簡単な事件だったので楽に当てられたと思います。
今回は挿絵も凝ってみましたので、ぜひ挿絵表示アリの状態にしてゲームっぽく楽しんでいただけたらと思います。
裁判場が静まり返ったのを確認して、モノパオが気味の悪い笑い声をあげる。
「いぴぴ…ミンナ立ち位置は決まったかな?ではでは、初めて学級裁判、はじまりはじまり~!」
桜井を殺した犯人はこの中にいる。
俺達も捜査なんて不慣れだけど、それは犯人だって同じはずだ。穴を見つけていけばいい。
桜井の無念を晴らす事ができるのは、俺達しかいないんだ。
□□□学級裁判 開廷!□□□
モノパオ「では最初に、学級裁判のルールについて再確認しておくよ!学級裁判では『誰が犯人か?』について議論してもらいます!」
モノパオ「犯人、つまりクロを当てられたらクロだけがオシオキ、その時クロが悪魔だったらミンナは外に出られます!反対にクロを外してしまうとクロは外に出られるけどクロ以外のミンナがオシオキされてしまうパオ~!」
モノパオ「簡単に言うと、この裁判が終わるとここにいる人のうち少なくとも1人は死んじゃうってことだね!ミンナ、かわいい自分を守るためにせいぜいがんばってねっ!ボクくんも応援してるパオ!」
モノパオはそれきり黙ってしまった…。ここからは俺達でやりたいようににやれってことか。
潛手「えーとー、何から話せばいいんでーすかーねー?」
牧野「もうクロが分かった!っていう人とかいないの?」
三笠「そんなやつがいればもうとっくに言っておると思うが。」
難波「とりあえずは情報共有じゃねーの?アタシ捜査時間に行ってないところ結構あるし。」
安鐘「わたくしもあまり手掛かりを掴めませんでしたので、皆さんの話が聞きたいですわね…。」
宮壁「じゃあまずは、モノパオがくれたファイルを見ながら、状況を確認してみないか?」
周りを見渡す。特に反対の人はいないようだ。1つ1つを確実にしていこう…!
―議論開始―
高堂「この…モノパオファイルだっけ?これを見れば情報が載ってるんだよね。」
東城「ここに間違った情報は載っていないよ。ボクと篠田さんが断言する。」
前木「えっと、☆美亜ちゃんが殺されたんだよね…。」
安鐘「☆教室1で倒れていましたわね…。」
端部「頭を殴られたのが死因、って書いてあったよね。」
潛手「ということーはー、桜井さんは頭をばっかーんと叩かれて☆一瞬で死んでしまったんです―かー?」
▼[桜井の頭部の傷]→『一瞬で死んでしまった』
宮壁「潜手、それは違うんだ。」
潛手「はへー?どういうことですーかー?」
宮壁「2人の検死の結果から、桜井は2回叩かれていた事が分かったんだ。」
潛手「2回…桜井さん…そうだったんですーねー…。」
三笠「潛手、無理はするなよ。」
潛手「三笠さんー、ありがとうございまーすー…。」
よかった。どうにか潜手の元気は戻りそうだ。
篠田「検死で気になった事があった。東城、今共有するべきだと思うのだが。」
東城「…ぐぅ………ん?何?」
高堂「あんた今寝てた…?」
東城「そんなまさか。うん、篠田さんの言う通りだよ。桜井さんの頭の傷が歪だったんだ。」
前木「うーん、美亜ちゃんの近くに落ちていたハンマーは変な形だったから、歪な傷になると思うけど…そういう意味じゃないのかな?」
宮壁「ああ、どうやらハンマーと傷口が完全に一致はしなかったらしい。そうだったよな?」
東城「わざわざボクに確認してくれなくても間違っていたら指摘するよ。その通り。」
篠田「2回叩いたせいとも考えてよさそうではあるが…私達は検死の素人だ。理由は不明だと思ってほしい。」
東城「理由はさっぱり分からないからボクは放棄しておくよ。皆で頑張って考えてほしいね。」
東城はそのまま証言台の手すりに体重をかけ、休み始めたようだ…。危機感なさすぎるだろ。捜査からずっと機嫌も悪そうだし仕方ない…で済ませていいのか…?
難波「は?ゆうまきゅん推理できねーの?」
東城「探偵じゃああるまいし、なんでもできると思わないでほしいな。そこはもっと頭の柔軟な人が取り組めばいいと思うよ。」
三笠「あ、頭が硬いとは思っていたのだな…。ゴホン、死因の次は何について確認するのがいいんだ?」
難波「美亜の周りの状況とかは?…アタシ、ほとんど見られてないし…。」
三笠「ふむ、自分も別のところにいたからな…。現場にあったものの復習からするべきか?」
よし、少しだけだけど進んだな。現場か…。気になった事があったら積極的に指摘していこう。
―議論開始―
難波「現場を捜査してたのって誰?」
前木「私達は結局ほとんど現場にいたよ。光ちゃんと鈴華ちゃんと一緒にいたんだ。」
篠田「後は私と東城だな。けれど前木達の方が長くいたはずだ。何かあったか?」
安鐘「ええと…気になった事といえば…☆机が一部ガタガタしていた事でしょうか…?」
端部「ガタガタって…、あの、ずれてた机の事…?」
勝卯木「うん……ずれてた……。」
高堂「あれって☆犯人と美亜ちゃんがもめた時にずれたの?」
▼[潜手の証言]→『犯人と美亜ちゃんがもめた時にずれた』
宮壁「それについて説明できる人がいるんだ。」
宮壁「潛手、お前は言っていたよな?自分が桜井を発見した時と皆が集まった時で机の向きが違っていたって。」
潛手「は、はいー!そうでーすよー!」
難波「そんな細かいところ、よく気づくね。めかぶすげーじゃん!」
潛手「え、えへへっ、そうですかーねー?でも、潜手めかぶだけでは自信がなくなってきちゃいましたー…。」
難波「マジか…でも変わってなかったらそんな事思わねーし、自信もっていいんじゃね?」
宮壁「潛手の証言が正しいのかどうか分かる人は他にもいる。」
―コトダマ提示―
▼[端部の証言]
宮壁「端部、高堂、柳原。潜手の他にこの3人は俺達よりも先に桜井を見ている。3人の中で机に違和感を覚えた人はいなかったのか?」
柳原「ごめんなさい…びっくりして、それどころじゃありませんでした…。」
高堂「はっきりとは言えないけど…たぶん動いてた。」
端部「そう言われてみれば…1つだけ変わってた気がする…。」
宮壁「2人の同意が得られればこれは確定情報でいいはずだ。」
牧野「じゃあ柳原が動かしたんでしょ。」
宮壁「…!」
高堂「なんで柳原が机を動かす必要があるの?」
牧野「なんかやましいものでもあったんじゃない?」
柳原「ま、待ってください!なんでそうなるんですか!?」
話が脱線…はしてないけど、おかしい方向に進んでないか?
まさか牧野…柳原を怪しんでいるのか?裁判前にも似たような事を言っていた。
指摘できるところがあれば積極的に発言していかないと…。
―議論開始―
宮壁「何があったのか教えてほしいだけなんだ。誰も問い詰めようなんて思っていない。」
柳原「じ、実は…☆驚いたときに足をぶつけてしまったんです。だから、机が動いたなら、その時だと思います…。」
牧野「なんですぐに言わなかったの?」
柳原「疑われると思って…。」
牧野「本当は☆いい言い訳を考えてたんじゃないの?」
勝卯木「柳原…犯人…?」
柳原「違います!おれはなにもしていません!」
三笠「柳原は1人だったのか…。ふむ、誰か☆柳原の行動を証明できる物はないのか?」
柳原「え、えっと、みなさん…?」
東城「じゃあ後は殺害方法とボクの装置を解除した手順を探るだけになりそうだね。」
難波「は?もう決定なわけ?決定打なさすぎじゃね?」
東城「事実にしてはできすぎじゃないかな。ボクとしては犯罪者と同じ空気を吸うのはそろそろやめにしたいからね。ここを軸に他の証拠を揃えていこう。」
前木「い、☆いくらなんでも早いと思うよ?そうだ、牧野くんなら今のが嘘かどうかなんて簡単にわかるよね!?それで判断してもらえば…。」
牧野「挙動不審って事は分かるけど、それが焦りからくるものなのか嘘をついたからなのかは微妙。本当の事を言っていると断定はできないね。可能性は五分五分ってところかな。」
前木「そ、そんな…。」
柳原「ま、待ってください!どうしておれがこんなに疑われないといけないんですか!?」
待ってくれ、話の流れが速すぎてどこに賛成できそうな意見があったのか分からなかった…!
だ、誰か、ちゃんと聞こえた人はいないのか…?
『支援』
▼[擦れた血痕] →『柳原の行動を証明できる物』
篠田「これでどうだろうか。」
牧野「血痕?」
篠田「ああ。桜井の周りの血だまりの一部が擦れていた。これは柳原がつけたものではないのか?」
柳原「あ!そうです!」
篠田「大きさもちょうど手の平程度だ。無論、これだけで柳原を容疑者から外せと言っている訳ではない。ただ、『保留』というのも手だと思う。」
宮壁「篠田の言う通りだ。判断するのはまだ早い。」
安鐘「で、ですが…宮壁さん達は他に怪しい人の検討がついていらっしゃるのですか?」
宮壁「犯人は最初に決めるものじゃない。犯行の流れが判明した後でそれが可能だった人物をわり出していく方法でもいいはずだし、何よりこの議論には俺達全員の命がかかっているんだ。もっと慎重にいって当然だと思う。」
高堂「あたしは瞳ちゃん達に賛成。まだわかってない事が多すぎる。」
牧野「えー!高堂ちゃんがそういうなら俺も賛成ー!」
こ、こいつ…!一瞬で意見変えて、誰のせいでこの話になったと思ってるんだ…!
三笠「ふむ、それでは桜井の周りの状況について再度話し合えばよいのだな。」
宮壁「ああ。とりあえず現場について話していこう。」
篠田のおかげでどうにか話を戻せたみたいだ。脱線していて忘れかけていたけどまだ何もわかっていない。
裁判に制限時間があるなんて話は聞いていないけど、モノパオの事だし話が進まなくなったらそこで打ち切り、なんて事もあるかもしれない。ここは議論が止まりそうになったら俺から話題を次々提供していくべきだろうな。
前木「他に何を話せばいいんだろう…?美亜ちゃんの周りについては大体話終わったよね?」
大渡「…さっさと凶器の話をすればいいだろ。」
高堂「大渡…もしかしてだけど初めて喋った…?」
大渡「うるせぇ。」
高堂「…もう少し裁判に参加するべきだと思うけど。」
大渡「いつ発言しようが俺の勝手だ。校則に『発言しなくてはならない』なんてのはねぇだろ。」
牧野「もー!話をそらしてどうするの!高堂ちゃんも、こんな奴にかまう必要なんてないからね!俺達で解決しちゃおうよ!」
高堂「あんたも脱線させてなかった?」
牧野「何の事?」
高堂「……なんでもない。」
勝卯木「大渡…除霊……幽霊、見える……犯人、聞く。」
柳原「な、なるほど!大渡さんに幽霊とおしゃべりしてもらって犯人を当ててしまえばいいんですよ!」
勝卯木「…幽霊、一発攻略。……できる…?」
大渡「いい加減にしろ。俺は幽霊とは話さねぇ。」
勝卯木「けち…。」
三笠「ゴ、ゴホン!えっと…話が脱線してないか?そろそろ真面目に考えないといけないと思うのだが…。」
謎のやり取りが続いて本題を忘れかけていたけど、忘れていいものじゃなかった!
とりあえず大渡に意見を求めるだけ無駄だって事は分かったな。よし。
端部「えっと…大渡の言葉を借りる形になるんだけど…凶器について話すのはどう、かな…?」
宮壁「ああ、それでいいと思う。」
―議論開始―
前木「一番凶器らしいのは美亜ちゃんの近くに落ちてたよね。」
難波「ああ、あのハンマーの事?血もついてたし。」
三笠「ふむ、凶器はあの近くに落ちていたハンマーで間違いないのか?」
端部「俺は…そうだと思っていたけど…。」
東城「篠田さんとボクがこの局面で嘘を言うと思っているのかな?間違いなく、☆部分的に一致していたよ。」
三笠「いや、お主達を疑ってなどはいない。」
安鐘「わたくしはそうだと思いますわ!あのハンマーは痛そうでしたし、あれを☆振り切れるだけの力があれば桜井さんを…殺す…事は、できたと思いますの。」
柳原「おれも、血がついていたなら間違いないと思います!」
▼[小ぶりのハンマー]→『振り切れるだけの力があれば』
宮壁「いや、そうとは限らないんだ。」
安鐘「宮壁さん?どういう事ですの?」
宮壁「あのハンマーは見た目よりずっと軽く作られているんだ。確か難波が持っていたはずだ。」
難波「ああ、ちゃんと全員には言ってなかったっけ。勝手に持ってみたんだけど、すげー軽かった。あれを振り下ろすくらいならそんなに力はいらないと思う。」
柳原「でも、難波さんは怪力ですし…案外そんなことないかもしれませんよ?」
難波「柳原に分かりやすく言うとアンタが持ち運ぼうとしていた倉庫のケースは比じゃないくらい軽い。」
柳原「じゃあすごく軽いんですね!」
難波「だからそう言ってるんだって…怪力とか言わないでくれる…?」
前木「あはは…。そういえば聞きたかったんだけど、三笠くんは何で凶器について納得していない感じだったの?」
三笠「いや、自分はさっきの東城達の発言が気になってな…。あのハンマーなら振り下ろすスピードにもよるかもしれぬが、1回で殺せるような気がする。わざわざ2回叩いた理由が分からなくてな。」
篠田「そうだな。最後…2回目につけられた傷はハンマーによるものだと断定できるのだが、1回目の傷と位置が被っているのもあって断定できなくてな、だから『歪』という言い方をしていたのだ。」
東城「うん。ここが特定できれば犯人像に近づくかもしれないね。」
前木「そもそも他に凶器になりそうなものってあるのかな?」
前木の言葉に裁判場に沈黙が広がる。そうだよな…他に血がついてたものなんてどこにも…。
…あれ?何かそれに当てはまりそうな物を見た事があるような…?
勝卯木「……凶器……可能性…ある。……見た。教室2。」
勝卯木の言葉で確信した。あれがもう1つの凶器なんだ…!
―コトダマ提示―
▼[教室2の椅子]
宮壁「教室2に、脚部分に血の付いた椅子があった。これが凶器の可能性が高い。」
勝卯木「宮壁…発言……パクリ…。」
宮壁「え!?そんなつもりじゃなかったんだけど…ごめん。」
じゃあ勝卯木が明言すればよかったのに…とは言わないでおこう…。
大渡「あ?血の付いた椅子なんてあったか?」
端部「た、確かに…俺と大渡も教室2に入ったけど…そんな椅子はなかったよ。」
宮壁「椅子といってもたくさんついていたわけじゃなかったんだ。脚の溝の部分。ここに少しだけ残っていたんだ。」
難波「は?それで殴ったんなら普通もっとたくさん血がついてんじゃねーの?」
三笠「だが宮壁達がそれを凶器と予測しているなら血を取る方法も思いついているという事でよいのだな?よければ説明してほしい。」
宮壁「ああ、わかった。」
―論問論答 開始―
『Q1 血を取る方法は?』
A. 拭いた
B. 洗った
C. 舐めた
→ A
『Q2 拭くのに使った道具は?』
A.自身の服
B.雑巾
C.桜井の服
→ B
『Q3 雑巾はどこから調達した?』
A.自身の個室
B.教室1
C.教室2
→ C
『Q LASTこれを証明するコトダマは?』
→[なくなった雑巾]
宮壁「これで筋道が通る!」
宮壁「犯人は教室2のロッカーにある雑巾を使って血を拭いたはずだ。現にロッカーの中の雑巾がなくなっていた。しかも、椅子だけを拭いたわけではないはずだ。」
―コトダマ提示―
▼[教室2の机]
宮壁「机もいくつか湿気ていた。これは犯人が桜井を椅子で殴った時に机に飛び散った血を、濡らした雑巾を使って拭いたからに違いない。」
『反論』
▼[廊下の床]
難波「その推理で本当にいいわけ?」
宮壁「な、難波?」
難波「たしかに雑巾を濡らして使ったのは間違いないと思う。アタシの予想だとトイレで濡らしたんだろうね。だけどそれならこの廊下はどうして『教室1とトイレの間』が濡れてる事になんの?机も椅子も教室2にあるものでしょ?それなら普通は『教室2とトイレの間』が濡れるんじゃねーの?」
宮壁「そ、それは…!」
難波「それとも、教室1の中に濡らされたものでもあった?そもそも、美亜は教室1にいるのに血のついてる机や椅子が教室2にあるのがおかしくね?」
確かに難波の言う通りだ…。
でも待てよ、椅子を素早く桜井の頭上まで振り上げてそのまま振り下ろして殴ったならそこそこの力がいるはずだ。椅子が凶器だと分かれば犯人像が絞られてしまう。つまり、犯人は…。
A.桜井を動かした
B.机と椅子を動かした
C.ハンマーを移動させた
→ B
宮壁「犯人が机や椅子を動かしたのかもしれない。…桜井の近くに血の付いた椅子があれば、すぐに椅子が凶器だとバレてしまうから。」
難波「あー、なるほど。それならまあ納得はできるわ。」
前木「うーん、それだけでいいのかな?ちょっと疑問が残るんだよね。」
宮壁「疑問?教えてもらっていいか?」
前木「う、うん!」
とりあえず前木の疑問点を聞いてみよう…!
―議論開始―
前木「確かに椅子は運ぶべきだとおもうんだけど、なんで机まで運ぶ必要があったのかな?大変だと思うんだよね。」
宮壁「確かに…3つくらいだったけど、運ぶのは椅子だけでもいいのか…。」
端部「もしかして、☆机も凶器だったとか…?」
三笠「いや、それはないんじゃないか?とは言っても証拠などは持っておらんがな…。」
潜手「ではではー、桜井さんが☆本当は教室2で殺されてしまった…というのはありますかーねー?」
篠田「それだと廊下の水が教室1に続いていた理由が分からないぞ…?」
潜手「そ、そこは潛手めかぶも分かりませーん!ううー、頭がぐちゃぐちゃでーすー!」
潜手の言う事は間違っている気がするけど篠田の言う廊下の水以外に、もっと確実な根拠はないのか…?
『支援』
▼[モノパオファイル1]→【本当は教室2で殺されてしまった】
牧野「ここは鋭い俺に任せなよ!」
前木「ま、牧野くんは、何か知ってるの?」
宮壁「ファイルがどうかしたのか?」
牧野「潛手ちゃんは桜井ちゃんが殺されたのは本当は教室2なんじゃないかって疑ってるんだよね。そうでもないと椅子や机を教室1から運ぶ理由がないから。」
潛手「そ、そうですー!」
牧野「大丈夫。説明はしてくれるはずだよ、モノパオがね。モノパオ、質問していいかな。」
端部「モノパオが、説明してくれるの…?」
モノパオ「すやすやすやぐーぐーすやすや…。」
牧野「…えっと、ふざけないでくれる?」
モノパオ「ハッ!何の用パオ!」
高堂「あんたも寝るんだ…。」
牧野「高堂ちゃんナイスツッコミ!さすが!」
高堂「ごめんだけどあんたもふざけないでくれる?」
牧野「コホン。…このモノパオファイルにある『場所は教室1』って、具体的に☆何の場所を説明しているのか教えてよ。」
モノパオ「質問じゃなくて命令になってるんだけど!?とまあそれは水に流してあげよう。えーっと?ああ、それね!文字が足りなかったパオ!正確には☆殺害場所が教室1、パオ!」
…!足りなかったで済まされる問題じゃないぞ…!さっきまでの時間はなんだったんだ!
宮壁「よく思いついたな…。」
牧野「まあね。普通なら『発見場所』、とかそういう感じで書きそうだなーって思って。」
宮壁「それもそうだな。ひとまずこれで桜井の殺された場所は教室1.つまり教室1から椅子や机を運んだって事で合ってるんだ。」
前木「だとしたらどうして机を動かしたんだろう?」
宮壁「…もしかしたら犯人は教室2を細かく捜査されると思っていなかったからかもしれない。だから凶器ごと怪しいものは全て運んだとか…。廊下に水を落とした事にも気づいていなかった可能性もある。」
勝卯木「…違う。」
宮壁「え?」
勝卯木「…机、番号、ある…。教室1…1番から30番…教室2…31番から60番…。番号、違う…怪しまれる…セット、大事…。」
宮壁「そうだったのか!?何も言ってなかったじゃないか!」
勝卯木「議論、不必要…思った……。」
宮壁「ご、ごめん…。」
難波「はー、まあいろいろ分かってきたんじゃね?犯人は椅子を振り上げられる人って事でしょ?」
宮壁「そうだな。それなら柳原は犯人じゃないだろう。その…何人かは知ってると思うが、柳原はかなり非力だ。」
東城「そういえばそうだったね。まあ椅子が持ち上げられるかどうかは不明だしまだ犯人候補から外すには早いと思うけれど。」
宮壁「…別にすぐに疑うのをやめろとは言ってない。」
安鐘「あの…次はわたくしから質問をさせていただきたいのですわ。よろしいでしょうか?」
宮壁「ああ。なんだ?」
安鐘「犯人さんは雑巾をどこで処分したんですの?雑巾を洗う手間がなかったからロッカーからなくなっているんでしょうし、そうであればどこかに捨てたはずですわ!」
たしかに…次はそれについて話してみよう。
―議論開始―
安鐘「雑巾をどこで処分したのか…☆教室1にはありませんでしたわよ!」
柳原「お、おれも見てないです!」
難波「☆倉庫に雑巾はあった気がするけど…別に濡れてはなかった。」
東城「もし血なんてついた雑巾があれば見落とす事はないだろうね。」
潛手「食堂あたりも見ましたが―…特に変わったものはありませんでしーたー!」
端部「個室が並んでるところは見たけど…どこにも、落ちてなかったよ…。」
三笠「…☆トイレじゃないか?」
…!きっとあの人の発言で間違いない!
▼[詰まったトイレ]→【トイレ】
宮壁「それに賛成する!」
宮壁「三笠の言う通り、俺もトイレだと思う。」
難波「トイレに落ちてたの?」
宮壁「男子トイレのうち1つが詰まって使えなくなっていたらしいんだ。」
三笠「このタイミングで詰まったとしたなら、もしかしたらと思ったが…合っていたようだな。」
高堂「詰まってたトイレって、どっちだったの?」
三笠「…男子トイレだったな。そこから考えるなら犯人は男という事になる。」
高堂「水を廊下にこぼしてる事にも気づかないほど焦ってたなら思わず自分の性別の方に行ってもおかしくないよね…もちろん、断定はできないだろうけど。」
三笠「いや…女子が椅子を凶器にするのもおかしな話だ。」
柳原「あ、でも難波さんならできそうですよ!怪力だったんです!」
難波「分かった、柳原、容疑者に入れてくれていいから怪力はやめろ。」
柳原「はい!力持ちなんです!」
難波「…うん、ありがと。…それはともかく、じゃあなんで犯人はハンマーも凶器にしてんの?用意する意味あった?」
宮壁「可能性があるとすれば…。」
『Q ハンマーを使った理由は?複数選べ。』
A.凶器を誤認させるため
B.使いたくなったから
C.ハンマーが軽いから
→ A,C
宮壁「これだ!」
難波「凶器の誤認…じゃあやっぱり椅子だとバレたくなかったからって事か。」
宮壁「ついでに言ってしまうとハンマーは誰にでも持てそうな重さだ。それなら全員に扱えるからより犯人像を広げられると思ったのかもしれない。」
東城「つまり現段階で犯人は力のある男という事になるよね。ここから外れる可能性があるのは今のところ柳原くんくらいか。まだまだ絞り切れないね。ここで聞いたところで皆非力だと答えそうだけれど。」
篠田「ところで東城、あの凶器…ハンマーは倉庫にあったもので間違いないのだな?」
東城「そうだよ。それを聞くという事はいよいよ入手方法について推理するという事だね。ボクも気になっているから早く解き明かしてほしいね。」
端部「と、東城も考えたらいいんじゃないかな…?その、東城が作ったんだし、一番詳しいと思うんだけど…。」
東城「ボクは明らかになった事以外を考察するのは苦手だから、そこは皆に任せるというのはダメな事かな?役に立てそうにない人が余計な口を挟むのはよくない事だと思うね。」
三笠「こ、ここまでくると清々しいな。」
東城「ちなみに昨日は棒を貸したり誰かの付き添いに行ったりはしていないよ。昨日モノパオから悪魔についての情報をもらう前に倉庫を確認した時は中の物で減ったものはなかった。つまり犯人は間違いなく昨日の夕食後に装置を解除してハンマーを手に入れたんだ。」
高堂「あのうるさいアラームとかは鳴らなかったの?犯人が装置を解除したとは言い切れないし。」
東城「いいや、聞こえていないね。寝てしまったけれど流石にあの音量なら起きるから。」
高堂「じゃあやっぱり犯人は装置を解除したんだ。でもどうやって…?そもそもあたしは装置の仕組みもよくわかってないんだけど。」
宮壁「そこについて話してみよう。何か糸口が見つかるかもしれない。」
―議論開始―
高堂「装置はあのアラームだけじゃないの?」
潛手「なーんだかー、☆トゲトゲが飛んでくるらしいでーすよー!」
端部「後は…☆上から刃のついた板みたいなのも落ちてくるようになってた、気がする…。」
難波「ぶ、物騒…それで死んだら殺人になるくね?」
東城「それほど大きな危害は与えないよ。せいぜい痛みでしばらく動く事が億劫になるくらいだから。」
勝卯木「…奥…☆針、飛び出す…?」
そういえばあいつは解除方法を知らなかったんだったな。ここで指摘させてもらおう。
▼[装置の仕組み]→【針、飛び出す】
宮壁「勝卯木、それは違うんだ。」
勝卯木「針、奥……あった…。」
宮壁「ああ。だけどあの針が飛んでくるわけじゃないんだ。あれは、装置を解除させるための針なんだよ。そこを押すと30秒間だけ装置が作動しなくなるんだ。」
高堂「つまり、その30秒間で中の物を取る事ができるって事か。短いけど。」
篠田「待て。あの針は壁の奥にあったが…どうやって押すのだ?」
東城「ボクの部屋に長い棒を用意してあってね。それで針を押す事ができるんだ。宮壁くん、前木さん、安鐘さんの3人には最初に説明していたから3人は棒がボクの部屋にある事を知っているけれど、他の人達には言っていなかったね。」
牧野「なんでその3人なの?」
東城「…今言う事じゃない。ボクは確証を得ていない事は言わないようにしているんだ。」
牧野「…ふーん?」
空気が悪くなってしまった。たしかに東城の目的や人選も気になるけど、今はそれについて話している場合じゃんないはずだ…!
ひとまず皆の話を聞いて、誰かの話から話題を広げられないかを慎重に見極めていこう。
―議論開始―
牧野「まあそれはまた今度でいいや。じゃあその☆3人以外に解除方法を知ってる人はいないんだよね?」
東城「そういう事になるね。」
牧野「それで、犯人は男なんだよね。」
前木「今までの議論だとそうなってるね。」
安鐘「じゃあ犯人は宮壁さんという事ですの!?」
宮壁「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
篠田「いや、東城も入るだろう。装置を作った本人も知っているのだから。」
牧野「そう!これで☆その2人にしか装置は解除できないって事になるよね!」
俺が犯人じゃない事は俺が1番分かってる。東城がどうなのかは分からないけど、ここは反論させてもらう!
▼[装置の解除について]→【その2人にしか装置は解除できない】
宮壁「それは違う!」
牧野「あれ、そうなの?」
宮壁「その3人以外でも、東城に頼めば同行してもらって装置を解除してもらう事ができるんだ。」
牧野「えーっと、でも俺はそんな事も知らなかったわけだし…今ここで聞いたところで怪しまれるから誰も名乗り出ないんじゃないかな?」
宮壁「そこは東城に聞けば分かるはずだ。」
―コトダマ提示―
▼[装置を解除したメンバー]
宮壁「現に東城はメモをしている。それによると端部、三笠、潛手は1度東城に同行してもらって装置を解除してもらってる。だから解除の方法だって知ってるんだ。」
牧野「えー!そんなの知らなかったから変な推理しちゃったじゃん!」
東城「あ、あと安鐘さんも棒を借りに来ているけれど、この4人は何を持って行ったのか確認したし、使い終わったら回収して戻しているからさっきも言った通り、犯人はボクの手を借りずに装置を解除している事になるよ。」
大渡「…そこの白衣チビ野郎が犯人の殺人に加担してなけりゃの話だろ、んなもん。」
東城「あれ?大渡くんは知らないのかな?ボクは絶対にコロシアイには反対…」
難波「脱線しない。2人ともすみっこで言い合ってくんね?」
前木「つ、つまり、今犯人候補になってるのは宮壁くん、東城くん、三笠くん、端部くんなんだよね。…あ!これで柳原くんは犯人から外れたって事かな!?」
柳原「え!そうなんですか!?やったー!」
心底嬉しそうな顔をして柳原は万歳をした。
高堂「き、聞いてなかったの…?」
柳原「聞いてたけどよく分からなかったんです!」
宮壁「そ、そうか。えっと、大渡も知らなかったんだろ?」
大渡「…どうだかな、自己申請の意見が参考になるとは思えねぇが。」
こ、こいつ…!せっかく容疑が晴れるところなのにそんな事言いやがって…!
三笠「ふむ…犯人の動きも犯人も絞れてきたが、なかなか断定とはいかないものだな。」
東城「ここでボクが犯人じゃない事を示させてもらうね。」
―コトダマ提示―
▼[黒い欠片]
東城「これだよ。」
安鐘「それは一体…なんですの?」
東城「装置の針の先についていた物体だよ。何かは分からないからそこには触れないけれど、これが針の先についていたのは宮壁くんたちも見ていたから分かるよね?」
宮壁「あ、ああ。…!そうか!」
前木「え、どういう事?どうしてそれが東城くんの無罪を証明する事になるの?」
宮壁「東城は針を押すための棒を持ってる。その棒で針を押したところで針には何もつかない。」
前木「あ!そっか!あの変な物がついてるって事は、犯人が棒以外の物を使って装置を解除した事になるんだもんね!」
東城「これで犯人は3人に絞られたね。」
端部「その…針についてたものって、何か分かるの…?」
東城「ボクは知らない。」
潛手「潛手めかぶもー見たことないでーすねー…。」
難波「分かんねー事いつまでも考えても仕方ないじゃん?別の事も話し合ってみねーの?」
篠田「別の事…?」
難波「『犯人がハンマーを取りに行ったタイミング』。これが分かれば犯人の狙いとかはもっと分かるようになるんじゃね?」
宮壁「確かに…。」
ハンマーをいつ手に入れたのか…桜井と犯人の間で何が起きたのかが掴めるかもしれない…!
―議論開始―
三笠「自分は、☆椅子の血を拭いた後だと思っていたが…どうなのだろうな…。」
高堂「普通に考えて☆椅子で殴った直後だと思うけど…。」
牧野「それか椅子で殴って血を拭いて移動させてハンマーをゲットして殴ったとか?」
篠田「しかし犯人は慌てていたのだろう?その中で装置を解除する方法を思いつくとは考えにくいと思うのだが。」
潛手「や、ややこしいでーすねー…犯人さんはいつハンマーをもらったんでしょーかー?」
難波「もらった訳ではないと思うけど…。」
俺も正しいタイミングは分からないけれど…少なくともあの時ではないはずだ…。
▼[勝卯木の証言]→【椅子で殴った直後】
宮壁「それは違うと思うな…。」
高堂「ええっと、理由を聞いてもいい?」
宮壁「ああ。モノパオファイルによると桜井が死んだのは23時だ。その後で装置のある場所…倉庫に向かったなら勝卯木と遭遇する事になるからな。」
高堂「え、なんで蘭ちゃんが外に出てるの?」
勝卯木「……食堂…水……飲む…。」
高堂「そ、そうなんだ…でも夜は危ないからできれば出歩かない方がいいと思うよ?」
勝卯木は高堂の言葉にうなずいた。もし犯人と遭遇していたら、危ないところだったかもしれないのに…。
三笠「勝卯木が食堂から戻ったのはいつ頃なんだ?」
勝卯木「11時8分45秒。」
三笠「詳しいな…。」
宮壁「俺は犯行の前だと思う。」
牧野「前?どういう事?犯人は桜井ちゃんを殺した事に対して慌てていると思ってたけど。もし犯行の前にハンマーを手に入れたのだとしたらこの事件は計画的に行われたって事にならない?それならそもそも椅子で殴る必要ないよね?」
宮壁「そうなんだ。だから、これは俺の想像になるんだけど、犯人はハンマーを凶器として手に入れた訳ではないのかもしれない。」
牧野「凶器以外の方法でハンマー…でもあのハンマーはとげもついてたし、部屋には工具セットもあるから工具として…って訳でもなさそうだけど。他にあるとすれば…武器?」
潛手「きょ、凶器と武器ってなにが違うんでーすかー…?」
篠田「犯人は…桜井を殺すつもりでハンマーを取ったのではなく、自分の身を守るために隠し持っておこうとしたのではないか?凶器と武器の違いはそこだろう。」
潛手「え、ええっとー…?どうして急に…?」
高堂「そのきっかけを与えたのがあの悪魔と裏切り者の情報だった…そういう事になるのかな。モノパオが変な事を言ったせいで…。」
東城「いや、おかしいよ。」
宮壁「何がおかしいんだ?」
東城「ボクは1日に2回は倉庫の確認をしている。ハンマーを手に入れたところでボクがすぐに物の不足に気づくからずっと持っておく事は出来ないよ。」
牧野「そんな先の事まで考えられない人もいる、この状況ならそうなってもおかしくないよ。それだけの話でしょ。」
東城「うーん、理解できないね。」
東城はそうつぶやくと再び証言台にもたれかかった。すっかり興味もなくなったみたいだ…。
いろいろ分かってきたけど、俺の容疑はまだ晴れないな…。どうにかしたいけど今疑われている三笠、端部、俺は全員針を押せば装置が解除出来る事も知っているし力もある程度はある。ここまでの条件には当てはまってしまっている。
やっぱりあの黒い欠片がなんなのかを突き止めるしかないみたいだ。
端部「針を押すにしても…東城の棒以外で、針を押せるものなんてない気がするけど…。」
三笠「ああ、ここで証明はできないが自分の部屋にあそこまで届く『長い物』はなかったのだ。」
大渡「…長くなくてもいいだろ。」
宮壁「え?」
大渡「要は『針まで届けばいい』んだろ?なら…投げりゃいいんじゃねえのか。」
難波「は?あの針狙うのは結構むずくね?」
大渡「…あ?あれも狙えねぇのか?」
宮壁「そういえば大渡は無駄にコントロールがよかったな…。」
食堂で札を投げつけられた事を思い出す。
難波「ふーん?大渡は投げられるんだ?」
大渡「ここで俺を疑う奴はとんだ馬鹿だ。そもそも俺は装置の開け方なんざなんも知らねぇ。その3人の中に『そういう事に長けている奴』がいるんじゃねぇのかっつってんだよ。」
吐き捨てるようにそこから大渡は何も言わなくなった。
だけど、これでやっと分かった気がする。犯人が誰なのか。
宮壁「投げられる物があって、黒い部分がある、ゴムのようなもの。」
俺は今朝、それを見た。違和感を覚えたのに、どうして今まで思い出さなかったのか。
宮壁「サッカーボールだ。」
高堂「さ、サッカーボールって…じゃあ、犯人は…。」
皆の目が一斉に端部にいく。端部は困惑したように周りをちらちらとみている。
端部「ま、待ってよ、サッカーボールは倉庫にたくさんあるから、誰だって使えるよ…?」
宮壁「じゃあ、犯人は倉庫にあったサッカーボールを針に投げたって事か?」
端部「そうじゃないの…?お、俺は、知らない、し…。」
難波「東城、あの倉庫に穴の開いたサッカーボールとかあったの?あと何個減ってたんだっけ?」
東城「なかったよ。ボールは昨日から1つ減っていたね。」
難波「じゃあその減ったボールが穴をあけるために使われたって事?」
東城「ボクに聞かれても分からないよ。」
宮壁「そもそも俺や三笠はサッカーボールで針を押そうとは思わない。端部はサッカー選手なんだから思いつくはずだし、針を狙えるだけの才能がある。」
端部「その推理は、防いでみせる…!」
宮壁「端部…。」
端部「それだけで、俺を犯人にするなんておかしいよ…!状況は三笠も宮壁も同じはずだよね…?俺は、認めない、よ…!」
確かに俺はそこだけで端部を怪しんでいる…。俺は犯人じゃないから俺視点では犯人は三笠か端部だ。
あとは俺の違和感を解消しなければならないはず。…指摘、しなければならない。
♢反論ショーダウン♢
端部「サッカーボールを見つけて、俺しか使いそうな人がいないなんて、そんなの無茶苦茶だよ…!」
端部「それに、一度しかチャンスがないわけじゃない、よね…?得意じゃなくても、何度かやれば当てられるかもしれない…!」
端部「そもそも、サッカーボールに穴が開いたからってゴムが欠けて残るなんて聞いたことがないよ…!」
―発展―
宮壁「それは、『一般的なサッカーボール』だった場合だ。今回のボールは普通のじゃない。『モノパオ特製の印があるサッカーボール』。普通と変わった構造になっていてもおかしくないんだ。」
端部「そんなの、確かめようがないじゃないか、別の事も考えてみようよ…!」
宮壁「別の事はもう話終えたはずだ!それをふまえて俺はお前が怪しいと思ってる…!」
端部「そんなの、ただの憶測にすぎないよ…!」
さ、さすがにこのままだと無理がある。あの違和感の正体について何も触れられないから確かめようがない…。何か証拠はないのか?
『支援』
▼[コトダマなし]
勝卯木「……不明点……聞く…。」
宮壁「勝卯木?不明点を聞くってどういう事だ?」
勝卯木「ボール…材質……モノパオ…聞く。」
潛手「ほええ!答えてくれるんですーかー!?」
さっきまでこと切れたぬいぐるみのようになっていたモノパオが急に元気よく立ち上がった。
モノパオ「いぴぴのぴ!答えてしんぜよう…ずばり!ボクくん印のサッカーボールは1番外側以外はびっくりするくらいもろいゴムが使われているパオ!理由?経費削減だよっ!」
前木「ほ、本当に答えてる…蘭ちゃん、よく聞こうと思ったね!」
勝卯木「不明点、聞く。…これ…大事。」
前木「そうだけど私じゃ思いつかなかったよ…すごいね!」
勝卯木「…褒められた。」
いや流石に今はいちゃいちゃしないでくれ…。
牧野「…1番外、以外?」
…!これだ、俺の違和感の正体。そしてこれは、『俺と犯人しか詳しく知らない情報』だ。
宮壁「…端部、やっぱりお前が犯人だ。」
端部「な、なんで今の流れで、そうなるの…?」
宮壁「いくらモノパオの作ったサッカーボールでも、『すべてのボールがもろいわけじゃない』。」
高堂「あ、まさか…。」
三笠「…そういう、事か…。」
難波「…アタシ達で証拠を作ったって事じゃん、これ。」
牧野「潛手ちゃんも分かるんじゃないかな?君も見てるんだからさ…。」
潛手「ほわ?……あ、わ、分かってしまい、ましーたー…。」
潜手の哀しそうな顔を見て俺も確信してしまった。
この5人と、犯人と、俺と、…桜井でやった事は1つしかないんだ。
そして、これが分かればどんなボールが当てはまるのかも分かる。
♢閃きアナグラム 開始♢
『Q 犯人はどんなボールを使って装置を解除した?』
A.使っ
B.ール
C.たボ
D.何度か
→D,A,C,B…【何度か使ったボール】
宮壁「これが…俺の、答えだ。」
宮壁「皆でサッカーをした時に使ったボールは、ボロボロになっていた。針の先についていた欠片もボロボロだった。」
端部「…!」
宮壁「俺はあのボールを拭いたからよく知ってる。モノパオ特製のサッカーボールは作りが雑だから端部の練習やミニゲームでボロボロになっていたんだ。」
宮壁「…端部、どうして今日使っていたボールが新品だったんだ?」
俺の感じた違和感。
□□□
「あれ…?宮壁、1人はダメって言ってなかったっけ…?」
「ボクと篠田さんがいるよ。」
「なんか、変な距離感だね…。」
倉庫に行く途中でぴかぴかのサッカーボールを小脇に抱えた端部と大渡に会った。
(中略)
「とりあえず戻してきたらどうだ?さすがに裁判に持ち込むのは邪魔すぎると思う。」
篠田の言葉に端部は頷いた。うん、それがいいだろうな。
□□□
それは…ずっと同じボールを使っていた端部が今朝は綺麗なボールを使っていた事だった。
宮壁「お前は…俺が拭いたボールを『まだ数日は使える』って受け取っていたじゃないか。」
端部「あれはただの想像だよ!実際はそこまで長持ちしなかったんだ…!俺はボールを作った人じゃないんだ、どのくらいボールが使えるかなんて分からないから…!」
頭の隅であの時の景色が崩れていくのを感じていた。
宮壁「仮にそうだとしてもあのボールしか装置を解除するのに使えるボールはなかったはずだ。倉庫からサッカーボールは1つしか減っていない。新しく持って行ったボールは端部自身が今朝小脇に抱えて、お前の部屋に戻しに行ったじゃないか。」
俺が皆の思い出を壊している。それを理解しながら、俺は端部を追い詰めていく。
端部「そ、それは…。」
宮壁「その上俺はあのサッカーボールをお前の部屋から持ち出していない。あのボールを使えた人は1人しか…お前しかいないんだ。」
端部「……。」
端部はこんな状況じゃなければ声をかけたくなるくらい青ざめていて、震えていた。
その口から力強い反論の言葉は出てこなかった。
出てきてくれなかった。
端部「違う…違うんだ…。」
消え入りそうな声がしんと静まり返った裁判場に響く。
諦めともとれるような声。それでも生来の負けず嫌いからか、「ちがう」という言葉はずっと聞こえてきた。
そんなの、皆思ってる。
端部みたいな人が人殺しなんてするわけないじゃないか。何かの間違いだ。
そんな間違いであってほしい答えが正解になってしまった。
牧野「端部…君、最初は桜井ちゃんを殺すつもりなんてなかったんじゃない?」
端部「…え?」
牧野「自分に何かあった時の為にハンマーを用意するなんて、これから殺人を起こそうとする人がやる事じゃない。それに君の…犯行の、慌てっぷり。君にとって全てが想定外だったとしか思えない。」
端部「ちがう…。」
牧野「君は…桜井ちゃんを、頼りたかったんじゃないの?」
端部「違う…!」
端部は、泣いていた。涙をこぼしながら、それでも牧野の言葉をさっきよりも強く否定していた。
牧野「桜井ちゃんと何があったのかは分からない。だけど、悪魔とかの話を聞いた時の君に殺意は感じなかった。」
端部「違うって言ってるじゃないか!」
牧野「…嘘つくなよ。俺と散々一緒に話したくせに、嘘が通じると思ってんのかよ。」
端部「嘘なんて言ってない!」
牧野「…その反応はさ、図星って言ってるのと同じなんだよ…。メンタリストとか、そんな事以前に、友達舐めるんじゃねえよ。」
牧野も泣いていた。
3人でこの建物を探索してからまだ1週間も経ってないのに。もう、そんな事すらできないのか。
悔しさからか、怒りか、悲しみか、何も分からないままこぶしを握る。
宮壁「端部…お願いだ。」
俺の声に端部が顔をあげる。
宮壁「これから、俺達が考えた事件の流れを説明する。…それで反論がなければ…俺はお前に、認めてほしい。」
握りしめたこぶしの内側に爪が食い込む。端部を見据えて俺は…この判断を告げることにした。
―クライマックス推理―
宮壁「そもそも犯人は殺人の為にハンマーを用意したわけではなかった。モノパオから裏切り者の存在を知った犯人は、桜井を筆頭に皆が結託し始める中で、自分の…おそらく護身用に凶器を携帯しておく事を考えたんだ。」
宮壁「凶器を手に入れるためには東城の作った装置を解除する必要があるけど、犯人は一度別の用事で装置を解除してもらった事があったから解除方法を知っていた。解除の鍵となっている装置の針を、犯人の『特技』で押す事にしたんだ。」
宮壁「犯人は針を狙ってサッカーボールを蹴った。針はそこまで小さくもないし、何より犯人にはその手段をとれるだけの才能があった。見事針を狙って装置を解除できた犯人は『誰にでも扱いやすそうな軽いハンマー』を手に入れた。そしてボールを回収してその場を去った。30秒という短い時間だったために、ボロいボールが欠けて針についてしまった事なんて気づかずに。この時に穴が開いてしまったから犯人は次の日の朝新しいボールを抱えていたんだ。練習を日課としていた犯人は急に練習をやめると怪しまれると思ったのかもしれない。」
宮壁「ここからは犯人の犯行の流れについて説明する。犯人は夜に桜井を犯行現場である教室1に呼んだ。モノパオからの話を聞いた犯人は、思わず護身用の武器を手に入れるくらいに怯えていた。そこで夕食の時に感じた桜井の説得力を見込んだ犯人は、桜井に自分の不安を相談したかったのかもしれない。桜井は人間観察が好きだったし、犯人が自分に殺意を抱いていないと信じたからこそ犯人の呼びかけに応じたんだろうな。…だけど、事件は起きてしまった。」
宮壁「その間何があったのか俺には分からないけれど、犯人は桜井を教室にあった椅子で殺害。その時まで殺人の準備を一切していなかった犯人は、椅子を振り上げられる人が犯人だと分かればすぐに犯人が絞られてしまう事に気づいた。だから犯人は『誰にでも起こせるような殺人に見せかける』事にしたんだろう。とりあえず椅子や机についた血を拭くために教室2にある掃除用具ロッカーに入っていた雑巾をトイレで濡らし、血をある程度拭いた後にそれらをトイレの便器に流す事で処分した。そのせいで廊下が濡れたり便器が詰まったりしたんだ。」
宮壁「そして拭いた椅子を隣の教室2の方に移動した。凶器となった椅子の脚部分は溝も深い分、血痕を完全に拭く事ができなかったから捜査されないであろう場所に移そうとしたんだろう。犯人は教室1の椅子と教室2の椅子を入れ換えた。柳原がずらしてしまった机以外はこの時のずれだ。そして現場に戻った犯人は、凶器をハンマーにするためにもう一度同じ場所を殴った。そしてハンマーに血をつける事ができた犯人は桜井の近くにハンマーを置き、その場を後にした。この二度目の傷が最初の傷と重なっていたせいであのハンマーの形と一部が合わない歪な傷を作ったんだ。」
宮壁「ここまで言えば分かるはずだ。椅子というある程度力のある人にしか扱えないものを凶器にし、ボロボロのボールを蹴って装置を解除するなんて手段をとる事ができた人は1人しかいない。」
宮壁「…『超高校級のサッカー選手、端部翔梧』、お前が犯人だ!」
宮壁「……何か反論はあるか?」
俺の問いかけに犯人…端部は黙って首を横に振った。
端部「…ごめんなさい…。」
終わった。いや、終わってしまった。
達成感なんて微塵も感じない、俺に残されたのは真実を暴いた事に対する虚無感だった。
端部は桜井を殺して、俺達はこれから端部を殺す。
この裁判場にいるのは加害者だけだ。
その事実と、目の前で涙をこぼす端部に俺はどんな顔をしていいか分からなくなっていた。
モノパオ「はいはーい!結論が出たみたいだね!それでは投票タイムに入ります!」
そんな空気をものともせずモノパオが元気よく言うと、全員の生徒手帳から音が鳴った。見ると『投票』というアイコンが増えている。
モノパオ「ふー、ギリギリこのシステムが間に合ってよかったよ!もう少し遅かったら皆で指さし投票になるところだったからね!という訳でアイコン開いたら皆の顔が映ってるよね?クロだと思う人の顔をタップして、投票しますか?っていう表示が出たら『はい』を押す!簡単でしょ!」
端部「…。」
俺の視線に気がついて何か言おうと口を開きかけたが、端部は黙って頷くだけだった。
端部の挙動の1つ1つが震えていた。俺は手帳を落としそうになりながらも、端部に投票した。
1度俯いてしまった顔をあげる事に耐えられず、俺は俯いたまま、裁判場には沈黙が広がった。
モノパオ「はい!ミンナの投票を確認しました!じゃあ答え合わせに入るよっ!はたして正解なるかーっ!?」
ガラガラという音に思わず顔をあげる。14枚のコインが投入され、奇妙な白黒のガチャガチャがひとりでに回っていた。しばらくして静止し、盛大なファンファーレとともに、サッカーの応援歌が流れ出した。
端部の顔がイラスト化されたようなアイコンが描かれた安っぽい玉が、俺達の目の前で輝いていた。
次回で1章完結です。長い間お付き合いくださりありがとうございました!