ダンガン口ンパノウム   作:口田らみ

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こちらは捜査編となっております。
近日中に投稿する『閑話編』はこちらの要約版となっておりますので、読むのが面倒という方はそちらを読むのをおススメしますが、閑話編のみで犯人を当てるのは難しいと思います。

素人の考えたトリックもどきですので、多少のおかしな部分は目をつむっていただけると嬉しいです。


非日常編 1

 

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「さ、桜井…?」

 

 

 

 

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やっと出た声は想像以上に小さく、誰にも聞こえていないようだった。

死んでいる。間違いなく、桜井は俺たちの目の前で絶命していた。

 

「美亜!?嘘でしょ!?」

 

「なぜだ…!」

 

難波や三笠の声が遠く感じる。二人の声にも桜井が目を開くことはなかった。

 

「これ、本当に…「起こっちゃったね!」

 

高堂のつぶやきを遮って元気よく現れたのはモノパオだった。

モノパオは周囲の様子をちょこまかと動きながら確認する。そして満足そうに胸を張った。

 

「しっかりびっくりしてくれたみたいでよかったパオ!さあ、お待ちかねの捜査に入るよ!」

 

「捜査?どういう事?」

 

「よくぞ聞いてくれました牧野クン!こうやって犠牲者が発見されたら、一定時間ミンナには誰が犯人、クロなのかを当てるための捜査をしてもらいます!捜査が終わった後は『学級裁判』をしてもらうパオ!」

 

「…学級、裁判…?裁判の事、だよね…?」

 

端部は不安そうにつぶやく。

 

「ミンナでクロを当てる会議みたいなものだよ!そして最後に、自分がクロだと思う人に投票してもらいます!もしクロを当てる事ができればー、クロは死にます!逆にクロを外した人が多数派になるとー、クロ以外のミンナが死にます!説明終わり!ね、簡単でしょ?」

 

…?何か、そんな事をつい最近どこかで聞いたような気がするけど…どこで聞いたんだっけ…?

 

もう今更驚く事はなかった。裏切り者に命を狙われ、悪魔の命を狙っていて、今まさに犠牲者が出てしまった俺達に、犯人を当てなければ死ぬ、なんて言われても…元からなかった元気をさらになくすだけだった。そのくらい俺達は疲れていた。はあ、そうですか、とでも言わんばかりの空気だった。

ただ、この捜査は思ったより危険だ。誰が犯人かわからないまま、言ってしまえば、犯人と一緒に捜査をするのだ。

 

「でもミンナ、もちろん捜査なんて初めてだよね?何から手を付けていいかわからない!死体を見るのも嫌だ!そんな人がほとんどだと思うんだ。」

 

「…だから何だと言うのだ。」

 

三笠の厳しい目つきにモノパオは焦ったように小さなUSBを取り出した。

 

「タダーン!『モノパオファイル』!これをミンナに配ります!さ、全員分はないから適当に取って回してあげてねー!受け取った人から自分の生徒手帳の差し込み口にさして、ダウンロードしてね!」

 

…随分セルフサービスだな。

モノパオを自由に動かすほどの技術があるのだから、ファイルの一斉送信くらいできるだろうに。

 

「…何か出てきたよ?」

 

いち早くダウンロードできたらしい前木の生徒手帳を覗き込む。

そこには、死亡者名、発見場所、死亡推定時刻、死因など、桜井の遺体に関する情報が載っていた。

前木からUSBをもらって俺もダウンロードする。

 

「ミンナ表示されたかな?検死はやってあげたから、それも手掛かりにしながら捜査をがんばってほしいパオ!じゃあ、捜査時間だよ!終わったらチャイムで呼ぶから指定の場所に集まってね!バーイ!」

 

文句を言う間もなくモノパオは消え、無言の空間が広がった。

ふと横から視線を感じ、前木の方を向くと、前木だけじゃなく、数人が俺の方を見ていた。

 

「み、宮壁くん…どうしよう?」

 

前木の言葉にハッとする。俺は、頼られているらしい。仕方ないことだと思ったが、捜査をするのは俺だって初めてだ。けれど、涙を浮かべて震えながら俯く前木を突き放すことなんてできなかった。

しかし、なんと返していいかわからないのも事実。俺が答えるのをためらった一瞬に、無音の部屋に声が響いた。

 

「誰がやったの?」

 

東城だった。無表情で周りを見渡す。

 

「今名乗ったところで許すことはないけど、少なくとも反省しているとは見なすよ。」

 

「つーか、人殺した時点で名乗るつもりなんてなくね?そんな呼びかけ無駄だと思うけど。」

 

難波もこの中にいるのであろう犯人を睨みつけながらも東城を止めに入る。

 

「…ボクはどんな理由でも犯人を許さない。その選択を後悔させてやる。」

 

そう言いながら桜井の近くにしゃがむ。

 

「何をするんでーすかー?」

 

「このファイルの内容が正しいかどうかの簡単な判断をしようと思って。医者じゃないから専門的なことはできないけど。」

 

「私も手伝おう。」

 

そう言って東城の横に腰を下ろしたのは篠田だった。

 

「ありがとう。お互いの見張りも兼ねてお願いするよ。」

 

東城はさっきの無表情はなんだったのかというほどの笑顔で篠田と作業を始めた。

 

しばらく、この2人の他に動こうとする人はいなかった。

 

桜井の死を受け入れたくないという気持ちと、桜井の死を弔う時間すらくれないのかというモノパオへの怒りだけが燻っていた。

 

正直気は重いし周りの空気も最悪だ。この中に悪魔も裏切り者も犯人もいるなんて状況で平静を保つ方が難しい。

捜査も裁判も棄権できるならしたいくらいだ。

 

だけど、東城と篠田の様子を見て、ようやく重い腰をあげる気になった。

 

俺の経験を、俺の能力を皆は信じてくれている。ここは俺も信じないと失礼だ。

 

 

「…ここは二人に任せて、俺たちもそろそろ…始めるか。」

 

誰にともなく、いや、周りに向かって言ってみる。高堂や安鐘は俯いていた顔をあげ、東城はいつの間にか手袋を持ってきていた。皆がようやくお互いの顔を見合わせる。

 

この中に、犯人はいる。

 

モノパオが殺したとすればモノパオを操っている人がこの中にいるはずだ。

 

緊張でこわばる肩を三笠ががっしりと掴む。

 

「信じあえる部分は信じあうぞ、宮壁、皆。自分はこの手の事は不得手だ。頼りにしてるぞ。自分にできる事があれば手伝う。」

 

「…ああ、ありがとう。」

 

 

 

 

――捜査開始――

 

 

「まずはモノパオファイルの確認からだな。」

 

頼られた以上、ここからは俺が仕切っていくしかない。うまくできるかわからないけど、やれるだけのことはしよう。

生徒手帳の画面には『モノパオファイル1』という文字がでかでかと浮かんでいる。

 

…1?まだコロシアイが続くみたいな言い方だな、腹立たしい。

 

『被害者は桜井美亜。発見場所は教室1。頭部を殴られた事による失血死。死亡推定時刻は昨日の23時頃。』

 

「篠田、東城、この情報は合ってそうか?」

 

「間違いないだろうな。何か固いもので殴られたのだろう。」

 

 

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・・・コトダマ「モノパオファイル1」

 

「これが凶器なのかな…?」

 

前木が指さしたのは桜井の近くに落ちているハンマーだ。とげがついていて明らかに危険なものだ。

 

「このハンマーは…東城、これって東城が倉庫の奥にしまったやつか?」

 

「そうだよ。…どういう事なのか、犯人にはきっちり説明してもらわないといけないね。場合によっては装置の改善も試みるつもりだよ。」

 

…かなり怒ってるな…この話は裁判まで触れない方がよさそうだ。

 

「は?これ超軽くね?見た目的に重そうだったけど。」

 

気づいたら難波が拾っていた。

 

「それ勝手に触っていいのか?」

 

「別にかまわない。東城も私も警察ではないから1回触ったところで何も分からない。」

 

篠田の言葉に難波は安堵のため息をついた。

 

「アタシ的に、もしこれが凶器なら誰でも使えると思う。」

 

 

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・・・コトダマ「小ぶりのハンマー」

 

ふと横を見ると前木が懸命にメモを取っていた。俺も見習おうとしてポケットに手を入れる。

 

「…あ。」

 

取り出そうとしてそこから見えるイラストにドキリと心臓が鳴った。

桜井にもらったメモだ。これをくれた彼女は…もういない。

つい昨日まで動いていた桜井が、目の前で倒れている事が信じられなかった。

 

「桜井さんの無念は、わたくし達がはらすしかありませんのよね…。」

 

涙ぐんでいた安鐘はそっと袖で涙をぬぐい、手を叩いた。

 

「そうこうしている間にも時間は過ぎていますわ。わたくし、何か手掛かりを見つけたいのです!」

 

安鐘の言葉に皆は頷き合う。

 

「検死が終わり次第捜査に協力するけど、皆ほど回れないと思うからよろしく頼むよ。」

 

東城には装置も見てもらわないといけないだろうからな。他の場所は俺達ががんばって捜査しよう。

 

 

桜井にそっと手を合わせて、後の事は二人に頼み、教室を後にした。

 

 

「えっと、宮壁は、これからどうする…?」

 

「各自調べたいところに行ってみてほしい。ただ、単独行動はしない方がいいな。一人で得た情報は複数人で得た情報に比べると信用が下がってしまうし、一応、お互いを監視するのも大事だと思う。」

 

「私、一緒。」

 

俺の袖を引っ張ってきたのは勝卯木だった。え、俺?前木じゃなくて?

 

「…宮壁、おもしろい。…琴奈、宮壁、…交互。」

 

「なんだそのこだわり…。」

 

その後簡単に分けて決まったのが、安鐘と前木と高堂、難波と潜手、三笠と大渡、柳原と端部と牧野、そして俺と勝卯木。

 

とりあえず各々の行きたいところに行く事になった。

 

 

 

□□□

 

 

 

 

「ほわわっわーー!!」

 

「めかぶ!?ちょっと、しっかりして!?」

 

急に横が騒がしいと思ったら難波が潛手を抱きかかえていた。

 

「…えっと、何があったんだ?」

 

「床でつるりんこしちゃったのですー!」

 

「何?滑ったって事?大丈夫?」

 

「えっへへー、難波さんのおかげでー、なんともありませんでしーたー!」

 

「潛手、ちょっと靴の裏を見せてくれないか?」

 

俺の頼みに潛手は靴を脱ぎ、ひっくり返す。

 

「ほい!って、濡れてるですー!」

 

「なんだこれ、水か?」

 

「……ペロ。」

 

?????

勝卯木が床の液体を指で取って舐めた???

どうした????

 

「ら、ら、蘭!???!!!ちょ、アンタ、床に落ちてる液体なんか舐めない方がいいって!」

 

「なにやってるんでーすかー!?って、あ!足床におろしちゃってましたー!靴下が濡れちゃってまーすー!」

 

「……水。」

 

え?正直引いた。

いや引くなんて言わない方がいいし言えないけど!今のは引いてもおかしくないだろ!

絶句していて声が出なかったけど、横で騒いでいる2人を見てやっと落ち着いてきた。

 

「勝卯木!!!汚いからペッ!ペッてしろ!」

 

「…ペッ。……これ…水…。」

 

「そ、そうか…。」

 

今のペッはどう見ても言っただけで水は出せてないだろうな…勝卯木床の水飲んだのか…なんてどうでもいい事が頭をよぎる。

勝卯木の家族は…相当手を焼いたんだろうな…。

えっと、一応水、なんだよな。

 

 

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・・・コトダマ「廊下の床」

 

「難波達はこれからどこに行くんだ?」

 

「んー、アタシらってぶっちゃけ装置の事もよく知らねーしなんにもできそうにないんだよね。」

 

「あ!でもでもー、潛手めかぶは装置を解除してもらった事ありまーすよー!」

 

「あ、そーなんだ?行ってみるっか。じゃあまたー。」

 

2人が立ち去った後、俺達はとりあえず近くにあった教室2に入ってみる事にした。

 

「……机、ずれ…ある…。」

 

その言葉によく見ると机の並びがガタついているような気がする。はっきり分かるほどじゃないけど、机を直しに動かしたみたいなずれ方だな。

 

「ん?ああ、本当だ。後で直さないとな。」

 

勝卯木がうろちょろし始めたので俺も色々見てみるか。とりあえずずれた机を直そうと思って机に手をかけると、何か違和感を感じた。

 

「これ…湿気ているのか?」

 

他の机と触り比べてみると、3つくらいのずれている机が全て一部が湿気ていた。木でできているからなかなか乾かないんだろうな。

 

 

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・・・コトダマ「教室2の机」

 

あ、そうだ。そろそろメモをとらないと。そう思っておそるおそるメモを取り出す。

…ここに桜井の事件の捜査についてメモする時がくるなんて、思いもしなかった。

ふと横を見ると勝卯木がじっとこちらを…正確には俺の手にあるメモ帳を見ていた。

 

「……それ…。」

 

「ああ、桜井に、もらってたんだ…。」

 

「……後で……ほしい。」

 

「後って、これから裁判があるんだぞ?」

 

「裁判、終わる、後…私、もらう。」

 

「そ、そうか。」

 

その裁判に勝つっていう自信はどこからくるんだよ…なんてぼんやり考えていると、勝卯木がしゃがんで何かを凝視していた。

 

「ここ、不自然。」

 

勝卯木の指さした方を見ると一つだけ椅子にも血痕が付いていた。正確に言うと、椅子の脚の部分だ。大半が拭き取られてはいるが溝に入り込んでいたりして、ほんの少しだけ残っている。

 

「本当だ。よく見ないと分からなかったな。ありがとう。」

 

「……感謝、求む。」

 

「ありがとうって俺言わなかったか?」

 

「心……込める。」

 

「ありがとうございました!」

 

勝卯木はドヤ顔の代わりに腰に手をあててふんぞり返った。

ちょっとだけ嬉しそうだけど、相変わらず無表情だな…不思議な人だ。

 

 

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・・・コトダマ「教室2の椅子」

 

あとあるのは掃除用具のロッカーくらいか。試しに開いてみるとメモが落ちてきた。

 

『用具は元に戻しましょう基本中の基本!

・ほうき…2

・ぞうきん…2

・ちりとり…1

・バケツ…1

協力して掃除しましょう。学園長』

 

と書いてある。汚い字だな。適当に中をみてみる。

 

「あれ?」

 

「……雑巾、ない。」

 

メモによると2枚入っていたらしいけど、どこにも見当たらなかった。

 

 

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・・・コトダマ「なくなった雑巾」

 

 

 

□□□

 

 

 

「はあ…落ち着いた…。あれ?宮壁、今度は勝卯木ちゃんとデート?」

 

「牧野…相変わらず元気だな…。」

 

「え?でも牧野さんさっきまで吐いてましたよ?」

 

「ちょっと柳原、言わないでもらっていい?思い出してまた吐きそうだからね?」

 

「…とまあ、こんな感じでまだ何の手掛かりも得ていない訳だ。申し訳ない。」

 

三笠が締めくくってくれた。

 

「牧野、無理はするなよ。」

 

「皆の命がかかってるんだから無理するしかないよねー。まあ、休ませてはもらうよ…元々グロ系が得意じゃなくてね…それでも嫌なのに、よく知った子が死ぬとキツイね。」

 

泣きそうな顔を隠すかのように牧野は右手で両目を隠した。

…桜井。今お前がここにいたら、背中を叩いて励ましてくれたんだろうか…なんて、考えるだけ無駄なんだろうな。

 

「…あ、そうだ、三笠、なんかあったよね。トイレ。」

 

「ああ、そういえば。一番手前のトイレが詰まっておったぞ。事件に関係あるかは分からんが覚えておいてもいいかもしれんな。」

 

「水を流したらいいかと思ったのですが、何も変わりませんでしたね。水があふれるだけでした!」

 

 

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・・・コトダマ「詰まったトイレ」

 

「そうなのか。ありがとう。…って、まさかとは思うけど、廊下の水って柳原達があふれさせたのか…?」

 

「いや?あふれたのは便器の周りだけだからそこまでは広がっていないと思うが?」

 

「あ、そうなのか。」

 

「え?どこか濡れてるんですか?ってわああっ!?」

 

言ったそばから勝卯木を押し倒す形で柳原が盛大に転んだ。

 

「あ、勝卯木さん!?ご、ごめんなさい!痛かったですよね!?」

 

「…痛い、でも、許す。…わざと、違う。」

 

「えへへ、ありがとうございます!」

 

「柳原は気をつけてよね。勝卯木ちゃんに迷惑でしょ。」

 

「…心配、不要。」

 

「あっそ、心配はしてないけど?」

 

「2人とも引き下がらんか…。」

 

三笠が困ったようにため息をついたので急いで勝卯木の背中を押してその場を後にした。

 

 

「全く、なんでそんなに勝卯木は牧野を毛嫌いしてるんだよ…。」

 

「変態。」

 

やっぱりそれが原因かよ!?

と心の中だけでツッコミをしておいて、俺は教室1に戻る事にした。

 

「ああ、宮壁か。丁度終わったところだ。」

 

篠田が立ち上がって手招きしてくれた。よく見ると前木達もいる。

 

「…桜井…。」

 

 

 

遺体の向きが変わり、桜井の顔が見えるようになっていた。寝ているようにも見えるけれど、頭から流れた血がそれを否定していた。

 

「簡単にすませるよ。まず死亡時刻や死因。これらは間違いなさそうだからこのファイルの情報は信用できる。次はこの傷。ハンマーと一致はしている。だけど、完全一致ではない。」

 

「えっと…どういうことだ?」

 

「おそらく2回以上叩いたか別のものでも殴ったか、だね。確実に言えるのはこの1番最後につけられた傷はハンマーのもので間違いないという事だけかな。まあ、歪な傷だって事を覚えておけばいいだろうね。」

 

「…分かった。」

 

 

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・・・コトダマ「桜井の頭部の傷」

 

「宮壁。後はこれを見てほしい。」

 

「ん?それ…擦れてるのか?」

 

篠田が指したのは血だまりだった。よく見ると端の方…入り口に近いところが擦れたようになっている。

 

「出血がひどく、まだ乾いていないところもあったから他の部分は私達が動かして擦れてしまったのだが、ここ

だけは私達が桜井の体を動かす時より前についていた。何かのヒントになればいいが…。」

 

 

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・・・コトダマ「擦れた血痕」

 

なんか横から気配が消えたと思っていたら案の定勝卯木は前木達のところに行っていた。だろうな。

 

「勝卯木はここにいるのか?俺はもう別のところに行くから、またな。」

 

「……まだ。」

 

諦めてさっさと行こうとしたら袖を掴まれた。何か?…ってさっきから俺辛辣になってるな。気をつけよう。

 

「えっと、何かあるのか?」

 

「……おしゃべり、違う。アリバイ。」

 

「あっ、そういえば誰にも聞いてなかったな…。」

 

完全に遊び始めたのかと思っていた。心の中で謝る。

 

「とは言っても、皆は夜時間のアリバイとかあるのか?もしくは何してたとか…。」

 

「わたくしは夜時間の開始とともに寝ましたわ!」

 

「うん。あたしもすぐ寝た。昨日は結構疲れてたし。」

 

「私も…というか、今まで会った皆大体寝てるか個室にいるかなんだよね。」

 

「まあ、俺も何もしてないな。」

 

安鐘、高堂、前木は「だよね」と言わんばかりに顔を見合わせる。じゃあどうして桜井は教室なんかにいたんだ…?

 

「……昨日、夜…食堂…行った。」

 

「何やってるんだ勝卯木は。」

 

「喉、渇いた…時、水、必要。」

 

「え、ええっと、具体的に何時なんだ?」

 

「…10時57分32秒開始、11時8分45秒終了。…人……遭遇、なし…。」

 

「こ、細かいな…。」

 

さすがの記憶力。というか1つ1つの行動がいつの事かを覚えてるのか?恐ろしいな…。

 

 

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・・・コトダマ「勝卯木の証言」

 

 

 

□□□

 

 

 

 

「あれ…?宮壁、1人はダメって言ってなかったっけ…?」

 

「ボクと篠田さんがいるよ。」

 

「なんか、変な距離感だね…。」

 

倉庫に行く途中でぴかぴかのサッカーボールを小脇に抱えた端部と大渡に会った。なぜか2人が俺の数メートル後ろをついてくるせいで変な勘違いをされてしまった。

 

「何も意識していなかった。すまない宮壁。」

 

篠田が小走りでやってきてくれた。

 

「なるほどな。というか端部、その…サッカーボール邪魔じゃないか?」

 

「た、たしかに…!騒ぎがあってびっくりして駆けつけたんだよね…。そのまま捜査になったから、忘れてたんだ…。」

 

「なるほど。もう少し詳しく聞いてもいいか?」

 

「あ、そうだね…。えっと、俺、練習の時は自分の部屋からまっすぐイベントホールに向かうから、教室なんて見てなくって…練習が終わって戻ってきたら、潛手さんが教室から出てきたんだ。その後ちょうど廊下にいた高堂さんと合流して、俺と高堂さんが教室に向かったら柳原と、死んだ桜井さんがいたんだ…。その後は潛手さんに続いて他の皆を呼びに行ったんだよ。」

 

なるほど…。でも、朝に弱いはずの柳原が起きてるなんて珍しいな…。捜査時間に余裕があれば後で話を聞こう、無理なら裁判で聞くしかないな。高堂は端部と同じような情報だろうから大丈夫だろうけど。捜査時間が切れてもいけないからな。

 

 

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・・・コトダマ「端部の証言」

 

「とりあえず戻してきたらどうだ?さすがに裁判に持ち込むのは邪魔すぎると思う。」

 

篠田の言葉に端部は頷いた。うん、それがいいだろうな。

 

「そ、そうだね…!あ、大渡、ついてきてもらっていい…?ご、ごめんね。」

 

「……さっさと行くぞ。」

 

大渡は端部の言う事の大半を無視してすたすたと歩きだした。

 

「大渡はアリバイとかないか?」

 

「ねぇよ、んなもん。」

 

吐き捨てるように言って去っていった大渡を端部が慌てて追いかける。

…そういえば、大渡が桜井以外の誰かといるのを見たのは初めてな気がするな…。

 

また襲ってきた喪失感を振り払い、倉庫へと向かった。

 

 

 

□□□

 

 

 

 

「ゆうまきゅん!?会いに来てくれたの!?う~れ~し~い~!」

 

「キミに用はないよ。」

 

そうなると思った。潛手ががっくりと肩を落とす難波の背中をポンポンと叩くと、難波は涙目で潛手に抱きついた。元気そうでなによりだ。

 

「てか装置の奥に入る道具がねーからめかぶとずっとぼけーっとしてたわ。食堂見てもなんもなかったし。ごめん。」

 

「いや、それは仕方ないだろ。あ、じゃあ食堂はもう見なくていいんだな。」

 

「あ、そーいえばー!みなさんに言いたかった事があるんでーすよー!潛手めかぶが桜井さんを見つけた時と、みなさんが集まった時で少し机が動いてたのでーすー!」

 

「つまり、向きが変わっていたという事か?」

 

「篠田さんの言う通りですー!今考えたらおかしいなーと思ってでーすねー…。」

 

 

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・・・コトダマ「潛手の証言」

 

「ええっと、あ、ちょうどいいところに柳原くん達が。ちょっと手伝ってもらえるかな?」

 

「うわ。めっちゃ人多いじゃん。柳原は呼ばれたから…三笠と潛手ちゃんと篠田ちゃん帰ろうよ!」

 

「ほよよ、いいんでーすかー?」

 

「ああ、まだ見ていない部屋もあるだろうからそっちに行ってもらった方がいいかもな。ありがとう牧野。」

 

「どういたしまして。じゃあねー。」

 

牧野の提案によりごった返していた倉庫は落ち着いた。難波を残したのは東城がいるからか。なんだかんだで気が利くんだよな…。

東城の持ってきた棒で装置の針を押そうとして…手が止まった。

 

「なんだあれ、針に何かついてる。」

 

ひとまず針を押して装置の奥に入り、針をよく見てみる。よく分からないので取ってみた。

 

「なんだこれ?」

 

黒いゴムのような物体だ。針に刺さって千切れたように見える。触るとボロボロしていてよく分からない。

 

「誰か心当たりはあるか?」

 

俺の質問に3人は首を横に振った。よく分からないけど、きっと事件に関係しているに違いない。

 

 

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・・・コトダマ「黒い欠片」

 

「これ、針を押したままにできないのか?」

 

「押したままでも30秒間しか効果はないよ。後はこれだね。」

 

俺の腕が疲れていくのを気にも留めずに東城はノートを取り出した。めんどくさい装置だな。

というより、犯人はどうやってこの装置を突破したんだ…?装置の作りも思い出しておこう。

 

 

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・・・コトダマ「装置の仕組み」

 

「東城さん、それはなんですか?」

 

「ここに入れたもの、後は倉庫にあるものの個数把握メモだよ。タオルとかボールとか抹茶の粉とか、使ったものはある程度減ってるけど特に不審なものはないね。この装置より奥にあるもので何が減っているのかを調べていくよ。」

 

30秒入っては出てくる東城がもどかしいので皆で手分けすることになった。

 

「う、うう…こんなに重いもの、持てません…!」

 

「柳原力なさすぎじゃね?わざと?」

 

「わざと足を引っ張るなんてバカみたいなことしません!これが重すぎるだけですよ!」

 

柳原が持ち上げる前に30秒がきそうだったので一旦出る。そしてもう一度入ってから難波が柳原の持てなかった荷物を調べ始めた。

 

「うっわ、アタシが持ってたのよりだいぶ軽いんですけど。」

 

「え!難波さんは強いんですね!筋肉ムキムキなんですか?腕がゴリラなんですか?」

 

「柳原、後でちょっとお話しよっか。」

 

「2人とも…特に柳原。手を動かしてくれ…。」

 

そんなこんなで一通りメモの個数と確認したが、減ったものはハンマーだけのようだ。

 

「ざんねん、ムダでしたね!」

 

「減ったものがハンマーのみと確定させる事ができたのだからムダではないよ。」

 

「そうですか…?」

 

未だ納得のいっていない柳原は放っておこう。

 

「や!元気してる!?あとちょっとで捜査時間が終わるパオ!がんばってねって言いに来てあげたパオ!」

 

「うるさい。元気なわけねーだろ。」

 

難波が不機嫌そうに突然現れたモノパオの首を掴もうとした。

が、モノパオは動かなかった。

 

「は!?え、モノパオってこんな重いの!?」

 

「新しいボクくんは重いパオ!東城くんに放り投げられたからあの後すぐに重くしたパオ!」

 

「あ、本当だ。重くなってる。」

 

東城も持ち上げようとしてすぐに諦めた。俺も持とうとしたが持ち上げるのがやっとって感じの重さだ。

 

「本当に時間のムダですね!」

 

柳原がいつものテンションで言うからモノパオはすっかり元気をなくしたようだ。

 

「え、ええ…そんな笑顔で言わないでよ…傷ついたパオ…。」

 

そのままとぼとぼと倉庫から出て行った。

 

「そういえば東城、あの…他の人が中のものを取りたい時ってどうしてるんだ?」

 

「ボクに言ってくれたらついていっているよ。ちなみに今までついていった人についてもメモは取っているよ。」

 

 

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・・・コトダマ「装置の解除について」

 

「じゃあそのメンバーも言いなよ。ゆうまきゅんったら何もったいぶってんの?あ、もしかして好きなものは最後に食べる派?」

 

「えっと、三笠くん、潛手さん、端部くんだね。安鐘さんは1度棒を借りに来たよ。」

 

さすがに、ここまで綺麗な完全無視をしなくてもいいんじゃ…。いくら今話す事じゃないとはいえ、ちょっとかわいそうだ。

 

 

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・・・コトダマ「装置を解除したメンバー」

 

 

 

□□□

 

 

 

 

『ぴろりろりろりろ!捜査終わりだよ!いえーい!』

 

ふざけたアナウンスだったけれど、そのおふざけですら、俺達の空気を冷たくするには十分な言葉だった。

 

「…アタシ、美亜とはこの中なら結構喋った方だからさ、許せそうにねーわ。美亜を殺す理由がない。勿論、この中の全員殺されていいような人じゃないけど。」

 

難波が真剣な顔で呟く。難波が桜井達に武勇伝を聞かせていたのは、つい最近の事だった。

 

実を言うと、俺はまだ桜井が死んだ事を信じられていない。正確に言うと実感がわかないんだ。

 

だって、昨日まであんなに元気がよかったのに。急に目の前で倒れてるのを見つけて、死んでますなんて言われても、俺には理解できない。

 

ましてや、この中の誰かに殺されたなんて。意味が分からない。

 

自分の鼓動が早くなっているのだけを感じながら俺達は誰も話さずに倉庫を出た。

 

『はい!ミンナ、温室に行くのに使ったエレベーターに来てね!そこから地下に行くと裁判場があるパオ!』

 

誰よりも早くエレベーターの前に着いた俺達は皆が集まるまで待った。

 

 

 

□□□

 

 

 

 

エレベーターが開くのを待ちながらその空気を破るように皆が声を出していく。

 

「ボクも犯人を絶対に許さない。とりあえず全てを白状してもらって、いかにその行為が愚かなものなのか、きちんと説明してあげないといけないね。どうやら犯人はここで殺人を犯す事が間違いだという事にも気づかない人間のようだから。できる事なら、キミ達が『そう』でない事を願いたいけれどね。」

 

不気味な言葉が節々ににじみ出ている人。

 

「その、おれ…役に立てるとは思えませんが、がんばります!桜井さんのために、おれ、がんばりたいです!」

 

緊張しながらも犯人を突き止めようと決意をする人。

 

「よし。過度な緊張や不安、焦りは禁物だ。自分達にできるだけの事をしよう。生きる為に。」

 

卓越した精神で少しでも皆を落ち着かせようとする人。

 

「……。」

 

相変わらず口を開かない、桜井と1番関わっていたであろう人。

 

気づけば全員が揃っていた。

 

 

 

俺がそれを認識したほぼ同時にエレベーターが開く。

 

「じゃあ、ミンナのっちゃってー!」

 

中からモノパオが手招きしている。

俺は誰かに押されて無理矢理エレベーターの奥に押し込まれた。

 

「宮壁。誰が犯人か目星ついてるの?」

 

こそこそと、かろうじて俺が聞こえるくらいの声で牧野が耳元でささやく。

 

「まだついていない。」

 

「犯人かはともかく、表情もしくは言動が怪しい人、教えてあげよっか。」

 

「…どうして俺に?」

 

「裁判慣れしてそう。」

 

「そんな嫌な慣れ、まっぴらだ。…一応聞くよ。」

 

「勝卯木ちゃん、篠田ちゃん、安鐘ちゃん、大渡、端部、柳原。このあたりは不審だね。あと宮壁。」

 

「は?」

 

え、俺?

 

「お前自分で気づいてるか分かんないけど、全然悲しそうな顔してないよ。」

 

「…え?」

 

思わず自分の顔を触る。そんなまさか。

 

「じゃ、そんな訳で。宮壁からしたら俺も怪しいだろうし犯人候補に入れておきなよ。」

 

牧野はそれだけ言うと俺の方には見向きもしなくなった。同時にエレベーターが目的の階についた事を知らせ、ゆっくりと開いた。

 

 

 

□□□

 

 

 

 

「なんだ、ここ…。」

 

思わず声が漏れる。

 

「これが裁判場…?」

 

前木の不安そうな声を聞いてモノパオは手を叩いた。

 

「そうだよ!ミンナいらっしゃーい!ずーっと待ってたパオ!」

 

中央に広がるのは円形に並んだ証言台。少し凝った装飾も施されており不気味な空気を醸し出していた。

モノパオはその円から少し外れたところにある一際背の高いプールの監督席のような台座に向かって走るとちょこんと座った。

 

「空いてるところに適当にいってね!」

 

その言葉に改めて証言台を見渡すと一つの席に何かがあるのを見つけた。

 

「なんだこれ…。」

 

桜井のモノクロの顔写真に血の色で大きなバツ印がついたものが、おそらく桜井の頭の高さに合わせて立てられていた。はっきり言って趣味が悪い。

 

「それ?どう見ても遺影だよね!死んだ人の事を忘れないためにボクくんがわざわざ作ってあげたんだよっ!」

 

「余計なお世話だよ!私たちが美亜ちゃんの事を忘れるなんてそんな訳、」

 

「あるかもしれないでしょ?もし犯人をちゃんと当てられたらこの先長い長~い生活が待ってるんだからさ!いずれはミンナよぼよぼになって、ここは老人ホームになってしまうんだろうね…やだなあ!大変そう!」

 

「縁起でもないこと言うなっつってんの!」

 

難波の睨みに対してもモノパオはお構いなしだ。くるくると踊って皆が席につくのを急かしている。

不安な顔を浮かべながら、皆思い思いの席に立つ。

全員が席についてから、俺は改めて周りを見渡した。

 

心臓が緊張で痛いくらいにドキドキしている。それは皆同じだろう。視線はちらちらと合っても、誰1人として口を開かなかった。胸に手をあてて無理矢理気持ちを落ち着けさせる。

 

 

 

 

 

ここから最低でもまた1人、犠牲者が出る。

 

 

 

 

 

周りも見渡しても犯人なんて分かるわけじゃない。

 

 

 

 

 

 

無理矢理命を懸けさせられてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも俺は、自分を信じて最良の判断を下してみせる。

 

 

 

 

桜井美亜。お前を殺した人間は、俺達が突き止めてみせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが俺にできるたった1つの弔いで、たった1つの生存方法だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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