないな……。今はいいか。

 

「お前、よくこんなところでものを口に入れられるよな。」

 

「どこで食べようが味は変わんねぇだろ。」

 

「いやあ、それはどうかな。」

 

なんて適当に返事をして東城の元に歩を進める。

 

 

 

東城の服をめくると、腹の傷に黒い布が巻かれているのが確認できた。

俺が最初に疑問に思ったものも、ようやく納得のいく説明が得られそうだ。

 

「東城を手当てしたのは篠田だったんだな。」

 

篠田は黙ってこくりと頷いた。そのまま顔をあげようとはしなかった。

 

「……。すまない、東城……。私が、倒れなければ。」

 

クマでも倒れこむほどの強力な筋弛緩剤を耐え、睡眠薬の眠気にもこらえながら東城を手当した。……なんて、篠田じゃなければそんな事できやしないけど、今の篠田にそれを言っても気休めにもならないのだろう。

とにかく、これで東城の腹部の傷については理解できたな。

 

 

 

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・・・コトダマ【東城の腹部】

 

 

「あれ、そういえば、篠田ってなんで眠っていたんだ?」

 

「……それが、私にも理解が出来なくてな。2つだけ睡眠薬を入れないコップを用意し、それも全員にきちんと配ったはずなのだが……。」

 

「前木もそれは間違いないって言ってたから疑ってない。ただ、だとすれば……。」

 

睡眠薬を飲まなかった人の数が合わなくなってしまう。全員1つずつコップの水は飲んでいたはずだ。それは俺も見ていたし間違いない。しかし、実際には篠田が眠ってしまった、という事は……。

誰か、睡眠薬を飲まなかった人がいるんじゃないのか?

 

 

 

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・・・コトダマ【睡眠薬を飲んだ篠田】

 

 

「おにぎりタイムは終わったか?検死の結果を聞きたいんだが。」

 

「貴様を殺した後に語ってやる。」

 

「次冗談で殺すなど口走ってみろ。私がお前を骨折させるくらい造作もない。」

 

だめだこりゃ。

ちょっとテンションを上げていこうとした俺の責任だ。せめて難波がいる時にやろう……いや、この状況じゃ難波にも睨まれて終わるだろうな。

 

「……おそらく致命傷は心臓だ。だが、貴様がやった腹部の傷も確実にダメージは与えているだろうから、心臓を撃たれたのがいつか分からない以上、断言はできねぇ。」

 

「……そのようだな。手当てと言っても私ができたのは止血程度だ。流血が酷くなるのを恐れて銃弾も取り除いていない。」

 

「心臓の方が致命傷……つまり、クロも心臓を撃った人である可能性が高いって事か。ありがとう。」

 

 

 

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・・・コトダマ【検死結果】

 

 

大渡は近くに置いてあった凶器を拾うと俺達の前に置き直した。

 

「次に銃についてだ。これは自動拳銃。次弾装填等が自動化されている、外国の警察なんかが使ってる奴らしい。」

 

「これは私が東城の元に向かう前に武器庫で選んだ。モノパオに頼んで開けてもらったが、それまでに触った人はいないようだ。この拳銃には何の仕掛けも施されていない。」

 

「こいつの心臓と腹に入ってた弾と、この拳銃の説明にあった弾は同じものだった。凶器はこれで確定だ。」

 

なんで大渡はこんなに詳しいんだ……?俺の視線に気づいたのか嫌そうに答えてくれた。

 

「図書室で調べた。」

 

「流石だ。大渡が検死を行ってくれた事、感謝しよう。」

 

「ふん、やらなきゃ死ぬんだ。当たり前だろうが。」

 

……俺がさっきお礼を言った時は無視されたって言うのに……。

 

 

 

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・・・コトダマ【拳銃】

 

 

「他に目ぼしい物と言うと、これだ……こいつの白衣。見ろ。」

 

乱雑に渡された白衣を手に取る。腹部の辺りに穴が空いているのは篠田の誤射によるものだろうな。……あれ、穴が1つ……?

 

「心臓は白衣を脱いだ後に撃たれたって事か?」

 

大渡は軽く頷いた。

 

「私が手当ての際に外したのは前のボタンだけだ。脱がすまではしなかったから、これは東城自身か、他の誰かが……。」

 

「後はその背中だ。」

 

「背中……あ、これか。」

 

白衣の背中側にも多少血がついていた。飛び散ったような感じだ……。

 

「貫通はしていないから、背中側に血がつくとは考えづらいな。」

 

 

 

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・・・コトダマ【東城の白衣】

 

 

「こんなもんだ。」

 

一通り話し終わると、大渡はさっきまでの会話のテンポが嘘のように黙ってしまった。

もう話す事はないって事だな、たぶん。

そのまま俺達はここで解散する事になった。後は他の人に話を聞いてみるくらいか?俺は東城に手を合わせ、防音室を後にした。

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

「なんか知ってる事?んー……。」

 

という事で、難波を皆の個室が並ぶ廊下で見つけたので話しかけてみた訳だが。

 

「そうだ、一応睡眠薬の説明は見ときなよ。あれだったらアタシから説明しとくけど。」

 

「あ、じゃあお願いしていいか?」

 

「睡眠薬を飲んでから3時間以内には寝られるような効果はあるって。勿論効きは個人差があるから皆がどうかは知らないけど。」

 

「なるほど。」

 

夕飯を8時前くらいに食べたから、遅くても11時には皆寝ていたって事か。東城の死亡時刻は1時。篠田と東城がいつ会ったのか、後で確認してもいいだろうけど、篠田も睡眠薬を入れられていたとなると記憶に期待はしない方がいいだろうな。

 

 

 

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・・・コトダマ【睡眠薬】

 

 

「…………あ、待って。アタシ、銃声聞いたかも。」

 

「え!?それっていつの事だ!?」

 

「いや、その音聞いても起き上がれない位にはほぼ寝てたから分かんねーけど。まあでも……アタシも睡眠薬が効くまで結構時間かかったし、夜時間にはなってたと思う。」

 

「そうか。いや、十分だよ。ありがとう。」

 

 

 

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・・・コトダマ【難波の証言】

 

 

「……。」

 

「え、何?」

 

「難波は、東城の事をどう思う?」

 

「…………アタシ、死んだ人を悪く言う趣味はないけどさ。」

 

「……。」

 

「結構、ちゃんと嫌いだった。」

 

「そう、だよな。」

 

「宮壁さ、理科室のリスト、見た?」

 

「え、ああ。これか?」

 

急にその話が出てくるとは思わなくて、慌てて持ち帰っていたリストを見せる。

 

「持ってんなら話は早いわ。この3人、アタシの仲間。」

 

「え?」

 

難波は3人の名前にぽんぽんと軽く指を置いていった。

そういえば難波は、以前から『頭の悪い怪盗は捕まってしまう』と言っていた。捕まえられるって、この実験に使われるって事だったのか……!?

 

「あれ?てかなんでこのリストこんな破れてんの?前見た時は普通だったけど。」

 

「!!!そうだ、難波、お前が東城の動機とこのリストを持ってたんだよな!最初誰の名前があったか知らないのか!?」

 

「あー……、ごめん。アタシも身内の名前見つけてキレてから見ないようにしてたからさ。そのリストが燃やされずに残ってるだけでも感謝してほしいくらいだわ。」

 

「そうだよな、悪い。」

 

たしかに、俺も自分の大事な人が実験で死んでました、なんて言われたら正気じゃいられないだろうな……。少なくとも、他の人の事まで気にするのは無理だ。

 

「うーん。なんか、こうして東城が死んだ今、アタシの怒りもどっかいったっていうか。いろいろやってみたけど、結局何の解決にもなんないよなって。」

 

「難波……。」

 

「今のアタシにできる事をやるしかない。さっき聞いたじゃん?東城の事をどう思うかって。」

 

「好きではないけど、嫌いでもない。一時期は本気で無理だったけど、今は嫌いじゃなくなったって言うのが正しいかな。」

 

そう言って微笑む難波は、なんというか。

いつもより随分と幼く感じた。

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

「……宮壁くん、ちょっといい、かな。」

 

そろそろ捜査も回り終えたところで、前木に声をかけられた。

 

「?」

 

「私は、宮壁くん達みたいに理論的な話はできない。だから、私の思い違いかもしれない。でも……ちょっと、怪しいものを見つけて。」

 

「つまり、感情的というか、推理とは別視点の証拠って事か。」

 

「さすが宮壁くん……!えっとね、さっきクロが事件を起こした理由について話したの、覚えてる?私達を寝かせるためにっていうやつ。それが、少し違うんじゃないかなって。」

 

「違う?」

 

「私、何か残ってるんじゃないかと思って東城くんの部屋に行ってたんだけど、東城くんに配られた動機が残ってたの。それが……。」

 

前木の見せた紙に記された東城自身も知らなかった東城の秘密。

その文章を読んだ俺は、衝撃のあまり言葉が出なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『東城優馬の所属する倉骨研究所は、主に犯罪者を実験体として利用している。』

 

 

 

 

 

 

『しかし、犯罪者はあくまで実験体の「主体」であり、犯罪者のみを実験に利用している訳ではない。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『倉骨研究所は、「犯罪者の家族」も被験者として利用している。』

 

 

 

『また、東城優馬はそれを容認し、数々の実験に参加していた。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんだよ、これ…………。」

 

 

「ご、ごめんね!こんな、今見せるものじゃなかったと思うんだけど、私1人じゃ抱えきれなくて……。」

 

「いや、大丈夫だ。」

 

 

 

 

今回の動機である睡眠妨害。

 

東城の秘密。

 

破られたリスト。

 

篠田を追い詰めた人間。

 

そして、東城を殺したクロ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……復讐?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一体どれが何と関係しているのか、俺にはさっぱり分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『えーっと?ぽまえらっ!今日はオレくんのライブに来てくれて、ありがとーー!!!おろろ?違くね?』

 

『ちょっとアンタ達!早くしないと死体が冷めるよ!降りてきな!って、死体が本当に覚めてくれたら万々歳ですなぁ!旦那ァ!』

 

『という事で、捜査終了だよ。裁判場に来てね。』

 

 

 

 

騒がしいアナウンスを一通り聞いた後、前木がポツリと呟いた。

 

「私、今のモノパオ、だいぶ嫌いかも……。」

 

「……俺もだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 

 

約10分後、全員がエレベーターに乗っていた。

 

もう、5人。何が起きてこうなったのか、今までの事を思い返しても信じられなかった。

 

 

前木は東城の秘密を見てしまったせいか、さっきからずっと顔色が悪い。

 

篠田はまだ全快ではなさそうで、時折腕を擦っている。

 

難波はピアスをいじりながら考え事をしている。

 

大渡はあれ以降一度も口を開いていない。

 

俺は……時折痛む頭を抑えながら、今までの証拠と現状を整理していた。

 

 

 

 

本当にこの事件の謎は解けるのか。解けたとして、俺達が納得できる結末になるのか。

 

 

 

何も言えないけれど、今は自分を信じるしかないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わ!オマエラお揃いでくたびれた顔しちゃってぇー!オレくんがオマエラがぐーすか寝てるのを見過ごしてあげたんだからしっかり寝たでしょ!?何疲れてるのさ!」

 

「はぁ?朝から捜査してんの知らない訳?うざいうざい。」

 

難波が適当にあしらい、俺達は無視して席につく。

今となっては遺影の方が多く並ぶようになったこの裁判場で、また誰がクロかを突き止めていかなければならないのか。

 

 

 

 

 

 

深呼吸をして前を見据える。

モノパオを睨みつけて、俺は始まりの合図を待った。

 

 

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