ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

42 / 46
完結です。本当にありがとうございました。

またいつか、よろしくお願いします!!


Epilogue『Long time no talk, my friends.』
エピローグ


 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。黒幕達の粋な計らいと言うべきか、単純に死体の処理の面倒を考えてこうしていたのか。」

 

「ふん、どいつもこいつも未練がねぇならなんだっていい。さっさと運んでずらかるぞ。」

 

「なんでそんな犯罪者みたいな言い方になるんだよ……。」

 

それ以降、誰も声をあげる事はなかった。無言で一連の作業を終えた俺達は、制偽学園課外授業用施設……コロシアイが行われた場所から離れ、ワゴン車に乗り込む。

 

「お世話になります、えっと……。」

 

「ああ、名前?気軽にイッチーとかでいいですよ。瞳の姉みたいなものですし。まぁ、話すのは初めてですけど。」

 

からからと笑うこの人は篠田家の1番。篠田瞳が13番目の子どもなので、最初に篠田家に拾われた人という事だ。俺と大渡と珠結の事は少しも信用していないのか、目の奥は笑っていなかった。

 

コロシアイが行われた場所。二度と来る事はないだろうと思っていた場所。

俺達は、あれから数か月ぶりにこの場所を訪れていた。

目的は単純で、コロシアイで命を落とした面々を弔うために、彼らの亡骸を拾いに行こうという話だ。しばらく篠田家で世話になった俺達は数週間後、具体的に言うなら大渡、珠結、俺は自分の家に帰り、定期的にお互い連絡を取り合い、そして久しぶりに終結したという訳だ。

 

「…………。」

 

「珠結さん、いや、珠結……あの……大丈夫そうか?無理して来なくてもよかったんだぞ。」

 

「いえ、珠結は……見なければいけないので。何もできなかった自分に、覚えさせないと。」

 

目を赤く腫らした珠結の膝の上にはティッシュの山ができており、たとえ冗談でも「鼻かみすぎだよ」なんて言える雰囲気ではなかった。

 

「そもそも、本当に牧野さんを信用していいんですか……?珠結は、許せないです……信じられないのもありますけど……。」

 

「安心しろ、私も全く信用していない。」

 

「え!?」

 

「同じく。」

 

「え、え!?なんでですか!?さすがに可哀想では!?」

 

「あ?貴様も信用してねぇっつっただろうが。」

 

「いやぁ、珠結とお二人とは少し状況が違うと言いますか……」

 

 

 

 

「そもそも、牧野さんとは、あれから一度も会ってないじゃないですか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

 

 

立ち去ろうとした彼を呼び止める。

急に一人暮らしするのなんて無謀じゃないか、やっぱりどうにかならないか。

そう言いかけた俺達を無言で制して彼はこう言った。

 

「居場所は伝えたし監視もいる。僕がやらなきゃいけないのは、その監視のお守りなんだよ。……何、挨拶したいの。」

 

彼の声の先にいたのは中学生くらいの女子。ちょこちょこと俺達の方に歩み寄るとお辞儀をした。

 

「先輩方……初めまして。倉骨志求真です。住むところがないので暫く先輩と細々暮らします。」

 

これが東城のいた倉骨研究所の所長の一人娘か。話によると、倉骨研究所はコロシアイが行われる少し前に半壊したらしく、現在も所長である母親と連絡が取れないという事だった。

 

「あの、コロシアイってどんな感じでした?人から聞いただけだとやっぱり現実味がなくて、できれば実体験として聞きたいんですよね!例えば裁判場の空気感とか」

 

「これを、皆のとこには置いておけない。」

 

興奮気味に話を始める倉骨志求真の発言を遮って彼はそう言い切った。たしかに後ろで目を見開いている篠田や珠結、今にも唾を吐きそうな大渡の事を考えると、この子の発言は相当毒になりそうだ。

なんて、冷静に分析している俺も周りを心配してるから怒っていないだけで、面と向かって俺だけにこの話を持ち掛けられたらおそらくキレていただろう。

 

「これ?私の事はモノ扱いですか?」

 

「オマエは皆の迷惑になる。……これが母親の元に戻れるまでは僕が見張っていようと思うんだ。大丈夫、これは口が終わってるだけで賢い子だし、篠田さんにご執心だから皆にとって悪い動きはしない。」

 

「篠田さん……?」

 

「あっ、私の心を読みましたね?やめてくださいよ、恥ずかしい……!もう失恋してるんです、だから髪も切ったんですし……。」

 

篠田の顔色がより一層悪くなったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

□□□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツとは二度と話したくない。」

 

篠田は眉を潜めてそう吐き捨てた。よほど倉骨志求真の事を思い出したくないらしい。篠田にとっては自分の体験したコロシアイについて興味津々に嬉々として質問をぶつけてくる上に、自分の親代わりの人に対し好意を持っているのだ。無理もないか……。

 

「うーん、要は志求真ちゃんを珠結達から遠ざけたいから別行動するって事ですよね?なんか釈然としないというか……。」

 

まだ唸っている珠結は、俺達に向かってとんでもない事を言った倉骨よりも牧野の方が信用できないようだった。

 

「そうか、珠結はあの倉骨志求真って子に助けてもらったんだよな?」

 

「はい!一応、助けてもらった時はいい子だなぁと思ってたんですけど、あれは強烈でしたね……なんというか、あんな人だとは思いませんでした……。」

 

「まぁ、倉骨研究所の人だからな……。」

 

「とはいえ、これでこの場所に来る事ももうないだろう。他に回収したいものもあるまい。」

 

篠田は冷静に話をまとめた。

俺は動き出したワゴン車の中から外を見る。曇り空。遠くに町が見えた。課外授業用施設なだけあって山の奥地にあるこの施設は、閉じ込められなくとも地図なしでは出られないような地形に存在していた。

 

研究所の破壊だの天使計画だの不穏な単語ばかりではあったが、外は俺達が思うほど物理的に荒れている訳ではなかった。

言われてみればそうだ、前回のコロシアイが起きた時だって火災で隠蔽された後も俺達は普通に学園生活を続けていたらしいし、今回の事も世界を揺るがすほどの大事にはなっていなかったようだ。隠蔽、そう言ってしまえばそうなのかもしれない。これを公表した時に警察に、他人に、世間に相手にしてもらえるように、その準備に俺達は取り掛かる。

 

珠結の説明であらかた状況は理解していた。

 

 

 

そもそも、何故倉骨研究所は不老不死の研究に取り組んでいたのか。

 

治安の悪化に大きなきっかけはない。新種のウイルスだとか、金銭問題だとか、世界情勢だとか、人気を得ていたたリーダーの暗殺だとか、戦争だとか、1つであれば時間をかけていけば、かろうじてどうにかできそうな問題が積み重なって、世界は大きな希望を必要としていた。希望は滅してはならない。永久に輝かなければ、いつか影が差してしまう。

希望は、負けてはならないのだ。

勝者でなければ……正義でなければならない。

 

そんなの暴論だ。理想論だ。現実がそう上手くいくはずがない。

その声を押しのけて理想を掲げて動いているのが、このコロシアイに加担した連中という事らしい。

 

無論、こんな理想論がまかり通っているのは、それに賛同する声が相次いでいるからだ。

勝卯木蓮の人望という才能、弱者の味方として寄り添うような勝卯木蓮の思想に憧れを抱くのはもはや個人ではなく、警察を始めとする大きな組織も関与するまでとなっていた。

 

そして、倉骨研究所の成果とも言える天使装置の完成。その装置に取り付けられた余命1ヶ月だった人間が、1年経ってもなお同じ状況を保っている。病状が悪化する事も快方に向かう事もなく、ただ、1年前と同じ状態で存在していたのだ。目を覚ました状態でのコールドスリープとも言えるその装置は世界の注目の的となった。

世界中の権力者がこぞって手を伸ばすその装置に入れるべき人間は誰なのか。その問題がより一層勝卯木蓮の理想論への賛成を強める事に繋がっていた。

 

 

「死なない希望なんてなくたって、どうにかなるようにできてるんですよ。そうじゃなきゃ、今って存在しないと思うんです。」

 

珠結はそう言った。

 

「珠結は、今度はみなさんの役に立ちたい。」

 

珠結はこうも言った。

 

「十分助かった。私は感謝している。」

 

「……そうでしょうか。皆の記憶を消されて、皆の命を失って、珠結は、何も……」

 

「……。」

 

再びティッシュに手を伸ばした珠結から目を逸らす。

沈黙に包まれたワゴン車の中、今月の話題曲を紹介するラジオが楽し気に鳴っていた。

全然知らない曲だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、今回のコロシアイで天使計画には大幅な遅れが生じた。

 

少し今話題になっている事がある。制偽学園が活動を縮小している事だ。

学園長の容態が、と表向きでは言っているが、普通そんな理由で学校に影響はない。おそらく勝卯木蓮の計画に少なからず協力しているのだろう。

今学園を取り仕切っている生徒会長は俺達より下の学年の特別学級の生徒らしく、世間では、というよりネットとか近所の声によれば、『制偽学園きっての天才優等生』と持て囃されているらしい。どうせならその顔を拝みに行きたかったが今俺達が行けばコロシアイの公表に向けて準備している事がバレてしまうかもしれない。現生徒会長がどういう思考回路をしているのか知らないが、現時点では味方と考える方が難しい。

 

「大希、眉間に皺寄せてたら俺みたいになるぞ。」

 

「叔父さんに似るなら別にいい。」

 

「俺の第一印象があまり良くないの知らないのか。」

 

「大渡はもっと悪いから大丈夫。」

 

「そういうことじゃない。」

 

俺以上の強面になっても知らないぞ、と言いながら立ち上がった叔父さんを玄関まで見送る。

 

「もうすぐ成人なんだけど。」

 

「いいだろ。しばらく会ってなかったんだ。」

 

「……いってらっしゃい。」

 

叔父さんにくしゃくしゃにされた頭を整えるため、俺は洗面台に戻った。

 

こんな事言いたくないけど、正直裁判官になるなら真面目に勉強しないとヤバい。

高校生活の記憶を1年程失った俺達は、一年間勉強した事が頭から全て消えている。

見覚えのない問題集と、それにきちんと解答している過去の俺と、まるで分からない今の俺。まさに苦行。

 

勝卯木蓮なんかに構ってられるか!俺は勉強で忙しいんだ!と言いたいが、そもそも警察をどうにかしないと裁判にも絶対支障が出る。というかたぶん出てる。それに篠田達に任せっぱなしという訳にもいかない。

 

「もしもし篠田?」

 

「そう、そっち行く……あと珠結も呼んでくれ、勉強教えてほしくて……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宮壁くんに珠結が勉強を教えるなんて!でもこの単元、宮壁くんはつまづいてなかったんですけどね……。」

 

「くっ、過去の頭脳に戻りたい……。」

 

「記憶を戻す技術とかはないのか。」

 

「うーん、そういう話は聞いた事ないですね。というか、宮壁くんに勉強教える以外にも珠結はやる事あるでしょう!なんでずっと宮壁くんの家庭教師やってんですか!」

 

「すまない。珠結、この資料を覚えてくれないか。」

 

「了解ですっ!」

 

駄目だ、完全に珠結が皆のお助けマンになっている。人に言う事じゃないけど、あまりにも便利すぎる。

 

「この資料によると……天使計画に加担していた人達、というか倉骨所長は勝卯木蓮に捕まって利用されてるって事ですか?そんな話を志求真ちゃんが言ってた気がしますね……。」

 

「監禁されるババアと極悪人の変態シスコン野郎とか絵面おかしいだろ。」

 

「ちょっと!大渡くんは倉骨所長の顔見たことないんですか!?というか40代ってまだまだ若いですからね!?」

 

「うっせぇな。」

 

勝卯木蓮の悪口は一切否定しない珠結に苦笑しつつ、大渡が来たのでいよいよ本題に入るため篠田を促す。

 

「で、篠田」

 

「ああ。情報屋に話を聞いた。」

 

「情報屋……。」

 

たしか、以前聞いた話によれば、篠田家と多少なりとも繋がりのある人達がいたはずだ。倉骨研究所の死亡被験者リストにも載っていた、白木恭介という男。彼は特別学級の生徒ではなかったものの人の情報を扱う事に長けており、篠田家にも度々顔を出しては貢献していたらしい。今はその家族が情報屋として危険の中を渡り歩いているらしいが、詳しい事は分からない。

 

「勝卯木蓮がこの程度で諦める奴ではない。おそらく、何か次の手を打ってくる。」

 

「俺達はそれに対して反撃しなくちゃいけない……何か見当がついているっていうのか?」

 

「……ああ。シイチ、聞いてるのだろう。」

 

篠田の声と共に音もなく現れたのは血の繋がりこそないものの、篠田と一番親しくしている同じ境遇の子ども、シイチだった。彼が41番目の子どもである事は名前から察する事ができるが、一体篠田家には何人のメンバーがいるんだと、その規模に恐ろしさを覚える。叔父さんも篠田達にはかなり訝しげな顔をしていたけど、よくよく考えてみれば無理もない。俺を探し出してくれた事でなんとか信用の綱渡りをしている状態だ。

 

「次があるかもしれないってことです。」

 

「次って、まさか、」

 

声が止まる。嘘だろ、そんな事があるのか、

篠田は相変わらず眉間に皺をよせ、何も言わずに頷いた。俺達の表情で何が言いたいのか、言葉にせずとも伝わり辺りが重苦しい雰囲気に包まれる。

 

「……なぁ、それを、止めるっていうのか。」

 

「チッ、そもそも何故次があると言い切れる。奴等に権力なんざほぼねぇはずだろが。」

 

「珠結もいろいろ考えてみたんです。たしかに、勝卯木蓮にとっては失敗に終わった。だけど、その中で確信できた事もあるはずです。」

 

「確信……?」

 

「アレには人の力を引き出す効果がある。あの最低な人達なら、そう考えてもおかしくないんですよ。」

 

「なっ……!!」

 

「現に、みなさんの時もそうだったんですよね……?琴奈ちゃんは、珠結達が平和に過ごしていた時よりも遥かに大きな力があった。要は、覚悟とか切羽詰まった状況が人を成長させるのに一番手っ取り早いって証明しちゃったのかもしれません。」

 

珠結は俺達の顔を見てすぐに声のトーンを変える。

 

「でも、誰もそんな事望んでなかった。珠結は、そうやって人を理不尽に費やすあの人達が許せない……!!だって、誰があんなので救われたっていうんですか……!!!あの状況でしか解決しない問題なんてあるはずない、いいえ、あってはならないんです……!!!」

 

沈黙が場を包む。どくどくと激しい鼓動は俺の精神を摩耗していくようだった。

完全に消えた訳ではないと思っていたアイツの姿もコロシアイ以降見えなくなっていた。こんな事で負けていられない、俺は強く唇を噛む。

 

「珠結は、それを証明したい。あの人達に、そんなもの必要ないって叩きつけなきゃ気が済まないんです。だから、次があるなら、珠結は…………珠結が、」

 

「何言ってんだよ!!」

 

気づけば椅子を蹴飛ばすようにして立ち上がっていた。ほぼ怒号と言って差し支えのない声が俺と篠田から飛び出る。

 

「そもそもどうやって紛れるつもりだ!誰が巻き込まれるかも分からないのに!」

 

「……。」

 

「宮壁の言う通りだ!私も認めない……!」

 

「じゃあ、知らない人ならいいんですか。」

 

「そんな事、」

 

「珠結は全部覚えてます。倉骨の技術に唯一抵抗できる珠結が、行くべきなんです。もう誰にも何も忘れてほしくないんです。」

 

ここで許可なんて出したら奴等と同じだ。

だからといって珠結に何を言おうと、今の俺達の姿が珠結にとっては後悔そのものなのだ。そんな俺達が慰めることなんてできないのかもしれない。けれど、俺はもう言葉を呑んで地団太を踏むような奴じゃない。そんな奴ではなくなったはずだ。

 

「珠結、そもそもそんな事起こさせないようにするのが先じゃないのか。」

 

「……今まで止められなかったのに、どうやって……」

 

「いくら所長が利用されているとはいえ、全部が全部前と同じ状況じゃない。俺達の仲間は増えてるんだ。」

 

俺の言葉にしっかりと頷いた篠田も珠結に向き直る。

 

「ああ、珠結、お前はもう1人じゃない。私達がいる。」

 

「……!!」

 

「うぜぇんだよ、その視線。」

 

お前も何か言えよ!という俺達の視線に対し毒を吐き捨てた大渡も含め、士気は高まっていた。

 

「はい……!!みなさん、改めて、よろしくお願いします!!」

 

今までとは違う。明確な敵がいて、目的も道筋も決まっている。

俺達の決断が揺らぐ事は、きっとないだろう。

 

 

 

「宮壁お兄さんはそんなあてがあるんですか?ぼくも可能な限りお手伝いしますけど……!」

 

「……ああ、あるんだ。今もこの会話を聞いて動いてくれようとしてる。」

 

「……え?」

 

俺はポケットに忍び込ませていたスマホの画面を見せる。

 

珠結を含む一同の目が驚きに見開かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだろ。」

 

『…………。』

 

 

 

 

返事の代わりにため息が聞こえた。俺はそれを了承と受け取り、通話を切った。

 

 

 

どこまでできるか分からないけど、とか、俺達の戦いはこれからだ、とかではない。

 

俺達が勝つ。勝って終わらなければならない。

あの時とは違うんだ。俺達は、正真正銘、仲間である。

 

奴等を止めて、全てが終わった時に、コロシアイの事を世間に訴える。

皆の死を、皆が生きた証を、認めさせてみせる。

 

俺達ならなんだってやっていけると言ってもらったのだから、それに応えなくちゃいけない。

 

皆の夢を叶えるまで、俺達は何があっても死なないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これで俺達の話は終わりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何年経ったか、あれから何があったか。詳しい話は、またいつか誰かがするとして。

 

 

 

 

 

俺達3人は久しぶりに待ち合わせをしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

篠田とはたまに連絡を取り合うけど大渡が返事を寄越さないのでほとんど集まらなくなっていたが、俺達からの怒涛の連絡に懲りたのか、こうして集まっている。

 

 

 

 

 

「はっ、聞いたぞ。無事あの変態野郎に罰が下ったらしいな。もう二度と会わなくて済みそうだ」

「それはどうかな」

「あ?うっぜ」

「宮壁は裁判には立っていないそうだな」

「ああ、やっぱり事件の関係者だから無理だった。その代わり情報提供はかなり求められたから、覚えてる範囲であのコロシアイを文章にして提出したんだ」

「あ?全部か?小説みてぇになりそうだが」

「いや、さすがにレポートみたいに覚えてる会話だけ羅列したけどさ……」

「分からんぞ、ポエミーな宮壁の事だ。余計な感情表現を多分にしているかもしれん」

「余計って言うな」

 

篠田は笑った。

 

「水」

「いや、大渡がやってくれよ」

「やった」

「汲んだだけだろ、ちゃんと水換えたり古い花取ったりしてくれよ」

「……大前提として、うちの神社においてやってる。基本の手入れは俺がしているし、手入れにかかる費用全て領収書を揃えている。見せつけてやろうか?」

「だからちゃんと折半してるだろ……」

「たしかに大渡の言う通りだな。大渡は休んでいろ」

「というかここに置いてもらってるのになんで大渡と会うがこんなに久しぶりなんだよ、おかしいだろ」

「会いたくねぇから」

「はいはい」

「水終わったぞ」

「コイツが手入れをほとんどしたな。貴様は何をしてくれるんだ?」

「……ちょっと高いとこのお菓子、持ってきました」

「チッ、半分くらい寄越せ」

「じゃあもう半分は私が」

「これ『皆』の分もあるからな!?」

 

がやがやと3人で談笑する事はや数十分。

 

 

 

 

 

 

 

ようやく一息ついた俺達は、お墓の前で報告会を行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずは私からか。あそこから出た後もいろいろあったが……今はようやく落ち着けたところだ」

「今は……いや、やっている事は変わらないな。なんだかんだスパイとして活動している」

「この前は離島に用事があって、1人でキャンプと釣りをしてみたんだ。なかなか嵌りそうな予感がしている」

「お前達が心配していた件も、話せば長くなるが、片付き始めたところだ。基本的に私がメインで調べている。もうそろそろ宮壁のいる裁判所に提出できそうなんだ」

「終わったよ、全て」

 

涙ぐみながら篠田は報告を終えた。

 

「次は大渡がやればいい」

「あ?報告とかだっせぇ事するかよ」

「やれ」

「……チッ」

 

さっきの穏やかな表情が一変して鋭く睨みつけてきた篠田に舌打ちをし、大渡も手を合わせる。

 

「貴様ら全員成仏してんだから何を言おうとどうでもいいが……」

「……来年アニメの2期がある。倉骨研究所は実験が公になって今度こそ取り壊された」

「以上」

 

大渡はほんの3秒程手を合わせたかと思うと立ち去ろうとする。

 

「短っ」

「殺すぞ」

「うわ……」

「大トリは宮壁だな。何を言ってくれるんだ?」

「篠田もやめてくれよ……」

 

俺は背中を押されるがまま、お墓の前にしゃがみ込んだ。

 

「えっと、あれからだから……そう、牧野も入れて4人で1回だけ飲み会したんだ。信じられないだろ、この4人が揃うなんてさ」

「久しぶりに見たら誰だよってくらい変わってたんだ。声かけられるまで牧野って分からなかったんだよな……相変わらずメイクはしてたけど、髪も切ってたし黒髪だったし眼鏡かけてたし」

「めちゃくちゃおもしろい飲み会だったかっていうと微妙だけど、まぁ、思ったより……笑ってたと思う。酒も入ってたし」

「で、無事牧野の裁判もやったから、2回目の飲み会はおっさんの集まりになりそうだ」

 

「今は、いろんなことが表沙汰になって、それ関係の仕事に追われてる。まぁ、平たく言えば社畜だけど、俺にも後輩がいっぱいできたからな。……うん、楽しく、やってる」

「篠田とか大渡の家についても隠しきれなくて、若干迷惑かけたけどどうにかなった。案外うまいこと話って進むもんだよ」

「そうだ、俺達の他にがんばってくれた人がたくさんいてさ。ここに珠結がいない事にも関係するからまだ解決しきってないんだけど、勝卯木蓮も天使計画とかも無事に決着がついたんだ。俺達だけじゃどうしようもなかったから、本当にあの子達には感謝してる。あの子達がいてくれなきゃ、きっとこんな形で解決できなかった」

「……でも、皆のお願いは半分も叶えられてないから、まだまだだな」

「幸い時間はある。全部、どうにかするよ」

 

 

 

目を閉じると、ふと、今までの光景が頭を駆け巡った。

 

相変わらず記憶にない学園生活、全員と初めて顔を合わせた時、事件が起きた時、途中途中で皆と遊んだりおしゃべりした時……。

そして、皆に背中を押してもらった時。

あの時の事を思い返すと、いまだに背中に熱をもつ。あれからやっぱり皆には会えなくて、何も憑いていないと言うからには、その通り消えたのだろう。

 

 

だけど、それでも、俺は……いや、モノローグもここまでだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

手を合わせていた。何分も、何十分も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一際暖かい風が頬を撫で、意識がまどろむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は、ゆっくりと目を開け、そして、アイツにも手を合わさせてやろうと、もう一度目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて裁判を執り行うと決まった時、いろはくんの言葉はここまで聞こえていた。

 

「さすがに都合が良すぎじゃない?しばらくいなかったのは療養みたいな感じ?……はぁ、腹立ってきた」

「それをもっといい感じに運用できれば何も起きてなかったかもしれない。今更何言ってもどうにもならないけどさ、無くなって正解だよ」

「いや、無くなったからといってこうも上手くいくなんて思ってもみなかった」

 

 

「……誰のおかげか知らないけど、本当、運がいいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大渡と篠田が無言で立ち上がり、帰路につく。

それから数歩遅れて、『もう一人の宮壁大希』も立ち上がった。

 

 

 

2人の肩に手が置かれる。そのまま後方に引き寄せられた。

 

 

 

 

 

「瞳ちゃん、響くん!久しぶり…………!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピローグ『Long time no talk, my friends.』

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダンガンロンパノウム

ー正義の学園と反逆の高校生ー

 

完

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。