ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

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以前ぷらいべったーで投稿していた桜井の番外編です。


番外編
番外編1(ネタバレなし)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その少女は彗星の如く現れたが、彗星のように去ることはなかった。

 

一番星のように煌めく少女は、しかし太陽のように周りを照りつけた。

 

 

 

これは、私がその少女の煌めきに、焼かれてゆくだけの話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日よりアシスタントとしてお世話になります。……よろしくお願いします。」

 

 

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 

目の前で笑顔でお辞儀を返したのは、今日から私がアシスタントを務める新進気鋭の漫画家、桜井美亜。

私は、彼女の実家で働く事になった。

 

「……。」

 

「あっ、えっと、桜井美亜です!こんなにチビだと思いませんでしたよね……!一応、この春から高校生です!」

 

「あ、そうなんだ。」

 

私の妹よりもさらに年下で、身長に至っては小学生にも見えるようなこの少女が、桜井美亜?

 

「えへへ……。あっ、どうぞ上がってください!お茶持ってきます!」

 

漫画家、それもこんな若い子が、自分からアシスタントにお茶を出す。前代未聞のわりに、作業部屋はとても穏やかだった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 

 

「内野さんって、変わってますよね。」

 

「ね~!ウッチーくんは寡黙だし、ひたむきだよね!かっこいい!」

 

「寡黙というか、話ができないというか……」

 

ウッチーこと内野さん。桜井さんの初めてのアシスタントで、もう2年が近いらしい。桜井さんがデビューした数ヵ月後にはアシスタント付き……。なんて速さ。

 

……じゃなくて、私は内野さんとほとんど喋ったことが無い。桜井さんとも大して話してないし、私には目もくれないし。一応先輩だし、せめてコミュニケーションはとりたいんだけど。

もう1人とは話せるけど、内野さんはどうも難しい。

 

 

 

 

 

 

 

「…………ん?」

 

アシスタントを始めて、気づいた事がある。

 

今連載中のオレジカの裏ヒロインが、どうにも内野さんに見えるのだ。いや、内野さんは男でもさっとした髪型でオシャレでもなく、性格も寡黙だ。反対に裏ヒロインはつり目が特徴の褐色女子で、とてもかわいい。

それなのに、正反対なのに、同じ。

 

 

2人だけの日に聞いてみることにした。

 

 

「あの、少し聞きたいことがあるんですけど、」

 

「はい!なんですか?」

 

「この……レーデちゃん、何というか、内野さんに似てる……というか、いえ、何も……」

 

 

「……!!!よく分かりましたね!山本さん、すごいです!」

 

 

「えっ?」

 

 

「なるほど、山本さんはそういう人なのかぁ、あの、本当に観察眼が鋭くて……!」

 

「えっと……」

 

「……!!!よし!私アイデアが浮かんできちゃいました!」

 

桜井さんは笑顔で私にお礼を言うと、自分の席に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

数週間して、桜井さんは新しい話を描き始めた。

 

 

桜井さんが今書いているのは、同じ系列の別の雑誌への読み切りだ。

 

内野さんは今までの設定画と雑誌に載っているものを比べる単行本修正作業に追われており、今回の読み切りはほとんど桜井さん自身が手がけなければいけないらしい。私はペン入れを任されている。

 

一通り読ませてもらったあと、ペンを入れる訳だけど。

 

 

…………ふと、ペンを入れようとした手が止まる。

 

全く知らない話の、住む世界も違う、顔も背丈も違う、中年の男性。

 

その男性の後ろ姿が、私だった。

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

 

「え、え、どうしたの?」

 

びっくりする桜井さんをよそに、ペン入れを終えたページを捕まえる。

いや、全然違う。私が漫画のキャラクターでないのは、今も聞こえる心臓の音が証明しているではないか。

この話の主人公が私だったのではと、そんな奇妙な疑問を抱いたのは何故なのか。ふと、桜井さんのアシスタントをしてみたくなったきっかけのインタビュー記事が頭によぎった。

 

 

 

 

 

 

 

「世界にはいろんな人がいて、誰かはキャラクターを見て共感してしまうと思うんです。でも、それでいて前を向ける話を書きたい。」

 

「私は周りの人を参考にすることが多いんですけど、実際に漫画に書き起こす時は、全くおなじには書きません。ここを書いて欲しいってところだけ、書きたくなるんです。」

 

 

「記者:書いて欲しい、とは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここを書いて欲しいって、私を呼んでいるように見えるんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

漫画の男性は、結局夢を見続けることに決めた。

 

 

私はそれ以降、作業部屋を訪ねることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は私が最後にペン入れを手伝った雑誌の発売日。

先生の読み切りの載った雑誌を手に取り、レジに向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらずおもしろい話書くよなぁ。」

 

願わくば、私が生きている間、ずっとこの人の話を読めますように。

 

そんな理不尽な気持ちを抱え、私は読者アンケートを送った。

 

 

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