ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

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3章で前木が難波の部屋で寝ずに過ごしていた晩のお話です。

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番外編2(3章読了推奨)

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

………。

 

まただ……またあの子、いじめられてる……。

 

 

 

 

 

 

 

 

特別学級に入るために絵で賞を取ろうとして、不正していたのがバレたみたい。それで、特別学級に入りたい人達からいじめられている。

 

「はぁ……。」

 

「琴奈ちゃん、どうかしたの?」

 

「こういう時、難波さんがいたらな…って…。」

 

「あー…強いもんね、あの人。」

 

「うん。難波さんって特別学級確定組でしょ?そういう人しかああいうの、止められないもん。」

 

「最近は日常茶飯事になってきたしね。この光景。ま、私も特別学級には入りたいけど。」

 

「え、そうなんだ。」

 

「逆に琴奈ちゃんが入る気なさすぎるんだって!なんでここ来たの?」

 

「家から1番近い高校だったから……。」

 

「それでよくここに入れるよねー。スカウト組でもなければここ普通に難しいのに。あ、もしかして~??」

 

「す、スカウトなんかじゃないよ!」

 

 

 

 

………あ、大きい声出しちゃった…。後ろの方で騒いでたいじめもピタリと止まる。

皆の視線が怖すぎて、思わず縮こまる。

 

 

 

 

 

「えっと、ごめんなさい……。」

 

目をつぶって誰にともなく謝る。

 

最近はいよいよ特別学級に入る人が決まるって事もあって、教室中、いや、学校中がピリピリしている。これみよがしにトロフィーを家からかき集めて先生の見えるところに並べている人もいれば、四六時中何かの練習をしている人もいる。

 

「琴奈ちゃん、この話、やめよっか。」

 

「そうだね……。」

 

 

 

急に廊下が騒がしくなる。

あ、牧野いろはくん……だっけ。仕事終わりに学校に寄ってきたみたい。

 

「牧野はいいなー!確定組だろ!?」

 

「牧野くんが羨ましい~!」

 

「あはは!こう見えても俺、まあまあ努力してんだよね~。逆に入れなかったら全テレビがびっくりするでしょ!」

 

……教室の何ヵ所かでその会話に対する舌打ちが聞こえる。

牧野いろはくん…テレビで何度も見ている彼は間違いなく特別学級に入れるだろう。ああいう確定組は学校にいない事も多くて、だから学校がいつもよりピリピリしてる事にも気づかな……。

 

「なんか機嫌悪い人多いみたいだけど、ここに舌打ちしてる人いたよね?聞こえちゃったー。」

 

気づいてた……。

牧野くんがテレビで見るようなにこにことした笑顔を浮かべて私のいる教室を覗き込んでいた。シンと静まり返る。

 

「あれ?無視?じゃあいいや。」

 

彼はそのまま数人の取り巻きに引っ張られていった。きっとあの取り巻き達も、有名な人と一緒にいる事で自分も見られようと必死なんだろうな……。

 

「ね、ねぇ、お手洗い、行かない…?」

 

友達に声をかけて返事も待たずに手を引く。

 

こんな教室、もういたくないよ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手を洗っていたらトイレの水が壊れて、顔とか胸あたりがビショビショになってしまった。

 

「こ、琴奈ちゃん大丈夫!?」

 

「ごめん、大丈夫じゃないかも……。」

 

「もー!先生呼んでくるから、それまでこれで顔とか拭いてて!」

 

「あ、ありがと~…!」

 

とりあえずトイレから避難して廊下で水を拭こう…そう思って廊下に一歩踏み出したら、誰かとぶつかる。水で足が滑って派手に転んでしまった。

 

 

 

「いたっ……!」

 

 

「うわ、ビショビショだけど大丈夫?」

 

 

 

 

 

「え、えと、はい………。」

 

咄嗟に差し出された手を取って立ち上がった私の目に、その人がつけている腕章が映る。

 

「生徒会長……!?」

 

「おや、よく分かったね。」

 

「分かるも何も…す、すみません!ありがとうございました!」

 

急いで手を離す。ちょうどいいタイミングで友達が先生を連れて戻ってきてくれた。

 

「うわ、前木、派手にやったな……。前もこんな事があっただろう。」

 

「私が壊した訳じゃない……はずなんですが…。」

 

「あはは、今日は運悪いよね、琴奈ちゃん…。」

 

「……前木琴奈さんって言うのかな?」

 

「へっ!?あ、会長、聞いてたんですか!?……そ、そう、です…。」

 

「なるほどね……。ごめんね、立ち聞きしちゃって。それじゃあ。」

 

会長はそのまま立ち去ってしまった。いや、立ち去ってくれた方が緊張しないからいいんだけど……。

 

 

「ちょっと琴奈ちゃん、勝卯木会長と何話してたのー?」

 

「たまたまぶつかって、謝ってただけだよ……。」

 

「運がいいんだか悪いんだかって感じだね、ほんと。」

 

「あはは……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【幸運 前木琴奈】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

特別学級に入る人が決まり、廊下の掲示板に貼り出された。

 

 

 

なんで私の名前が入っているんだろう?

 

誤植?

ミス?

だって、私は特技もないし、トロフィーなんてもらった事もないし、そもそも入りたかった訳でもない。

 

横に書かれた幸運の意味も全く分からない。なのに。

 

 

 

横でたくさんの人が入れ替わりで掲示板を見る。悔しそうにしたり、悲しそうにしたりする人が大半だ。

……そんな中、私は一歩も動けずにいた。

 

 

こんなとこ、入りたいなんて私言ってないのに。

私よりすごい人がいっぱいいるのに。

 

 

 

 

「よかったじゃん。」

 

その声に振り返ると友達が見たこともない顔で立っていた。

 

「あ、えっと……。」

 

「よかったじゃん、入れて。」

 

「……えと……。」

 

「そんな目しないでよ、もっと憐れじゃん。私。」

 

「……ごめ……」

 

「凡人の私に謝る暇があったらこれから一緒になる特別学級の皆様と仲良くすれば?」

 

「え……」

 

「もう私と話すことなんてないでしょ、じゃあね。」

 

「………」

 

 

 

 

「…………」

 

 

涙が出そうになったから、逃げるように走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

校舎の人影がないところでずっとしゃがんで涙を堪えていた。

 

 

「あ、叔父さん?俺、特別学級に入ってた。判断力って何?ってなったけど、たぶん裁判員の事で合ってると思う。うん、あはは、ケーキって、叔父さんこれから仕事だろ?え、じゃあ今週末がいい。うん………」

 

たまたま近くで電話をしている人がいたらしくて、内容も聞こえてしまった。判断力……あ、宮壁大希くんか。確定組だったもんなぁ…。

 

「え?いや、掲示板の写真送ってもよかったんだけど、周りの目が怖かったからさ。うん…緊張してる。知らない人とか変な才能の人も多いし。また帰ったらいろいろ話すよ。じゃあね。」

 

変な才能という言葉に肩が震える。その拍子に持っていた水筒を落としてしまった。

 

「あっ……。」

 

「?これ、落とした?」

 

ちょうど水筒の転がった先にいた宮壁くんが拾ってくれた。

 

「えと、ありがとうございます……。」

 

「こんなところで何してたんだ?……って、あ、ごめんな、俺、聞かない方がいいよな…さっきの電話も、聞こえてたらごめん。」

 

「ううん……。あの、おめでとう、ございます…。」

 

「あ、ありがとう……ございます…。」

 

 

沈黙。お互い何を話せばいいか分からないんだから仕方ないけど……。

 

「…えと、じゃあ、お先に失礼します…。」

 

宮壁くんは耐えきれなくなったのか、足早に離れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

宮壁くんみたいな人でさえ、入れたら喜んで電話までしちゃうような、そんなすごいところに、私は入ってしまった。

 

たった15しかない枠を1つ、私が潰してしまった。

 

 

どうしようもない思いが渦巻いて、思わず膝を抱える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんな欲しくもないプレゼントの為に散々運が悪かったんだとしたら…本当、すっごく最悪だよね。」

 

 

特別学級に入ったら明るくしていかないとだし、せめてそれまでは、ここで泣いててもいい、よね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「琴奈?琴奈ってば。」

 

 

 

「……えっ?紫織ちゃん?」

 

「すっごいアタシの事無視してたけど、考え事?」

 

「う、うん…そう、かも。」

 

「かもって、何それ。」

 

けらけらと笑う紫織ちゃんを見てから、周りを見渡す。そういえば今は紫織ちゃんの部屋にいるんだって事を思い出した。

 

 

 

「……紫織ちゃんは、特別学級に入ったって決まった時、嬉しかった?」

 

「は?まぁ、嬉しいのは嬉しいけど。何?」

 

「えへへ、聞いてみただけ。」

 

「でもその結果これなのはマジでないわ。コロシアイとか頭おかしいって。ほんと最悪。」

 

「そ、そうだよね……。本当、ツイてないよね。」

 

「……。無理に前向きになる必要はないけどさ、変に考えすぎるのはもっと良くないから。」

 

 

紫織ちゃんはそう言うと持ってきていた水筒からお茶を付属のコップに注ぐ。

 

「はい。」

 

「ありがとう…。」

 

温かいお茶を飲んで、少し落ち着いた気がする。

 

「今日は眠らずに喋ろ。」

 

 

紫織ちゃんはにやりと笑うと眠気覚まし用のガムをいっぱい取り出した。

 

 

「あはは、紫織ちゃん、準備いいね…!」

 

 

 

私は水筒をその辺に転がすと、紫織ちゃんと一緒にお泊り会を始めた。

 

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